おでこと屁理屈【彼氏の顔が覚えられません 第24話】
おうむ返しに尋ねる。タナカ先輩も付属出身だったのかという点は、追及しないでおく。特に興味はわかない。
「えぇ。ご存じのように我が校の女生徒は、神の御前で、常に貞節を重んじなければなりませんの。それは付属高校のころより、女生徒一人ひとりが心に留めおくべき大切な教えなのですわ」
なにやら説法が始まった。わぁ、ウチって形ばかりの宗教系大学とばかり思ってたけど、付属の出身者にはこういう子もいるんだ。呆然としている私を後目に、コモリの偉そうな説法は続く。
「で、ありますから、たまたま先日拝見させていただいた、あなた方のようにキャンパス内で手をつなぐという行為。やはり女性の貞節を守る上では、避けるべき行為かと…」
「べつに、手はつないでないよ。指だけだし」
「指も手も一緒でございますわよっ」
ピシャリと言い放たれる。まぁ、今のは我ながら屁理屈っぽかったな。ならば。
「なんで私だけ言われなきゃいけないの。他にもキャンパス内でイチャついてるカップルなんて、いくらでもいるわよ」
「まぁっ。そう言って自分だけ責任逃れしようとするとは、なんて卑しい行いなんでしょう!」
バンッ。
感情的に机を叩いて、コモリは言う。むむ、火に油を注いだか。彼女の叫びは続く。
「タナカ先輩も、こんな女狐にそそのかされるなんて…ああ、あんなにもたくましく、ご立派な方だったのに!」
なるほど。ようやく話が見えた。つまりは、こういうことである。
「コモリさん、あなた、タナカ先輩のことが好きなのね?」
(つづく)
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