アイラブピンクペッパー【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第9話】
「桃香さん、僕に胡椒かけてくれた」
「はい?」
「じっとしてる僕が、なんか刺激されてピリってなった」
「おもしろいこと言うね、慎ちゃん」
「じゃあ、ピンクペッパーってかわいいから買ってみようかな」
お店のスタッフが「それほど辛くないんですよ。ほのかな香りで、色が美しいので、熱をくわえないで最後のひと振りにしていただくといいですね」
「僕、買う」
「鮎子に買って帰るの?」
「桃香さんに。僕に胡椒かけてくれたから。お礼」
「えー。おもしろすぎ。でもほんとかわいい名前だ。ピンクペッパー。半濁音がふたつはいてって、耳に残るね。
知ってる? お菓子のヒット商品は名前にパピプペポのどれかが入ってるんだよ。愛されやすい音なの。とくにわかーい層にね」
「へえ、よく知ってるね。じゃあ桃香さんの歌にも入れればいい」
「ピンクペッパーの歌かあ」
「アイラブピンクペッパー…」
慎吾が小声で適当なメロディをつけて歌った。
「いけてない!」
桃香が背中を叩く。店員が、「とっても仲良しですね」と笑った。
(続く)
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