有名人やお金持ちが払う「慰謝料」が高い…これってホントなの?
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どのような要素があると不貞行為による慰謝料が高くなったり、低くなったりするのか、と疑問に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、誤解されている方が多い、“有名人やお金持ちが不倫をした場合、払わなければならない慰謝料も高額になるのか?”こちらに関して解説していきたいと思います。
■慰謝料請求の金額算定における大前提
不貞行為について不法行為が成立し、損害賠償請求(慰謝料請求)が認められるとして、その金額をどのように算定するのでしょうか。また、裁判などにおいては、どのような点が考慮されるのでしょうか。
なお、ここで取り上げるのは、あくまで裁判となった場合(あるいは、それを見越して交渉をする場合)に考慮される要素ですので、当事者間で合意すれば、そうした要素に関係ない慰謝料額(例えば、有名人等であれば何も増額要素がないケースで数千万円、数億円等の慰謝料など)になることもあります。
■当事者の社会的地位・収入・職業は慰謝料額に影響する?
まず、不倫(不貞)を行った人が、社会的に地位がある人であったり、お金持ちである場合には慰謝料額が高額になったりするのでしょうか。
この点は、よく誤解している人がいますが、結論から言えば、原則として、社会的地位や収入状況などは慰謝料の算定要素にはなりません。つまり、社会的地位があろうと収入が多かろうと、それだけで慰謝料が上がるということはまずありません。
これは、よく芸能人などが高額の慰謝料(数億円、数千万円など)を払っていることから誤解されているのだと思いますが、それは当事者が大ごとにするのを避けるために任意で支払っているに過ぎず、仮に裁判になればそのような金額は認められません。
実際、裁判所も、慰謝料の算定にあたって、こうした事情はまず考慮しておりません(東京地判平成23年12月28日「原告は、慰謝料額の算定において被告の現在の役職(社会的地位の高さ)や財力を考慮すべきであると主張するが、これらの被告の属性に関する一般的事情は、上記不法行為により原告に生じた精神的損害とは無関係であるから、慰謝料額の算定において考慮することはできない」)。
■職業が慰謝料増額要素になる場合も…
しかし、ごく稀に当事者の職業が慰謝料の増額要素とされることもあります。例えば、弁護士とその元依頼者との不倫(不貞)のケースにおいて判例では、
「被告は、平成6年の離婚交渉後もA子に好意をもち、個人的にサポートするなど、その不満の相談にも乗っていたところ、A子の心が原告から離れていく過程で、親密な関係になっていったものと認められる。婚姻関係の破綻については原告自身の問題点もあるにせよ、被告は、ひとたびは原告の紹介で民事保全事件、訴訟事件を受任するなどしており、その信頼を裏切る行為といわざるを得ない。」
などと考慮されています(東京地判平成19年2月27日)。これは、不倫(不貞)によって、原告の信頼を害する程度が、弁護士という職業であるがゆえに大きいということなのでしょう。
このケース以外には、精神科医とその患者との不倫(不貞)のケース(東京地判平成13年8月30日)、弁護士とその元依頼者との不倫(不貞)のケース(東京地判平成19年2月27日)、プロ騎手・タレントのケース(東京地判平成21年10月21日)などがありますが、いずれにしても、不貞行為を行った側の職業や社会的地位が慰謝料算定の基礎とされることは極めて希であるといえます。
以上、いくつかのケースを交えてご紹介しましたが、当事者の社会的地位・収入・職業は一部の特殊なケースを除き、基本的には慰謝料の算定・考慮事情にはなりません。
この点は、よく誤解されている方がいるので注意が必要です。
他にも慰謝料の算定の基礎とすべき項目が多々ありますので、気になることがございましたら、専門の弁護士に相談されることをおすすめ致します。
*著者:弁護士 伊倉吉宣(伊倉綜合法律事務所。離婚・男女問題をはじめ、労働トラブルや交通事故問題など幅広く取り扱う。運営メディアに、「弁護士監修による不倫・浮気の専門サイト」、「未払い残業代無料請求ガイド」がある。)
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