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柴咲コウ“咲”と川口春奈“奏”が芸能界の裏側に一石を投じる! 大物俳優の性加害をめぐる闘いがついに決着へ【スキャンダルイブレビュー/5~6話】

マイナビウーマン
※本コラムは『スキャンダルイブ』最終話までのネタバレを含みます。

人気俳優の不倫スキャンダルを発端に、芸能事務所と週刊誌の熾烈な攻防戦が始まったABEMAのオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』。物語はやがて、海外進出を控えた大物俳優の性加害疑惑へと辿り着く。華やかな芸能界の裏に潜む歪さを浮き彫りにしてきた本作にとって、業界の性加害というテーマは、避けては通れなかったはずだ。

では、性加害問題に“向き合う”とは、どういうことなのだろうか。現実に目を向ければ、偏向的なメディア報道や無責任な言説によって、二次被害になり得る言葉を被害者に投げかける人も少なくない。沈黙していれば勝手な憶測が飛び交い、気丈に振る舞えば「被害者らしくない」「そもそも被害などなかったのではないか」と批判される世の中である。

だからこそ、問題をセンセーショナルに消費するのではなく、踏みにじられてきた被害者の声を、丁寧に掬い上げることが必要なのではないだろうか。
被害者である莉子(茅島みずき)の視点から性加害の実態をまざまざと描いた『スキャンダルイブ』第5話を観て、そんなことを思った。

柴咲コウ“咲”と川口春奈“奏”が芸能界の裏側に一石を投じる! 大物俳優の性加害をめぐる闘いがついに決着へ【スキャンダルイブレビュー/5~6話】

奏(川口春奈)の恋人であり、フリージャーナリストの二宮(栁俊太郎)が握っていたのは、KODAMAプロダクションの看板俳優・麻生秀人(鈴木一真)にまつわる性加害スキャンダル。被害者は奏の妹・莉子だった。幼い頃から芸能界に憧れていた莉子は、小さな事務所からスカウトされ、奏や両親の反対を押し切って上京する。だが、思い描いていた華やかな世界とは程遠く、レッスン費用を捻出するためにアルバイトに追われる日々を送っていた。

「この世界、厳しいオーディションを通過しても、成功するのはほんの一握りだけ。ほとんどの子は、疲弊して摩耗して潰れていく」

莉子が置かれていた現状は、第4話で咲が溢した言葉を、そのままなぞっているようだった。上京から3年が経っても、なかなか芽が出なかった莉子は、KODAMAプロ主催の新人オーディションにわずかな望みを託す。
最終選考まで進むものの、結果はあと一歩のところで落選。

柴咲コウ“咲”と川口春奈“奏”が芸能界の裏側に一石を投じる! 大物俳優の性加害をめぐる闘いがついに決着へ【スキャンダルイブレビュー/5~6話】

しかしその直後、オーディション参加者の一人から、麻生の飲み会に参加しないかと声をかけられる。もしかしたら、KODAMAプロとの繋がりを持てるかもしれない。麻生が口添えをしてくれる可能性だって、ゼロではない。そんな淡い期待を抱き、足を運んだ飲み会で、莉子は被害に遭う。

とにかく、第5話で描かれた一連の性加害の流れは、思わず顔を歪めてしまいたくなるほど悍ましかった(夢に出てくるのではないかと思うほどの鈴木一真の怪演よ……)。その描写以上にショックだったのは、あまりにも生々しい業界の性加害の構造だ。

芸能界に憧れる若者の夢を食い物にする権力者。
その権力者の機嫌を損ねないように、平然とした顔で加害に手を貸す立場の弱い者たち。さらに、それを黙殺しようとする業界関係者たち。性加害問題は個人間のトラブルではなく、業界全体が抱え込んできた問題なのだと痛感した。

さらに突きつけられたのは、性被害で声を上げることの、あまりにも高いハードルだ。莉子は事務所に助けを求めるものの、「大手のKODAMAプロと揉めたくない」という理由から、翌日には解雇を言い渡されてしまう。

そこへ追い打ちをかけたのが、事務所の人間から投げつけられた「色仕掛けに失敗しただけじゃないのか」「なにが性加害だ」という被害を矮小化する言葉だ。もしかしたら、助けを求める道は他にあったかもしれない。第三者からの心無い声は、被害者が本来辿り着けたはずの支援への道も塞いでしまうのである。


