ハンコを押してしまったけれど…離婚届の取り消しはできる?
離婚を言い渡され、口論になり、「わかった!離婚すればいいんでしょ!」と勢いでサインと押印をしてしまった。「本当に出すわけないだろう。」とタカをくくっていたら、相手から「離婚届、無事に受理してもらえました。」なんて連絡が…。
彼氏彼女だったら、「そんなつもりじゃなかった!やっぱり別れたくない!」と引き留めることができますが、離婚はそんな簡単に取り消せません。でも、勢いで離婚届にサインをしてしまった場合や意にそぐわない形で離婚届を出されてしまった場合、それを取り下げることはできるのでしょうか?
虎ノ門法律経済事務所池袋支店齋藤健博弁護士にお答えいただきました。
■勢いで署名捺印してしまった離婚届は取り下げられる?
実は法律では、ハンコを押しただけでは効力がありません。『要式行為』といって、役所に受理してもらえなければ効力がないのです。しかし、受理された離婚届を取り消すことは簡単にはできません。それが可能なのは、合意していなかった場合であり、本人の押印があれば『離婚に合意した』とみなされてしまうのがほとんどです。
自身がハンコを押してしまった時点で勢いだったとはいえ離婚に合意したことになってしまうのです。
離婚の意思は諸説わかれていますが、実務の考え方は、双方に離婚届を提出する意思がある(形式的意思説)だけで足りるとされています。
しかし、「それでも取り消したい。」、「なしにしたい。」という場合には、手段は残されています。
■取り消したい場合はどうしたら?
市役所などの提出した役場に「取り消してくれ!」と訴えても無意味です。離婚の意思のない離婚届を受理したことを責め立てても役場の人たちには責任はありません。
離婚届を取り下げるには『協議離婚無効確認調停』というものが必要です。
家庭裁判所に離婚が無効だと認められれば、正式に離婚を取り消すことができます。しかし、自身の署名捺印は『離婚に合意した』とみなされてしまいますので、認められるかどうかは難しいといわざるをえません。
ですが、可能性はゼロではありませんので、本当に取り消したいのであれば一度試みてみるのも1つの手段でしょう。ただ、認められなかった場合は諦めるしかありません。
■離婚を取り消すべきケース
勢いであっても自身で署名捺印してしまった場合は取り消すのが難しいかもしれませんが、そうでない場合もあります。その意思にそぐわず離婚届を受理された場合は、離婚届の無効を主張するべきでしょう。
★離婚届を偽造された
離婚届は署名捺印以外の欄は誰が書いても本人が記載したように見えてしまいます。
さらに押印するハンコはゴム印やシャチハタ印などを除けば基本的になんでもいいとされています。つまり、100円均一で売っているような安価な大量生産品でOKということです。そうすると、相手が適当に身つくろい、サイン部分を自身の字体と変えて署名捺印をしようとすればできてしまうことも想定されます。
ですがこれは『有印私文書偽造罪』などの罪に問われる立派な犯罪です。ですので、もちろんその離婚は取り消すことができるでしょう。
★詐欺・脅迫によって離婚届に署名捺印させられた
離婚を拒否し続けた末、脅迫されて署名捺印した離婚届を提出されたり、提出させられたりした場合には、離婚届を出す意思そのものが不存在だったり、瑕疵あるものになります。そうなれば、離婚届の取り消しが可能となる可能性が高まります。
■まとめ
離婚届の偽造や、詐欺、脅迫によるものであれば取り消しは可能ですが、自身の署名捺印がある場合は無効と認められるのは難しいかもしれません。離婚は夫婦にとって大きな問題です。勢いで署名捺印することは法律的な観点でも控えるべきと言えるでしょう。
*弁護士監修・執筆/ 虎ノ門法律経済事務所池袋支店齋藤健博弁護士(弁護士となってから、数々の不倫・離婚問題を解決。
弁護士として働くかたわら、慶應義塾大学にて法務研究科助教も務める)
*取材・執筆・編集/アシロ編集部
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ハンコを押してしまったけれど…離婚届の取り消しはできる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
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