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【SuUインタビュー / 後編】東京から茨城へ、活動拠点を移して制作されたEP『Temples』に込めた思い&開催間近となるツアーへの決意を語る

ぴあ
【SuUインタビュー / 後編】東京から茨城へ、活動拠点を移して制作されたEP『Temples』に込めた思い&開催間近となるツアーへの決意を語る

/ Photo:山崎敦也



Text:吉羽さおりPhoto:山崎敦也
昨年、サポートメンバーであったminako(vo/ag)が加入したSuU。新体制となってリリースとなる1st EP『Temples』は、東京とすずきたくま(vo/g)の地元・茨城とで制作、レコーディングされた。心のありかや生きているからこその痛みを探り、ときに底なしの空洞に呼びかけるような徒労感も覚えながら、静かに深く自身と向き合う世界。時間感覚も麻痺するようなその旅を、ダブやサイケに浸した幻影的なサウンドで紡いでいるのが、『Temples』となる。ダークで内省的でいて、それでもどこか光を湛えた温かさがある。インタビュー後編では、この作品が完成した背景と、12月20日(土)よりスタートするツアーについて、すずきたくま、minakoのふたりに話を聞いた。


── 前回(https://lp.p.pia.jp/article/news/441825/index.html) は、昨年minakoさんが加入してからのSuUの流れや変化等を伺いましたが、後編では改めて12月17日(水)にリリースのEP『Temples』についてお聞きしていきたいと思っています。EPの制作としては、いつぐらいからはじまっていたんですか?

すずきたくま(vo/g)ちょうど1年前にぴあでインタビューを受けたときに、1曲録っている途中で、それが「微振動」だったんです。
その後に、「鱆」を録って今年の5月にシングルでまず出したんです。6月から、残りの曲をやりはじめて一気に仕上げた感じで。と言ってもパーツはあったので、簡単なデモは作っていたんですよね。あとは、今回は曲名を先に決めて作った感じはありました。

──「鱆」や「微振動」もそうですが、minakoさんがメインで歌っている「鶏蛇私」や「天国の外側」「骨」と、タイトルだけを見ると一体どういう作品なんだろうと思わせるところがありますね。

すずきそうですね(笑)。僕的には、安楽とか、死に近いコンセプトにしていますね。── 全体からその香りはしています。


すずきあとはシンメトリーが好きなので、「鱆」からはじまって、曲を並べるとタイトルが一文字・「鱆」、三文字・「鶏蛇私」、五文字・「天国の外側」、三文字・「微振動」、一文字・「骨」となっているんですが、そういうのをやってみたいなというのがぼんやりとあったんです。それで先に曲名を決めて。その曲名に合った内容を、なんとなく自分でメモを取ったりしていきながら、作れそうだなというときに少しずつデモを作っていましたね。

──「微振動」が最初だったということでこの曲から聞いていこうと思いますが。心地よくも不思議なサウンドで、ループ感はあるけれど、聴いているうちにどんどん自分の中心がずれていく、歪んでいく感覚があります。

すずきまさにそういう精神状態だったんだと思います(笑)。揺れて、揺れてという感じだったかもしれない。

── minakoさんはデモを聴いたときにどう思いましたか?

minako(vo/ag)これ、どこにコーラス入れるの?って思いましたね(笑)。
今入っているのは結構、たくまのディレクションで入れたものなんですけど。面白かったですね、「微振動」は東京で録っていたんですけど。

【SuUインタビュー / 後編】東京から茨城へ、活動拠点を移して制作されたEP『Temples』に込めた思い&開催間近となるツアーへの決意を語る

minako(vo/ag)
すずき東京の俺の部屋でね。

minako電話を通した声を録ったりとか。

すずきラジオボイスみたいなものをパソコン上で作るんじゃなくて、実際にラジオボイスを録っちゃいたいなと思って。電話の音声が近かったので、電話でひと言もらって、それをスピーカーで流して録ってということをしたりしました。

── この曲は東京の部屋で録ったということは、今回の作品では別のところへ移動もして録っているんですか?

