くらし情報『“見果てぬ夢”の魂を込めた姿であった。 演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『ラ・マンチャの男』』

2023年4月21日 17:00

“見果てぬ夢”の魂を込めた姿であった。 演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『ラ・マンチャの男』

ミュージカル『ラ・マンチャの男』より、セルバンテス/ドン・キホーテを演じる松本白鸚 写真提供/東宝演劇部

写真提供/東宝演劇部



松本白鸚の心意気を見た思いだった。

26歳の時から挑み続け80歳の今もなお傑作ミュージカルのドン・キホーテを演じる舞台に立った。その初日。主題である“見果てぬ夢”の魂を込めた姿であった。

歌舞伎俳優白鸚の真骨頂の究極の演技でもあった。それは一体となった心・技・体にある。ファイナル公演と銘打たれ、歌舞伎で言う一世一代、役収めに当たる。演出を兼ねた白鸚は装置・美術を大胆に変更し、それに伴った演出・演技も工夫し尽くした。
「体」への対応なのだった。

最初に登場した牢に向かう場面。見慣れた観客は驚いただろう。急傾斜の長く高く伸びる梯子は、舞台とほぼ平行、平坦に変わっていた。風車に突撃する芝居は槍を投げつける形となった。荒くれ連中との格闘、鏡の騎士との闘いは相手の動きをかわす立ち回り。その手があったのか。サンチョの駒田一が終始、背後から黒子のように支えた。
歌舞伎の手法を取り入れたのである。

“見果てぬ夢”の魂を込めた姿であった。 演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『ラ・マンチャの男』

左から)セルバンテス/ドン・キホーテ役・松本白鸚、サンチョ役・駒田一写真提供/東宝演劇部
加齢とともに身体は変化が現れ、衰える。白鸚は、しかし、動作を抑えながらも身体の軸は直立していた。

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