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時間が止まった瞬間【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第12話】

ウーマンエキサイト
慎吾は神妙な顔つきでうなづいた。そこまで決心ができていない。チラっと桃香の顔を見る。
桃香は目で「がんばれ」と合図する。その様子を見て冬馬はちょっとだけ嫉妬した。帰りの電車の中で桃香は尋ねてみた。



「慎ちゃん、どうだった? 見学してみて。おもしろかった?」



「うん、なんかドキドキした。小学校の時、はじめて体育でサッカーの授業受けたとき思い出して」



「はーん、新鮮だったってことね。よかったじゃん。初心に戻って蹴ってみればいいよ」



慎吾は桃香の嬉しそうな顔を見ているとまだボールとなじめるかどうかわからないことを言い出せない。
電車がカーブを曲がるとき大きく揺れた。倒れそうになった桃香を慎吾が抱きとめた。ギュっという音がきこえるようなできごと。目が合った。慎吾は照れてスっと視線を窓の外にそらした。夜の都会のネオンたちがビュンと過ぎ去る。時間が止まった瞬間を確実にふたりは感じ取った。



「慎ちゃん、来週は私、歌のバイトあるから慎ちゃんひとりで練習に行ってね。
冬馬には頼んどくから」



桃香は照れ隠しに関係ないことをしゃべり始めた。



(続く)

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