【ライブレポート】9mm Parabellum Bullet×Ivy to Fraudulent Game、“次はバンドで”の約束が結んだ『Our Delight』
Photo:オオミヒサト
Text:横堀つばさPhoto:オオミヒサト
1人と1人を、3人と3人へ。寺口宣明と菅原卓郎を、Ivy to Fraudulent Gameと9mm Parabellum Bulletへ。2026年6月5日、東京・渋谷クラブクアトロにて開催された対バンイベント『Our Delight』は、こんな個人から集団への拡張を、言い換えればユナイトを象徴する一夜だった。事の発端は、2024年10月に行われた弾き語りのツーマンライブ『One Garden』。2年前に交わされた「次はバンドで」という約束を果たすべく両者は再び集結したのである。
Ivy to Fraudulent Game
「後輩がレジェンドバンドに挑む構図を望んでいる人もいるかもしれない。でも、それをやっちゃうと、今日だけのミラクル頼りになっちゃうと思ってて。だから、今日はそのままの姿で臨みました。
また自分たちのここぞってタイミングで9mmと出会えるまで、この旅を続けていきたいと思います」
残すところも1曲、寺口宣明(g/vo)はこの日に込めた思いをこんな一声で言い表した。ストーリーの魔法を借りることなく、ありのままの己で対抗していけるという野心と自負。そう、この夜のIvy to Fraudulent Gameはどこまでも人間くさく、真っ直ぐだった。
例えば、アンプ上のネオンライトと深紅の照明に彩られた1曲目「無色の声帯」。言葉の立ち上がりをひっかけるようにエッジを効かせた寺口の発声は、はち切れんばかりに頭をぶん回すカワイリョウタロウ(b)のゴリッとしたピッキングや、スパーンと破裂する福島由也(ds)のスネアと競い合い、一語ごとに太く、重たくなっていく。あるいは、砂嵐を想起させるノイズから突入した「BADBYE」もそう。リムショットとバスドラムが形成するビート上で、心臓に手を当てて紡がれた歌は過度に整形されることなく、別れの苦しみを振り切るように次第に荒々しさを増していく。
と、ここで見逃せないのは、そもそもIvy to Fraudulent Gameというバンドが、ジャケットに身を包んだ風貌が物語る通り、スタイリッシュで洗練されたスタイルの集団だったことではないか。
<黒い海を白む夜が 鮮やかな青に染める>と記した「she see sea」に顕著なように、彼らは奥底で静かに燃え上がる青い炎を、冷徹で不条理な現実へ逆らっていく意思を、変拍子や甘美なアルペジオを用いることで描出してきた。スキルフルな演奏を緻密に組み上げ、生まれて死にゆく世界の不条理を睨み、時に受け入れてきた。
しかし、「もっと楽しもうぜ!」「渋谷、調子どうだい!」と誘った「オートクチュール」で「歌詞忘れちゃった!」と明け透けに言い放ち、「日本一読みにくいバンド同士の対バンだと思います。なんと……どっちも19文字でした!」なんて笑いをかっさらう3人の様子は、何ともお茶目ではないか。結成15周年に添えて、セルフタイトルアルバム『Ivy to Fraudulent Game』を世へ放ち、16年目を迎えた今、結成当時のデモCDにインスパイアされた会場限定版『eff』をリリースする彼らは、単なる里帰りを超え「Ivy to Fraudulent Gameの核とは何か?」という問いを見直したのだろう。その結果が、他でもない自分の言葉として全体重を1節に込める寺口の歌声であり、破顔する3人の表情であり、冒頭に記したMCなのだ。
スタジアムロック直系のアンセミックな「FACTION」では、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)を招き、「コラボできると思ってなかった」と喜びを露わにする一幕も。だが、何よりグッときたのは「FACTION」を導いたナンバーが「青写真」だったこと。
「9mmと対バンできるなんて夢みたいです」と投下されたこの曲は、<背徳感というアラームで 目覚めるこの夜に 青写真が浸されていく>と鈍化していく初期衝動と未来を記した手記だったはず。しかし彼らは、それでも歩みを重ね、憧れを現実へたぐり寄せてきたのだ。向かい合って喉を鳴らし、両の手を広げてシンガロングを受け止めるふたりのボーカルを見て、そう思った。
9mm Parabellum Bullet
