尖ってしまった心【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第22話】
「無理? 今まで親身になってくれてたじゃない。私の弟だから無理してやさしくしてくれてたの?」
「ちがうよ。ちがう。慎ちゃんのこと、好きだよ。もっともっと元気になって欲しい」
「ほら、言ってることメチャクチャじゃない。てか、桃香、結婚願望なんか今までなかったじゃない。歌やってるから結婚はまだまだって言ってたよ。そりゃ慎吾じゃだめだよね。
だってバイトの身分ですから。」
話が前向きに進まなかった。何を言っても鮎子の怒りに触れる。桃香は恋する気持ちにひたることが自分のわがままだと思えてきた。周りの人を傷つけてしまう。慎吾にやさしくしたのはたしかに好きだからだ。
その気持ちに偽りはない。冬馬があんなことを言うからクラリとしたのだ。冬馬とは昔のままの友達でいて、今まで通り慎吾と仲良くできればすべておさまる。