「まだ遊びたい!」寝る前の癇癪の原因は……Upload By ゆきみ現在小学2年生の長男けんとは、自閉スペクトラム症と3歳の時に診断を受けました。ある日の夜、けんとがごはんを食べ終え、オモチャで遊んでいました。ほどよく遊びの時間をとったあとに「あと5分でおしまいにしようね」と言ってタイマーをセット。けんとも納得していました。そして5分後……タイマーが鳴り、もうすぐ寝る時間だったので、「歯を磨いて寝る準備をしようね」と私が伝えると、「ボクはまだ、パズルと本を読むのが終わっていないんだ!」と、けんとが癇癪をおこしたのです。「え?まだそんなにやりたいことがあったの?」と、私はビックリ……。私はその時、けんととやりたいことの確認や、寝る準備を始める時間などをあらかじめ話していなかったことに気がつきました。もう寝る時間だし、何となく分かると勝手に思い込んでいたのです。明日からは、けんとが頭の中でやりたいと考えていたことを、事前に確認してみようと思いました。やりたいことを書き出す作戦!結果は?けんとは視覚優位で、文字やイラストなどでスケジュールを伝えると、スムーズに行動できることが多いです。けんとにやって欲しいこと(ハミガキ、お風呂など)と、けんとが寝る前に自分でやりたいと思っていることを全部出し合い、スケジュールをまとめて紙に書き、視覚を使って示すことにしました。まだ、時間管理が自分ではできないので、寝るまでの残り時間などを考えながら母がタイムスケジュールを管理し、促していくことに。Upload By ゆきみ次の日から早速、相談をして紙に書き出しました。「パズル」「読書」「テレビゲーム」をしたいとのこと。寝る時間を考えて、全部のことをやり終えるために……「15分ずつにしよう」と話し合いました。タイマーをかけて、鳴ったら紙にチェックを入れ、次のこと。というように順番に行なうと、本人もやりたいことがしっかりできたからなのか、全く怒ることなく、スムーズに寝る準備に入ったのです。何度か続けていくうちに、15分で終わりたくないことがあったときは、「もっとやりたい」と伝えてくることもありました。その場合は「じゃぁ、読書の時間を5分短くする?」や「読書は明日にして、その時間を使う?」などと、相談をしながらやっていきました。「やった!」を感じるボード選びを開始最初は、紙にタスクを書いて、終ったものにチェックを入れて消していく方法や、持っていた電子ボードやホワイトボードを使い、タスクを書いて消していくという方法をとっていました。ですが、続けていくうちに、けんとが自分で「やった!」と簡単にチェックできるものがあるといいなと思い、タスクボードや視覚支援の方法をインターネットで調べてみると、いろいろな種類がありました。Upload By ゆきみ・自作のタスクボード一例■ホワイトボード、マグネットシート、マグネットを購入。マグネットシートを切ってタスクを書き、ホワイトボードに貼る。ボードを「まだ」「できた」エリアに分け、マグネットシートを移動させる。■タスクが書いてある紙を準備し、ラミネート加工をして、それぞれ切り抜いて、後ろにマジックテープを貼る。マジックテープが貼りつけられるようにしてある台紙に順番に並べ、終ったものを取っていくボード(通っている発達支援施設では、この方法を使っています)。など。・市販品のタスクボード一例■タスクが書いてあるマグネットを貼るボード■ラミネートされたタスクをマジックテープで貼ってはがしていくボード■付属の紙にタスクを書き、その紙の入れ替えができるようになっているプラスチック製のボード。数個のタスクを書けるようになっており、それぞれの項目にチェックボタンがついているので、終わったらチェックを入れていきます(タスクの内容を替えたい場合は、紙を交換すれば完了)。■持ち運びができるポーチタイプのボードほかにもタスク管理ができるアプリを使用するなど、いろいろな方法がありました。わが家は市販品をリメイク!きょうだい愛用のボードが完成けんとの場合、興味の移り変わりが早く、やりたいことが短い周期で変わっていきます。固定のタスクではなく、自由に変化できるもののほうが合っている気がしました。ただ、私は工作があまり得意ではないので、市販品を購入することにしました。悩んだ結果、紙にタスクをかき、タスクが終ったらチェックボタンを変えていくプラスチック製のタスクボードに決定(内容を変えたいときは紙を取り替える)。Upload By ゆきみ本来では紙を入れる部分に、紙ではなくマグネットシートを入れ込みました。そして、ホワイトボード用のペンでタスクを書き換えられるようにリメイクしてみました。視覚で提示すると、5歳(年長)の弟も分かりやすいようで、きょうだい2人共、愛用しています。朝のお仕度ボードや、放課後のタスクボードとしても使っています。外出先でタスクボードを使用したい場合は、わが家はアプリ「やることカード」を使用しています。やることカード ( LITALICOアプリ)寝る前の時間に癇癪を起こしてしまうと、1日の締めくくりが楽しくはないですし、寝る時間も遅くなり母子共に疲れ果ててしまっていました。でも、あらかじめやることを聞いておくこの方法を取り入れてからは、寝るまでの動きがかなりスムーズになり、笑顔で1日を終われるようになりました。「これがやりたい!」という気持ちを受け入れつつ、時間やお約束を守るための方法がほかにもあるかもしれないので、これからも模索していきたいと思います。いつかは子ども自身が自分で時間も管理できるように……段階をふみながら進めていけたらなと思っています。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)タスクボード導入の経緯、ご家庭の事情に合ったタスクボード探し、アレンジして使っているお話。一連のことのシェアをありがとうございます。寝る前の癇癪にも心当たりのある読者の方は多いでしょうし、視覚支援の王道たるタスクボードについて巷にあふれるさまざまな情報の整理もなされていて本当に参考になることばかりでした。やりたいこと、やらなければならないこと。どちらもスムーズに行うには、タスクボードで「見て分かる」「どこまで進んでいるかが分かる」工夫をするのはとても良いですね。そしてそもそも、やりたいことをきちんとこのタスクの中に入れてくださっている、つまり本人の希望が織り交ぜられた運用であることが素晴らしいですね。そして、このやり方が板につくにつれ、「今日はもっとこれをやりたい」と交渉することもできてきているのも何よりです。癇癪のように、感情を爆発させるのではなく、交渉に至れるのも、枠組みがしっかりしているからこそとも言えます。今後、けんとくんが育つにつれ、もしかしたらこのやり方が合わなくなる日も来るかもしれませんが、「タスクボードを使って自分はタスク管理できていた」という経過がきっと次の手立てにも生きてくるだろうと感じます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月25日乳幼児の頃から、 “手を使うおもちゃ”で遊ばなかった息子現在6歳・年長さんの息子は、3歳9ヶ月で「新版K式発達検査」を受けたところDQが80で3歳0ヶ月相当、境界域であることが分かりました。息子には手先の不器用さがあります。ひらがなは書けるもののアンバランスだったり、距離感をとらえにくいのか、ものを手渡す際相手の鼻先まで持って行ったりするようなときもあります。ボール遊びや縄跳びも苦手です。乳幼児の頃の息子は、何かによじ登ったり、飛んだり、踊ったり、体全体を使うことは好んでやっていたのですが、積み木やボタンを押したりカギを開けたりする手を使うおもちゃにはほとんど手を伸ばしませんでした。その頃は「発達の遅れがあるかも?」とは思っていませんでしたが、息子の手先の不器用さはこの頃からつながっていたのかもしれない……と今振り返ると感じます。そしてこの手先の不器用さがネックになり、なかなか習得できなかったのは「はしの持ち方」です。私も周りの目を気にしすぎて、いらない心労を抱えてしまったと思います。「できないから、やだ!」おはしの練習を全力で拒否!息子が年少クラスの9月頃、通信教育のワークブックにおはしの練習ができる付録がついていました。いい機会だと思った私は、これを使っておはしの持ち方を練習することにしました。プレッシャーをかけないように、楽しく、気楽に練習できるように努めました。付録も楽しくやるものだったので、幼児には取り組みやすかったと思います。ですが、これがなかなかうまくいきません……。やはり手先が思ったように動かせない、力の入れ方などにも不器用さが出てしまうようなのです。息子は嫌なものはテコでもやらない性格。かつ、失敗すると必要以上にクヨクヨしたりイライラしたりして、ヘソを曲げてしまうところがあるのですが、このおはしの練習でもヘソを曲げてしまいました。何度勧めても「できないから、やだ!やらない!」とかたくな……。私はこの息子の様子をみて「無理強いすることもないか」と、おはしの練習はもう少し待つことにしました。Upload By ユーザー体験談義弟「おはしを使ってみようか」、実母「甘やかしすぎ」二人から言われた言葉にモヤモヤする私……わが家のお正月は、私の実家に妹一家と私の家族が集まって食事をするのが恒例です。その中のメンバーである妹の夫(義弟)は、ちょっと厳しい人のようで、妹からは娘である姪っ子(当時小1)が小さな頃から、おはしの持ち方を厳しく指導していたと聞いていました。息子が年中だったお正月のことです。フォークを使っている息子を見た義弟が「おはしを使ってみようか」と息子に声をかけました。義弟の口調は優しくて、決して息子をとがめるような物言いではなかったのですが、ちょっと緊張が走った私。その時、姪がとっさに「パパ!(おはしがうまく使えなくても)怒らないであげてね!」と息子をかばうような声がけをしてくれました。姪の反応を見た私は(おはしの持ち方に厳しいって本当なんだ。息子がまだおはしを持てていないこと、あとでなんか言われてそうだな……。事実だから仕方ないけど……)とちょっと胸が苦しくなってしまいました。幸いにも当の息子はまったくその空気を察しておらず、「え~、おはし使うのやだ~」と超マイペースにフォークを使い続けていました。姪の発言があったからか、義弟はそれ以上何も言いませんでした。Upload By ユーザー体験談しかしこの時同席していた実母は「やっぱり息子くんを甘やかしすぎなんじゃないの?無理してでもおはしを練習させたほうがいいんじゃない?」と私に注意してきました。両親は、私の仕事の関係で週2回息子を預かってくれているので、息子の発達のことや不器用さのことも把握しています。とはいえ、母はメンツや体裁にこだわるタイプなので、義弟に指摘されたことで「体裁が悪い」「もっとちゃんとはしの練習をさせておくべきだった」と思ったのだろうと思います。私は、何とも重たい気持ちになってしまいました。Upload By ユーザー体験談息子の不器用さを理解してもらえない環境?私はどうすべき?この後、私はモヤモヤしていました。(妹や義弟は姪のような優等生を日常的に見てきている。そんな人たちに息子の不器用さや、言って聞かせることの難しさを理解してもらうのは難しいんだろうな。息子がおはしを使わないのは、わが家のしつけがなっていない、指導する根気が足りないからって思われているんだろうな……)(母は、私や妹の「人より劣っている部分」を強くけなしたり、逆に「人より優れている部分」に対してすごく得意になる傾向があった。何かと人より遅れがちな息子を今後どんなふうに受け止めていってくれるんだろう……。受け止めきれなくなったときは、また今回みたいに私に「しつけがなってない」って怒るのかな……)そんな考えが頭の中でグルグル回ります。……とはいえ、妹夫婦からそうした態度で接してこられたことはなく、私が勝手に卑屈になっているだけ。なぜそう卑屈になってしまうか考えたところ、「まだ無理強いすることもないか」と思いつつも、私も実は息子の不器用さに焦りを感じているのです。そんな自分に気づくことができました。また、私は義弟からはし使いを指摘されることが嫌というより、「そうした出来事をきっかけに、母が私の育児にあれこれ言ってくる可能性が高いこと」が引っかかっていることも自覚。となると、これは息子がはしを持てないことが問題というより、自分の気持ちの問題であり、自分の軸をしっかりもてば、このモヤモヤは解消できるかもしれないと気を持ち直しました。息子にあったタイミングで背中を押す。そんな子育てをしていきたい!私は今まで通り、息子の不器用さを感じても深追いしてやり方を細かく指導することはせず、息子がその気になるまで待ち、興味を持ったら教える方法を続行することにしました。そして年長(6歳)になった息子は、こども園のお昼の時間にみんながおはしを使い出したことに刺激を受けたようで、最近ようやくおはしを持つようになってきました。これが息子のおはしの練習をするベストタイミングだったのだと思います。普段は正しく持てていますが、ときどき下側のはしを薬指で支えるのがうまくいっていなくて、握りばしになっています。あと、そうめんのような、おはしでつかみにくい料理だと、トレーニングばしに持ち替えたがります。それでも嫌がることなく、どう持てばいいか試行錯誤している息子を見ると、その姿がほほえましいです。Upload By ユーザー体験談またお正月にみんなで集まるときは、息子にはおはしを使わせようと思っています。使い方がまだ完璧じゃないので、義弟から何か注意を受けるかもしれませんが、息子にとっては、私や夫以外の人から注意を受けることも貴重な体験かもしれないと、私自身も思えるようにもなりました。息子は臆病なところがある一方で、好奇心が旺盛。その好奇心を大切に、いろんなことに挑戦してみてほしいと思っています。そのためにも、息子が「頑張りたい」「やってみようかな」と思っている瞬間を見逃さず背中を押す、あるいは、いろんな人との関わりを増やして、刺激を受けながらモチベーションを上げていってもらえればと思います。イラスト/カタバミエピソード参考/苗(監修:森先生)DQとは「発達指数」のことで、日常生活や対人関係における子どもの能力の指標のこと。もちろん数値は目安に過ぎず、発達は早いけれどもおはしを使うのが苦手な子どももいますし、その逆もありえます。おはしを上手に使えなくても、フォークを使うなどして食事ができれば全く問題はないはず。おはしの使い方それ自体にこだわっても仕方ないのですが、そうはいってもおはしの使い方は友達や親戚と食事をする場面で気になりやすい部分ですよね。できるようになるタイミング、やりたいと思うタイミングは一人一人違います。落ち着いて練習できるように、お家での食事ではおはしを使ってみようか?と声かけを頻繁にしてあげるのがいいのではないでしょうか。ただし、無理強いは禁物です。厳しく言われると、食事そのものに苦手意識を持ってしまうでしょう。姪っ子さんは父親である弟さんからおはしの使い方を厳しく指導されたようなので、思うところがあったのでしょう。大切なことは本人も周囲も楽しく食事をすることで、食器の使い方はあくまでもそのための手段であることを忘れないようにしたいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月24日学校を休ませていい?悩む保護者へ精神科医の回答が届く!「学校休んだほうがいいよチェックリスト」【LINEにて無料利用可】Upload By 発達ナビニュースお子さんから「学校休みたい」「学校行きたくない」と言われたとき、休ませていいのか、どう対応すべきか多くの方が迷われるのではないでしょうか。そんな保護者、教員の方々などに向けたサービス「学校休んだほうがいいよチェックリスト」が2023年8月23日にリリースされました。こちらは不登校専門紙・不登校新聞、個別指導塾のキズキ共育塾、オンラインフリースクールのBranchという不登校のお子さんやご家族を支援している3社が開発し、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターの松本 俊彦先生が監修されたチェックリストで、LINEにて無料で利用できます。不登校による深刻な問題として、学校を休むべきときに保護者が子どもを無理に登校をさせ続ける「過剰適応」というものがあります。これによって子どもは追い詰められ、うつ病や自殺といったリスクが高まってしまいます。しかしこの「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を使い、休むべき基準を知ることで過剰適応を防ぐことが可能です。「学校休んだほうがいいよチェックリスト」は、不登校の予兆となる20個の質問に「はい」「いいえ」で答えることで、お子さんの状況に応じて、監修の先生からの回答が届きます。チェックリストを利用することで、休んでもいい基準を事実ベースで客観的に判断することができます。Upload By 発達ナビニュース子どもは適切に休むことができれば元気を取り戻すことができます。不登校を恐れ過ぎず、適切に子どもを休ませる判断の一助として、このサービスを利用してみませんか?※「LINE」はLINE株式会社の商標または登録商標です。※クリックすると、発達ナビのサイトから「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のページに遷移します。※このチェックリストは3社が非営利で運営しているため、開発と運営のためクラウンドファンディングを実施しています。ご興味のある方は以下寄付ページをご覧ください。※クリックすると、発達ナビのサイトから「READYFOR 学校休んだほうがいいよチェックリスト」のページに遷移します。3,847の事業者が導入!障害のある人に向けたデジタル障害者手帳「ミライロID」Upload By 発達ナビニュース2019年に登場した障害のある人に向けたデジタル障害者手帳「ミライロID」を導入する事業者が、2023年8月31日時点で3,847に達しました。250以上の自治体での手続きや各種交通機関での利用のほか、レジャー施設、ショッピングやグルメなどさまざまな場所でご利用いただけます。「ミライロID」は障害者手帳を登録できる無料アプリ。障害者手帳を持ち歩くことなく、またカバンから出し入れする手間もなく、スマートフォンで素早く提示することができます。音声読み上げにも対応しています。「ミライロID」に登録できる障害者手帳は、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つ。障害種別によって、一人ひとりに合わせた情報も受け取ることができます。また、保護者がお子さまの障害者手帳を登録することも可能です(ただし、一つの障害者手帳を複数の端末で登録することはできません)。そのほか、レジャー施設、ショッピングやグルメなどでお得に使える電子クーポンを利用することができたり、障害者割引価格のチケットをオンラインで購入することも可能。車いすなどの福祉機器の仕様や必要なサポートの内容を登録すれば、窓口での伝達をスムーズに行えます。また、施設のバリアフリー情報も確認できるので、外出時の負担を減らしてくれます。Upload By 発達ナビニュース「ミライロID」の利用方法は3ステップ1. 「ミライロID」のアプリをスマホにダウンロードする2. お持ちの障害者手帳を撮影し登録します(顔写真の掲載された障害者手帳のみ登録可能)3. 導入施設でミライロIDの提示や、クーポン・チケットの利用ができます。※アプリは無料で使用できますが、ご利用の際に通信量に応じたパケット通信料金が発生します。使える場所の一覧や詳細のご利用条件は、以下より確認できます。