『百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉』根津美術館で 100種の草虫を蒔絵で描いた薬箪笥を中心に18世紀後半の博物学と美術の様相にも迫る
2024年11月2日(土)より、東京、南青山にある根津美術館では、『百草蒔絵薬箪笥(ひゃくそうまきえくすりたんす)と飯塚桃葉(いいづかとうよう)』展が開催される。根津美術館が所蔵する《百草蒔絵薬箪笥》が、今年新たに国の重要文化財に指定されたことを記念して行われる展覧会だ。
《百草蒔絵薬箪笥》とは、徳島藩のお抱え蒔絵師・飯塚桃葉(初代・?~1790)が制作した薬箱。箱の表面と内部の引き出し前面は、寄裂(よせぎれ)風の文様がほどこされ、エキゾチックで繊細な金具が要所に付された豪華な大名道具だが、なかでも素晴らしいのが本作の蓋裏にほどこされた蒔絵である。ここには百種の草や昆虫がその名とともに精緻な研出蒔絵であらわされており、その選定には本草家など専門家の関与が想定される。
また薬箱の中に収められた銀製卦算(けさん・文鎮の一種)、銀製合子(ごうす・蓋付きの小さな容器)、硝子製薬瓶、鍼灸道具、薬袋といった道具類も重要文化財に指定された。箪笥に付随した目録によると、合子や薬袋には、漢方だけでなく、蘭方の薬も入っていた。
《雪華蒔絵印籠》原羊遊斎作日本・江戸時代19世紀永青文庫蔵
同展には、本作を制作した初代飯塚桃葉の代表作も集結。