そして、明らかになったのは、KODAMAプロ在籍時の咲が、救うことのできなかった新人タレント・原由梨(河村ここあ)の存在だ。莉子が不合格となったオーディションで選ばれた由梨は、当時社長に就任したばかりの蓉子(鈴木保奈美)肝いりの新人として、華々しく売り出される。だが、実力に見合わない大役への抜擢や視聴者の容赦ないバッシングに追い詰められ、彼女は若くして自ら命を絶った。

由梨のときと同じように、真実を歪め、弱き者の声を捩じ伏せようとする蓉子に対し、咲たちは反旗を翻す。 しかし、実際に繰り広げられるのは、週刊誌とWEBメディアによる“代理戦争”だった。

麻生の告発記事を世に出そうとすれば、KODAMAプロと懇意にするメディアから、論点を巧みに逸らした記事が投下される。莉子自身が直接声をあげようとしても、その痛切な叫びは、圧倒的な“世の中の声”に飲み込まれてしまう。それを上塗りするような信ぴょう性の高い記事を出すためには、新たな証言を集めねばならない。
——結局、これは終わりのないイタチごっこではないか。

そう感じた咲は、奏とともに記者会見を開く。目の前の事態を収束させるためではない。業界の構造そのものを問い直し、世の中を変えるために。

柴咲コウ“咲”と川口春奈“奏”が芸能界の裏側に一石を投じる! 大物俳優の性加害をめぐる闘いがついに決着へ【スキャンダルイブレビュー/5~6話】

第一話では芸能界を敵視し、芸能人を食い物にしていた奏に当事者意識が芽生え、記者としての覚悟を固めていく。まるで悪代官のように描かれてきた編集長・橋本(ユースケ・サンタマリア)にも、ジャーナリストとしての矜持があったことが明らかになるラストスパートは、怒涛の激アツ展開!

なによりグッときたのは、さまざまな問題を孕んだ構造の渦中にいた咲と奏自身が、「このままではいけない」と気づき、世の中を変えようと立ち上がったことだ。

もちろん会見ではヤジが飛び交う。咲も奏も、歪んだ構造の中で生きてきた“内部の人間”であり、その一部として振る舞ってきた自覚を持つ人たちだからだ。
それでも、彼女たちから、自己陶酔的な正義は感じない。実感のこもった切実な声は、確実に会場の空気を変えてゆく。

柴咲コウ“咲”と川口春奈“奏”が芸能界の裏側に一石を投じる! 大物俳優の性加害をめぐる闘いがついに決着へ【スキャンダルイブレビュー/5~6話】

「過去を悔やむだけでは、何も変わらない。私たちが終わらせければいけない『構造』が確かにある。忖度、沈黙、犠牲の上に成り立つ成功。そんなことはもう、終わりにしませんか」

「今、私たちは時代の変わり目に立っています。古い価値観と、新しい価値観の間で、さまざまな歪みが生まれている時代にいます。でも、その混乱の中にこそ、変化の芽があると、私は信じています」

ラストシーンで柴咲コウが託されたメッセージは、この歪さが“普通”になってしまった社会への訴えであると同時に、咲や奏と同じ業界で生きる同志たちへのエールのようにも感じられた。
今、ここから変われるのだと。

たしかに、数年前と比べれば、昨今の芸能界は変わりつつあるのではないか。少なくとも、そう信じたい。とはいえ、長年にわたって築き上げられた歪な構造は、簡単に書き換えられるものではないだろう。それでも、咲や奏のように「変えたい」と願う人々は、きっといる。本作のように、物語の力で風穴を開けようとしている人たちもいる。私たちは今、まさに時代の潮目を迎えているのだろう。


ABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』番組概要
柴咲コウ“咲”と川口春奈“奏”が芸能界の裏側に一石を投じる! 大物俳優の性加害をめぐる闘いがついに決着へ【スキャンダルイブレビュー/5~6話】

トップページURL:https://abema.tv/video/title/90-2042

2025年11月19日から毎週水曜夜10時~無料配信


(明日菜子)

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