WEBページ:アプリ:画面下部の「使える場所」をタップ暑さも和らいで外出には絶好の季節の秋、「ミライロID」を利用してお出かけしてみてはいかがですか?※クリックすると、発達ナビのサイトから「ミライロID」のページに遷移します。暗闇の中、五感を使って楽しむ「秋を感じる 見えない東北の旅」、食のマインドフルネスを体感「『一粒』大地の恵みを感じ一粒米(イチリュウベイ)のいのちを頂く」開催/ダイアログ・イン・ザ・ダーク2023年秋のプログラム「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、純度100%の真っ暗闇の中で見ること以外の感覚を使い、一緒に参加する仲間たちと共に、さまざまなシーンを体験するエンターテイメント。体験を案内するのは、普段から目をつかわないで生活をしている、視覚障害があるアテンドスタッフです。1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで世界で900万人以上が体験しています。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の「暗闇」はいつも同じではありません。季節など、テーマに合わせて、さまざまな体験を暗闇の中ですることができます。2023年の秋には2つのプログラムが開催中です。Upload By 発達ナビニュース紅葉する木の葉、季節の移ろいを知らせる虫たちの鳴き声、優しい川のせせらぎ……9月から始まったのは、暗闇の中にある東北の豊かな秋を感じるプログラムです。8人1グループになり、視覚障害者のアテンドと一緒に五感を使って東北への旅情を味わってください。〈詳細〉「秋を感じる 見えない東北の旅」開催期間:2023年9月7日(木)から11月23日(木・祝)体験時間:90分会場:ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」東京都港区海岸1丁目10番45号アトレ竹芝シアター棟1Fチケット:大人:3,850円学生:2,750円小学生:1,650円(税込)※クリックすると、発達ナビのサイトから「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のページに遷移します。Upload By 発達ナビニュース昨年好評を博したプログラム「『一粒』大地の恵みを感じ一粒米(イチリュウベイ)のいのちを頂く」が、神宮外苑前「内なる美、ととのう暗闇。」で再登場します。こちらは、「食のマインドフルネス」を体験できるプログラム。私たちが当たり前すぎて普段忘れがちな「いただきます」「ごちそうさま」の本来の意味を感じることができます。暗闇の中で、米一粒と自分の関係を改めて捉えなおしてみませんか?〈詳細〉「『一粒』大地の恵みを感じ一粒米(イチリュウベイ)のいのちを頂く」開催期間:2023年9月16日(土)~2024年1月8日(月・祝)体験時間:90分会場:三井ガーデンホテル 神宮外苑の杜プレミア 2階東京都新宿区霞ヶ丘町11番3号チケット:大人:5,500円(税込)※18歳未満はご体験いただけません。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年09月23日息子の意思表示の方法は主にジェスチャー&クレーン自閉スペクトラム症のある子どもによく見られる行動の一つに、「クレーン現象」というものがあります。クレーン現象とは、子どもが何かをしたい時に、自分ではなく大人の手を使って、物を指したり、物を取ったりして、意思表示や欲求を満たそうとする行動です。乳幼児期の息子の意思表示の方法は、主にこのクレーン現象だったと記憶しています。しかし、息子のクレーン現象は今もゼロではありませんが、徐々に減っていきました。そして現在は、クレーン現象の代わりに場面に応じたジェスチャーが、息子の主な意思表示の方法となっています。私たち家族は言葉で息子に気持ちや指示などを伝えますが、息子はさまざまなジェスチャーで、それに応えてくれているのです。息子の気持ちを伝えるジェスチャー、どんなものがある?では、息子はどのようなジェスチャーで意思を伝えているのでしょうか?息子が使う主なジェスチャー(しぐさ)は、次のようなものです。「いってきます」「ごめんなさい」「ありがとう」「こんにちは」など、息子が最も多くの場面で行うしぐさです。親である私もお辞儀や会釈をすることが多いからか、息子もそれを見て自然と身についたようです。Upload By べっこうあめアマミ「それください」「ごめんなさい(より深い反省をこめて)」などの意味で使います。お辞儀をより丁寧にした印象です。Upload By べっこうあめアマミ「ちょうだい(『それください』よりもフランクな印象)」の意味でよく使います。ほかにも、「いってきます」「ありがとう」などポジティブな気持ちを表す時に使うしぐさです。Upload By べっこうあめアマミ「いってきます」「さようなら」など、単純な別れのあいさつの時に使います。息子のテンションによって、片手だけ挙げたり、両手を挙げたり、小さく挙げたり、手をピンと伸ばして高く挙げたりします。Upload By べっこうあめアマミ久しぶりに会った大好きな相手に応える時、もしくは大好きな食べ物を早く食べたい時などに使います。手を何度も激しくたたいてあふれる気持ちを表しているようです。Upload By べっこうあめアマミジェスチャーは自由度の高いコミュニケーション方法息子のジェスチャーは、マカトンサインや手話のように、「このジェスチャーはこの意味」という明確なルールがあるわけではありません。中には療育で教わったマカトンサインが元になって派生したものもありますが、完璧な形ではなく、意味もその通りではないのです。しかも、同じジェスチャーに複数の意味があります。そうなると、「受け取る側はどんな意味か判別できないのではないか?」と思うかもしれません。しかし、意外とそこは困りません。想像してみてください。例えばお辞儀や手を合わせるしぐさ、手を振る(手を挙げる)しぐさなどは、定型発達の大人でもよく使うものだと思います。でも、そのしぐさに含める意味は、必ずしも一つに決まっているわけではないはずです。同時に、そのしぐさをされた相手も、そのシチュエーションとあわせて意味を判断しているのではないでしょうか。「このシーンでこの動作をしたなら『ありがとう』なんだろうな」「言葉はなかったけど『さようなら』と伝えたいんだろうな」という具合に。ですから、息子がこのくらい幅の広い意味のジェスチャーをしていても、シチュエーションとあわせてなんとなく判断できるものなのです。特にお辞儀などは、会釈も含めると「こんにちは」「すみません」「ありがとう」「いってきます」などさまざまな意味合いで使うもの。ジェスチャーはそれくらい自由度の高いものなのだと、改めて息子を見て思いました。意思疎通ができるようになったのは、発語がなくても言葉の理解力が上がったからジェスチャーはこのように便利なものですが、息子がここまで場面にあわせて表現できるようになったのは、ある程度大きくなってからです。また、息子の成長は三歩進んで二歩下がるというような非常にゆっくりとしたものだったため、ある年齢になって急にできるようになったというわけでもありません。ジェスチャーで意思を伝えるためには、まず相手の言っている言葉の意味をある程度理解できないといけないので、息子の中で言葉や物事の概念の理解が少しずつ深まっていった結果なのかな……と思います。息子は発語はほとんどありませんが、着実に言葉の理解は進んでいると感じています。複雑な指示の理解は難しくても、簡単な指示は通りますし、特に、興味があること、好きなことについては知っている語彙(ごい)も増えてきたと感じる場面が多くなってきました。息子は、私がなんとなく「お菓子食べる?」「ラムネあるよ」などと言うと、急いで走ってきたり振り向いたりと、普段では考えられないくらい俊敏な反応を見せます。分かりやすい「発語」という部分に注目してしまいがちですが、コミュニケーションにおいて大切なことは、相手が言っている言葉を理解し、自分の気持ちを表現して相手に伝えようとすることだと思います。成長とともに、コミュニケーションの能力も伸びてきた息子。これからも言葉の理解をもっともっと積み上げ、いつか言葉を使って自分の意思を上手に伝えられるようになったらいいなと思います。執筆/べっこうあめアマミ(監修:新美先生より)重度知的障害を伴う自閉スペクトラム症がある息子さんの、コミュニケーションについて具体的に教えて下さりありがとうございます。発語がなくても、ジェスチャーで意思表出し、それを受け取ってもらえる関係性はとても素敵ですね。特に自閉スペクトラム症がある方は、音声による発語がなくても、ジェスチャーや絵カードなどを用いることで、意思表出ができる方も多いです。音声による発語にこだわらず、さまざまな形式で、表出の種類が増えて、意思疎通ができるようになることはとても大切ですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月23日レトルトや冷凍の食品トレイの匂いが気になる…嗅覚過敏のわが子たちわが家では、基本的に私がほとんどの食事を手づくりしています(たまに外食する事はあります)。夫がⅠ型糖尿病で食事内容に若干の制限があることと、子どもたちに嗅覚の過敏があり、レトルトや冷凍食品のトレイが電子レンジで温められたときの匂いを大変嫌うためです。Upload By 寺島ヒロスーパーのお惣菜やレトルト食品など出来合いで食べられるものを、いろいろ試して見つけ出すことができれば、私の家事の負担が減って良いかなーとは思います。でも、試しに買ってきたものを食べられないとなったとき、わが家の子どもたちは断固として残してしまうので、「食べ物を残すなんて!」という心理的負担に私が耐えきれず、結局いつも手づくりしてしまうのです。限界オカン、家事を放り出すの巻今年の3月、春にしては急に暑くなった日がありました。その暑さと疲れから、私には食事をつくるエネルギーがもう残っていませんでした。料理をするどころか、献立を考えるのも、お弁当を買いに行くのも面倒!と思った私は、夫に「今日は晩ごはんのこと考えたくない!お父さん、子どもたちと買い物に行ってなんか買ってきて済ませて!」とアバウトに言い放ち、暗い部屋で映画を観て寝落ちしてしまいました。夜中に目を覚ますと驚きの光景が……!少し寝てすっきりして、夜中に目を覚ますと……娘と息子が土気色(つちけいろ)の顔をして、オレンジの手元灯のみが照らす薄暗い部屋に並んで座っていました。四角いテーブルの一辺に並んで座っているのはちょっと異様な光景でした。Upload By 寺島ヒロ何があったのか夫に聞いてみた起きてきた夫に尋ねたところ、私が寝た後、子どもたちと一緒にショッピングモールに行き、それぞれが好きなレトルトカレーを選んで購入して、ご飯を炊いて食べたのだそうです。「ずっとごきげんだったよ?」という夫。娘と息子も、特に何かあったと認識しているわけではないらしく、私が起きていると気がつくといつも通りに会話をしてきました。しかし、明らかに元気がなく顔色が悪いのです。平気なつもりで体に不調が出てしまうその日から、2人の精神状態は大変不安定になってしまいました。息子と娘はそれぞれテストを控えていたのですが、息子は何度もストレスから嘔吐してしまい、脱水症状寸前に。娘も、今まで何も言っていなかったのに、「テストができなくて2年生に進級できなかったらどうしよう」と繰り返すようになり、寝つけなくなりました。テスト前日は2時間ほど布団の中で震えた後、薬を飲んで眠りにつきました。ルーティンが崩れたら体調も崩れる?どんなことでも、彼らは非常に繊細な感じがします。今回はテストは無事に受けられたものの、原因の分からないめまいや頭痛、だるさなどの体調不良に悩まされ、なかなか回復しませんでした。わが家の凸凹きょうだいには、私が目の前で料理して、その間ちょちょい話をして、一緒に食事をして、食べ終えたら「風呂に行きなさい」とか言う儀式がないとダメだったみたいです。ルーティンが完成しないと感じているのかもしれません。正直面倒なことこの上ないですが、こういうことも考慮して将来の自立について考えなければいけないのだなあと思うのでした。執筆/寺島ヒロ(監修:初川先生)ヒロさんの不調、そしてきょうだい2人の不調エピソードをありがとうございます。今年の夏は異様に暑かったですね。暑さにやられて、食事をつくるどころではない状態になるのも分かります(同じような思いをされた方も多いですよね、きっと)。さて、私はこれはルーティンが崩れたからきょうだい2人が不調になった面ももちろんあると思うのですが、そのほかにも要因がなかったかは検討してもいいかなと思いました。ヒロさんが不調で家事ができずに寝たことを2人はどう捉えたのか、それをお父さんは2人にどんな風に話したのか、そのあたりが気になりました。誰しも体調が悪くなることはありますが、それがすぐに治るものと捉えるか、何か良くないことが始まる前兆のように捉えるか、そのあたりは(大人だとニュートラルに捉えられますが)子どもだと悪いほうに捉えてしまうこともあるかもしれません。こういう場合に、例えば「いつもお母さんは元気とは限らないんだから、一人でも自分の食事くらい用意できるようになっておかないとね!」といった激励の言葉を仮にお父さんがかけたとすると、そのプレッシャーも感じてしまうかもしれません。そして、そもそもヒロさんが不調になるくらいの暑さなので、元々みんな調子崩しかけていたのかもとも思います。そこにテスト前という条件が重なっていたら、なかなかに厳しい状況だったのかなとも想像します。ルーティンを守ることは発達特性の強めのお子さん方が安定した日々の生活を営む上ではとても大事なことです。しかし、子どもは成長し、また親は歳を取ります。年月の経過以外にも今回のように突発的に何らかの出来事が生じることはあります。そうした場合に備えて、「ルーティンその2」のようなもの(非常用ルーティンのようなもの)を事前につくっておき元気なときに試しておくか、あるいは通常ルーティンにある程度の余白(柔軟に変更の入る余地)があるとよいのだろうなと感じました。ヒロさんがいつもいつも元気でいられたらいいのですが、それなしではきょうだいの安定が図られないのだとしたら、やはりそこには持続可能性という点で、長期的にリスクを抱えているようにも感じます。誰かが頑張ることで維持される仕組みは、実はそこが損なわれたときにみんなが苦しくなってしまう可能性があるのです。持続可能性という点から、ルーティンの点検をしてみることも、良い変化や気づきをもたらしてくれるかもしれませんね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月22日【発達障害×子育てアンケート】不登校・行き渋りになったことがある?発達障害のあるお子さんの保護者の皆さんから「長い休み明けや日曜日の夜が近づくと体調が悪くなる」「子どもが朝なかなか起きられない」、というお困りの声をいただくことがあります。進学などで環境が変わったり、学校の行事があったりすると、そのような傾向が強くでてしまうお子さんもいるのではないでしょうか?そこで、LITALICO発達ナビではお子さんの不登校や行き渋りについて公式LINEでアンケートを実施。アンケートでは「お子さんに不登校・行き渋りはあるか?」「どんなときにあったのか?」や、お子さんが不登校や行き渋りのとき、学校の対応でうれしかった・助かったことについて伺いました。※「LINE」はLINE株式会社の商標または登録商標です。※アンケートはLITALICOの公式LINEにて!『お友だち登録』お待ちしています!Upload By 発達ナビ編集部Upload By 発達ナビ編集部不登校・行き渋りのとき、学校の対応でうれしかった・助かったことの回答「 登校渋りのはっきりした理由は分かりません。ただ、すぐ学校に相談したところ、無理に登校させなくても良いことや、子どものペースに合わせて行きましょうと言ってくださったのがありがたかったです。今も午後登校や保健室登校が多いですが、臨機応変に対応してくれます。欠席連絡もアプリ対応となったので親のストレス軽減になっています」「授業をオンライン配信してくれて、出席扱いにしてくれました。オンラインを通じてクラスの様子がわかり、登校につながりました」「発達グレーの息子が、夏休み明けから一歩も家から出られなくなりました。先生方は、まず子どもの様子を気にかけてくれたことはもちろん、分団登校から個別登校にしてくれたり、こちらのスタンスを理解して対応してくださいました。スクールカウンセリングでは、不登校の経験に対し『頑張ったんですね』と労いの言葉までくださいました」「不登校が始まった小学校ではあまり適切な対応をしていただけなかったが、中学校では特別支援学級の担任が毎週訪問して本人が興味を持ちそうなことを一緒にやってくださったり、3年時の担任は通信制高校受験のサポートを親身になってしてくださいました」「学校からは休むことに対してサボるという判断をされ、理解してもらえませんでした。しかしその事について相談したフリースクールの先生は、サボっていると言われたことに対し自己批判をする娘に『自分を守るために行かなくていい。行かない選択をしたことは勇気がいっただろうし、その判断は間違っていない』と娘を認めてくれて親子で救われました」「本人が先生やカウンセラーの先生に相談をしたので話を聞いてくれました。そして、それを親に連絡して教えてくれました。中学生にもなるとなかなか本人は親に直接話すことはなく、信頼できる先生に話すことの方が多くなるようです」LITALICO公式LINEアカウントお友達へのアンケート結果より回答期間:2023年9月3日~9月6日回答人数:2,255名※一部抜粋まとめ今回のアンケートでは、お子さんに不登校・行き渋りはあるかを聞いたところ、81%の回答者が「不登校・行き渋りがある」と回答。不登校や行き渋りがあったときで最も多かったのが「嫌なことがあったとき」、次いで多かったのが「夏休みなど長期休み明け」という回答でした。夏休みが明けて一ヶ月ほど経過した今、不登校で悩んでいる保護者の皆さんやお子さんが増えている時期かもしれません。その中でも、学校の対応でうれしかった・助かったことでは760を超えるコメントを寄せていただきました。「欠席に理解を示してくれた」「登校できた時は褒めてくれた」「オンラインで授業を配信してくれた」など、学校現場でも不登校に対する理解が深まっていることも分かりました。加えて「スクールカウンセラーの先生が対応してくれた」「フリースクールの先生が寄り添ってくれた」といった担任や学校の先生以外の大人との関わりについての回答も目立ちました。不登校の小中学生は年々増加傾向にあり、2023年は過去最多になりました。特に、発達障害のあるお子さんの場合、「学校」という枠組みや「標準」とよばれるようなものにフィットしづらい傾向があり、困りごとを抱えている中で不登校につながることがあるのかもしれません。お子さんの不登校に直面された保護者の方の多くは「子どもの将来が心配」というお気持ちなのではないでしょうか。LITALICOでは、発達ナビの記事や情報、またオンラインでの勉強会の開催など、さまざまな方法で不登校や行き渋りがあるお子さんと保護者の方をサポートしています。発達障害があるお子さんの一人ひとりの個性や特性に合わせた環境の整え方や、進路の選択肢について一緒に考える「勉強会」「個別相談」を行うLITALICOライフでは、【不登校の支援と将来の準備】に関する勉強会を開催しています。フリースクールや訪問教室など不登校のお子さんへの支援や、義務教育以降の高校進学について通信制高校など不登校に理解のある進路情報など、幅広く知ることができます。