名古屋発スリーピースバンド・HONESTインタビュー「新しい要素を詰め込んだ挑戦の1枚」1stミニアルバムで示したバンドの美学とは
Photo:高木龍仁
Text:横堀つばさPhoto:高木龍仁
PIZZA OF DEATH RECORDS所属、名古屋発のスリーピースバンド・HONESTより、1stミニアルバム『Never Wanna Come Back Home』が届いた。表題の通り、家を飛び出したという樋口浩太郎(g/vo)の市井に対するフラストレーションと音楽への誠実な態度が凝固した今作は、過去2枚のアルバム以上に赤裸々で、樋口の、そしてHONESTの本心を曇りなく体現している。「自分らしさ」に迷っていた数年を経て、ようやくつかみ取った「俺は他でもない俺自身だ」という確かな実感。「CREATE NEW VALUES」を掲げ、「HONESTというジャンルの創造」に取り組んできた3人は、Ken YokoyamaやHEY-SMITHらとの共演を経て、次なる旗手としての自覚を抱き始めたようだ。その覚悟と自信、バンドの美学を聞いた。
── HONESTの皆さんは「HONESTというジャンルをつくること」を大切にしながら、ポップパンクやハードコア、メロディックパンクを吸収した音楽を鳴らしてきたと思うんです。それを前提に、HONESTというジャンルを分解すると、どのような要素が出てくると考えていますか?
樋口浩太郎(g/vo)The Story So FarやKnuckle Puck、Neck Deepみたいなポップパンク、TURNSTILEやDRUG CHURCHのようなハードコア、CITIZENやAngel Du$tといったクリエイティブなロックバンドだったりが、HONESTの音楽に絡んでいると思っています。そこにプラスして、俺らが小さい頃から聴いてきたJ-POPの要素が混ざることで、HONESTの独特な音楽ができているのかなと。
樋口浩太郎(g/vo)
── 1stアルバム『HONEST』のときはHi-STANDARDをはじめとするバンドからの影響がハッキリと表れていたと思うんですが、HONESTを構成する要素が作品を経る度に増えている気がしていて。聴いている音楽自体の幅が広がったことで、アウトプットも変わってきているのでしょうか?
樋口聴いている音楽自体はそこまで変わってないんですけど、1stアルバムのときは日本のバンドをすごく聴いていたので、いわゆる初期衝動的な作品になっていたんですよ。でも、アメリカに留学して現地のライブハウスに通う中で、見ている世界が広がって。今回のミニアルバムで、その広がった世界を落とし込むことができた気がしています。
夏目拓実(ds)確かに、1枚目は「これぞ、メロディック!」って感じの作品だったので、ドラムのパターンも基本に忠実なフレーズが多かったんです。でも、2枚目からは「このジャンルなら、こうしなくちゃいけない」みたいなルールに囚われず、魅力を感じるリズムパターンをどんどん取り入れられていますね。それこそ、今作は手数に頼るんじゃなくて、シンプルなフレーズにこだわることもできましたし。
岸田奈央人(b/cho)去年、僕がHONESTに加入する前は、ふたりが言ってくれたみたいにミドルテンポの楽曲よりもやっぱりメロディックのイメージが強かったんです。
でも、樋口は機材車の中でも「俺たちのこの歌は、この曲にインスパイアされたんだよ」と教えてくれるくらい、音楽に詳しくて。だから最近は、樋口が聴いてきた色んな音楽をどんどん表現していこうとしています。
岸田奈央人(b/cho)
── それこそ、岸田さんが加入して1年以上が経過しましたが、この体制になってどのような変化があったのでしょう?
樋口フロアも含めて、バンドとしての在り方というか、考え方が変わり始めました。というのも、俺らは「この曲はこうやってノってほしい」みたいな脚本のあるステージではなく、「好きにやっていこう」というスタンスを取っていて。その考え方が定着してきたからこそ、お客さんにも俺らにも緩やかな一体感が生まれてきたんじゃないかな。
── 言っていただいた通り、HONESTのステージは、文字通りのフリーダムを体現している印象です。
樋口そうですね。ステージに立つ度に「もっとこういうバンドになりたい」「次はこんなライブをしてみたい」と思うことが増えて。
そういう意味では楽しいだけじゃなく、バンドマンとして、お客さんにチケット代を払ってもらっている価値を考えるようになりました。
── 舞台に立つことの重みを、強く感じるようになったと。樋口バンドとしての美学が出来上がってきたんです。お客さんや音楽に対して不誠実な人間にはなりたくないし、売れるための音楽じゃなくて、純粋に好きな音楽を書いてみんなを認めさせたい。「これはダサいな」と思うことが増えて、その分好きなバンドも増えた。目指したい方向が明確になってきましたね。
── 樋口さんはどういった姿勢にダサさを感じ、どうあるべきだと思っているんですか?
