ふたりの恋物語【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第32話】
桃香が質問すると慎吾は困ったような顔をした。
「…ある。何人も。LINEおしえてって言われる…」
桃香はドキっとした。そうか、慎吾は背も高くて、かっこいい。顔も寂しそうな目元が女性達にはグっとくるものがあるにちがいない。慎吾は自分のことをずっと好きでいてくれるという安心感がチラっと揺らいだ。
そうだ、慎吾に恋心を抱く女性は自分ひとりじゃないんだ、東横線に乗っている人達それぞれに恋物語があるってこの前思ったばかりなのに。
「慎ちゃん!」
桃香は慎吾の背中に急に抱きついた。慎吾は驚いて立ちすくむ。
「どうしたの…周りに人、歩いてるよ…」
人一倍恥ずかしがり屋の慎吾は照れてしまい、どうしていいかわからないような妙な顔つきになる。
(続く)
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