また、教育にまつわる資金など、現実的な準備についても学べる勉強会です。Upload By 発達ナビ編集部※アンケートはLITALICOの公式LINEにて!『お友だち登録』お待ちしています!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月21日ほかの子どもとの差を感じてしまう展示物。不器用なわが子たちわが家には自閉スペクトラム症とADHDのある18歳の息子と、自閉スペクトラム症と場面緘黙、斜視がある15歳の娘がいます。二人とも1歳半健診で要観察となりました。診断らしい診断は小学校に入ってから受けましたが、下の子は幼稚園ではなく療育園に通っていました。そんな二人はそろって不器用さがありますが、それぞれ不器用な箇所は異なります。息子は粗大運動は得意なので走るのも速いのですが、手先が不器用。そして、体育ではあまり困ることはないものの、よく転びます。一方娘は手先は器用な面もあるのですが、転びまくり、ケガしまくりです。成長するにつれて多少は改善されてきていますが、それぞれの不器用さは今も継続中です。小学校の頃は授業参観の展示物を見るのをとてもつらく感じていました。絵、習字、作文の文字などが下手で、ほかの子どもたちの展示物と比べると全く違うのです。一人だけ幼稚園から成長してない子どもがいる……という印象でした。Upload By ユーザー体験談大きくなるにつれ読める文字が書けるようになったので、現在は書字に問題は感じていないのですが、当時の私はそんな未来のことまで考えられず、わが子たちと他人との差ばかり目について落ち込んでいたのです。今なら、子どもたちはちゃんと成長するよ、そんなに苦しまなくてもいいよと伝えてあげたいです。そのスプーン何もすくってないよ⁉空のスプーンを口に運ぶ息子にびっくり!息子の忘れられないエピソードは“スプーン事件”です。指先が不器用だった息子は、長くスプーンを使っていました。ですが、スプーンもなかなかうまく使えないので、食べ物をすくえないことが多々ありました。ですが、すくったつもりなのか、何ものっていないスプーンをそのままパクっと口に持っていくのです。その光景を見たときは「そのスプーン何ものってないよ!?」とびっくりしてしまいました。Upload By ユーザー体験談これくらい不器用だったので、箸が使えるようになるか心配だったのですが、これには救世主が登場しました。幼稚園の先生です。先生が丁寧に2年間、毎日毎日、とにかくゆっくり、叱らず焦らず指導してくれました。先生が見つけてくれた使いやすい箸は、ニスなどで塗られていない四角の握りやすいもの。手のサイズに合わせて長さにもこだわってくれました。これを使い「特別なお箸だよ」「きっとうまくいくね」とポジティブな雰囲気で誘ってくれ……なんと小学校入学前にお箸を使えるようになったのです!息子の不器用さを思うと、箸が使えるなんて奇跡……と思わざるをえません。幼稚園の先生には、今も感謝してもしきれないです。Upload By ユーザー体験談また、運動神経の良さに助けられている面はありつつも、いろいろとバランスが悪い息子。ただ道を歩いているときも、よく溝に落ちてしまいます。そして運動会では転ぶ転ぶ……。徒競走などでは誰かに近づくと距離感が掴めないのか転びがちです。そこから立ち上がって追い上げると、今度は自分の足につまづき転がりながらもでんぐり返しで起き上がり再度追い上げ……。だいたいいつも2位か3位争いをしていました。転ばなかったら1位になれたと思うのですが、惜しいですよね。息子も悔しそうにしていました。遠足で20回以上……頻繁に転ぶ娘。同じ場所ばかりケガをして娘は指先は息子に比べれば器用なのですが、驚くほど頻繁に転びます。遠足ではだいたい20回以上転んでいます。膝のキズが絶えません。いつも膝の同じ場所をケガした結果、その場所からクマの毛のように太い毛が生えてくるほど……!「膝を守るんだ」という意志なのでしょうか!?先生もびっくりしていました。Upload By ユーザー体験談また、転びすぎてキズがひどくえぐれてしまうと、赤く腫れあがってしまうこともあります。そういうときは、治療は半年コース。塗り薬を出してもらい半年欠かさず塗り続けます。なぜここまで転ぶのか……不思議に思っていたのですが、中学になって斜視が発覚しました。もしかしたらこれも娘の転倒に影響があったのかもしれません。二人の不器用さを克服させたい!母がチャレンジしたこと小さな頃から二人とも不器用さを指摘されていたため、私もいろいろなことを試しました。体操教室やスイミングにも行きましたが、苦手だと最初からわかっていることはやりたくありませんよね。コーチには不器用であることなど状況を伝えて見てもらっていましたが、プールでは静かにおぼれたり、何もしていないのにプールサイドから落ちたりとなかなかうまくいきませんでした。療育でも運動をしてくれるところがありますが、当時はなかなか空きがなかったため、私はよく子どもたちをアスレチックに連れて行きました。ハイハイ運動をしたり、丸太渡りやトランポリンでバランス感覚を鍛えたり……。また、100均のものを使って指先訓練用のアイテムを作り、箸で掴むゲームにも取り組みました。これらが具体的にこういう効果を上げたということは言えないのですが、遊びに取り入れて取り組めたので楽しい思い出にもなり良かったと思います。むしろ、もっとたくさんやっていればと思っています。不器用さのある2人だけど……これからも笑って元気に過ごしてほしい不器用な二人ですが、大きくなるにつれてやれることも増えています。小さい頃、私が小学校の掲示物の前で感じた切なさは、私の中ではもう吹き飛んでいます。不器用さもそれぞれですが、性格も正反対な兄妹。母としては、二人とも不器用さを苦にせず、失敗してもくじけず、笑って元気に成長していってほしいです。イラスト/星河ばよエピソード参考/梛丹(監修:鈴木先生より)母子手帳には1歳半や3歳時健診の左側に親がチェックする項目が列挙されています。最後に「子育てに困難を感じましたか」という項目があり、私はそこを一番重要視しています。普通なら「いいえ」に〇がついているのですが、私の外来に来るお子さんについては「どちらともいえない」や「はい」に〇のついているケースが多々見受けられます。それでも健診担当の保健師さんからは何もコメントのもないまま通過しています。できるだけ早期に介入し、療育を開始するのが望ましいのですが……。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月21日就学し支援を受けられるようにするためにはどこで誰に相談すれば良い?わが家の次男Pには重い知的障害があるので、私はほとんど進路に悩むこともなく、特別支援学校へ通わせたいと考えていましたが、それでも就学前はバタバタとさまざまな手続きがあり、とても忙しかったです。特別支援学校や特別支援学級は、急に「行きたい!」と言っても誰でも行けるわけではなく、「支援を受ける」ということになるので、そのためには各種手続きや、教育委員会の審査と判定が必要となってきます。さらに、就学先を決めるにあたり、就学相談や学校見学なども行われています。そのため、特別支援学校や特別支援学級が少しでも気になるのであれば、子どもが就学する前にまずは動いて何事も早めに調べておくほうが良いと思います。たとえば、私たちの住む自治体では、子どもの学校生活に対して何らかの不安がある人のために、子どもが年長(6歳)になった年の7月頃に「就学相談会」というものが開催されます(開催時期や名称は各自治体で異なりますので、お住まいの自治体にご確認ください)。その相談をするには、前もって予約しなければならないのですが、現在通っている園側から案内される場合もあれば、されない場合もあり、「相談会へ行きたかったのに知らない間に申し込み期限が過ぎていた……」ということにもなりかねません。私の場合、園から就学相談会の案内を受けていたので、相談会に参加することができましたが、もし知らなければ相談の機会を逃してしまうので、早めの情報収集は大事だな……と感じました。Upload By みん就学相談会では何を話せば良いの?私が参加した就学相談会では、まず面談で子どもの成育歴を詳しく確認されました。この時、子どもの成育歴や受けてきた支援内容をまとめたサポートブックを持参しました。とっさに思い出せない部分もあるかもしれないので、就学の相談をする際には、このようなサポートブックをあらかじめつくっておくか、なければ母子手帳だけでも持って行くとスムーズに話せて役に立つかもしれません。また、現在の家庭や園での状況なども聞かれることがあるので、子どもの特性や困りごと、就学を前に不安に思っていること、学校への希望なども伝えられたら良いと思います。なお、就学相談会での個人情報、相談内容などは厳正に管理され、就学決定に関する基礎情報となるということでした。Upload By みんそれから、相談会では現時点での希望を話せたとしても、希望する学校を実際に見学してみないとどんな学校なのか?どんな支援が受けられるのか?分からないことが多いと思います。たとえば特別支援学校と特別支援学級で悩んでいるのなら、両方の学校を見学しないと比較もできませんし、できればお子さんも一緒に見学や体験へ連れて行くほうが、どちらが6年間楽しく通えそうなのか?をより具体的にイメージできると思います 。Upload By みん子どもの目線に立ち、より良い環境を考え進路を決断するその後は子どもが所属している施設へ相談員が訪問し、普段の子どもの様子を見た上で、保護者と園の先生から聞き取りをする「訪問面談」や、就学する前に行われる健康診断で、身体の疾患や知的発達の度合いが検査される「就学前健診」などを経て、特別支援学校、特別支援学級、通常学級のどこで学ぶことが望ましいのか?教育委員会から総合的に判断された結果の連絡があり、その上で就学先をどこにするか?親へ最終確認がありました。わが家の場合は、当初の希望通り特別支援学校に就学することになりましたが、就学相談会や学校見学を通じて、学校生活についてより具体的なイメージを持つことができたと感じています。今まさにお子さんが就学前で進路に悩んでいる方もいるかもしれませんが、子どもは日々成長しているので、悩んで当然だと思います。また、地域や学校、その年度によって担当の先生も支援の内容も変わってくるので、希望通りにはいかないことや不安も出てくるかもしれません。実際に小学校へ6年間通うのは子どもなので、1番は子ども自身の希望、そして親は子どもの成長、様子を見ながら、小学校生活をどうサポートしていくか?を考え、進路の選択ができると良いと思います。Upload By みん実際にわが家の次男Pが特別支援学校に進学してどうだったのか?については、また別の機会にご紹介したいと思います。執筆/みん(監修:新美先生より)就学に向けてどのように動いていくとよいかについて、具体的に詳しく教えて下さりありがとうございました。就学についての相談が始まるのは、地域差もあるかもしれませんが年中の終わりから年長にかけてかと思います。ですから情報収集や見学などは、可能ならそれより前の年中の年ぐらいから動き始めるとゆとりがあるかと思います。就学の相談を始めると、通っている園、療育の先生、病院、就学担当の先生など、それぞれ意見が異なることも珍しくありません。それぞれの意見も参考にしながら、保護者の方が主体的に動かれて、ご本人にも見学、体験の機会を持ったうえで、本人らしく楽しく通える場所がどこなのかを考えて、相談していくと、保護者の方も選択していきやすいかもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月21日無料の参加登録受付中!発達が気になるお子さんやご家族へ届けたい、オンラインセミナーが9/23(土)に開催決定Upload By 発達ナビアライアンス プログラム学校へ行きたがらない。ずっと家にこもっている。勉強はしないまま……。そんなお子さんが今どういう心の状態なのか、どう声をかけたらいいのか、ずっとこのままなのだろうか。ご不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。発達ナビでは不登校のお子さまとそのご家族に、ご自宅で情報を得られる機会をお届けするために「不登校サポートセミナー」を開催します。・日時:2023年9月23日(土)9:30~13:35(予定)・参加費:無料・形式:Zoomウェビナー配信・参加方法:事前申込必須。下記ボタンよりお申し込みください・内容:専門家講演、発達が気になるお子さまや不登校のお子さまを応援する企業によるセミナー※企画調整中のため、今後変更となる場合もございますオンラインセミナーの内容をご紹介Upload By 発達ナビアライアンス プログラム夏休みも終わり2学期が始まりましたが、「学校に行きたくない」と言うお子さんへ、どう関わったらいいのか・この先どうなっていくのか、不安な気持ちでいる方もいらっしゃると思います。まずはお子さまの心の状態を理解し、前向きになってくれるサインを見逃さず接していくことが大切です。今回は、自身も40歳を目前にADHDの診断を受けた不登校新聞代表が、当事者目線で、また不登校や特性のある当事者、親、識者など400人以上に取材してきた経験も踏まえてお話しいただきます。当日は視聴者のみなさまからの質疑応答タイムもご用意しています。ぜひご参加ください!講師:石井志昂 氏不登校新聞の代表。『不登校新聞』とは「当事者の声に寄り添う」をモットーに、日本で唯一の不登校に関する新聞として、98 年に創刊。 以来1000 名を超える不登校・ひきこもり当事者経験者の声を掲載。2022年からは不登校の親専用コミュニティ「親コミュ」を設立。自身も中学生で不登校を経験しており、不登校新聞にかかわり続けている。近著に「フリースクールを考えたら最初に読む本」(2022年/主婦の友社)Upload By 発達ナビアライアンス プログラム悩みの深いご家庭と向き合う無学年式オンライン教材「すらら」。2022年は不登校や発達の気になる生徒2,700名(すらら利用者全体の約6割※)が家庭学習で利用。そして、家庭学習を見守る保護者の関わり方を学ぶほめビリティ講座は、今年リニューアルし約150名の方が受講されています。※株式会社すららネット調べ本講演では、繊細で不安が強く、無気力になってしまうお子さま、挑戦したい気持ちはあっても、不安になる気持ちとうまく向き合えないお子さまなどを持つ保護者さまへ、心理療法の「認知行動療法」も取り入れた関わり方や事例をお伝えしていきます。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム発達が気になるお子さまの子育てをオンラインサポートする「発達ナビPLUS」。発達ナビPLUSの監修者でもある公認心理師・緒方広海先生に、思春期の二次障害への「特徴」とその「相談の目安」について解説いただきます。・そもそも二次障害って?・不登校や引きこもりは二次障害なの?・二次障害への対応はどうすれば?など、特性があるお子さまの二次障害に関する疑問やお困りごとへの手立てについてお話しします。Upload By 発達ナビアライアンス プログラム発達に特性がある子の「好き」をのばし、力に変えることのできる習い事や保護者さまの関わりについて解説する、保護者向け勉強会です。ゲームや動画が大好きなお子さまが、実際に好きなことを力に変えた成長事例などを交えて、保護者さまの関わり方のポイントや習い事の選び方、将来への活かし方についてご紹介します。・子どもの「好き」を力にする親の関わり方や習い事って?・事例で分かる!「好き」を伸ばした子のストーリー・将来に活きる力に変えるために今からできることは?Upload By 発達ナビアライアンス プログラム不登校や引きこもりがちなお子さまがいるご家庭向けの勉強会です。復学や居場所など、学校に行かない選択をした子へのサポートや、中学以降の進路の選択肢について解説します。1.不登校支援の選択肢フリースクールや訪問教室など、不登校のお子さまへの支援の選択肢や選ぶ際のポイントを解説します。2.中学以降の進路の選択肢義務教育以降の高校進学の選択肢として、通信制・サポート校や高等専修学校、チャレンジスクールなど、不登校に理解のある進路を幅広く知ることができます。3.教育にまつわる準備教育資金やお子さまの自立後に必要になってくる費用など、現実的な準備についても解説します。たくさんの方のご参加を、心よりお待ちしております。
2023年09月20日「インクルーシブ教育」を推進するための指針を、教育リーダーズから学ぶ2022年に国連から日本へと推進が通達されたこともあり、昨今大きな注目を集めている「インクルーシブ教育」。インクルーシブ教育とは、文部科学省で下記のように定義されています。「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。障害のある子もそうでない子も、共に学ぶための仕組みづくり。しかし実際の市区町村、学校教育の現場では、対応のノウハウが欠如していたり、人員が足りなかったり、推進が難しい現状もあるという声も散見されています。そんな中でも、すでにインクルーシブ教育を先駆けて推進している人たちがいます。彼らはインクルーシブ教育をどう捉え、何を考え、推進を実現してきたのでしょうか?この連載では、そんな彼らを「教育リーダーズ」と位置付け、その言葉に耳を傾けることで推進のヒントとなる”指針のカケラ”を集めていきたいと思っています。第一回は、神奈川県葉山町教育委員会の教育長である、稲垣一郎氏にお話を伺いました。Upload By 発達ナビ編集部プロフィール:稲垣一郎 氏東京目黒生まれ。早稲田大学を修了後、私学の教員、その後に県立高校の教員を経て、特別支援学校の高等部で3年間知的部門に勤めた後に、県の教育委員会で教育行政に12年携わる。教頭、副校長として通信制、専門学科を経て横浜北部学区の荏田高校で校長職、湘南高校で5年間校長職、2021年4月から葉山町の教育長に就任。Upload By 発達ナビ編集部インクルーシブ教育という言葉すらない、多様な人が自然に共にいる未来を目指すーー本日はよろしくお願いいたします。稲垣さんのご経歴を拝見したのですが、特別支援学校での指導経験もあるそうですね。はい、当時は養護学校と呼ばれていましたね。その前にいた学校で、下肢に障害がある生徒を担任した時に、障害のあるお子さんについてもっと知らなければいけないなと感じまして。インクルーシブなんて概念はない時代でしたけど、希望を出して知的障害のあるお子さんが通われる特別支援学校へ赴任することになりました。ーーそれまで指導してきた生徒とは、接するうえで異なる部分もあったのでは?そうですね、そこで自閉的傾向のあるお子さんのいるクラスを受け持ったんです。その子は自分の殻に閉じこもる傾向のあるお子さんで、入学式の日は体育館にすら行ってくれなかったんですよね。「そろそろ行ってみねえか?」なんて2人で話して、それで私たちの入学式は終わりましたよ(笑)。ーー前途多難なはじまりを経て、そこでの経験はどのような糧となったのでしょうか。そんな子どもたちと接することで気付かされたのは、「教師の意思で何かを無理矢理してもらう考え方は、この子たちには通用せんな」ということでしたね。でも、一人ひとりスピードは違えどちゃんと成長していくので焦る必要はなくて、保護者の方と小さな成長の喜びを共有することが大切。教育とは常に待つことである、そんなことを学ばせてもらいました。Upload By 発達ナビ編集部ーー以降のキャリアでは教育行政などに関わられた後に、名門と名高い湘南高校の校長に就任されます。