樋口ルーツが分からないというか、お客さんを盛り上げるための手段としてスカや2ビートを使うことは、音楽に対して失礼な気がしていて。例えば、スカを取り入れるなら、SublimeやLess Than Jakeを知っているべきだと思うし、知っているかどうかは作品を聴けば一発で分かるじゃないですか。
「音楽が好き」と言っている人間として、そこを疎かにするのは格好悪いなと。だからこそ、自分たちはリスペクトを持ってやっていきたいなっていう。
── なるほど。では、ここからは5月27日にリリースされた1stミニアルバム『Never Wanna Come Back Home』について聞かせてください。先程夏目さんからもあった通り、これまでよりミニマムなアンサンブルであるにもかかわらず、太い軸が通ったリッチな1枚だと感じています。このアルバムを振り返って、どのような作品になったと感じていらっしゃいますか?
樋口音楽そのものも人生経験も豊かになったというか、全体を通じて大人っぽくなった気がしています。お客さんが求めるものと、自分たちがやりたいものというふたつの軸があるとしたら、このミニアルバムでHONESTは後者を選んでいくことにしたのかなと。
── そのやりたい方向性というのは、2ビートを多用せず、ゆったりとしたテンポで揺らしていく、みたいなこと?
樋口というよりは、音楽を大事にして、ブレない美学を持った音楽にすることですかね。
あとは、表現できる感情の幅も大きくしたかった。1stと2ndの曲を織り交ぜてきたこれまでは、なかなか悲しさを表現できていなかったんですよ。でも、このミニアルバムはナイーブな曲が多いので、俺のネガティブな部分まで伝えられるようになったんです。
夏目樋口が言ってくれた通り、今作は悲しさや怒りといった感情が前面に表れた1枚で。一方で、音楽的にはシンプルなドラムでありながらも、変拍子を取り入れたり、単音のギターが鳴っているパートがあったりと、随所に新しい要素があるんですよね。そういう意味では、これまでやってこなかったことをたくさん詰め込んだ挑戦の1枚でもあるなって。
夏目拓実(ds)
── 夏目さんにとっては、「シンプルなドラム」が今作のキーワードだったかと思うのですが、そうしたプレイスタイルになっていった背景は何だったのでしょう?
夏目もともとそういうフレーズが好きなのもあるんですけど、ハイパーポップのような、ビートを積み上げていく音楽を聴くようになったんですよね。ワンフレーズを重ねたり、少ないパターンで曲をつくり上げるやり方は、そこからの影響が大きいかもしれない。
── よく分かりました。岸田さんは今作を振り返っていかがですか?
岸田アルバムを通して聴いたときに、すっげぇまとまりのある1枚になったと思っていて。速い曲もミドルテンポの曲もバランス良く置かれているし、何よりもメロディが良い。どの曲でもグッドメロディが耳の中に入ってくるからこそ、何時間でも聴ける作品になったんじゃないかなと。
── HONESTのグッドメロディを具体的に言語化するなら、どういったポイントがあると思いますか?
岸田うわぁ……なんだろうな。
樋口奈央人は語彙力がないので、俺から話しますね(笑)。感覚的に書いている部分が大きいので完璧に説明するのは難しいんですけど、夜に聴いたり歌いたくなるような、なおかつ心がちょっとキュンとするようなメロディがHONESTの良さだと思っています。生活にずっと寄り添っていけるような音楽というか、シンプルだけど隅々までこだわりが詰まっているもの。
NIKEやアディダスのロゴみたいに、凝ったデザインじゃないのに記憶に残り続けるようなメロディをずっと目指していますね。
── ゴテゴテとしすぎないチャーミングな旋律が理想だと。先程「赤裸々な1枚になった」というお話もありましたが、『Home』をはじめ、樋口さんのフラストレーションや怒りを露わにするリリックが多くなっていった要因を教えてください。
樋口『Going Growing』のツアー前に、色々あって家を出ることになったんですよ。そこから車中泊を経て、今は叔父さんの家に住まわせてもらっていて。周囲から見ればバッドに思える話ですけど、こういう経験があったことで自分と向き合うキッカケができたんです。で、この出来事を消化する方法を考えたときに、やっぱり俺にとっては音楽しかなかった。あと、些細なことで言い争うような雰囲気が、世の中全体に漂っているじゃないですか。
── そうですね。SNSを見れば、誰かが誰かを叩いている。
樋口そう。音楽でさえ「このバンドはダサい」「このノリ方はダサい」みたいな喧嘩ばかりで、「自分が1番正しいんだ」っていう人を見かけることばかりで。そこに対する「何でだろう」という気持ちも詰まっています。
──「Minority」を一例に、そもそも樋口さんは同調圧力や疎外感を歌にしてきたと思うんです。その上で、疑問をぶつけたり、むなしさを滲ませたりする歌詞が増えていった理由は、違和感を感じるタイミングが多くなったからなんですか?それとも、感じたフラストレーションを言語化できるようになってきたイメージ?
