恋の色【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第15話】
女同士、話題はどんどん膨らむ。カオル先生のお洋服を見るのが楽しみだ。カオル先生がお手本で歌うとき、桃香は聞き惚れる。きれいなロングヘアをさらさら揺らしながら、メロディに気持ちを込める。桃香の憧れの女性でもあり、おねえさん的存在だ。桃香は発声練習を終えて、課題曲を歌う。
あなたのそばにいると
私は強くなれるから
悲しいことは 小さくちぎって
風に飛ばしましょう…
ピアノのエンディング音が止まるとカオル先生が立ち上がった。
「桃香ちゃん、すっごくよくなってきてる。
歌い方変わってきてるよ。恋したかな?」
今日のカオル先生は、ワインレッドの長い丈のフレアスカートをはいている。
「炎のように燃え上がるオレンジ色の恋。胸の中でしんしんと湧き起こるワインレッドの恋。ピュアな水色の恋。恋も色をイメージすると、納得できる気がしない?」
カオル先生がスカートをつまんで、お姫様のようにターンした。
「カオル先生、今、好きな人がいるんですね?」
桃香が早口で尋ねる。カオル先生はやさしく微笑む。
女神さまのように見えた。
(続く)
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