湘南高校は中学校でオール5の生徒が集まるような学校だったのですが、当然ここに来ると順位がついてしまうんですよね。でもそこで見た光景は、成績上位の子どもが下位の子どもを馬鹿にしない風景でした。ーーなぜそのような風景が見られたのでしょうか。成績が下位の子でも、歌が上手かったりバスケが上手かったり、誰しも特別に得意なことがあるんです。それを認め合う姿を見て、これこそ完全にインクルーシブでオルタナティブなんだと感じましたね。葉山でもその姿を現場で何度も伝えているんです。ーーなるほど。一方で湘南高校の例とは異なり、日本の教育はこれまで「分断」の道を辿ってきたかと思います。障害があれば、特別支援学級や通級に行くものだと捉えている人が多いですよね。そうですね。例えば欧米では当たり前に、街で目が見えない人がいたら手を差し伸べるなど、誰かが困っていたら誰かが支援することが自然と根付いているように思います。でも、日本では障害がある人とない人で、そもそもの教育の場から区別してきてしまった。最近やたらとインクルーシブ教育という言葉を聞くようになったのは、そんな日本の分断されてきた背景があるからこそ。だから、インクルーシブ教育なんて言葉がいつか存在しなくなるほど、ごく自然に多様な人が一つの場所に混ざり合う社会にしていくことが求められているんだと思います。Upload By 発達ナビ編集部進む方向を示して目線を合わせ、取り組みを常に見える化し不信感を取り除くーーそして、現在に繋がる葉山町教育長としての取り組みが始まります。葉山に来て3年目ですが、人的な配置も含めて教育への支援が非常に手厚いと感じています。特に小・中学校に入っている教員ではない支援員さんはその多くが町の保護者の方で、葉山の教育に何らかの形で参画をしたいと思ってくれていることを非常に有り難く感じますね。元々PTAの役員をしていた方が集まってできた、学校を支援する組織もあります。そういう方々の個別の相談にもいつでも乗るように意識しています。ーー町の人が主体的に教育に参加されているのは素敵です。葉山町に来られてから、具体的にはまずどのような課題に取り組まれましたか?この町は先生も教育委員会もみんな熱心なので全方向に一生懸命取り組まれていて、その反面でどこに向かっているのかが見えないところがありました。だからまず、選択と集中をしていくために指針をつくったんです。これを見れば葉山の教育方針が分かるというものをつくりました。葉山町支援教育推進指針「葉山町支援教育推進指針」共生社会の実現に向けたインクルーシブな環境づくり 、社会情勢や教育的ニーズを踏まえた継続的な「あり方」の検討をベースに、 「すべての児童・生徒ができるだけ共に学び共に育つ仕組みづくり」、「多様かつ個別の教育的ニーズに合わせた連続性のある教育の実現」、「切れ目ない支援体制の構築」について示したもの。ーー指針をつくるうえで、特に意識されたことはあるのでしょうか。指針の受け手である子どもたちと保護者の方にとって、どういう教育理念を持っていたとしても反対するレベルのものは入れないようにしています。町や子どもたちに対する眼差しを持って、誰もが根本で共感できて目線を合わせることができるラインで選定しています。議論や対話をする必要があるのは教員ですが、そこはちゃんと議論をして解決していきますね。ーー誰もが共感できる指針。その後はどうしたんですか?指針はスタートラインでしかないので、その後に会議体を持つことにしました。各学校の支援担当の先生や校長先生、加えて外部の識者を呼んで、何が課題で今後はどこに進んでいくかを現場と識者が融合して話す場を年3回つくっています。ほかにも毎月校長会議があって、そこでディスカッションもしますし、校長先生や現場の先生を個別に呼んで話すこともしょっちゅうあります。教育長室の扉は常に町に対して開いているんです、もちろん飲みの場も多いのですが(笑)。Upload By 発達ナビ編集部ーー教育長と現場の距離が近いんだなと感じます。さて、インクルーシブ教育という視点でのテーマとなりますが、葉山町として具体的に取り組まれていることを教えてください。私が就任する以前からあるのですが、不登校のお子さんが小学生も中学生も通うことができる「ヤシの実教室」という教育支援教室がありますね。小学校の一部の場所を活用していて、自由をモットーに自分たちのやりたいことをして良い場なんです。通った時間については、所属する小・中学校の出席にあてられるようになっています。この教室に通って、気付けば学校に戻っているお子さんもいますね。また、「ことば・きこえの教室」という場もあります。言葉や聞く力、コミュニケーションについて心配のあるお子さんと保護者の方から相談を受け、必要な指導や支援を行う教室です。特別支援学級の対象ではないけれど、課題を抱えているかもしれないお子さんが通って、適切な個別指導が受けられるようになっています。個別課題がクリアできればこの教室からは卒業します。Upload By 発達ナビ編集部ーー分断ではなく、支援が必要な子どもたちのための場が設けられていると。さらに、どの学校にも支援級があります。土地柄オルタナティブスクールも多くて、年に1回程度お互いの活動を報告する会議で連携を取りながら、町全体として子どもの居場所づくりに取り組んでいるんです。ーー葉山町の特長の一つとして、教育長はSNSでの発信も多くされていますよね。そうですね。組織として動くだけではなく、それを町の人々に届けることも大切と思っています。だからSNSを通しても、私の考えは常にオープンにするようにしていますね。新しいことに取り組む際に、見えないことが不信感につながると考えているので、発信は大事なことです。結局のところ私たちがやっていることに革新的なことはなくて、進むべき道を明確にし、そして教育現場で今何が行われているかをちゃんと見える化していく地道な作業をしているだけ。でも、それこそがきっと推進のためには必要なことなんですよね。稲垣教育長のnote短期的ではなく、中・長期的な視点で、一人ひとりの学びと成長に向き合うーーインクルーシブ教育を推進する中で、具体的にどんな困難がありましたか?困難……。家が少し遠いので、毎日通勤するのが大変なことくらいですかね(笑)。というのは半分本気で半分冗談で、物事を推進する中でハードルがあったり人と人との軋轢が生まれたりするのは当たり前のことなので。だから、ハードルがあるから推進できないとあきらめるのではなく、そういうものだと開き直ってでも力強く進めることが必要なんだと思います。Upload By 発達ナビ編集部ーーそれでも、組織の中の一部には不安な空気もあったかと思います。それは当然あると思うので、だから単純に言うと「稲垣があれだから仕方ないよね」と私を悪者にしてあきらめてもらって、それで進んでいけばと。結果それが町のためになったら何よりです。ーーインクルーシブ教育推進のために、今まさに取り組んでいることも教えてください。実証実験として、LITALICOの教育ソフトの導入を進めています。誰もが凹凸があり、好き嫌いがあり、勉強の得意苦手があるので、自分をどう活かしていくかを子どもたち自身が理解していくことが大切だと考えているんです。支援が必要なお子さんの指導においても、教員の経験や感覚だけではなく、明確な軸を持てるのが良いと思います。Upload By 発達ナビ編集部ーー先生や生徒にとって必要な体制を揃えていかれるのですね。はい。そして今年、この3年間で各校の校長先生とも話し練ってきた葉山町としてのスクールミッションを出します。これは教育委員会が葉山の学校に対しての指針となる3本柱と考え方を明確にしたもので、このミッションを受けて各学校がスクールポリシーを出す計画になっています。各学校での個性を最大限活かしながら、目線の先はしっかりと葉山町全体で足並みを揃えていくための取り組みです。Upload By 発達ナビ編集部ーーなるほど。「楽校」という言葉からも葉山町の目指す方向がイメージできます。そして、インクルーシブ教育の考え方にも繋がるのですが、葉山の長柄小学校と南郷中学校を小中一貫校として統合します。昔から中1ギャップという考え方がありますが、葉山でも例外ではなく中学から学校に行かなくなる子たちが増えてしまう現状があるんです。だから、義務教育の6年+3年を一連の流れで考えることで、中・長期的な視点で少しでも成長を滑らかに支援していきたいと思っています。9年間で同一の指導方針を持てることは、子どもたちが夢を見つけて進路を決めるうえでも良いことです。それに、中学校の先生が小学校に来てもいいし、小学校の先生が教えた子がどうなったか見に行く、そんな交流も生まれると思います。何より生徒も喜ぶし、先生も喜ぶ、それが日常化していってほしいですね。ーーなるほど。それではインクルーシブ教育を推進する中で、変わってきた印象はありますか?一番変わったのは組織だと思います。結局教育長としての仕事も組織論として捉えることが多くて、どう職員室をマネジメントするかが大切だと捉えているんです。インクルーシブはもちろんですが教育には答えがないので、仕事においてたとえしくじってしまっても挑戦してもらうことを大切にしています。成功することが至上命題という考え方を捨てて、結果が元々目指していた場所から変わってしまってもそれで良いとすることが必要。当初はネガティブな捉え方もあったかと思うのですが、前向きな発言が波及してきて組織全体として挑戦を積み上げられているという実感がありますね。Upload By 発達ナビ編集部ーーさまざまな視点でお話をいただきありがとうございました。最後に、今後のビジョンを教えてください。ポリシーをつくることでブレない教育理念がちゃんとあって、そこに向けてきちんと学校が自走していくことが今後の理想だと思っています。そしていつか、子どもたちがこの町に戻ってきてもらって、新しいサイクルを生んでくれたら理想です。子どもたちが成長して20年後に振り返った時に、小・中学校の大切な時間を葉山で過ごせてよかったなと思ってもらえたら、それ以上のことはありません。この連載を重ねることで、皆さまの中でインクルーシブ教育への解像度が上がりますように稲垣さんは謙遜をされていましたが、隣に寄り添っていた教育委員会の課長は「今の教育長ほど一人ひとりの声に耳を傾け、寄り添っている人を見たことがない」とおっしゃっていました。その姿勢こそが先生方や保護者の方の教育へのモチベーションにも繋がり、同じ目線で進んでいくための原動力になっているようにも感じられました。Upload By 発達ナビ編集部これから全国の教育リーダーズの話を取材し、皆さんにお伝えしていきます。インクルーシブ教育の取り組みを知ることで指針を集め、今まさに実践されている、実践しようとしている方のヒントになりますように。ここまで読んでいただきありがとうございました。
2023年09月20日成績は良いのに提出が遅いため、教授から優秀な怠け者と注意されるUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイわが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族のほぼ全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。マイペースな長女ニャーイは、高校卒業後に渡米し、フロリダ州の大学で美術を専攻しました。油絵で個展を開くことを目標にして、デッサンや油絵の学びを続けていました。ニャーイは幼い時から好きなことに没頭すると時間の感覚がなくなります。彼女はアメリカの大学でも日本と同じような、おっとりとしたペースで過ごしていたようです。学内で絵を描いていて、ふと気がつくと締め切り当日かつ、時間がギリギリのことが多かったようです。提出する時は、だいたい指導教授の研究室まで猛ダッシュして届けていました。絵の作品を受け取った教授は「いつも時間ギリギリなのに、なんで出来が良いんだ?」と不思議がりました。作品の出来の良さがかえって仇となり、「君は優秀な怠け者だな」と誤解されてしまいました。つまり大学でもニャーイは、能力はあるのに怠けているというふうな見られ方をされてしまったのです。学内コンペで入選した作品を自分の不注意で燃やされてしまうUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイニャーイはめきめき画力をつけていき、大学内の作品コンペで入選を果たしました。数百人いる全学年から選ばれた2人のうちの1人だったそうです。とても名誉なことですが、残念ながらその作品は、今はもう見ることができません。ニャーイの通うフロリダの大学では、夏期休暇中は学園の校舎をイベントなどに貸し出すため、学生の私物はすべて持ち帰ることという学内ルールがありました。もし学内に忘れ物をしたら、すべて例外なくゴミとして燃やされるというものです。ニャーイは、この学内ルールをすっかり忘れて、自分のロッカーにこれまで描きためた作品をすべて置いて帰国してしまったのです。長い夏期休暇が終わり、新学期になって登校したニャーイは、コインロッカーにあるはずの私物や作品がすべて消えているのに驚き、さんざん探し回ったあとに、ゴミ焼却炉で燃やされたことを知ったのでした。2回も期限切れし、自動車の運転免許取得にのべ10年かかってしまうUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイニャーイはアメリカで自動車の運転免許取得にもチャレンジしました。アメリカは日本より運転免許が取りやすいと言われていたので、自転車に乗れなかったニャーイでもなんとかなるのでは、と私は気楽に考えていました。ところが、私の楽観的な予想は外れ、ニャーイはアメリカ滞在中に運転免許が取れませんでした。外国人であるニャーイのために、免許取得を手伝おうとしてくれた人たちがいたそうなのですが、彼らが怒って帰ってしまう事態が続出したからのようです。でも、本人からの説明ではなぜうまくいかないかという理由がよく分かりませんでした。その後、帰国したニャーイは地元で自動車教習所に通いましたが、なんと免許取得にのべ10年もかかってしまいました。2回の講習期限切れののち、3回目にやっと取得できました。技能テストや試験ではパスできるのですが、有効期限内に受講したり受験したりするスケジュール管理が恐ろしいほど不器用だったのです。特性に気づき工夫の習慣化で問題解決へ向かうUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ学生時代のニャーイをふりかえると実行機能がうまく働いていないことがよく分かります。やるべきことは分かっていても、締め切りから逆算して予定を立てることや、日々の優先順位の立て方がうまく機能していないのです。ニャーイ自身もその後、さまざまな工夫を行ううちに、次第にそのことをよく分かるようになってきて、現在は住まいの中で4つの工夫をしています。①玄関先に貴重品入れを用意する鍵や財布など、外出先でないと困る貴重品などの置き場を備えています。②カレンダーに予定を記入玄関先に月ごとのカレンダーを配置し、日々の空欄に予定を書き込んでいます。カレンダーを見た家族が予定に気づいて知らせる効果もあります。③リマインダー係を決める家族の中に声かけ係を作り、予定が近づいたら声かけをしてもらっています。④毎週ふりかえりを行う以上のことを定期的にチェックするために、毎週末に同じ人と同じ時間でふりかえりを行なっています。これだけ周到な工夫をしても、忘れ物は消えません。小さな忘れ物やトラブルはたびたび起こります。トラブルを楽しめる心の余裕が一番大切なのかもしれませんね。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:新美先生より)娘さんの貴重な体験を聞かせてくださりありがとうございます。ニャーイさん、高校卒業後米国留学されるような実力を持ちながら、持ち物やスケジュール管理などに致命的な困難さをあわせもつ凸凹の様子がとても分かりやすく伝わってきました。予定管理や持ち物管理などは、子ども時代は大人のサポートやフォローが必要ですが、大人になるにつれて段階的に本人主体にしていく必要があります。これについては、本人が自分の特性を自覚することで、初めて、何らかの工夫をしたり、周囲にサポートを求めるなどができるようになるので、その過渡期に自覚につながるようなまぁまぁのエピソードに直面することが良いきっかけになるかもしれません。ニャーイさんは、保護者のサポートが得にくい留学先での経験や、免許取得の道筋などを経て、自分の特性を乗りこなす工夫を身につけていったのでしょうか。具体的な工夫も詳しく教えて下さり、勉強になりました。ありがとうございました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月20日遊具で遊ぶことが苦手だったコウUpload By 丸山さとこ神経発達症(発達障害)があるコウは、体を動かすことが苦手なようです。中学生になった現在は「運動が苦手で少し不器用だな」と感じるくらいで普段は大きく気になりませんが、保育園の頃は遊具で遊べないレベルの不器用さが目立っていました。そんな動きの不器用さも相まってか、足元が狭いところや不安定なところでは慎重に歩きたがっていたコウ。高いところは特に苦手で、5歳の頃に集合住宅の1階の部屋から2階建ての家に引っ越した時は、階段を数段登ったところで「落ちちゃうよ~!」と動けなくなっていたほどでした。それくらい『動きの不器用さ・高いところへの恐怖心』があるコウにとって、公園は石や落ち葉やどんぐりを並べるところでした。公園や保育園などの子ども用の遊具は大体高いものです。おおむねどこの公園にもある3大遊具の滑り台、ブランコ、ジャングルジムで遊べないとなると、体を動かすことを促したい親としても「散歩しよう」としか言えない状態でした。Upload By 丸山さとこ散歩中に植物や水を眺めたり、樹木にかけられた樹種の名札や解説を読んだりして過ごしつつ、「この子はこういう感じなのか~。これはそういう個性なの?」と漠然と思っていました。お母さんの安全保証つき?地道な滑り台の練習開始!そんな風に散歩しては石やどんぐりを並べるだけでも、「まぁコウがそれを好きならそれでいいか……」と流していた私でしたが、療育園に通うようになってから、少し考えが変わりました。というのも、コウが通っていた療育園での粗大運動の時間(室内遊具での全身を使った遊び)は結構スパルタで、泣いても叫んでも徹底して取り組ませるスタイルだったからです。Upload By 丸山さとこその特訓風景を見ている内に「このままでは遊具を見ただけで泣き叫ぶようになり、公園の前を歩けなくなるのではないか……?」と心配になった私は、近所の公園でコウと滑り台の練習を始めました。滑り台のてっぺんで座ったコウの体を私の両手で挟むように支えながら、コウに安全性を説明しました。「絶対にゆっくりしか滑らないので安全です」「怖くないようにします」「怖すぎたら途中でも抱き上げて中断できます」Upload By 丸山さとこそうして実際に途中で抱き上げたり滑り台の途中で止めたりして『コウが嫌だと思えばいつでも安全に中断できること』を証明すると、コウは「本当かな……?」という表情をしつつも練習につき合ってくれました。コウが泣かない程度の地道な練習を続けたところ、意外にも数日で滑れるようになりました。「やったー」と言い、跳ねてうれしそうにニコニコするコウに「もう1回滑る?」と聞くと「滑らない」とのお返事で、その素っ気なさにコウらしさを感じつつ家に帰りました。Upload By 丸山さとこ次の日もすんなりと滑れたため滑り台は克服できたのかと思いきや、ほかの滑り台は完全拒否でした。私から見れば『大体同じ高さで同じつくりの滑り台』も、コウにとっては『全く別の滑り台』だったようです。