樋口あぁ……どうなんだろう。後者かもしれないですね。これまでは「この人が好きだ」とか、「この歌が好きだ」とか、ちょっとした気持ちを書きたかったんですよ。でも、過去の作品を通じて、どうしても言いたかったことを吐ききって。「じゃあ、今自分が書きたいものって何なんだろう」と考えたときに、周囲に対して思っていることを自分の口で伝えられるようになったのかもしれません。
── 本当に歌にしたいものを考え直したからこそ、〈I should get back to myself on this holiday〉と書き出す「Take It Easy」のように、随所で「自分らしさを取り戻すんだ」という決意が歌われているのだと感じました。
樋口ここ数年は、周囲から「こうした方がいい」「ああした方がいい」とすごく言われる時期だったんです。AさんとBさんの意見はまったく違うし、かと思っていたらCさんが第3の意見を伝えてくるしで、何を信じていいか分からなくなってしまって。その結果、結局1番大事なのは、色んな人の意見を聞いた上で自分の答えを持つことだと思ったんですよね。社会人からしてみれば当然のことかもしれないけれど、「あぁ、こういうことなんだ」ってようやく腑に落ちたというか。『Going Growing』のツアー中にそういう気づきがあって、今回から「自分らしくありたい」みたいな感情を書けるようになった気がしています。──「自分は自分でいいんだ」と思えたキッカケは何だったのでしょう?
樋口良い曲を書き続けた結果、HEY-SMITHやHi-STANDARDに届いたことが大きかったですね。周囲のアドバイスを鵜呑みにするんじゃなくて、俺自身が良いと思える曲を書き、会いたい人に会いに行けば、自ずと見たい景色を掴めると思えた。もちろん必死にやらないといけないですけど、このままやりたいことを突き詰めて良いんだなって。
── さて、6月27日(土)よりこのミニアルバムを携えた全国ツアーがスタートします。全14カ所を巡る旅路となりますが、どのようなツアーにしたいですか?
夏目今回のツアーは「このバンドを呼ぶんだ!?」と思ってもらえるゲストバンドが出てくれますし、ツーマンやスリーマンで固めている分、これまで以上に満足感のあるライブを届けられると思っていて。3枚の作品がリリースされた今だからこそできるステージを楽しみにしていただけたらうれしいです。
岸田お客さんと一緒に、このミニアルバムの曲を鍛え上げていきたいと思っています。どういうフロアをつくっていくのかを模索しながら、「俺らのライブはこれだ」っていうのを突き詰めていきたい。そのためにも、初めてのワンマンとなる初日を大切にしていきたいですね。
樋口俺らはこれまで「CREATE NEW VALUES」を掲げてきたんですけど、最近Ken Band(Ken Yokoyama)とツアーを回る中で、やっぱりシーンをつくっていかなきゃいけないなと思うようになって。これまではハッキリと言えなかったんですけど、先人たちに「俺たちはもっと面白いことができるよ」って見せたいし、それを実現するための仲間を見つけていきたい。ジャンルも年齢も関係なく、同じ景色を見るために、互いに強くなれる。そういう仲間づくりのツアーになったら良いなと思います。
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<リリース情報>
1stミニアルバム
『Never Wanna Come Back Home』
発売中
2,200円(税込)
【収録曲】
1. Home
2. Take My Life Back
3. Edge
4. Take It Easy
5. Symmetry(Title Fight cover)
6. STFU
▼購入・配信リンク
https://honest-jp.lnk.to/NWCBH
<ツアー情報>
HONEST『Never Wanna Come Back Home Tour』
6月27日(土) 愛知・上前津 Club Zion
※ONE MAN
7月3日(金) 静岡・UMBER
ゲスト:See You Smile / UNMASK aLIVE
7月5日(日) 広島・ALMIGHTY
ゲスト:See You Smile / UNMASK aLIVE
7月11日(土) 香川・高松sound spaceRIZIN’
ゲスト:EGG BRAIN / WET DREAM
7月12日(日) 兵庫・神戸music zoo太陽と虎
ゲスト:FIVE STATE DRIVE / MACVES
7月25日(土) 宮城・仙台enn 3rd
ゲスト:Good Grief / 鉄風東京
7月26日(日) 栃木・宇都宮HELLO DOLLY
ゲスト:RAINCOVER / ジ・エンプティ
8月1日(土) 福岡・Queblick
ゲスト:後日発表
8月2日(日) 岡山・CRAZY MAMA 2nd Room
ゲスト:後日発表
8月11日(火) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA
ゲスト:後日発表
8月23日(日) 岐阜・柳ヶ瀬ants
ゲスト:後日発表
8月29日(土) 愛知・名古屋RAD HALL
ゲスト:後日発表
9月4日(金) 大阪・心斎橋Live House ANIMA
ゲスト:後日発表
10月7日(水) 東京・新代田FEVER
ゲスト:後日発表
【チケット情報】
▼スタンディング:3,500円(税込/ドリンク代別)
https://w.pia.jp/t/honest-nwcbh/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2608773&afid=P66)
▼特設サイト
https://www.pizzaofdeath.com/honest1stmini/
HONEST オフィシャルサイト
https://honest1617.ryzm.jp/
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