五月病とチュロス【彼氏の顔が覚えられません 第26話】
五月病と呼ばれるものがあるのは、ゴールデンウィークがあることに原因があると考えてほぼ間違いないと思う。
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高校へ入学したころだった。まず友達を作らなきゃと思っていて、顔は覚えられないまでも、クラスメイトの名前を全部ソラで言えるくらい暗記して。
いつも声をかけてくれる子が何人かできて、気づいたらその子らの仲良しグループに加えてもらってて。「ねー、ゴールデンウィーク、みんな何するー。遊園地とか行かない?」って言われて。
遊園地。まだ父が生きてたころ、家族3人で行ったきりだった。
誘われたことを母親に話したら、「いいじゃないの、行ってきなさいよ」って、お小遣い多めにくれて。
でも、行かなきゃよかった。小さいころはずっと父に手を握られていたから、迷子になることなんてなかった。まだ知り合って1月、覚えているのは名前と声だけの友達と、人でごった返す遊園地の中ではぐれるのは当然だった。
最初のうちは、向こうの方から「ちょっと、ヤマナシさん。ひとりでどこ行ってたの」ってすぐ見つけにきてくれたけど、そのうち完全に迷子になってしまって。みんなどこに行ったんだろう、と思っていたらケータイにメールがきて。
「私たち、先に帰ってるね。
ヤマナシさん、私たちに付き合うのイヤなんでしょ? 無理しなくていいよ、ひとりで楽しんでおいで」