「ほかの滑り台はどんな感じかな?調査しに行こう」とコウに言いながら(これまた無理のない範囲で)いくつかの公園を回って複数の滑り台にチャレンジしていき、1ヶ月経った頃にはベーシックな形の滑り台であれば大体滑れるようになりました。こうして、ブランコ、はしご、ロープの遊具などを少しずつ克服していったコウは、休日に市内の大型公園へ行くと喜んで遊ぶようになりました。喜んで遊ぶといっても、年齢相応の動きではありません。膝程度の高さであっても必ず何かにつかまりながらソロリソロリと降り、階段は一段ずつ足を揃えて登るなど、『動きの不器用さ』はその後も目立ちました。動きの不器用さは今でもあるけれどUpload By 丸山さとこ中学生になった現在のコウも、歩く姿を遠目に見て「多分コウだな」と分かるような歩き方をしています。それでも、あの時に遊具で遊べるようになったことは、親子共に「練習してできるようになることもあるんだな」という微かな自信になったと思います。それと同時に、「練習しても(少なくともその時点では)どうにもならないこともあるんだな」という『現状の受け入れ』の土台も整ったような気がします。『〇〇ができるのなら□□もできるだろう。〇〇ができないなら□□もできないだろう』という見通しが立たない育ち方に親子で翻弄されながら、そのときどきにできることを試していきたいなと思います。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)球技などの運動が苦手で不器用なお子さんは、発達性協調運動症と診断されることが多いです。発達性調教運動障害があるお子さんへの支援は、病院のリハビリなどでは感覚統合訓練をOTと呼ばれる作業療法士さんが実施しています。また、私のクリニックでは音楽療法の中に感覚統合も含めてトレーニングと評価を行っています。病院へ行けない場合は、公園の遊具やアスレチックなどでトレーニングすることもできますので、親子で楽しみながら取り入れてみることもお薦めですよ。もし、お子さんの様子が気になる親御さんがいらっしゃいましたら、今後きちんと向き合うためにも、ASD、ADHD、発達性協調運動症など具体的な診断、医師の診察を受けられることも視野に入れられてはいかがでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月19日学習障害当事者37の工夫を収録ーー『LDの子が見つけたこんな勉強法「学び方」はひとつじゃない!』本書は、学ぶうえで困難さを感じたことのあるLDがある当事者とその家族の協力を得て、学校生活で困った具体的な場面と、その困りごとに対しての工夫をまとめた一冊です。1章では「私たちが勉強するときにしていた工夫」として、37の工夫を紹介。「読み」「書き」「暗記」などの事例と共に、診断名と困ったこと、それぞれの具体的な工夫がイラストも交えて分かりやすくまとめられています。また、工夫に対して、応用のポイントやヒントとなるコメントもついています。2章では、学校生活や合理的配慮について、事例からさらにふみこんだ当事者へのインタビューが掲載されています。社会人となって働いている大人から、現役の学生、保護者、年代もさまざまな当事者の工夫が数多く紹介されています。ほかにも障害者支援に携わる支援者からのメッセージに加えて、編著者の野口晃菜さん、田中裕一さんの対談も収録。子ども自身が困った時に、誰に相談するかをイメージする手助けにもなるでしょう。「授業中に板書が終わらない」「漢字を覚えられない」「勉強がおもしろくない」。 学校生活や授業で、「なんだかしんどい」「どうしたらいいか分からない」と疎外感を感じている子どもや、サポート法が分からず迷っている保護者に寄り添う一冊です。『起立性調節障害お悩み解消BOOK 「朝起きられない」子に親ができること!』起立性調節障害がある子どもは、中学生の10%を占めているといわれ、思春期に発症しやすい身体の病気です。症状は、頭痛・めまい・怠さ・朝の起きにくさなどがあり、症状が強くなると、学校に行きたくても身体が思い通りにならず、遅刻や欠勤を余儀なくされてしまうことも多いといいます。著者の吉田誠司先生は、2014年に起立性調節障害に関する研究で医学博士号を取得し、現在は、大阪医科大学小児科で心身症外来を担当する子どものこころの専門医です。本書は吉田先生がこれまでの診療のなかで得た当事者や保護者の経験がまとめられており、また、それぞれの場面で保護者が抱える悩みや、その悩みに対する対処法なども紹介されています。第1章では、起立性調節障害の仕組みを自立神経機能から解説。第2章は、食事・運動・睡眠など非薬物療法のポイントなど治療について、第3章では子どもが家で1日過ごすときに親子で意識したいこと、第4章では学校との関わり方や、学校選びや受験のポイントまで組み込まれています。起立性調節障害の症状のために学校に通えない、また、やりたいことができずつらくく悲しい思いをしている子どもや保護者もいることでしょう。本書は、起立性調節障害という疾患を知り、症状の改善と、学業や将来のこと、家庭での過ごし方、そして当事者である子どもとの接し方など、保護者が抱えるさまざまな悩みの解消の一助となるのではないでしょうか。『子どもたちはインターネットやゲームの世界で何をしているんだろう?児童精神科医からみた子どもたちの「居場所」』本書は、ゲームやアニメ、マンガの愛好家であり、子どもとゲームやインターネットとの関わりについて各方面での発信にも力を注ぐ児童精神科医の関正樹先生が、子どもたちの「居場所」としてのゲーム・インターネットの世界について、最新鋭の調査データや研究、そして臨床事例を交えて解説した一冊です。本書では、インターネットやゲームの世界に子どもたちが傾倒するには、その子どもたちなりの背景があると記されており、子どもたちがゲームやインターネットに没頭していく過程が丁寧に分析されています。そして、大人がその世界を知るために気をつけておきたいポイントを取り上げると共に、事例などを通じて子どもたちにとっての「居場所」としての意義を提案し検討するという形が取られています。また、本文中には、「ストリートファイター」や「スプラトゥーン」など実際のゲームも事例として登場し、ゲーム愛あふれる関先生ならではの視点も見どころの一つです。ゲームやインターネットの世界について網羅的に記述されている本書では、発達障害・不登校の子どもたちとインターネットやゲームの世界についても取り上げられています。「居場所」を求める子どもたちのなかには、リアルの世界で大きく傷ついたり溺れそうになっている子どももいるのかもしれません。SNSで胸のうちをつぶやかざる得ないときにも、それを責めるのではなく、共感的にその背景に目を向けることの重要性も記されています。本書は、目の前にいる子どもと接していく参考になると共に、子ども・青年たちに関わる支援者や臨床家や教育現場の教師など、「子どもの居場所のあり方」について関心のある多くの方にぜひ手に取ってもらいたい一冊です。子どもも家族も楽しい食事時間を過ごしてほしいーー『ダウン症のある子どもの離乳食から食事へー食べる機能を育てるためにー』ダウン症(21トリソミー)とは700人から1000人に1人の発生頻度と言われる21番染色体が1本多く存在することで起こる疾患です。ダウン症がある子どもは低緊張のため、哺乳力が弱いだけではなく、口唇を閉鎖する力も弱く、舌も突出しやすく、また咀嚼の発達自体もゆっくりで丸呑みしやすいといったことも多い傾向があるため、離乳食や食事の進め方にも注意が必要だとされています。本書は、日本ダウン症療育研究会会長であり大阪医科薬科大学小児科名誉教授の玉井浩先生が監修した、「ダウン症のある子どもの離乳食や食事はどうやって進めていけばよいか?」ダウン症のある子どもの家族の悩みに答える実践的な解説書です。食べさせ方や座り方、食事道具の選び方や使い方をはじめ、家族や保育者からよくある相談や困りごとをまとめた41のQ&Aなどをイラストや写真を交えて分かりやすく解説。さらにQ&Aでは成人になってからの食に関する悩みについても記されています。また、巻末付録には成長曲線(0〜36ヶ月・0〜18歳)も掲載。「子どもも家族も楽しい食事時間を過ごしてほしい」という想いを込めて書かれた本書。ダウン症がある子どもやその家族を支える医師や看護師、栄養士などの医療従事者、保育士をはじめとする保育関係者に、手元においてもらいたい一冊です。『「共感」からはじめる 発達障害のある子どもの支援教室における行動―情緒の問題を解決する6つのステップ』発達障害のある子どもの暴言や暴力、パニック、さらにゲーム依存といった行動上の問題の背景には、障害からくる特性だけではなく、養育環境や対人経験などのさまざまな要因が絡んだ子どもの情緒面の苦しみがあるのではないでしょうか。本書は、小中学校の通常学級や特別支援学級で発達障害のある子どもと関わる教員や支援者が、子どもが起こす行動上の問題の先にあるその背景を理解し、子どもの情緒に共感して適切に関わり、効率的な支援が行えるようになるための6つのステップを解説しています。著者は、宮城教育大学大学院教育学研究科教授の植木田潤先生。本書のなかでは、植木田先生が25年以上にわたり継続してきた教育相談やカウンセリングのなかで培ってきた事例も組み込み、事例理解を通じて「共感からはじめる支援」を体感できる内容となっています。また、障害特性や目に見える行動だけではなく、養育環境や対人経験といった「育ちの軌跡」や、それらによって生じた価値観などにも注目し、子どもだけではなくその家庭との関わり方のポイントや具体的な支援方法についても詳しく解説されています。発達障害がある子どもたちが示す行動上の問題は、実は、子どもたちの発する救済信号かもしれません。本書は、その行動や情緒の問題の背景にある子どもたちの想いや願いを理解し、支援しようと日々奮起している教員や支援者に読んでほしい一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年09月17日赤ちゃんの頃から気になっていた娘の発達。成長して一見目立つ困りごとはないけれど…はじめまして、マミヤと申します。わが家は主人、私、小学校3年生の娘(8歳)の3人家族です。娘のしぇーちゃんは2歳4ヶ月の時に自閉スペクトラム症と診断されました。娘が産まれてすぐ「寝ない、飲まない、泣き止まない」ことで育てづらさを感じ、歩き出してからは多動や意思疎通の難しさが気になるようになりました。1歳半健診では発語の少なさや指差しができず「要観察」。その後自閉スペクトラム症の特徴と思える行動(逆さバイバイやクレーン現象など)が増えてきたので、「娘に発達障害があるのではないか」という思いが私の中で次第に強くなりました。その後、発達相談を経て、娘が2歳になってすぐに療育機関へ通うことになりました。就学までいくつもの療育機関に通い続けた結果、2~3歳頃に心配していた多動は徐々に落ち着き、オウム返しも減り、年長になる頃には、娘は一見目立つ困りごとはない元気な女の子に成長しました。Upload By マミヤ小集団療育でも一斉指示が通らない、聴覚過敏もある娘。就学先は…ただ、目立つ困りごとがないからといって、娘の自閉傾向がなくなったわけではありませんでした。年長で小集団療育に通っていた時のことです。療育に参加していた子どもは娘を入れて5人。子どもたちの目の前で、先生が活動の開始を伝えるのですが、何回やっても娘には先生の「それでは始めて下さい」が聞こえませんでした。さらに、活動を始めている周りの子どもを見ることもありません。個別の声がけをされるまでボーっとしているのです。また、雨が激しい日や蝉の声が聞こえる時期には、 娘は「外の音で室内の声が聞こえない」と訴え、これではとても通常学級の中で学校生活を送れるとは思えませんでした。娘をよく見て下さっていた小集団療育の先生のすすめもあり、娘が楽しく通えることを優先して特別支援学級の情緒障害学級を希望しました。Upload By マミヤ登校渋り、不登校…心配事もあるけれど、娘の個性に寄り添ってUpload By マミヤ娘は好奇心旺盛で負けず嫌いです。「やりたい!」と思ったら何度も練習して習得するガッツがあります。好きな言葉は「あきらめない」。これは大好きな戦隊ものや美少女戦士から影響を受けていると思います。活発でゲームが大好きなのでお友達は男の子が多いです。逆に細やかなコミュニケーションは苦手で親しい女の子の友達はいません。また正義感が強く、納得できないことをいつまでも気にしたり、自分が理解できない行動をする相手を嫌悪したり怖がったりしてしまうことがあります。「学校にいるだけですごく疲れてしまう」と教えてくれたこともありました。特別支援学級に入れたので「はい、安心」とはいかず、入学後は娘の登校しぶりや不登校など現在も悩みはつきません。娘の小さい時の様子や小学校生活での出来事、親子関係などもお伝えできたらいいなと思っています。執筆/マミヤ(監修:新美先生より)マミヤさん、初めまして。しぇーちゃんの魅力が伝わる素敵な初回コラムをありがとうございます。好きなものがいっぱい、好奇心旺盛で負けず嫌いで、好きな言葉は「あきらめない」ってとっても素敵ですね。また「学校にいるだけですごく疲れてしまう」と自分の状態を言語化できるのもすごいです。学校という枠は、しぇーちゃんには窮屈なところがあるのかもしれません。そんな学校とのお付き合いで日々の調整を担う親のほうもとっても疲れますよね。コラムでいろいろ聞かせてもらえるのが楽しみです。よろしくお願いいたします。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月16日4つの商品化候補についてアンケートとモニターを実施!発達ナビ×フェリシモC.C.Pコラボ商品企画第5弾では、発達ナビの「みんなのアンケート」や、教員、放課後等デイサービスのスタッフの方にお集まりいただいたオンライン座談会を経て、4つの商品化候補が生まれました。月実施「発達ナビみんなのアンケート」・プリントやお手紙を色別で仕分けできる「カラフルトレイタイプの収納BOX」・あちこち置くのをストップ!「いったん置き場収納ラック」・玄関先や鞄など、色んな所に貼って忘れ物防止!「貼ってはがせるタスク管理シール」・いつでもどこでもタスク管理!「文字が書けて簡単に取れないリストバンド(紙製)」これらの候補について、さらに検討を深めるため、6月には追加アンケートを実施しました。また、7月には、オンライン座談会に参加いただいた教員、放課後等デイサービスのスタッフ、臨床心理士などの支援者のみなさんに、サンプルのモニターをしていただきました。実際に放課後等デイサービスなどの現場でお試しいただくなど、リアルなお声をいただき、大変参考になりました。 アンケートやモニターにご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!「カラフル収納BOX」と「タスク管理リストバンド」の商品化が決定!今回商品化が決定したのは、以下2つのアイテムです! アンケートやモニターをしていただいた方のお声といっしょにご紹介します。Upload By 発達ナビ編集部プリントやドリル、紙類などを、どこに収納したかを視覚的に分かりやすく、探しものが楽にできるように引き出しを色分けした収納トレイです。素材は紙製(段ボール)で、A4が入るサイズの引き出しが3段、トレイの深さは約5cmを想定しています。引き出しの中にミニトレイを入れるかどうかも検討中。アンケートの声「いいな」と思うところ・色分けされていると書類を見つけやすい(山口県 ぽむさま)・A4サイズが入るところ(東京都 むさぼうさま)「もう少し、こうだといいな」と思うところ・お母さんに渡すポスト的な大きな段があり、宿題、提出物が入るといいかなあと思います。いろいろなグッズでカラーがあふれて疲れるので統一感のあるカラーがあればいいな(兵庫県 梛丹さま)・紙製の引き出しのケースが、使っているうちに出し入れしにくくなる可能性があるので、スムーズなまま引き出しができるといいなと思っています(東京都 むさぼうさま)モニターいただいた方の声・放課後等デイサービスで運用する場合、高校生、中学生、小学生で引出しを分けて使えるとは思った。色で分かれているので何色の引き出しに入っているという指示が伝わりやすい。工作で使う材料や折り紙を入れて使用したい。引き出しの中のミニトレイは、ビーズなど細々したものを入れるのには便利(東京都 雨琴さま)・子どもの学校のプリント類を入れて使用。深さはこのままぐらいがちょうどよい。上に物を載せると段ボール素材のためたわんでしまいます。しっかりした作りならよいなと思いました(島根県 モンタナさま)Upload By 発達ナビ編集部タスクを書き込める紙製のリストバンドで、腕に巻いておくことで、うっかり忘れを減らす努力をサポートします。簡単に取れないような仕様やバンドそのものを失くさない工夫を検討中です。アンケートの声「いいな」と思うところ・リストバンドだから手に書かないで済む(兵庫県 梛丹さま)・メモ帳に書いただけでは忘れがちな予定やメモを書いて移動できるのはよいと思います(鳥取県 甘太郎さま)「もう少し、こうだといいな」と思うところ・言葉を省けなかったりメモの書き間違いが多いので、記入部分の幅(横じゃなくて縦幅)を広げてほしい(福岡県 ちほさま)・耐水性があるといい。他人に見られない工夫があるといい(山口県 ちほさま)モニターいただいた方の声・研修時に学習メモを記入しました。罫線がなかったので縦書きにしたり横書きにしたり自由度があって便利でした(東京都 雨琴さま)・職場の子どもたちに、忘れ物防止、タスク管理(着替えやオムツ替え)、宿題の内容を記入して使用してもらいました。タスクの量や字の大きさを工夫して書いてくれていましたが、お子さんによっては大きい文字や詳しく書かないといけない場面では、スペースが少なく感じられたようです。感覚過敏のお子さんは最初はこわがっていましたが(どんどん締まるような気がして)、すぐに慣れたようでした。服に合わせて選べるカラー、カワイイ柄や好きなキャラクターなど、カスタマイズできると喜んでつけてくれそうです(京都府 にゃあんさま)2024年春発売予定。お楽しみに!「カラフルトレイタイプの収納BOX」は、引き出しが色分けしてあることで、視覚的に区別がつき、整理整頓がしやすくなるという点に期待を寄せていただきました。一方で、段ボール素材のため、壊れやすいのではと心配するお声もありました。紙製の軽さと扱いやすさを活かしつつ、丈夫に仕上げていきたいと考えています!「文字が書けて簡単に取れないリストバンド(紙製)」については、いつもはやることをペンで手に書いておくという人が複数いましたが、リストバンドなら、手に書かなくても済む!と肯定的なご意見をいただきました。これから、感覚過敏のお子さんへの配慮や、ファッションになじみやすいデザインの検討を含め、発売に向けて準備していきます。発売は2024年3月中旬ごろを予定。より生活に役立つアイテムをお届けできるよう、検討を重ねていきます。完成を楽しみにお待ちください!※それぞれクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移します(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月15日強いストレスとプレッシャー。小6ですでに二次障害の兆し学校で壮絶ないじめにあっていたけれど、勉強はできた私。私が小学生だった30年ほど前は、発達障害についてなんてほとんど誰も知りませんでしたから、親や先生を含め、周囲の大人は私を神童扱いしていました。