全員60歳! 1966年生まれが大集結した『ROOTS66』 「日本印度化計画」から「夏色のナンシー」までヒット曲オンパレードの伝説すぎる東京公演をレポート!
Text:川上きくえPhoto:半田安政
まるで夢のようなひとときだった。1966年生まれのアーティストが集結したスペシャルライブ『ROOTS66 -New Beginning 60-』がついに開催。10年前にも東京、大阪、仙台で行われ、当時50歳とは思えないパワフルなステージを披露したイベントだったのだが、今回の初日である東京ガーデンシアター公演は、さらに盛大かつ白熱したライブとなった。
あれから10年経つわけで、今回は出演者全員が60歳。とはいえ“還暦”という概念を蹴散らすようなエネルギッシュな演奏と、聴き手の芯を貫く圧倒的なボーかリゼーションに、何度も息を呑んだ。でも、何より胸を打ったのは、およそ40年に渡る彼らの軌跡と、止まることなく時代を彩り続けてきたアーティストならではの重厚な現役感だった。その上で大ヒットナンバーや長年愛され続ける名曲が、180分ひっきりなしに続いたわけだ。これはもう、出される皿のすべてがメインディッシュのコース料理という感じ。
各曲のボーカルをつとめる“ROOTS66 GREAT SINGERS”を迎えるのは、“ROOTS66 ULTRA BAND”と銘打った老舗プレイヤーたち。友森昭一(g)、福島忍(勝手にしやがれ/tb)、たちばなテツヤ(SPARKS GO GO、THE PRIMALS/ds)、奥野真哉(SOUL FLOWER UNION/key)、木暮晋也(HICKSVILLE/g)、tatsu(レピッシュ/b)、谷中 敦(東京スカパラダイスオーケストラ / b.sax)などなど、屈強のバンドマンがときに華やかに、ときに骨太にサウンドを提供していく。
ライブはオープニングの「太陽にほえろ」のテーマに続き、真っ赤な革ジャンを身に纏った宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))が登場。第一声で観客のテンションを爆上がりさせる「START」から、赤いツナギでガナリまくる大槻ケンヂ(筋肉少女帯)の「日本印度化計画」など、各シンガーひとりずつが持ち曲を歌っていった。ここでは全曲を記したい衝動を抑えて紹介していくが、近年のSNSリールでリバイバルヒットした田島貴男(Original Love)の「接吻 kiss」、今やテレビで誰かが流儀を語るときの必須ナンバーとなったスガシカオの「Progress」など、イントロが鳴るだけで足元が揺れるような大歓声が沸き上がる。同年代の中でアイドルから女優への転身を最も華麗に実現した斉藤由貴、1990年代前後の音楽シーンを席巻したガールズポップの一人者・永井真理子の登場も、客席の男女問わず絶大な歓迎を受けた。特に、女性アーティストたちの当時と変わらない透明感には驚かされる。キラキラしたスパンコールのボディコンを着こなす早見優と、ツインだんごヘアにニーハイブーツが似合いすぎる永井真理子……なんかもう、崇高で拝みたくなるレベル。
この日の進行役は、怒髪天の増子直純。「もう次の曲から、2万枚以上売れた曲は禁止です。ヒット曲が多すぎる!」と言いながら、10年前の公演からひとりも欠けないどころか人数が増えていることをみんなで喜び合う。同い年がこれだけ揃うとトークも止まらず時間が押してしまうということで、ステージにはウルトラマンのカラータイマーが用意されていた(ギリギリ鳴ることはなかったけど)。そして中盤は、およそこれまで交わることのなかったアーティスト同士による、希少なコラボ・セクションへ。斉藤由貴とトータス松本(ウルフルズ)による「夢の中へ」と「I Can’t Turn You Loose」のミックスナンバーでは、トータス松本が放つ野性的なソウルと斉藤由貴に潜む井上陽水イズムが交差し、唯一無二のグルーヴを紡ぎ出す。斉藤和義のギターにあわせて歌う伊藤ふみお(KEMURI)の「Ato-Ichinen」も、宮田和弥、八熊真一(SPARKS GO GO)、永井真理子、斉藤由貴で歌うBO GUNBSの「夢の中」も、まったく違う曲の速さでありながら同じ熱量のパッションを感じさせた。斉藤由貴と宮田和弥が並んでBO GUNBSを歌う。
30年前、そんな未来があろうとは誰も想像していなかっただろう。
コラボコーナーの合間には、大槻ケンヂと増子直純によるラジオ、MC風トークが放送される。その間には、今年でテレビ放送60周年を迎えるウルトラマンが登場し、バルタン星人と戦闘を繰り広げるシーンも。トークの内容は世の中のフェイクについて考え、「食べてすぐ寝たら牛になる」などの言い伝えにツッコみをいれるというもの。そこでふたりは、“丙午に生まれた女性は夫の命を縮める”という言い伝えがある中で、66年生まれの自分たちはフェイクを信じなかった親から生まれたのだと言っていた。なるほど確かにそうで、ROOTS66のメンバーはそんな芯の強さを持つ親から生まれたからこそ、デビューからこれまで、音楽の聴き方や流行りの変化という激動の時代を潜り抜けてここに集まっているのだ。
