マヨネーズと反抗心【彼氏の顔が覚えられません 第13話】
子豚ちゃんの朝食風景。もひもひ。口の中いっぱいにキャベツサダラを詰め込む。ほっぺたがぱんぱんに膨らんで、見る人によってはこういうの“かわいい”って思うんだろうなって思う。
画像:(c)Paulista - Fotolia.com
「おいしーよ。イズミ、料理得意なんだね」
もぐもぐしながらお行儀悪く、子豚ちゃんは言う。ただ野菜を切って市販のドレッシングをかけただけのサラダを褒めるなんて、よっぽど媚び売りたいの? それともバカなの? と思う。
「お味噌汁も作ったけど、いる?」
尋ねながら、すでに「ほしい」という回答を想定して、立ち上がりかけている。
「あ、ううん、いらない」
と、意外な回答に動きを止める。彼女の方を見ながら「え、いらない?」なんて言ってしまったりする。
「うん…お茶ももらってるし。水分とりすぎたくないの。水膨れしちゃうから」
…。
「そう」
言って、座りながら彼女のセリフを反芻する。お茶ももらってるし、水分とりすぎたくない。ふむ、なるほど。
で、その理由がなに。水膨れしたくないから? 水膨れって。水分取りすぎると、膨れちゃうってこと? 体が? お茶に味噌汁を追加したくらいで、なるもんなのそれは?
いろいろ突っ込みたい気持ちがわいた。でも、口にはしなかった。そもそも、欲しいかどうか訊いたのは自分だ。自分で飲むために作ったもので、彼女に強要するつもりもなかった。いらないならいらないで、べつに問題はない。
「あ、そうだ」
と、思い出したように子豚ちゃんは言う。
「マヨネーズない?」