持ち前のバイタリティで出世しつつあった父は、私にもそのバイタリティを求め、厳しく叱咤激励しました。「学校に行かなくなったら将来路頭に迷うぞ」「お前は頭がいい、エリートになれる。将来エリートになって、いじめっ子たちを見返してやるんだ」。普通の小学校高学年の子どもが、こうした言葉をどのように理解するかはわからないのですが、ASDの私はこうした言葉を字義通り解釈し、怖くて震え上がりました。そして、「死ぬ気で学校に行き続け、有名大学に入り、ゆくゆくは有名企業に入るなり弁護士とかになるなりしなければならないんだ」と思い込むようになったのです。小6の時、それまで無条件で可愛がってくれていた祖父が亡くなりました。唯一の心の支えであった彼を亡くした私は、さまざまな精神症状に苦しむようになります。教室に入るとき、どのような顔で、どこに視線をやりながら、どっちの足から入るか。何歩で、どういった角度で自分の席を目指すか……。そういったことを頭の中で一生懸命シミュレーションする。クラスメートの声が、すべて自分を攻撃し、嘲笑しているように聞こえてくる……。もし当時、医療とつながる機会があったなら、何かしら二次障害の診断が出ていただろうと思います。頼る先も、情報も選択肢もない日々でも、当時の親や先生が、私に障害があり、二次障害を起こしているであろう状況だなんて知るよしもありません。「子どもがメンタルに不調を感じたら大人と同じように専門家につなぐべき」などという知識もありません。私自身も、ただ自分が「頭がおかしく」て、「悪い」んだとばかり考えて、自分を恥じていました。勇気を出して相談したところで「あと少しなんだから頑張れ」とか、叱咤激励が返ってくるか、母の場合はショックを受けて寝込んでしまったりするだけだということもわかっていたので、自分が苦しいということは周囲に対してひた隠しにしていました。私が中学生になる頃には母の言動もだんだん異常になっていき、家庭生活も厳しさを増しました。自治体の広報だよりなどから「精神保健福祉センター」というものがあることを知り、親に隠れて電話相談に頼ったりしていました。しかし、結局そこでも理解ある対応はしてもらえず、「お母さんに感謝しなさい」などと叱責されてよけいに落ち込んだり……。結局、何十年もあとになってから、母は強迫症やためこみ症といった精神疾患だったことがわかったのですが、そういったことも当時は誰ひとり気づかなかったわけです。知識・情報と選択肢が欲しかった今となっては、周囲の大人には「子どもにも、学校に行く以外にさまざまな選択肢がある」「勉強ができること、エリートになることだけが、あなたの存在意義ではない」と教えてもらいたかったと思います。それだけではなく、発達障害も含めたさまざまな精神障害について、もっと世間に知識や情報が普及していてほしかったし、困ったときには家庭で抱え込んでいないで福祉など外側の人に頼っていいのだということも知っていたかったです。私はそれらのないまま、一人で傷だらけになり、いわゆる青春のすべてを勉強のために犠牲にして無理を重ねました。大学新卒時の就活がうまくいかなかった時には「エリートになっていじめっ子を見返す」という唯一の精神的支柱を失って完全に心折れてしまいます。その頃には母の精神状態もさらに悪くなっており、そのまま20代を準ひきこもりで過ごすことに……。今、発達障害についての知識は深まっていますし、子どものメンタルケアの環境も整いつつあるので、私のような状況に追い込まれる子どもは少なくなっているかもしれません。それでも、保護者のみなさんには、相手が子どもだからといって良かれと思ってさまざまなことを決めてしまうことはせず、多様な選択肢を見せて選ばせてあげてほしいと思います。たとえば、特別支援学級やフリースクールに行ったほうがいいかもという事態になったとき、保護者としてはできるだけ頑張って通常学級に行かせたいと思うかもしれません。しかし思い返すに、私の場合は通常学級にこだわりすぎず、特別支援学級やフリースクールに行かせてもらったほうが、いま背負っているような傷や二次障害を背負わずに済み、結果的に社会適応度も上がって、もっと楽に幸せに生きられたのではないかと思っています。もちろん、特別支援学級やフリースクールに行くことでのデメリットもあるとは思いますが、本人が教育を受ける中でできるだけ傷つかず、結果的に強くポジティブに生きられるようになることがいちばん大事なのではないかと、私は思うのです。支援を得ること、人と違う生き方をすることもとても素晴らしいこと、あなたが最も楽で幸せな道を選ぶのが大事なのだと、お子さんに伝えていただければ嬉しいです。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)障害者支援法という法律もできたように、時代とともに神経発達症に対するとらえ方には変化がみられています。しかし残念ながら神経発達症に対する支援や知識はさほど以前とは大きな変化がないように私は感じています。各自治体において医療・教育・福祉・保健の連携がまだまだないのも一因であると感じています。学校の先生、小児科医、精神科医などの神経発達症に関わる人びとの知識もまだ十分とは言えないでしょう。車いすのように目で見える障害であればわかりやすいのですが、神経発達症は困りごとが見えづらく、また障がいというより特性なので、わかりづらい面があります。最近は神経発達症に関する知識が深まったとはいえ、いまだにかかりつけ医でも診断することが難しいのです。特別支援学級やフリースクールに在籍していても、理解の乏しい環境下の場合、通えなくなるお子さんも多く目にしてきました。小・中・高と診断されないまま、大学生や社会人になって初めて受診する患者さんも多くいらっしゃいます。誰か一人でも傾聴して認めてくれる人がいれば最も楽で幸せな道を選ぶことができるはずです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月15日自閉スペクトラム症のスバル、幼稚園年少の困りごと息子のスバルは3歳で自閉スペクトラム症と診断されました。2歳から通園していたプレ幼稚園は、診断を受けたと同時に退園になりました。その後、新たに幼稚園を探しはじめ、スバルを受け入れてくれる幼稚園に出合い、無事に年少から幼稚園に入園することができました。しかし、入園できたからといって全てがうまくいくわけではなく、入園当初はプレ幼稚園に通園していたときと同じように教室の中をふらふら歩いたり、教室を出て廊下の窓から車を眺めたりしていました。ところが6月のある日からピタッと歩き回らなくなり、座るべき時間に座り、話を聞くべき時間に話を聞くようになりました。話は聞いているだけで右から左へ抜けてしまっているみたいでしたが、それでもスバルの中で点と点が繋がるような何かがあったのだと思います。それをきっかけにスバルは集団生活のコツをつかんだようで、少しずつ社会のルールを学習しクラスへ馴染んで行きました。スバル一人と向き合うとたくさんの困りごとがあるのですが、3歳になったばかりや4歳の子どもが一緒に活動する「年少クラス」という空間では個人個人の成長の差が激しく、スバルの困りごとは飛び抜けて目立つものではなくなりました。この時は「スバルはこのまま『ちょっと変わったクラスメイト』として小学校では通常学級で過ごして行くのかな」と思っていました。年中のスバルの困りごと年中になり、周りの子どもたちの成長に置いていかれる形でスバルの困りごとが目立つようになりました。細かいことはたくさんあるのですが、大きく気になる部分は3つ。1つめはコミュニケーション能力。人が好きでグイグイと距離を詰めるわりには、一方的でズレた会話をするのです。その様子はまるで一人だけ別に撮影した動画を合成しているようなチグハグなものでした。いわゆる「空気が読めない」立ち振る舞いなのですが、よく観察すると人の顔色なんかはしっかり読んだ上で空回りし続けている感じもしました。また自分の得意な分野に関しては大人のような言葉を使いまくし立てるように話すのに、そのほかのことは2~3歳年下のような語彙力でたどたどしく話しました。2つめは運動能力。のちに「発達性協調運動症(発達性協調運動障害)」と診断されるのですが、年中の時点では両足ジャンプがかろうじてできるくらいで、ケンケンはもちろん片足立ちすらできませんでした。ダンスは踊れないし、あらゆる道具は使えないし……。運動面で苦手なことに関しては幼稚園の先生がマンツーマンに近い形で手伝ってくれていました。3つめは集団の中では集中して話が聞けないこと。プレ幼稚園の頃から、一対一で話すと理解ができるのに先生が集団に呼びかけた「おかたづけの時間ですよ」と言った一斉指示が通らないという悩みがありました。幼稚園に入園してからのスバルは日に日に成長し、簡単な指示は通るようになりました。しかし、工程が複数あるような複雑な指示になると最初と最後くらいしか覚えていないようでした。Upload 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星あかりそれらのことを踏まえ、年中の冬に療育の先生から「就学相談」の資料をもらった時には少人数で学べる「特別支援学級」を進路の候補として考えるようになりました。家や公園など少人数で過ごすときと比べて、集団の中に入ると爆発的に困りごとが増えるスバルをずっと見てきたのでぼんやりと「少人数が合っているのだろうな」と思いました。ただ自分自身が経験したことがない「特別支援学級」に少なからず不安はありました。特別支援学級ってどんなところ?いざ学校見学へ!年長の夏にある就学相談がスタートする前に、わが家の希望を固めておく必要がありました。特別支援学級を第一候補と考えてはいましたが、特別支援学級のことを私は何も知らないのです。そうと決まれば見学です。いろいろと調べた結果、学区の小学校の特別支援学級(知的クラス)、学区外の小学校の特別支援学級(情緒・自閉クラス)へ見学に行くことになりました。私たちの住んでいる地域は情緒・自閉クラスがある学校の数が少なく、情緒・自閉クラスへは学区外から越境して通学する人もたくさんいます。(※就学に関する制度は自治体により異なります)逆に情緒・自閉クラスを希望していても距離的に越境通学が難しい場合は、学区の小学校の知的クラスを選択する人もいます。当時同じ療育に通っていた仲間たちの中に特別支援学級(情緒・自閉クラス)を希望しながらも距離的な理由から知的クラスや通常学級を選択する人もたくさんいました。わが家は学区・学区外どちらの特別支援学級も候補に入れ、見学することにしました。どちらの学校も「納得するまで何度でも見学に来てください」と言ってくださったので、本当に何度も足を運びました。通常授業の日、イベントの日、穏やかな日、荒れている日。夫婦で行ったり、一人で行ったり、スバルを連れて行ったり、義母を巻き込んだりもしました。その結果、学区外の情緒・自閉クラスをわが家の希望として就学相談に挑むことに決めました。情緒・自閉クラスの特別支援学級の中で活動し成長するスバルの姿が一番ハッキリと想像できたからです。見学に行く前は、閉ざされた印象を持っていた特別支援学級でしたが、そこは明るくのびのびと過ごせる「ホーム」のような場所でした。見学に行くたびにニコニコと迎え入れてくれる子どもたちにスバルを重ね、特別支援学級での生活に明るい未来を感じました。知らないがゆえの漠然とした不安はなくなっていました。この時すでに、季節は年長の夏になっていました。年長の夏、就学相談がスタート就学相談がスタートしました。春に就学前検査(発達検査)があり、夏から説明会などがいくつかと面談の日がありました。面談の日は私と夫とスバルで行きました。療育ママ友の口コミで「母親だけで行くよりもスーツを着た父親を同行させると話し合いがスムーズ」と聞いていたので、夫にはスーツを着せました。まずは呼ばれた子どもが数人ずつ部屋に入り、係の人の指示に従って行動する様子を、数人の大人がファイルに何か書き込みながら観察する……そんな緊張感のあるオーディションみたいな部屋をいくつか回って、最後に面談がありました。面談では学区の知的クラスではなく、わざわざ学区外の情緒・自閉クラスを希望していることについて聞かれました。どうやら数の少ない情緒・自閉クラスは狭き門のようでした。私は用意して来たありったけの志望動機を伝えました。渾身のスピーチだったと思いますが、面接官には学区の小学校の知的クラスを薦められました。「情緒・自閉クラスの希望者が多すぎて全員の希望は聞けない」という意味の話を遠回しに言われました。しかし今まで真剣に悩んで決めた私たちの希望を、簡単には諦めることができません。結果的に希望通りにいかなかったとしても、この場では「何と言われても情緒・自閉クラス希望」である意志を伝えました。Upload 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星あかりそして秋の終わり「学区外の小学校の特別支援学級(情緒・自閉クラス)」に就学が決定した通知が届きました。小学1年生から始まった特別支援学級での生活フタを開けてみると、見学時には1クラスしかなかった情緒・自閉クラスは3クラスになっていました。新1年生だけではなく、ほかの学年にも新しく入って来た子どもたちが増えていました。多くの子どもが門前払いされてきた扉が、少し開いたのだと思いました。現在スバルは、先生やクラスメイトに恵まれて毎日楽しく通学しています。苦手なことも多いスバルですが、特性に配慮した学習方法で得意を伸ばし、苦手をちょっと底上げしながら学んでいます。さんざん見学して悩んで悩んで決めただけあって、スバルにはこのクラスが合っていたと思います。願わくば、一人ひとりの子どもに合った学びの場がいつでも開かれていますように。執筆/星あかり(監修:初川先生より)就学にまつわる幼稚園年中時からの経緯と思いのシェアをありがとうございます。入念な情報収集、スバルくんの課題を見取ること、それをふまえた就学先の希望。あかりさんがスバルくんの小学校生活に向けて、かなり周到にご準備されたことがよく伝わってきます。あかりさんは年中の頃から就学について・就学相談についての準備を始めたとのことですが、自治体によっては、年長の4月以降でないと就学相談の問い合わせ自体受付されない場合もあります。そのあたりはお住まいの自治体にご確認してください。ただ、特別支援学級や通常学級に関して、学校公開など広く公開されている際に見学することは年中時でもそれ未満でも可能です(※コロナ禍によって地域住民に公開されていない場合もあるので事前に学校に確認した方が安全です)。未就学児を連れていくとなかなか落ち着いて見学できないと思いますので、可能ならまず保護者だけで見学に行くのをおすすめします。特別支援学級がどんな場所なのかということは、あまり知られていないことも多いと思います。見学をしたうえで、わが子に合いそうかどうか検討することはとても大事です。また、あかりさんがされたように、特別支援学級のさまざまな場面(教科学習、自立活動、行事の練習など)を見に行く、一人で、あるいは家族と見に行くなど何度か足を運ぶことは素晴らしいことです。一度見た印象で決めてしまうのはあまりおすすめしません。年長になり、就学相談に正式に申し込むことで、特別支援学級の見学を就学相談担当が仲介してくれることもあります。そのあたりも自治体によりなので、ご確認ください。スバルくんは、あかりさんの入念なリサーチと「情緒・自閉クラスの特別支援学級の中で活動し成長するスバルの姿が一番ハッキリと想像でき」、それを就学相談の場で熱くお伝えになり、また、就学相談担当による行動観察や検査の結果など総合的に判断されて、その通りの提案が出て、情緒・自閉クラスの特別支援学級に就学されたのですね。現在楽しく通学できているとのこと、何よりです。このコラムを読んで、こんなに早く準備に動き出さなければならないのか等焦りや不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、就学相談にエントリーすること自体は、年長の春夏ごろでも十分に間に合います。また、秋には各学校で就学時健康診断が行われますが、そこで就学相談を勧められて申し込まれる方もいるのでそれ以降でも間に合います(ただ、締め切りもあるので、悩んでいる方は秋のはじめごろにはエントリーすることをおすすめします)。就学相談はさまざまなプロによってお子さんが小学校で充実した生活を送るためにはどのような環境で、また周りの大人がどのようなことに気をつけて(どのような合理的配慮をして)過ごしたらよさそうかを検討し、提案という形で保護者にフィードバックするものです。お子さんの今の様子をもとに、少し先の未来について一緒に検討してくれる場ともいえます。どこに就学するかは提案が出てから家庭でまた考えてみることができます。そして、お子さんが最終的にどこに就学するのであれ、就学相談でのお子さんの行動観察や発達検査の結果などをふまえた見立ては入学する学校に共有してもらえるので、学校がお子さんを受け入れる準備を整えた形で入学式を迎えることができます。そういう意味で、就学相談に申し込むこと自体に葛藤を感じる方は、ぜひ前向きに検討していただければと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月14日3歳でDQが境界域であることがわかった息子。自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの特性もありそうで…現在6歳の息子は、3歳9ヶ月の時に市の発達支援センターで「新版K式発達検査」を受け、3歳0ヶ月相当の発達で境界域であることが分かりました。まだ医療機関を受診していないため正式な診断はないのですが、日頃の行動を見ていると、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの特性がそれぞれ当てはまるように思います。服が濡れるとすぐ着替えたがる、大きな音が苦手ですぐ耳をふさぐ、強い匂い(特に食べ物の匂い)が苦手、急な予定変更や初めての場所が苦手、お気に入りのテレビ番組のナレーションやYouTubeのセリフなどを丸覚えして話す……これらがASDの特性の表れではないかと私は感じています。また、じっとしているのが苦手で大抵モゾモゾしている、園では先生の説明が長くなると途中で集中を欠き、近くのお友達としゃべったりよそ見をし始める、相手が話している途中で飽きてくると自分がかぶせてしゃべってしまう、会話が一方通行になりがち、片づけが苦手で、自分がモノを置いた場所をすぐ忘れる、興味がすぐ別のものに移る、イライラのコントロールが苦手……などといった多動性・衝動性もあるように感じています。天真爛漫な甘えん坊で、おしゃべりが大好きな息子。絵本やDVD、YouTubeなどが大好きで語彙が豊富で表現も面白く、大人を笑わせるのが得意です。ちょっと内弁慶で人見知り、失敗するとクヨクヨしがちなところもありますが、わが家のかわいいかわいい宝物です。しっかりと目も合うし、言葉が出るのも早く、コミュニケーションも取りやすかった息子。まさかのちに発達の遅れがわかるとは、思いもよりませんでした。まるでパリピ⁉陽気な酔っぱらい⁉はしゃぎだしたら止まらない乳幼児期の息子乳幼児期からおしゃべりが大好きな息子でしたが、1歳後半くらいからでしょうか、しゃべり出したり、はしゃぎ出したりしたら止まらなくなるようになりました。無邪気でかわいいのですが、「この陽気な酔っぱらいみたいなテンションの高さは誰に似たんだろう……。夫も私も物静かなほうなのに……」と思うほどでした。そして1歳11ヶ月頃、保育園で習った歌を先生から聞いてYouTubeで流してあげると大喜びして踊るようになりました。陽気に歌い踊る様子はパリピのようで(?)