すずき僕が、今年の6月くらいから地元の茨城にちょっとずつ拠点を移しはじめて、実家の自分の部屋でレコーディングできるようにしたんです。更新のタイミングもあったので、9月には完全に東京の部屋は引き払って、EPを作るために自然豊かなところでゆっくりと、集中できる環境を作ろうと思って制作していたんです。


── 場所や環境が変わることで、制作にも影響するものですか?

すずき
変わりますね。「微振動」を録ったのは東京だったんですけど、音数がガチャガチャしてるじゃないですか(笑)。「鱆」も東京で録ってはいるんですけど、地元の方でミックスし直していて、そこで音数をどんどん減らしていくことができるようになって。詰め込まずに、余白を作ることができるようになりましたね。東京にいると、普段から忙しく詰まった生活ばかりしているので、どうしても情報量が多い曲になっちゃうんですけど。田舎で作ると、情報も少ないというか。

── たしかに、流れる時間の尺もちょっと変わってくる感じはありますよね。

すずきそれがよかったんです。



── 前編のインタビューで、今回はダブやレゲエ、サイケなどをより追求していったと言っていましたが、「鱆」のリバーブ感やゆったりとしたビートやノリにも、余白や時間の深みが感じられます。minakoさんの歌やコーラスの響きも、音響的であったり、細やかなニュアンスがありますが、環境が変わってのレコーディングはminakoさんの歌にも反映されていますか?

minako歌い方が変わったと思います。都会と田舎とで時間の流れ方とかもまったくちがったし、私は生まれてからずっと東京に暮らしているので、東京と自然豊かな田舎との絶妙なバランスが出せたというか、穏やかな歌い方になりましたね。

── EPとしては「鱆」ではじまって、どっぷりとダークなムードになっていくのかと思いきや、サウンド的では徐々に明るくないまでも明度が高くなっていく流れもあります。

すずきそうかもしれないですね。「微振動」があって、1曲目の「鱆」とかは僕がいろいろとあっていちばん参ってる時期に作っていて、2曲目の「鶏蛇私」は、田舎でいちから作りはじめたので。気持ち的に余裕ができたから、それがサウンドにも出ているんじゃないかなという感じがしますね。3曲目の「天国の外側」が最後だったんですけど、確かに、明るくはなっていく感じがあるかもしれない。
歌詞は、全体的に暗いんですけどね(笑)。

── 歌詞は、どんどん心の深みに入っていく感覚ですね。ただその心の旅的な歌はダークではあるんですけど、居心地が悪くないというか。閉塞感はありつつも、ここで静かに向き合っていくことに救いがあるのかなという。そういった1枚になっているなと思ってます。

すずきありがとうございます。

── 暗い歌詞だと言ってましたが、作品には自分の当時の心境や、悩んだなかで得た哲学などが出ている感じですか?

すずき多分、今まででいちばん自分のことばかり書いた作品だなと思いますね。前のアルバム等に入っている曲は、想像とか、本で読んだ世界観とかをそこからインスピレーションを受けて書いたりしていたんですけど。
今回のEPは自分のなかから出てきたことしか書いてないので。まあ、暗いですねえ(笑)。大丈夫かなと思うくらい、でき上がってみたら暗くて。

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すずきたくま(vo/g)
── minakoさんは、制作やライブを重ねてきて、時間を一緒に過ごすなかで、今回はこういうことをしたいんだろうなというのは理解できた感じはありますか?

minakoああ……でもまだ全然理解してないと思います。毎度、毎度驚いていたんですけど、そのなかでも「骨」はデモができた当時の自分の心境にピッと入ってきましたね。

すずきビビッときたとかじゃなくて、ピッなんだ(笑)。

──「骨」はある種死生観が描かれていると思うんですが、達観したものじゃない、心の揺らぎのなかにいるような曲ですね。

すずき「骨」もデモができたのは1年くらい前で、歌詞もそのくらいに書いていたんですけど。とにかく1年前の今頃は結構、いろいろ参っていたんじゃないですかね。あまり記憶がないんですよね、この1年前のこととかが。

── 書いた曲から思い起こすと、病んでいたのかなと?

