俺の懺悔を聴いてくれ【彼氏の顔が覚えられません 第33話】
記憶は、1月3日までさかのぼる。
「なんで嫌われなきゃならないんだ」
前日に連絡先を交換したばかりの女と、サイゼリアにふたりきりでいる。
「だってさ、付き合ってるっていいながら、きのう見ててスゴイよそよそしい感じだったもん、ふたり」
「んなわけないだろ。相思相愛だよ」
「うっそ。まだエッチすらしたことないクセに」
あわや、口に含んだメロンソーダを吹き出しそうになる。まだ昼下がりなのになんて話を持ち出すんだ。
「これからっ、これからだよ…いま、タイミング見計らってるのっ」
「いや、もうないよ。ないない。
だってクリスマスもお泊まりナシだったんでしょ。ゼッタイそれって、飽きられてんだと思う」
「ちょ…キッパリ言ってくれるな…」
はぁ、と一息ついて、メロンソーダを飲み干す。目の前の女、シノザキは、モツァレラチーズとトマトのサラダをうまそうに食べている。サラダっていうわりには、単にチーズとトマトを並べてオリーブオイルぶっかけただけじゃないかと思った。女はなぜこういうのが好きなのか。
「だいたい、きのうシノザキと会わなきゃ、俺がイズミの家に泊まる予定だったんだよ」
「そんなこと、イズミと約束してたの?」
「してない」
「じゃあ、やっぱりダメじゃん」
くっ…こうしてズケズケとものを言われたら、どうもすべて正論のように聞こえてくる。
一旦席をたち、ドリンクバーへと向かう。カプチーノでも飲もうかと、カップをセットしてボタンを押す。
しゅごごごごっ…と機械からすごい音がし、突然もくもくと出てくる白い煙。故障か?
「あ、すみません、ミルク切れちゃってますね! 少々お待ちください!」
気づいた店員が声をかけてくれ、厨房まで引っ込んでいった。いや、待つくらいなら別の飲むけど…。
しかし冷たいドリンクコーナーも、ガキどもに占拠されている。行儀の悪いことに、いろんなドリンクを混ぜて遊んいる。…自分も昔やったが、周りの迷惑ぐらい考えるべきだったと今さら反省。結局、水だけ注いで戻る。
飲みたいものも飲めないドリンクバー…なんだか調子狂うな。
これもシノザキのせいかと思ってしまうくらい。そんなこと、あるはずないが。
(つづく)
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