とてもかわいかったのですが、何回も何回も繰り返し再生させられ一向に止まりません。さすがにそろそろ終わりにしようと「もうおしまい」と言うと息子はギャン泣き!おさまるまで待つのが大変でした。さらに息子はこれ以外の遊びに興味を示してくれなくなってしまいました。園でもそんな感じだったと連絡帳に書いてあります。毎日毎日踊り続ける息子を見て、他の遊びはしないのかな?と疑問に思いつつも、でもそれも子どもだからかなと思っていました。Upload By ユーザー体験談その後2歳になるとイヤイヤ期が始まり、息子のパワーが増大!私の体調が悪い時や家事をしている時でも「一緒に遊んで!抱っこして!」などと絶対に譲らず、「ちょっと待ってね」ができないことにしんどさを感じ始めました。「日頃仕事で構ってあげられていないし、子どもだから仕方ないよね」と思っていましたが、これらが『子どもだから仕方ない』というレベルではないということが1年半後に分かるのです。歯科健診で大パニック、内科健診では着替えられず…。それを見た医師からの言葉は月日がたち、3歳6ヶ月児健診を受けた時のことです。臨床心理士さんによる検査(積み木を使った検査や、絵を描く検査など)が終わった後、別室で歯科健診がありました。歯医者さんにあるようなリクライニングの椅子に座って、椅子が倒れた状態になったところで、上からライトを照らして口の中を先生が診てくださるといった、歯医者さんでの診察と同じような流れだったのですが、園での歯科健診しか知らない息子にとっては、初めてシチュエーション。それが怖かったんだと思います。椅子から降りようと大泣きして大暴れしたのです。その様子に驚きつつも、私は息子の体を押さえて健診をしてもらいました(先生が優しかったのはせめてもの救いでした)。Upload By ユーザー体験談他にも泣いてる子どもや嫌がっている子どもはいましたが、息子の嫌がりぶりは飛び抜けていたように思いました。でも、その時点での私は「すいませ~ん(苦笑)」くらいの感じで、「まあ子どもだし仕方ないか~、うちの子ビビりやなぁ(笑)」と思っていました。歯科健診のあとの内科健診では、受ける前に部屋の一角にマットを敷いたスペースがあり、そこで服を脱がせてパンツ一丁にさせ、持参したバスタオルを体にかけて受診するよう指示がありました。息子は、歯科健診でのパニックが尾を引いていて、なかなか切り替えられず、「服脱ぐの嫌!」と言って譲りませんでした。息子のあとに診てもらう予定だった子ども何人かと順番を代わってもらったくらいです。10分くらいして、ようやく息子が落ち着いたので内科健診を受けました。その時先生が息子がなかなか着替えられなかったこと、そしてそれまでの検査結果を見て「できることとできないことの差が大きいね。この場で断定はできないけど、今後発達面で気になることが出ないか、様子を見たほうがいいかもしれません」と言ったのです。Upload By ユーザー体験談発達面の指摘を受けショック!市の発達支援センターへ相談すると…この医師からの言葉には、やはりショックを受けました。これまでも、息子の落ち着きのなさ、執着の強さや衝動性の強さに若干の「育てづらさ」は感じていましたが、「まあ、子どもってそういうもの?」「育てづらいと思うのは、私が過敏だから?考えすぎ?」と杞憂だと思いたい気持ちもありました。なので、「やっぱりそうじゃない可能性がある」という事実は、それなりに重くのしかかりました。一方で「やっぱり杞憂じゃなかったか。私の予感、当たったかもな」という、腑に落ちた感もありました。その1ヶ月後、息子に対して感じていた「育てにくさ」を誰かに相談したいと思い、まずは市の発達支援センターに電話をして、いま悩んでいることを担当者の方(心理相談員の女性)に聞いてもらいました。すると、「お子さんはいま保育園に通われていますか?その場合、保育園とも情報共有をしたいので、発達支援センターの相談員が保育園に赴いて、保育園で発達検査を行うことになります」と言われたので、そうしてもらうことにしました。そして、息子が3歳9ヶ月の頃、息子が通っている保育園で発達検査(新版K式発達検査)をしてもらい、後日診断結果をいただきました。全領域、DQ80、3歳0ヶ月相当の発達で境界域とのことでした。境界域とわかり夢を一つ絶たれたような気持ちになったこともあったけれど…私は、20代の頃に学習参考書の編集者をしていたこともあって、子どもの教育にはとても関心がありました。「子どもの成長に合わせて一緒に勉強して、私も学び直しをしたい。私も勉強で失敗したり頑張ったり、楽しさを感じたりしてきたので、その経験が息子の学びの役に立つこともあるのではないか」とも思っていたので、息子の認知機能が弱い、つまり、知識や思考を広げたり深めたりすることが難しいという事実を知ったときは、正直、夢を一つ絶たれたような気持ちにもなりました。ですが、激しい落ち込みはありませんでした。というのも、目の前の息子は、時に育てにくさを感じるとはいえ、基本的には無邪気で面白くて、すごくかわいかった!また、同年代の子どもと比べると幼いところはありつつも、彼なりに成長している姿も見えました。私は「まあ、命があれば十分かな。息子と私たち親には、当初思い描いていたのとは別の課題が与えられたってことなんだ。じゃあ、これからはその問いに一生懸命取り組んでいこう」と思うようになりました。私は妊娠21週で流産したことがありました。その後数年間子どもを授からなかったのちにようやく授かった息子だったので、余計にそう思えたのかもしれません。息子の頑張りに気づくこと、「頑張りたい気持ち」をつぶさないことが、今私に与えられているミッション!現在、息子は字の練習をしたり、最近は絵を描くようになりました。園で他のお友達が書いている字や絵よりもつたないということは彼なりにわかるみたいで、「へただからやりたくないなぁ」と口にすることもあります。ですが、そう言いながらも一生懸命取り組んでいる姿が見られ、「頑張ってるところがかっこいいよ!ちゃんと上達してるよ!」と伝えています。自宅では通信教育のワークブックを一緒にすることもあります。きれいに字が書けなかったり、問いの意味がすっと理解できずにいらだっている様子も見られますが、こちらがイライラすることなく、落ち着いた様子でちょっと助け船を出したり、励ましたりすれば、ブツブツ言いながらも投げ出さずに取り組む姿勢も見られます。息子を見ていると、子どもってちゃんと「頑張りたい気持ち」を持っているなぁと思います(ただ、なにぶん不器用で、その気持ちをもって挑んでも出る成果が少ないので、本人も親も途中でいらだってしまう……といったこともしばしば起こっているのが反省点です)。息子の頑張りに気づくこと、「頑張りたい気持ち」をつぶさないことが、今私に与えられているミッションなんじゃないかと思っています。息子が、自分で幸せをつかめる人になれるよう、一緒に進んでいきたいです。Upload By ユーザー体験談イラスト/SAKURAエピソード提供/苗(監修:鈴木先生より)誰でも障がいがあると告知されればショックは隠せません。仮にASD傾向がありそうだなと思っていても医師からの告知は重いものがあります。神経発達症のお子さんでもDQの値はさまざまです。たまたま今80だとしても伸びる可能性はあります。知的ボーダーラインや知的発達症は、ASDやADHDとは別の疾患です。正確には5歳以上になってIQテストをして初めて知的な面での方向性がわかります。何ができないかではなく、何ができるかに注目してあげるといいです。いろいろなものにチャレンジして頑張っているのであれば「がんばりカード」を作って、たとえば頑張った毎にシールなどを貼って3枚たまったらどこかに行けるなど、ご褒美を与えるトークン法が有効です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年09月13日2歳まで発語ほぼなし、3歳から療育へ…不安でいっぱいだった私しのくんは、2歳まで意味のある発語がなかったことがきっかけで、ことばの教室へ通うことになり、5歳になった現在も続けています。また、集団行動が苦手だったため、3歳からは療育センターにも通うようになりました。初めの頃は、どうしたらいいのか全く分からないことばかりで、私のメンタルはボロボロ。不安でいっぱいの毎日を過ごしていました。そんなしのくんも気づけば5歳。心も体もずいぶんと成長しましたが、まだまだ同じ年の子どもと比べて言葉の遅れがあるなと感じます。たまたま出会った同い年の男の子。初めは楽しそうにしていたけれどそれはゴールデンウィークに家族で海に釣りに行った時のこと。偶然にも、しのくんと同じ年の男の子と出会いました。当時しのくんが大好きだったキャラクターの描かれた服をしのくんが着ていて、そのキャラクターの話で男の子と盛り上がっていたのですが……しのくんが何を言っているのかうまく伝わらず、男の子が相手をしてくれなくなってしまったのです。Upload By keikoしゃべっても相手に伝わらない、聞いてくれないと思ったしのくんは、相手を振り向かせるために大きな声で話しかけます。Upload By keikoUpload By keikoそして、その想いは虚しく……男の子に「声が大きくてびっくりする!」と言われてしまいました。その後しのくんは、小さな声でその男の子に話しかけていましたが、やはりしのくんの思いは伝わりにくいようでした。以前の私だったら落ち込んでいたはずの出来事。でも今は…しのくんは、自分の言葉で物事を表現することが苦手で、考えたことをそのまま口に出しやすい傾向があります。特にサ行とラ行の発音が苦手なこともあって、余計に何をしゃべっているのか、親は理解できるけどほかの人には分からないことが多いです。この時は、コミュニケーションの相手が同じ年の子どもだったので、なおさら伝わらなかったんだと思います。そして、そんなしのくんを見て一人で不安になって焦っているのが以前の私でした。以前の私だったら、「どうしよう!どうしよう!」と不安になって落ち込んでいたと思います。でも……今の私は違います。しのくんが男の子とうまく話せなかったときも、「いつかできるようになるさ」と、落ち込まずに割り切ることができました。Upload By keikoほかにも、以前はママ友からしのくんと同い年の子どもを連れて映画を観に行ったと聞いて、ざわざわしていたのが、今では「まぁ、いつか一緒に観に行けるさ」と思うことができるようになりました。こんなふうに「いつかはできるようになるさ」と、メンタルを揺さぶられなくなってきた自分に気がついた時は驚きました。「あれ?昔と違うな……?私のメンタルが成長している!?」と……(笑)「いつかはできるようになるさ」母としてのメンタルの成長。その理由は?こんな風に思えるようになったのは、今までしのくんの成長を見てきて、いろんな経験を重ねて、たくさんの支援と繋がって、安心していられることが大きいのかな?と思います。しのくんが今通っていることばの教室は、小学生になっても続けることができます。また、小学校に上がってからは、言葉に苦手がある子どもたちが通える「通級指導教室」もあります。何かあってもすぐに相談できる環境って本当にありがたいと思います。これからも前向きに「いつかはできるようになるさ」と思い、しのくんと頑張っていこうと思います。Upload By keiko執筆/keiko(監修:室伏先生より)keikoさんの心の変化を、具体的なエピソードを交えつつ分かりやすく伝えてくださり、ありがとうございます。以前のkeikoさんと同じように不安な気持ちでいらっしゃる親御さんの気持ちをほっとほぐしてくれるような、そんなあたたかいメッセージになるのではないかと思います。ここまでの道のりは簡単なことではなかったと思いますが、周りの方々の支援、そして何よりkeikoさんとしのくんの頑張りの賜物ですね。keikoさんがしのくんの成長を信じる、前向きなお気持ちは、きっとしのくんに大きな安心とkeikoさんへの信頼、そして安定した心の成長をもたらしていることと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月13日多動傾向の息子、力の加減が分からずお友達トラブル多発小学2年生の息子は診断はありませんが、幼少期から多動傾向が強いと感じています。また、特性なのかは定かではありませんが、基本的に何を持つにも力が入りすぎていて、筆圧も強めです。年少の春、お友達が捕まえたバッタを強く握ってしまい、バッタは動かなくなりました。息子もお友達も悲しい顔をしていました。年少の夏、昆虫に憧れていた息子。「見つけた!」とセミの抜け殻を手にするとそのままグシャっと握って粉々にしてしまいました。「そっとだよ」と伝えても何度も同じことを繰り返してしまい、いくつものセミの抜け殻が潰れてしまいました。息子は、がっかりしながら「家に帰る」と言いました。年中の頃、片づけに熱心だった息子は、本を出しっぱなしにしていたクラスの子に「本をしまってないよ」と教えようと背中をたたいて泣かせてしまい、泣かせてしまったことがショックで息子も泣いてしまうということがありました。お友達には故意にやったことではないと分かってもらえましたが、また強くたたいてしまわないように「友達に気づいてほしいときの力加減」を家で練習しました。Upload By ユーザー体験談Upload By ユーザー体験談筆圧が強くてワークブックはボコボコに……先生に心配されて年長の頃、幼稚園で週に一度文字を書く授業がありました。初めはワークブックにある一直線をなぞる、波線をなぞるというような内容だったのですが、息子は書いた部分に穴が開いてしまうほど強い力で書いていて驚きました。きっとまだ始めたばかりだから力の加減ができないのかなと思っていましたが、新しい文字を習うたびに息子のワークブックは、ボコボコになっていきました。息子はこだわりも強く、お手本をなぞるときに少しでもずれたり、自分の書いた文字がお手本通りでないとひどく嫌がっていました。でも力の加減がうまくいかないので線はズレてしまうことが多く、消しゴムもうまく使えず紙がグシャっとなってしまい、すでにボコボコになっている紙に書く文字は息子の思い描いた形にはならず……。1つのページに同じひらがな1つを8回書くというものだったのですが、息子はいつも30分以上かかっていたようです。小学校入学を翌年に控えていたので、先生方からもとても心配されていました。Upload By ユーザー体験談お茶碗を頻繁にひっくり返してしまい、「行儀が悪い」としかられ……小学生になる前には、生き物や壊れやすいものを強く握ってしまうことはほとんどなくなりました。筆圧は相変わらず強く、消しゴムを使えばプリントやテストが破れてしまうこともありますが、以前よりはいくぶんか良くなりました。今はできることも増えてきた分、食事の時に力加減の難しさが目立ちます。コップに入った飲み物や、スープが入った器など、運ぶときに高確率でこぼします。ご飯が盛られたお茶碗もうまく持てず、かきこむように食べるか、持っている器が手からすべり落ち、ひっくり返ってしまうこともよくあります。去年は息子の茶碗を1年間で5回買い換えました……。夫には「行儀が悪い!」「集中していないからだ」としょっちゅう怒られています。ただ、本人はいつも必死で、ボーッとしているわけでもありません。どうやら「持つ」ということがうまくいっていないようです。Upload By ユーザー体験談もしかして不器用なのかな?腑に落ちた瞬間先日、発達ナビで「不器用が原因でブランコに乗れない」というコラムを読みました。息子は小学2年生ですが、いまだにブランコにうまく乗ることができません。息子自身ブランコに乗れないことで困っていなかったので気にしたことがなかったのですが、今までの困りごとも「不器用」だからなのかなと私の腑に落ちた瞬間でした。食事の時、必死に頑張っていても夫に頻繁にしかられる息子が、かわいそうでしたが「不器用なのかも」と思ったらこれから工夫ができる気がしてきました。ほかにも日常のちょっとした場面で力が強すぎたり、物の持ち方がうまくいかなくて困ることのある息子ですが、少しずつスムーズにできることが増やせていけたらいいなと思います。イラスト/keikoエピソード提供/カワカワ(監修:森先生より)発達障害のある方には、不器用な方、運動が苦手な方も多いと言われています。発達性協調運動障害(発達性協調運動症)といって、一つひとつの身体能力としては問題がなくても、脳が身体の動きをうまくまとめることが難しいと考えられています。そのため、スムーズに運動することができないのです。たとえば足を曲げる、のばすという一つひとつの動作はできても、階段を昇るとかスキップをするときには足がもつれる、といった具合です。発達性協調運動障害はおよそ10人に1人程度の子どもに認められると言われており、発達障害のある子どもには半数近くに認められるとも言われています。本人は真剣なのに、周囲からはふざけていると思われたり、からかわれたりすることもあり、つらい思いをしますよね……。怒られたりしかられたりしても、本人はどうしたらいいかわからなくなってしまいます。一つひとつの動作を自宅で練習してみて、力の入れ方やタイミング、力の強さなどを具体的に教えてあげることは、とっても良い方法ですね。コツをつかめば学校でも上手にできるようになるでしょう。参考:平成24年度厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業) 就学前後の児童における発達障害の有病率とその発達的変化 :地域ベースの横断的および縦断的研究 分担研究報告書 「身体機能障害の観点からの発達小児科学的アプローチ」|厚生労働省(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月12日ほんのわずかな期待長男は年長になってから療育センターに通う日数が月1回から月2回になり、小学校入学のためのトレーニングがプラスされました(発達が同程度の子どもたちが10人ほど集まって、2時間くらい遊んだり工作したりして過ごす)。長男は自分の興味が乗らない活動を拒否したり、私の膝の上で丸くなったりしていましたが、療育センターに通い始めてから1年半ほど経っていたので、私はもしかしたら小学校では通常学級でいけるのではとほんのわずかな期待をしていました。Upload By 星河ばよ市の教育委員会による就学相談は年長の秋ごろにありました。私たち夫婦と長男を含め、集まった保護者とその子どもたちは15~20組ほど。そのうち子どもたちだけが別の部屋に移動し、保護者はそのまま待機しました。教育委員会の人たちは集められた子どもたちがおのおの過ごす様子を見て、それぞれの子どもにどのような支援が必要なのか、特別支援学級が望ましいのかそうでないかを判断するようです。子どもたちがその間どんなふうに過ごしていたのか私には分かりませんでしたが、賑やかな声はずっと聞こえていました。就学相談は小1時間ほどで終了しました。就学相談といっても何も相談はしていません。保護者はただ子どもの様子を見てもらっただけでした(※就学相談の内容や時期は自治体によって異なります)。Upload By 星河ばよ淡々と記された報告書……母の心は揺さぶられてそれから教育委員会より結果が届いたのは1ヶ月後のことでした。私は読み進めるのが怖い気持ちでした。第一、あんなに大勢の子どもたちを一斉に見て教育委員会の人たちは分かるんだろうかとも思いました。ところが報告書を読み進めると、長男のことが驚くほど見抜かれていました。(一部編集して抜粋)・身の回りのことは、ほぼ自立している・体の動きは良好である・気分や相手によって態度が変化したり、呼びかけに応じないことがある・興味・関心のある話は集中して聞くことができるが、興味のないことに対しての指示・理解は難しい・片づけや集合の声かけに対しては即座に行動できないため、個別の対応が必要である報告書に記された活字が、淡々と事実を伝えてきます。