火事のシーンもAIで… テレビ業界で活用の動き テレ東、再現VTR&ドラマで利用 その理由を聞いた
5月15日放送『刑事、ふりだしに戻る』第4話より。AIを活用してビニールハウスを燃えている様子を表現した(C)「刑事、ふりだしに戻る」製作委員会
社会で急速に浸透している人工知能(AI)。テレビ業界でも活用する動きが広がっている。テレビ東京ではニュースの原稿読みやバラエティー番組の再現VTRのほか、ドラマの撮影でも活用している。同局はオリコンニュースの取材に対し、AIを利用する理由について、新たな視聴体験の創出や制作現場の労力軽減を挙げた。
暗闇の中、ビニールシートが真っ赤な炎とともに燃え上がり、屋根も燃え落ちた。5月15日に放送された同局のドラマ『刑事、ふりだしに戻る』の第4話。連続放火事件の火災のシーンで、この様子がお茶の間に流れた。場面写真でもリアルに燃えているように見えるが、これはAIで作られたものだ。
同局によると、燃えていないビニールハウスと、オレンジ色の照明を当てた人物を撮影し、その先はAIで加工して制作したという。同様に4月17日放送の第1話でも、現場では駐車場の景色だけを撮影して、猫をAIで生成。あくびをしたり、銃の音に驚いて逃げ出したりという動きもつけて放送した。
同局が番組でAIの活用を始めたのは2024年10月ごろからだという。まずはイメージ画像の作成などから始まり、現在では、番組の再現VTRの作成や企画段階でのアイデア考案にも活用している。ドラマでは生成AIを活用して作るシーンも増えたといい、『刑事、ふりだしに戻る』でも番組の最後に「このドラマはフィクションです」というテロップのほかに「映像に一部、生成AIを使用しています」との注釈が入っていた。
経済報道番組『WBS(ワールドビジネスサテライト)』では、今年の4月から「ワールドQUICK」というコーナーで、AIアナウンサーの活用を開始。使用の際には「※AIによる自動音声でお伝えします」というテロップ表記を入れている。
AIのトレンドとテレビ局の情報力を掛け合わせた、独自のコンテンツを提供することを目的に、YouTubeチャンネル「テレ東AIアカデミー」も開設。バラエティー感覚を楽しみながらAIの魅力に触れる企画も行っている。
AIの活用を始めた理由として、同局は取材に「新しい視聴体験・魅力的なコンテンツの創出」「制作現場の労力軽減・業務効率化」の2点を挙げた。「『AIを使わないこと(時代に遅れること)のリスク』を強く意識しています。AIによって誰もがプロ並みの映像を容易に扱える時代において、テレビ局も新しい表現を取り入れ続けなければ視聴者を惹きつけることはできないという危機感があります」と強調した。
さらに「同時に、ニュース番組の字幕自動生成、スポーツ番組のハイライト動画切り出し、放送内容の考査強化など、限られた人員で多くのコンテンツを効率的に生み出すためにもAIを活用しています。これにより、AIで削減できた費用や労力をクリエイティブな作業に集中的に注げる環境作りを目指しています」と説明した。
同局は今後も研修や自社の制度を通して積極的な活用を進める方針。
一方で「テレビ局がAIを使い倒すことによってコンテンツが画一化・没個性化することを懸念しています」とも指摘。自社や他社のIP(知的財産)保護に関して慎重に対応しているとした上で「人間ならではの現場の空気感(一次情報)や『テレ東らしさ』という個性をいかに発揮し、一人ひとりのクリエイティビティを磨き続けられる環境を残すかを重視しています」と説明した。