“あのとき何を考えていた?” 引退後のキャリアを見つめた元アスリートたちの選択
「SPORTS×HUMAN ENGINE」の発表会では、元アスリートの登壇者たちが競技人生の“その先”に向き合った経験を語るトークセッションが行われた。テーマは「自身のキャリア転換機にどのような準備・意識を持っていたか」。競技にすべてを注いできたからこそ、引退や転身のタイミングで揺れ動く葛藤や不安は小さくない。そんな中で何を考え、どのように未来への一歩を踏み出したのか。アスリートならではの視点から、セカンドキャリアに向けたリアルな心境と行動が語られた。
元サッカー日本代表の播戸竜二氏は、自身の引退直前の心境を「日々、自分と向き合いながら悩み続けていた」と振り返る。FC琉球からのオファーを受け、キャリア最後の1年を沖縄でプレーした中で、自らの“これから”を徹底的に考えたという。サッカーと関わり続けるのか、まったく別の道に進むのか。
監督ではなくマネジメント、さらにはJリーグのチェアマンや協会の会長を目指すという明確なビジョンも、その時期に形づくられた。引退後の道を“決め打ち”せず、毎日考え続けた1年間が、結果的に転機となった。
レスリングで五輪金メダルを獲得した登坂絵莉氏は、「女性としてのキャリアと競技の継続、どちらを選ぶか」という人生の分岐点に直面したという。東京五輪を前に引退を選んだ背景には、結婚や出産といった私的な選択が大きく関係していた。教職免許を取得し、教育実習にも参加した彼女は、競技以外でも新たな可能性を探りながら、「伝える」仕事へと歩みを進めていく。児童発達支援士の資格を取得し、現在は子どもと向き合う活動にも注力。スポーツで培った力を、まったく新しいフィールドで活かす姿が印象的だった。
元プロ野球選手の井口資仁氏は、現役生活の最後の年に「今年で引退する」と自ら決意してシーズンに臨んだ。
開幕前から区切りを意識し、夏には正式に引退を発表。その後は予想外のスピードで監督就任が決まり、まさに“現役から指導者”への一足飛びの転身だった。しかしその準備は、ベンチでチームを見つめ続けた最後の数年間で着実に進んでいたのかもしれない。選手の気持ちを理解する者として、再建を託される立場となった井口氏は、その声を聞き続けていた自分だからこそできるチーム作りがあると信じていた。
それぞれ異なる競技・状況にありながら、3人に共通していたのは、キャリア転換期を「自分の意志で選ぶことの大切さ」だった。続けるべきか、やめるべきか。そして次に何を目指すか。誰かに決められるのではなく、自ら考え抜いて選択することで、次のステージへと踏み出していった。
競技生活を終えたあとも、アスリートとしての思考力と行動力は、変わらずその背中を押しているように感じられた。
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