すずきというのが出ていますね。どうかしてたんだろうな、何があったんだろうっていう(笑)。今は気持ち的にはいい感じなので、今だからこうして言えるんですけど。多分やばかったんじゃないかなと思います。

── 吐き出していたんでしょうね、そのときの消化ができない思いや感情を。

すずきかといって、吐き出しているというエネルギーがあるわけじゃなくて、ただ静かに吐き出して、動けない状態で。ほんと、吐き出しただけで終わりみたいな。だから、レコーディングとかもできなかったんです。する体力がなかったんですね、その頃は。デモを作っていっぱいいっぱいで、アレンジとかも考えられないくらい、あまり音楽に集中できてなかったんじゃないかなと思うんです。

── そうしてできた「骨」が今作のリード曲となったのは?

すずきシンプルに、このメロディが好きだなって思ったんです。あとは、歌詞が、たまに自分でも食らってしまうくらい、本当に俺が書いた?ってくらいにエグいことを書いてるなと思うんです。それがいちばんこのEPを引っ張ってくれる曲なんじゃないかなと思ってリード曲にしたんです。

── いちばん最後に書いたという曲が「天国の外側」で。この曲は、ビートやサウンドでもいろんな音が入った、遊びが感じられる曲ですね。すずきリズムにはボンゴとかも入ってますね。サンプラーに入れて、ピッチを下げてディレイをかけてもいて。

── イントロあたりに入っているのがそうですかね、他にも和の要素も感じる音などもあります。

すずき仏壇にあるおりんとか木魚、お寺の鐘の音も入っていますね。山形に旅行に行く機会があって、山寺という有名なお寺があるんですけど、そこの鐘の音を録ったものを使ったりとか。小さくてかわいい木魚が売っていたのでそれを買って、入れたりしたんです。

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── 旅をしたときは、いつかこういう音も使おうくらいの感じで録っていたんですか?

すずきこのEPに使いたいなと思って。世界観的に仏教の世界観が強いEPなので。熱心な仏教徒というわけではないですけど、たまたまそういうことに興味がある時期でいろいろ自分で調べたりもしていて。そのときの自分の精神状態とも合うというか、はまるなと思って。その要素もEPに入れたりしていたんですよね。

──「天国の外側」は冒頭の方で般若心経のフレーズも入っていますしね。

すずきあまりやりすぎちゃうのはどうかなと思ったんですけどね(笑)。なので結構ディレクションしましたね、あれは。

── たしかに最初、これは何語だろう?何を歌っているんだろうと思いました。

minakoあのパートはもう思い出すだけで、大変で。楽しかったんですけど、レコーディングの途中から、何が正解なのか私もたくまもわからなくなってきて。一回ご飯を食べて、タバコ吸って頭をリセットしてという感じでやっていました(笑)。

すずきはっきりと発音してほしくなかったんです。それで結構厳しくディレクションはして、「それ言い過ぎ」とか「もうちょっとやわらかく」とか(笑)。

minakoで、やわらかく歌ってみると今度は、「それは発音してなさすぎ」っていう。で、どんどん正解がわからなくなっていって(笑)。でもそれほどに大切な思いがあるんだろう、こだわる理由があるんだろうなと思いながらひたすら唱えていました。

すずきだいぶ付き合わせましたね、この曲は。

── すずきさんの頭のなかにはイメージ像や正解があったんですか?

すずきぼんやりとあるんですけど、それが言語化できないので。数を打つしかないなと思って。何回も何回もやって。いいテイク、いいふた言とかを切ってあとでつないでいく作業もしました。自分でも何がいいテイクかわからないんですけど。すっと体に入ってくるテイクがあるんですよね。

minakoメロディというメロディがあるわけでもないし。いつもはたくまが、「今のいいね!」って言ってくれたものは自分でもよかったのがわかるんですけど。これに関しては唯一、最後までわからなかったです。今のめっちゃいいわ!って言われても、自分では何が変わったのか全然わからなくて(笑)。きっとたくまの感覚的な、特別なものがあるんでしょうね。すごいなと思っていましたずっと。

