クリスマスまでに…【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第28話】
鮎子は一瞬黙り込み、すぐに話を続ける。
「慎吾のことだけど。この前、私、きれちゃって悪かったなと思ってる。会社でも無視したりしてごめん。桃香の気持ち考えると、あんなこと言っちゃいけなかった。私に強要されて慎吾と付き合わなくちゃになっちゃうよね。それ、おかしいもん」
「鮎子、強要なんて、そんなことない。私がどっちつかずで煮え切らないから鮎子は言ってくれたんでしょ」
「あのさ、自分の気持ちに正直になってね。
私は桃香が誰と付き合っても文句言わない。友達でいるから。慎ちゃんにも、ふられる厳しさは若いうちに味わえって今なら言える」
「鮎子、そんな…」
「慎吾だって悪いのよ。桃香に甘えてばっかで、男らしいところ見せてないしさ。彼女になってってはっきり言ってないでしょ。あいつ。恥ずかしがってそんなこと言えないタイプなのよ。でもフットサル誘ってもらって本当によかったと思ってるよ。
うちらきょうだいは」
「ありがと。そんなふうに言ってくれて」
「だから、遠慮しないで、いい恋をして」
「うん。もすこし考えてみる」
桃香はつかえていたものがすっと降りた。
「ところで鮎子は? 合コンの成果はあったの?」
「あったら報告するわよー。はずしまくり。8試合8連敗。フットサルなんて観てる暇ないし」
鮎子は残念ポーズをしながら笑った。
「そっか、じゃあプリンも頼もうよ! 鮎子のゴーコン勝利を願って」
ふたりは卵とミルクの甘い香りの中で、ラブトークに花を咲かせた。
自由が丘はガールズトークには最適の街。悩める乙女達をやさしく包んでくれる。喧嘩の仲直りもさせてくれる。
(続く)
【恋愛小説『自由が丘恋物語 〜winter version〜』は、毎週月・水・金曜日配信】
目次ページはこちら