『碁盤斬り』白石和彌監督インタビュー。目指したのは「荒々しさよりも美しさ」
冤罪に巻き込まれ、事件に巻き込まれ、娘の想いを抱えたまま復讐の旅を続ける。そこで生まれる格之進の想いや漏れ出てくる危うさが本作の最大の魅力だ。
「小林正樹監督の『切腹』とか『上意討ち 拝領妻始末』が本当に面白くて、不条理の中に美しさがある。だからこの映画でも、不条理の中で“のたうちまわる”人間を撮りたい、という想いが根本にありました」
ポイントは“美しさ”だ。本作では苛烈な場面や、緊張感が増す場面でも圧倒的に美しい。それは“美しい自然”の種類ではなく、セットを建て、照明をあて、レンズを通して描き出される“映画的な美しさ”だ。
そこで撮影監督の福本淳、美術監督の今村力、照明の市川徳充ら『凪待ち』でもタッグを組んだスタッフが集められ、京都撮影所で撮影が行われた。
「京都で撮影するので、一緒に同じものを見て、一緒に悩んでくれる人が必要だと思ったので、同じく京都撮影所が初めての福本さんにお願いしました。
この映画ではとにかく美しく撮りたかったんですけど、福本さんはそういう腕を持っている方です。あと、市川徳充さんのライティングが時代劇になったときにどうなるのかも、すごく興味がありました。“リアルで美しい時代劇が撮りたいです”というオーダーでライティングをしてもらいました。