再開したライブの一曲目に斉藤和義、宮田和弥、中川敬(SOUL FLOWER UNION)がスタンドマイクを並べて歌った「イマジン」は、忌野清志郎作詞による日本語バージョン。<夢かもしれないでもその夢を見てるのはきみ一人じゃない仲間がいるのさ>というフレーズは、音楽を信じ続けてきた者同士の強い絆を感じさせた。
吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)と田島貴男による「Space Oddity」、ABEDON(UNICORN)、渡辺美里、大槻ケンジによる「アルカセ」など、豪華な組み合わせはまだまだ続く。そんなコラボで特筆すべきは数あるけれど、ことのほか満喫していたのが吉井和哉だろう。例えば八熊真一を紹介するときには「『SPARK』という曲は彼のバンド名から刺激を受けてつけました!」と告白したり、早見優、大槻ケンジとともに「夏色のナンシー」を歌うときには、10代の頃からの大ファンでプロデューサーにコラボを志願したことを明かしたり。歌いながら隣に並んだ早見優を指さし、「本物!」と叫ぶその目は、少年のようにキラキラしていた。
ライブの後半には、これまた同じ年生まれの川上麻衣子、今田耕司、立川談春、鈴木保奈美らによるショート・ムービーも上映。ともに歩んだ青春を懐かしみ、新たな未来へ向かう甘酸っぱい物語に少しほっこりする。そんなムービーに続く渡辺美里と増子直純の「My Revolution」は、発売当時とはまた違った説得力を持って響いた。また、田島貴男とスガシカオが歌う「月の裏で会いましょう」では、スガシカオがデビュー前にオリジナルラブのライブを観に行き客席で歌ってたというエピソードも。
「アンコールで赤いソファが出てきて、田島くんワイングラス持っててさ」という証言に、「はははは!そういうの打ち合わせなしに言うのやめてくれる?」と慌てる場面も。ふたりが生み出すファンクのリズムが、場内にとろみがかった熱い空気を生んでいく。
そしてステージに全員集合した状態で歌うトータス松本(ウルフルズ)の「ガッツだぜ!!」、斉藤和義の「歩いて帰ろう」、増子直純の「オトナノススメ」など、アップテンポな曲でさらに客席全体を揺らしていく。本編ラストでは全員に白いハットが配られ、全員でジュリーになりきる。あまりにも似合いすぎる吉井和哉に「カッコいいの禁止だから!」と叫ぶ増子。一番似合うからモノマネで曲紹介をしろという無茶ぶりに、素直に応じる吉井の曲振りで「勝手にしやがれ」の大合唱となった。
男性陣の呼び込みに続き、ゲストにウルトラマン、川上麻衣子、鈴木保奈美も登場。大槻が「楽屋でたい焼き食べてたらおふたりが入ってこられてさぁ!」と言っているあたり、出演者にとってもサプライズだったようだ。ステージのあちこちで共演者同士でキャッキャしてたり、すでにステージ上は学校の放課後みたいな空気が漂っている。そんなキラキラした時間を飾るラストは、「また逢う日まで」を出演者全員で歌って終演となった。
単なる「同い年の同窓会」でも、予定調和の「懐メロ・歌謡祭」でもなく、音楽への尽きない渇望を胸に、まっすぐ泥臭く歩んできた強者たちの集いである『ROOTS66』。誰もが唸るような待望の共演から、異種格闘技戦さながらのセッションまで、一秒たりとも瞬きを許さない濃密な時間だった。次は10年後……?いやいや、3~5年年周期での再臨を切に願う!
<公演概要>
『ROOTS66 -NEW BEGINNING 60- supported by tabiwa』
3月20日(金・祝) 東京ガーデンシアター
出演アーティスト ※誕生日順
◼︎ROOTS66 GREAT SINGERS
宮田和弥(JUN SKY WALKER(S) )/ 大槻ケンヂ(筋肉少女帯/特撮)/ 中川 敬(SOUL FLOWER UNION)/ 増子直純(怒髪天)/ 田島貴男(Original Love)/ 斉藤和義 / 渡辺美里 / スガ シカオ / ABEDON(UNICORN)/ 伊藤ふみお(KEMURI)/早見 優 / 斉藤由貴 / 吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)/ 八熊慎一(SPARKS GO GO)/ 永井真理子 / トータス松本(ウルフルズ)
◼︎ROOTS66 ULTRA BAND
友森昭一(g)/ 福島 忍(勝手にしやがれ/tb)/ 田中邦和(Sembello/sax)/ 塩谷 哲(pf)/ 阿部耕作(ds)/ 坂詰克彦(怒髪天/ds)/ 沖 祐市(東京スカパラダイスオーケストラ/key)/ ナカジマノブ(人間椅子/ds)/ たちばなテツヤ(SPARKS GO GO/ds)/ 奥野真哉(SOUL FLOWER UNION/key)/ 田中 和(勝手にしやがれ/tp)/ 木暮晋也(HICKSVILLE/g)/ 谷中 敦(東京スカパラダイスオーケストラ/b.sax)
◼︎GUEST MUSICIAN
tatsu(レピッシュ)※1967年2月生まれ