筋肉バカと既読無視【彼氏の顔が覚えられません 第19話】
3月もようやく半ばを過ぎた。「イズミちゃん、もう食べないのかい?」夕飯を半分残して箸を置くと、叔父さんがそう聞いてきた。
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「うん。もうお腹いっぱい」
「ダメだよちゃんと食べなきゃ。大きくなれないぞ!」
「叔父さん、私もう大学生。大きくなる必要なんて」
「…いや、その、背じゃなくて、ね」
と、私の胸に視線がいく。それに気づいて、箸を振り上げる。
「バカ、スケベ、ヘンタイ」
「わぁ、冗談だって! そんなに怒んなくても…」
「怒るよ。
ちょっと、母さんも何とか言ってやってよ。この筋肉バカのオッサンに」
「イズミ、叔父さんに向かってそんな暴言吐いちゃだめでしょ。それに、箸を武器みたいにして持つなんてお行儀が悪いわ。そんな風に野蛮なコに育てた覚えはありません」
「ちょ、なにそれ、母さん。叔父さんのセクハラ発言は許していいの?」と、母は首を横に振る。