「9mm Parabellum Bulletです。こんばんは」と手短な挨拶から、いきなり打ち込まれたオープニングナンバーは「Baby, Please Burn Out」だ。椅子ごとバウンスするほどに全身をしならせる滝 善充(g/ds/cho)がぶっ叩くビートは、<完全燃焼 一片の悔いも残すなよ 愛の他に>という1節を代弁し、「とにかくフルスイングで飛び込んでこいよ!」とでも言うような漢気を示していく。続く「踊る星屑」も根底に流れるメッセージは同様で、スカのエキスを垂らしたリズムを下地にしながら、客席を揺らすこと、揺らすこと。
こうして愛と踊りをバンド哲学に据えてきた彼らの原動力を露わにしてくれたのが、雪崩れ込んだ「名もなきヒーロー」だ。
先に記した2つのピースが<また明日 生きのびて会いましょう>という切実たるリリックを実現するための最重要項目であることは言うまでもないはず。そして、このメッセージは、寺口がステージを降りる直前に言い放った「また音楽を持ってきますので、ぜひ音楽を理由に会ってください」というMCとも共鳴しているし、さらに言えば「私たちの喜び」を意味するタイトルが掲げられた今夜そのものとも結ばれている。つまり、この場に集ったすべての人が抱いていた、最もプリミティブな願いを打ち抜いていたと言っても過言ではない。
そうした普遍的な想いを体現せんと思案を巡らしているからこそ、表出するアプローチは頭から足先まで王道に王道を往くものばかり。長ランに袖を通した応援団を想像させる三三七拍子からスタートする「Cold Edge」だって、あらゆる場所に配された歌謡曲のエッセンスを混ぜ込んだメロディーだって、DNAに刻まれた踊りの細胞を刺激してくる。さらに、ライブ用として滝が録り直したギターをスピーカーからこれでもかというほどの爆音で流しつつ、3人のアンサンブルと合体させていく、いわば菅原卓郎(vo/g)と中村和彦(b)、滝 善充(g)、滝 善充(ds/cho)という編成も、この快楽中枢へのアタックに一役買っていた。同じ人間がかき鳴らし、叩いているのだから、当然個々が保有している固有のリズム感覚は100パーセントの合致を果たし、休符として楽譜にさえ点描されない小さなブレスまでをシンクロさせていく。
そのひとつの極地とも言えるのが、折り返し地点で披露された新曲「レーゾン・デートル」だ。
詳細な言語化をほっぽって「これぞ、9mmだ!」とあえて言いたくなるほどのリフから滑り出すこの曲は、一切の回り道をせずに一点突破していく気概が滲み出す、これまた潔いナンバー。しかし、考えてみれば、彼らは今年1月に新体制としての活動を始めたばかり。少しばかりスッキリとした舞台を寂しがることなく、険しい道だろうとも何食わぬ顔をして前へと進んでいく。こんな覚悟が、早くもパッケージングされている事実が喜ばしい。
「次やろうとしてる曲は短いから、カメラに頼らずに、目をクワっと開いて、心の良い場所へストレージしてください」と披露した「インフェルノ」からは怒涛のクライマックスへ。「いけるかー!」と菅原がガッツポーズを掲げた「The Revolutionary」、「どんなもんだ!」とでもフロアを見つめる中村に「任せときなよ!」と伝える大熱唱がぶつかっていった「ハートに火をつけて」、深い藍に会場が着色される中、滝の一発目に歓声が上がったトドメの「Punishment」。20年以上走り続けてきた楽団が、このタイミングでのドラスティックな変化を経て、土壌を固め直すと同時に、初めてスタジオに入った瞬間に負けない笑みを浮かべていたこと。バンドという生き物の面白さを確かめていたのは、どうやらIvy to Fraudulent Gameだけではなかったよう。
その意味で、両者が相見えるのは必然だったのかもしれない。
『Our Delight』
2026年6月5日 東京・渋谷CLUB QUATTRO
出演:9mm Parabellum Bullet / Ivy to Fraudulent Game
◼︎9mm Parabellum Bullet
オフィシャルサイト
https://9mm.jp/
チケット情報はこちら
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=5C160072(https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=5C160072&afid=P66)
◼︎Ivy to Fraudulent Game
オフィシャルサイト
http://www.ivytofraudulentgame.com/
チケット情報はこちら
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=C5240006(https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=C5240006&afid=P66)