フォーカスしてゆく心【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第16話】
片付けや水の補給など雑務も嬉しそうにこなす。ボールに触る時は選手の顔になる。走っていると脚の不自由さはそれほどわからない。想像以上に速く走っている。なんだ、心配することないじゃないと桃香の胸につかえていたものがすーっと降りてゆく。
冬馬がベンチに座っている桃香に話しかけてきた。
「桃香も、マネージャーなればいいじゃん。練習にこんだけ付き合ってくれるんだから、仕事もしてくれよ。
スコアつけたりとかさ」
「え? 無理無理。慎ちゃんのおねえさんの鮎子に頼まれたから、たまに慎ちゃんの様子見に来てるだけ。慎ちゃんが慣れたらもう来ないから。私、もっと、歌のレッスン時間欲しいからさ。」
冬馬はいきなりマジ顔になってつぶやいた。
「桃香さ、慎吾のこと、好きなのか?」
(続く)
【恋愛小説『自由が丘恋物語 〜winter version〜』は、毎週月・水・金曜日配信】
目次ページはこちら