図書館友達【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第10話】
別々の大学に進んだためほとんど会うことはない、たまにメールでお互いの存在を示す程度。冬馬は現在、デザイン事務所でパッケージデザインの仕事をしている。朝から晩までデスクワークで運動不足というのもフットサル部結成の理由のひとつだ。
そんなある日、桃香から「冬馬、ゴブサタ! フットサルのチーム持ってるのよね。見学したい子がいるの。連れてっていい?」とLINEが入った。桃香と会っているわけではないが、LINEでゆるくつながっていることで、淡い恋心はとろ火のようにゆらめいていた。「今月は金曜の夜、大崎で練習してる。
連れてきてOK」返事を返しながら、「ひさしぶりに桃香に会うのか…」と嬉しくなっている自分に気づいた。
フットサルの夜間練習の日、桃香がコートにやって来た。袖無しの赤いダウンをはおり、セミロングの髪の毛先がクルっと外巻きで揺れている。チェックのスカートがよく似合う。屋上で歌っていた頃の桃香より少し大人っぽい顔つきになった桃香が冬馬の方に向かって歩いてくる。
冬馬の胸の中で誰かがスキップしているように鼓動が早くなる。桃香の少し後ろを背の高い、高校生のようなあどけない顔をした男がきょろきょろしながら歩いている。左足を少しひきずっている。
(続く)
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