「君たちとのロックンロールに恋していたいです!」吉井和哉の「横綱曲」と東北への想いが熱く咲き誇った、 約4年ぶりソロツアー・仙台ファイナル公演【オフィシャルレポート】
Photo:横山マサト
吉井和哉の全国ツアー『吉井和哉 TOUR2025/26 IVIVI BLOOD MUSIC』が、1月31日宮城・SENDAI GIGSにてツアーファイナルを迎えた。
喉頭癌の手術・治療からの復活、THE YELLOW MONKEYの東京ドーム公演(2024年4月)と全国ツアー(同10月〜2025年9月)を経て、吉井和哉ソロとしては約4年ぶりのツアーとなる『IVIVI BLOOD MUSIC』。前回ツアー『THE SILENT VISION TOUR 2021-22』の途中、喉ポリープの影響で公演中止となった会場もツアースケジュールに盛り込んだ今回のツアーは、「吉井の血となり肉となった音楽をお届けするツアー」とMCでも語っていた通り、音楽と向き合い生命を燃やし続ける表現者・吉井和哉の愛と業の核心が凝縮されたものだった。
満場の手拍子と歓声に迎えられて、吉井のツアーバンド:ナポリタンズ[日下部"burny"正則(g)、真壁陽平(g)、鶴谷崇(key)、三浦淳悟(b)、吉田佳史(ds)]が登場、最後に吉井本人が姿を現わして「Shine and Eternity」で晴れやかにライブの幕を開け、フロアをいきなりクライマックス級の歌声とクラップへと巻き込んでみせる。さらにタイトでダンサブルなロックナンバー「VS」へ流れ込むと、場内は真冬の仙台とは思えないほどの熱気で満たされていった。
「トブヨウニ」「CALL ME」といったYOSHII LOVINSON名義でのソロデビュー当時の楽曲から「母いすゞ」のような重要曲、さらには最新楽曲に至るまで、吉井いわく「僕たちにとっての”横綱曲”」を網羅したこの日のアクト。喉のコンディションを気遣いながらのステージではあったのもの、己の歌と音楽を今この場所のオーディエンスと分かち合おうとする気迫の熱唱が、会場全体を強烈な一体感で包んでいた。舞台上に用意していた吸入器の煙をタバコのようにふかしながら、時に妖艶に、時にエモーショナルに歌い続ける姿は、吉井の揺るぎない決意を強く美しく印象づけるものだった。
「30代の後半からソロになって、『人間・吉井和哉』の旅というか、自分との闘いみたいな雰囲気でソロがスタートして。YOSHII LOVINSONという名前で――吉井和哉と名乗るのが照れ臭かったんでしょうね」。ライブ中盤、ソロのキャリアを噛みしめるようにゆっくりと語った後、アコギを奏でながら歌うのは「BEAUTIFUL」。吉井和哉名義の初シングル曲でもあるこの曲が、ナポリタンズの豊潤なアンサンブルと相俟って、雄大な景色を繰り広げていった。
この日のライブでもひときわ濃密な薫りを放っていたのは、ドラマ主題歌としてもオンエアされていた最新楽曲「甘い吐息を震わせて」。吉井自身のルーツでもある歌謡曲〜昭和R&Bのテイストが惜しみなく注がれた楽曲が、「仙台!甘い吐息が欲しいです。君たちとのロックンロールに恋していたいです!」と呼びかける吉井のモードと共鳴し合いながら、場内の没入感を刻一刻と高めていく。
ナポリタンズのメンバー紹介中、真壁が沢田研二のツアーでサポートを務めていることに触れた吉井が、舞台袖から白いハットを持ってきたのを合図に、全員一丸となって沢田研二「勝手にしやがれ」のカバーを披露する一幕も。
そこからさらに「超絶☆ダイナミック!」「ビルマニア」とアグレッシブな楽曲を畳み掛けると、オーディエンスの熱気と歓喜は天井知らずに高まり、圧巻のクラップとシンガロングが場内に渦巻いていった。
アルバム『The Apples』(2011年)リリースとほぼ同じ時期に発生した東日本大震災が、自分自身にとっても大きな転機になった、とライブ中に繰り返し語っていた吉井。「この曲はいつも、東北のみなさんのことを思ってやっています。改めてここで今夜、本編最後にみなさんにお届けしたいです」と告げて歌い始めたのは、『The Apples』の最後を飾るロックバラード「FLOWER」だった。《自分の血を愛せないと/人は愛せないとわかった》と歌い「自分を愛して!」と呼びかける吉井の姿に、抑え難く胸が震えた。
アンコールでは「FINAL COUNTDOWN」でフロア一面に激しいダンスの輪を描き出した後、「この後、2月からアルバムの制作に入ります。ソロのアルバムです。誕生日(10月8日)までにリリースします!またツアーやります!」と宣誓する吉井に応えて、割れんばかりの大歓声が巻き起こる。
「『The Apples』のプロモーションの時に(宮城の)七ヶ浜に行ったら、静岡の虚空蔵山っていう小山に似たような感じで、『故郷に似てる海があるなあ』って思ったことがあって。その後1カ月も経たないうちに震災が起きて、七ヶ浜も変わり果ててしまったから……」。ドキュメンタリー映画『みらいのうた』のエピソードも交えつつ、ここ宮城の地への思い入れを丹念に語った吉井は、「一緒に歌ってくださいね、歌詞は適当でいいから」と呼びかけ、ツアーの最後を「みらいのうた」で締め括った。《何度も何度でも立ち上がってみせるよ》……今年60歳の節目を迎える吉井和哉の、さらなる「その先」を見据えて歩み続ける覚悟が、その歌と佇まいからは確かに伝わってきた。
Text:高橋智樹Photo:横山マサト
<公演概要>
『吉井和哉 TOUR2025/26 IVIVI BLOOD MUSIC』
1月31日宮城・SENDAI GIGS