『トイ・ストーリー5』監督が語る。「ここで描かれるのは、誰もが経験すること」
ディズニー&ピクサーの新作映画『トイ・ストーリー5』がいよいよ今週末から公開になる。本作では子どもたちと遊ぶことが大好きなおもちゃたちの前に、最新のデジタルタブレットが出現したことで新たな物語が始まるが、映画の作り手たちはタブレットやデジタルといった設定を導入しつつも、“人と人がどうつながるのか?”を主軸に物語を紡いだという。
すでに公開されている地域で「シリーズ最高傑作」「感涙必至!」の声が続出している傑作はいかにして生まれのか?共同監督のケナ・ハリスと製作を務めたリンジー・コリンズに話を聞いた。
少女ボニーの家で暮らし、彼女と共に遊び、彼女の成長を見守るおもちゃたちに大ピンチが訪れた。友達ができないボニーを心配した両親が、近所の子供たちが持っているデジタル・タブレットを購入したのだ。カエルの姿をしたタブレット、リリーパッドの出現によって、ボニーの家のおもちゃたちは一緒に遊ぶ時間がなくなってしまう。一方、おもちゃで遊ぶことが大好きなボニーは、リリーパッドを手にした日から笑顔が消えていた。カウガール人形のジェシーは、ボニーの笑顔を取り戻すべく行動を開始する。
1995年に制作された『トイ・ストーリー』は、世界初の長編CGアニメーション映画で、ピクサー・アニメーション・スタジオ初の長編映画だ。映画の歴史の名を刻む傑作として知られており、本作ではシリーズ第1作目から脚本を手がけてきたアンドリュー・スタントンが監督を務めた。
「アンドリューはよく“僕は(自分よりも後にスタジオに入った)ピート・ドクターの弟分なんだ”なんて冗談を言いますけど(笑)、彼はやはりピクサーの重鎮で、ミーティングでもみんなを引っ張っていく立場にあります」とリンジー・コリンズは笑う。
「彼はすごく仕事熱心で努力家。創作の際にはいろんなことを熟慮するタイプで、深みがあって複雑な物語を好むフィルムメイカーです。自分では認めないんですけど、彼はユーモアのセンスが抜群なんです。その才能はシリーズ作品でより発揮されるんですよ。というのも、シリーズ映画はそれまでに登場したキャラクターたちの中に新しいキャラクターが加わることになりますよね?その際に彼はユーモアのある、楽しいキャラクター描写をすることで新キャラクターに居場所を与えることができるんです」
一方でスタントン監督は、私たちが日々暮らす中で感じる想いや苦悩を絶妙な設定で映画の中に盛り込んできた。
子育てする中で“子離れ”できない自分に悩んだ彼は『ファインディング・ニモ』で息子を探す父マーリンを描いた。誰かを想う気持ち、年齢を重ねることで生まれる不安など、スタントン作品には私たちの心の奥底にそっと触れるテーマがいつも隠されている。
「アンドリューは映画を作る上で不要なことはしない人なんです。本当に必要なものだけを求めて、削ぎ落としたものだけでフィルムメイキングする。そのアプローチはピクサーの中で唯一無二だと思いますし、先ほど言ったユーモアのある楽しい表現とムダのない語りのバランスがいつも見事にとれているんですよね」
そんなスタントン監督と伴走し、新作を完成に導いたのが、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオやピクサー・アニメーション・スタジオで長年にわたってストーリーボードアーティストを手がけた経験を持つケナ・ハリスだ。彼女は本作の創作プロセスは「常に有機的に進んでいき、結果としてこのような物語になりました」と振り返る。ピクサーは物語づくりに何年もの時間をかけることで知られており、本作も”おもちゃ対デジタル”の構図で物語がスタートし、やがて観客が予想もしなかった領域に突入していく。
「そうですね。
”おもちゃ対デジタル”の構図だと、結局は0か1の単純な物語になってしまいます。両者がボニーの注目を集めるために競い合う、みたいな話だとすごい単純ですよね(笑)。まるでアテンション・エコノミーの世界です。そこで私たちは時間をかけて、テクノロジーについて考えました。その時、みんなが口にしたのは、私たちはテクノロジーを通して人とつながっている、ということでした。パンデミックの時期には自宅から気軽で出かけられなかったので、テクノロジーを通してしか人とコネクションを持てませんでした。それに、現代の子どもたちは生まれた時からデジタル機器がありますから、その影響を当然のように受けています。劇中でなかなか友達ができないボニーが、リリー・パッドを手に友達を見つけようとするのは自然なことなんです。
だから、私たちは最初からデジタルを敵役にしたり、デジタルを断罪する映画を作る気はありませんでした。ただ、ボニーとずっと一緒にいて、彼女のことをよく知っているおもちゃたちは“ボニーにはもっと違った友達の作り方があるんじゃない?”と考えるだろうな、と思いました。この流れは自然と出てきましたし、私たちがもっともしっくりとくるアイデアでしたね」
ハリス監督が語る通り、おもちゃのジェシーやバズたちは、“想像力が豊かで、おもちゃで遊ぶことが大好きなボニーには、彼女にピッタリな友達がいるはず”と考えるようになる。無理して周囲と合わせたり、デジタル上のやりとりに付き合っても道はひらけない。ここが『トイ・ストーリー5』の物語のスタート地点だ。
タブレットを手に笑顔が消えてしまった少女ボニーと、自分がいればすべてが解決すると思い込んでいるタブレット、そしてボニーにはボニーなりのやり方で友達を見つけた方が良いと考えるおもちゃたち。三者の想いは衝突し、すれ違い、予想外の方向に物語が展開していく。
「このアイデアを導入したことでタイムレスで普遍的な物語になったと思います。
ここで描かれるのは、誰もが経験することです。人はテクノロジーとどう付き合うのか?そして何よりも、人と人がどうつながるのか?これこそ普遍的な問題ですから」
(写真左から)ケナ・ハリス、アンドリュー・スタントン、リンジー・コリンズ
『トイ・ストーリー5』
7月3日(金)公開
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