【SuUインタビュー / 後編】東京から茨城へ、活動拠点を移して制作されたEP『Temples』に込めた思い&開催間近となるツアーへの決意を語る


──「天国の外側」は、気持ち的にはどういうベクトルに向かっていたんですかね、多幸感的なものなのか──。

すずきハッピーエンドに向かいたかった曲ですね、これは。最後に書いた曲でもあったし、今も気持ち的にハッピーな方なので。ハッピーエンドな結末にしたいなと思って。この曲は多幸感に向かっていく感じだと思いますね。

── そういう話を聞くと制作過程そのものが、すずきさんにとってセラピーにもなっていた感じもありそうです。

すずきそうかもしれないですね、リハビリでしたね(笑)。

── 先ほど寺や仏教という話もありましたが、タイトルの『Temples』というのは心の神殿的な意味合いですか?

すずきタイトルもほぼ最初から決まっていた感じで。1曲、1曲が寺というか、曲を書いていたときも、悪いものが落ちればいいなというので書いたりもしていたので。聴いたときに、気持ち的なところで悪いものが払えるような曲になればというのはありました。

── きっと人生と音楽の歩みのなかで、必要な作品だったと思いますが、作り終えても終わった気がしないとかはないですか?それとも達成感がある感じですか?

すずき今の時点(インタビュー時点)ではマスタリングが終わってないんですけど、僕の仕事は終わったというか。なので、ミックス終わってチェックして、エンジニアさんに渡して、もう3日くらい寝ていました(笑)。ミックスしているときも途中で、心を持っていかれそうでした。

── トランス感のあるサウンドですしね。

すずき聴いている人にも、いつの間にか眠っちゃっていたくらいの、そういう気持ちにもなってほしいなというのもありますしね。そういう音色は目指したつもりなので。マスタリングのエンジニアさんにも、そういうことは伝えて頑張ってもらっています。

── 12月20日(土)よりツアー『Temples tour』がスタートして、2026年2月23日(月・祝)に青山月見ル君想フでファイナルのワンマン公演となります。作品を携えた濃いツアーとなりそうですね。

minako先ほどの歌入れの話もそうですが、歌い方がものすごく変わったので、前回のインタビューでたくまが昨年のライブのときは演奏がふわふわしていたと言っていましたけど、私も歌の強弱みたいなものがあまりなかったんです。この1年、EPの制作を通して歌の強弱やわびさびのようなもの、大切に歌うことを学んだので。なので、演奏に持っていかれないように、大切に。

すずき集中だね。

minako集中して。でも集中しすぎるとまた力が入りすぎちゃうので、絶妙なところをかいくぐっていけたら素敵なライブができるなと思います。

すずきこのツアーは成功したいですね、本当にいい演奏をしたい気持ちが強いです。なので、集中で。結構、長尺の演奏になると思うので、体力もつけながら、いい演奏ができればいいなということだけですね。音楽的なもので誰かを感動させたいなという思いは強いです。

<リリース情報>
1st EP
『Temples』

12月17日(水) 配信リリース

【収録曲】
1. 鱆
2. 鶏蛇私
3. 天国の外側
4. 微振動
5. 骨

配信リンク: https://ototoy.jp/_/default/a/838111

<ツアー情報>
SuU 1st EP release tour『Temples tour』

2025年12月20日(土) 神奈川・江の島OPPA-LA
出演 : SuU / Hammer Head Shark

2026年1月24日(土) 京都・nano
出演 : SuU / SACOYANS / Hammer Head Shark

2026年1月25日(日) 愛知・K.Dハポン
出演 : SuU / UlulU

2026年2月23日(月・祝) 東京・青山月見ル君想フ
出演 : SuU※ワンマン公演

【チケット情報】
スタンディング:3,800円(税込/ドリンク代別)
◼︎一般発売
https://w.pia.jp/t/suu-temples/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563030&afid=P66)

※東京公演は12月20日(土) 10:00より発売開始
SuU 公式X
https://x.com/suutaguu

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