最後に書かれたこの文章が、まだ長男の発達特性を完全には受け入れられていなかった私にとどめを刺したように感じられました。「特別支援学級の就学が望ましい」Upload By 星河ばよおわりに私は、長男がいつか定型発達の子どもに追いつくと思っていました。長男の「今」を見ようとしていませんでした。発達障害グレーゾーンということが当時どうしても受け入れられなかったのです。だけど「特別支援学級の就学が望ましい」という教育委員会の言葉は、この現実を受け入れる1つのきっかけになりました。就学相談がなければ、私はもしかしたら長男を通常学級に入れていたかもしれません。今では長男にとって特別支援学級は落ち着いて過ごすことのできる、大切な居場所になっています。通常学級のみの在籍だったら、登校渋りがもっと強く出ていたかもしれません。教育委員会の客観的な視点とアドバイスがあったのは、私にとって本当に幸いなことでした。執筆/星河ばよ(監修:初川先生より)就学にあたっての逡巡する思いについてシェアしてくださりありがとうございます。就学相談で何をするかも自治体によって異なりますが、お子さんたちを複数名いっしょに集めて行う場合には、ミニ授業のようなことをしたり(着席する、先生の指示を聞く、指示に従って何らか作業をする)、担当の方が声かけしてそれへの反応を見たり、運動へと誘い、その際の身体の使い方を見たり……と内容(観察すべき観点)が決まっていることもあります。また、そうした集団での観察より前に、保護者の方から生育歴を聞いたり、お子さんに知能検査を実施したりといったことを行う場合もあるでしょう。療育機関や医療機関にかかっている場合は、そちらからの情報提供書を提出していただくこともあります。さまざまな情報を集めて、総合的にどのような就学形態がよさそうかという判断をし、「提案」という形でお伝えするものです。通常学級か、特別支援学級かに関して言えば、まずは1クラスあたりの子どもの数が違うこと、対応できる大人の数も違うこと(特別支援学級の場合、担任のほかに支援にあたる先生が複数入る場合もあります)が大きな違いです。また、学習内容についても、通常学級だと大半の子が理解できるペースで一斉に進んでいくことが基本なのに対し、特別支援学級だと個に合わせた学習内容を設定しやすかったり、着席して机上で行うものと活動を伴うものとの配分がより活動的なものであったりという違いもあります。知的にゆっくりなお子さん向けの特別支援学級だと学習そのものがじっくり進みます。情緒障害・自閉スペクトラム症のお子さん向けの特別支援学級ですと、学習の進みはそこまでゆっくりではないですが、環境調整や本人の興味関心に合わせることを少人数ゆえに重点的に行うことができます。星河さんの長男くんは、特別支援学級に就学され、さまざま葛藤はあったとのことですが、今となっては、長男くん本人が学級に安心感を感じて通うことができているとのこと、何よりです。就学にあたって、通常学級で大丈夫かなと信じたい気持ちの保護者の方にとっては、こうした教育委員会からの提案はなかなかに抵抗や葛藤を生むものかもしれません。ただ、就学前相談会では地域の専門家や長く就学相談を務めている方など、その道のプロがさまざま検討した結果としてお伝えしている場合が多いです。その提案は提案として聞いてみて、まだ入学まで時間もあると思うので、特別支援学級や通常学級の見学に行ったり、特別支援学級の先生とお話をしてみたり、あるいは療育の先生、園の先生などのお話も聞いて、家庭で検討していただければと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月12日1歳半健診が近づくにつれ、募る不安1歳を過ぎると歩いたり少し言葉を喋るようになったりと、目覚ましい成長を見せる息子。そして気になってくるのが1歳半健診のことでした。すでに健診が済んだお子さんのママたちから、身体測定などに加えて、『発語の様子』『指差し』『積み木を積めるか』といったことをみられたり、保健師さんや医師からのヒアリングがあると聞きました。1歳半健診の話題が出たのは、息子が1歳過ぎの頃。その当時は健診項目ができていなくても「そのうちできるかな」とのん気に構えていました。しかし息子が1歳半に近づくにつれ、「あれ、そういえばできていない?」と気づき、焦りはじめました。Upload By ネコ山多動傾向があり落ち着きがない息子。言葉も遅めで、1歳半の時点で意味のある言葉は「オイシー(美味しい)」のみでした。指差しをする様子もないので、いろんなものの名前を言いながら指さして見せても、息子はまったくといっていいほど反応をしません。積み木は積まず、打ち鳴らすばかり……。最終的に健診の数日前に、「カーカー(カラス)」と「あった!(〇〇あった)」を言うようになり、積み木もようやく積めるようになりましたが……不安な気持ちで当日を迎えました。落ち着けない身体測定・内科健診1歳半健診の会場に着くと早速走り出す息子。いつも通りの息子の様子に「やれやれ」と思ったと同時に、周りの様子を見てびっくりしました。大体の子どもがイスに座っていたり、立ち歩いていても親の近くから離れないのです。一方の息子はというと、会場前のロビーで目についた気になるものを見つけては走り出して触ったり、階段を行ったり来たりで落ち着きがありません。「おとなしく座って」と言っても無理だと思ったので、健診の順番が来るまで廊下や階段を行き来して過ごしました。順番が来て会場内に入ると、まずは身体測定と内科健診がありました。身長・体重・頭囲・胸囲の測定はおとなしく測られていました。内科健診も同様に、おとなしく私の膝の上で診察を受けていました。こう見ると特に問題なく見えるのですが、大変だったのは待ち時間。数分程度の待ち時間でさえじっとできず、持参した息子の気を紛らわせるためのアイテムを早々に使い果たしてしまいました。必死な私は会場の壁に人気キャラクターのイラストが貼ってあるのを見つけて「ほら見て!」と声をかけてみましたが撃沈。息子は赤ちゃんに大人気のキャラクターでさえまったく興味がなかったのでした……。Upload By ネコ山保健師との面談、最終的に脱走!母子手帳を出してついに保健師さんとの面談です。保健師さんは積み木をいくつか出すと、息子にお手本を見せてくださいました。しかし息子は保健師さんを見ていません……。机上に置かれた積み木で遊びだしました。その後何回か説明し直しても保健師さんの指示が伝わっていない様子です。保健師さんは次の「発語」の課題に進みました。「オイシー」「カーカー」「あった」が言えることを伝えたものの、保健師さんは微妙な反応……。「ママ・パパは言いませんか?」と聞かれてしまいました。1歳半のほとんどの子どもは「ママ・パパ」と親のことを呼ぶものなんだ……と少しショックを受けました。指差しの話題になっても、息子は保健師さんの話を聞いていません。先ほど出してもらった積み木に夢中です。「積み木は終わりにしようか、次はこっちを見てね」と促しても一向に積み木を離しません。最終的には途中で積み木遊びを邪魔されたことに気を悪くした様子で、面談場所から脱走していきました。発達支援教室を薦められるが……発語が遅めなことや意思疎通が取れないということで、保健師さんから自治体が運営する未就園児向けの発達支援教室を面談後に紹介されました。週1回集団遊びや親子遊びを通じて、発達が気になる子どもの成長を促すものです。(※発達支援教室等の支援内容や利用条件は自治体によって異なります)。多動だったり言葉が遅めの息子。「支援教室で発達に詳しい専門の方たちや、同じ年くらいの子どもたちと過ごせば言葉が増えるかも!私も、そんな息子との関わり方を学べるかも!!」と、瞬時に参加することを決めましたが、その後の保健師さんの言葉に絶望しました。「妹さんが生まれたばかりとおっしゃっていたのですが、預け先はありますか?きょうだいの同伴はできないんです」実家・義実家・そのほか親戚全てが遠方のわが家は発達支援教室に参加できず、息子の発達については『様子見』ということで、保健師さんとの面談は終わりました。Upload By ネコ山暴れる歯科健診発達支援教室に参加できず、失意の中での歯科健診でした。「歯科健診は多分なんともなくクリアできるだろう、ただしじっとしていれば」不安材料はあるものの、保健師さんとの面談に比べたら気持ちが楽です。息子の順番が来て先生の膝に頭を、対面した私の膝にお尻をのせて診察開始です。おとなしく先生の膝に寝転んだ息子でしたが、口の中に器具を入れるや否や先生にキックをしそうになりました!Upload By ネコ山先生は慣れているのかうまく避けてくださりましたが、次に息子は私が固定している足をバタつかせ逃げようとします。「息子は歯磨きのときもいつもこんな感じで暴れるんです……!」と謝り、最終的に歯科衛生士さんにもサポートしてもらいなんとか健診を終えることができました。5歳になった今でも息子は歯磨きに抵抗があるので、口内が敏感なのかもしれません。今思えばあの暴れようが少しは理解できます。その後、5歳になった息子はADHD+ASDの傾向があり、児童精神科医からグレーゾーンと言われることになるのですが……そのお話はまた次回以降に書きたいと思います。執筆/ネコ山(監修:室伏先生より)1歳半健診の頃の息子さんのご様子とネコ山さんのお気持ちを具体的に共有していただき、ありがとうございました。不安と戸惑いの中での健診、大変でしたね。発達に課題をもつお子さんの徴候は、1歳~2歳頃に顕在化してくることが多いように思います(この時期に徴候が分かりにくいお子さんもいらっしゃいます)。発達障害のお子さんは、単に発達が遅れるというものではなく、発達の進む順番や質が異なっています。発達の遅れを示す用語としては、「発達遅滞」があり(言語発達が遅れていれば言語発達遅滞、運動発達が遅れていれば運動発達遅滞となります)、発達障害のお子さんで発達遅滞も併せ持つ場合もありますが、発達障害と発達遅滞は言葉の意味としては異なります。例えば、自閉スペクトラム症の特性があるお子さんは、話し言葉はゆっくりなのに、数字や文字を読むことの習得がとても早い場合もあります。これは、興味の方向が、コミュニケーションツールとしての言葉ではなく、記号としての文字・数字に向かっていると推測されます。大人もそうですが、子どもは自分の興味のあることに対しては、絶大な記憶力や集中力を発揮するわけです。自閉スペクトラム症の特性の一つとして、言葉やアイコンタクト、ジェスチャーなどのコミュニケーションに対する興味が薄かったり、興味はあっても相手にとって心地よい、距離の維持や関わり方が難しいといったことがあります。せっかくの発達支援教室も、妹さんがいらっしゃると通えないというのは、とても辛い制限でしたね。こういったことを共有してくださることで、今後の課題が明確になり、支援を受けやすい社会に変わっていくことを願います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月11日英語学習と音楽・美術の面で成果をあげるUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイわが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族のほぼ全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。中学時代に吹奏楽部で演奏しながら譜面が読めない問題でつまずいたことのある長女ニャーイは、その後、美術を志し、全国のコンテストで実績のある公立高校へ進学しました。ところが顧問の先生は、指導のスタイルがしっかりと確立されていたため、ニャーイが目指していた精密画とはまるで相性が合いませんでした。ニャーイが失望して退部したタイミングで、夫ラクマから理想的なインターナショナルスクールを見つけた、という知らせが入りました。さっそく体験入学と面談を申し込み、4人の子どもたち全員を伴って学校を訪問しました。訪問した学校は保育園から高校までの生徒が学んでおり、学園長は海外経験豊富な日本人で、教師や生徒は、世界のさまざまな国からやってきていました。授業はオールイングリッシュで1クラス数人の少人数制でした。教科書は数学のみ日本語版で、それ以外はすべて英語版でした。教室は開放的な広いワンルームを学年ごとにパーテーションで仕切っていました。私は教室を回って授業を見学しました。先生方は、とても大きなアクションを交えながら楽しく授業を進めていました。私もラクマも4人の子どもたちもこの学校をとても気に入り、全員が転校することを決めました。インターナショナルスクールへの転校後、先生方の分かりやすいリアクションや声がけが発達凸凹タイプに向いていたのか、子どもたちは以前より生き生きと学ぶようになりました。また、得意科目に集中的に取り組めるカリキュラムであったため、やる気スイッチが入りやすかったこともプラス要素でした。さらに各教科担任の先生方が表現豊かに褒めて励まし、新しいことへチャレンジを促すので、子どもたちの世界がどんどん広がったのです。特にニャーイの学力や画力、音楽に関する技術の進歩は目を見張るものがありました。音楽の授業ではピアノ、ギター、ドラムにチャレンジし、さまざまコンサートやライブに参加しました。絵本づくりや英語でのプレゼンテーションを数多くこなし、自信を深めていきました。やる気スイッチにムラがあり、洗濯や約束事でトラブル連発Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ学習面では大きく伸びたニャーイですが、家族で役割分担した、家事の手伝いはトラブル続きでした。ニャーイは洗濯の係でしたが、まともに仕上がることが少なかったのです。というのも、洗濯していることを本人が忘れて外出してしまうので、気づいたら洗濯物は洗濯機の中でカチカチに固まっていることは日常茶飯事でした。洗濯物が痛むので家族からはブーイングですが、どんなに注意しても一向に良くなりません。洗濯のやり直しが多くて、ついに洗濯機のほうが壊れてしまいました。将来について父ラクマに相談すると父は困惑Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイインターナショナルスクールに転校してしばらくたったある日、ニャーイは父親のラクマに将来の進路を相談しました。ニャーイはラクマが長年仕事としている商業デザインのイラストレーターを志望していたのです。ラクマはニャーイにどのように伝えようか悩んだ末、彼女に言いました。「商業デザインは時間に追われる仕事だよ。しっかり自己管理して締め切りを守らないといけないけど、できるかな?」ニャーイはすぐさま「イラストレーターは諦める」と言って志望を変えました。後日、私はラクマにイラストレーターになることを反対した理由を確認しました。「もしニャーイがイラストレーターになったら、上司が気の毒すぎる。彼女に仕事をさせるのはひと苦労だよ」という答えでした。ラクマは、絵のうまいニャーイにイラスト作成のアルバイトを頼んだことがあったのですが、締め切りを何度も忘れるので、かえってラクマの仕事が増えてしまい、すごく苦労したということでした。当時は時間の管理がうまくできないニャーイに対して、どう対処して良いのかという理解が足りていませんでした。今は親も子も発達凸凹の特性理解が進んでいるので、メモや手帳の活用、リマインダー係を配置するなど、二重三重の工夫を行なっています。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:室伏先生より)インターナショナルスクールでのニャーイさんの成長のご様子と、ご家族の関わりについて、共有してくださり、ありがとうございます。微笑ましく読ませていただきました。お子さんに合った学校へ転校された、ご両親の行動力と決断力に感銘を受けました。ニャーイさんと相性のよい学校に出合うことができて本当によかったですね。家事のお手伝いについては、学生時代は失敗ばかりだったとしても、ニャーイさんが独り立ちした時に、不得意なものについて自分に合う方法を考える一つのきっかけになったかもしれませんね。便利な家電も増えていますし、忘れても大丈夫な環境にする、というのも一つの自立への道かもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月10日面談で「ここは最後の砦です。断ることはありません」Upload By カタバミ息子のまちゃは現在、特別支援学級に通う小学2年生です。未就学の頃は、年少で2歳年上のお姉ちゃんと同じ幼稚園に入りましたが、登園日はどんどん減らされました。さらに、年中になってもコロナの影響で6月まで幼稚園が再開しないことが分かり、年少の春休みの間に週5日間で預かってくれていた児童発達支援事業所に幼稚園を辞めて正式に通うことにしました。しかし11月に入ると、ここもコロナ禍を理由に預かり時間は3月末まで半分にすると言われてしまいました。発語もあまり増えておらずお友達とも遊ばない、偏食もひどいままのこの状態で就学がどうなるのか不安だと相談支援員さんに話したところ、療育園への転園を提案されました。療育園に年長から入園するのは難しいと聞いていましたが、面談でまちゃのこれまでの幼稚園や児童発達支援事業所での様子を話したら「ここは最後の砦です。断ることはありません」と言われました。療育園への入園を希望しても入れない子どもはたくさんいると聞いていたので、「まちゃは入れるんだな」と、ぼんやり思ったのを記憶しています。感じの良い施設。私自身も積極的になるUpload By カタバミまちゃの通う療育園の教室はマジックミラーになっていて保護者は授業風景をいつでも見学自由でした。設備としては、遊具の多い園庭に、雨が降っても活動ができる体育室と、その中には実用的な遊具の数々。室内温水プールもあって水療育や、月に1回くらい専門家による音楽療法などもありました。保育士の先生方はいろいろな特性があるお子さんとの接し方に慣れていて、送迎バスの運転手さんも以前は療育園に勤めていた経験もあり、反応の少ないまちゃに気さくに声をかけ続けてくださいました。年長からの入園なので、母親の私も卒業アルバム委員に立候補して園の様子を撮影したり、卒園アルバムの制作のお手伝いをすることにしました。車で片道30分弱の距離でしたが、「まちゃも頑張っているから」と多いときには週3回、苦手な運転をして療育園に行き、委員の仕事やまちゃの様子を見ることにしました。委員を引き受けたことで、ほかのママたちとも話すきっかけになりました。まちゃの変化と気になる点Upload By カタバミまちゃは入園して半月ほどの面談では「大人しくて控えめですね」と言われていましたが、夏休み前には笑顔で「抱っこして」などの発語が出てきて先生にかなり甘えるようになっていました。先生方も「だいぶ積極的になりました」とうれしそうに報告してくださいました。まだお友達と遊ぶことはありませんでしたが「◯◯くんに持っていって」とお願いされるとお友達のところまで持っていけるように!先生から「クラスメイト全員の名前は覚えています」とも言われ、まちゃの成長を感じることができました。ただ良いことばかりではなく、偏食は入園前とほとんど変わらずでした。保育士の先生は給食をめちゃくちゃにしてしまうお子さんの対応に忙しそうでしたし、本来なら言語聴覚士や臨床心理士さんたちも頻繁に様子を見てくれることになっていましたが、コロナ禍で保護者以外の大人の入園も制限されてしまいました。そして、いつでもできた保護者の見学もコロナ禍で年度途中から中止。さらに、まちゃが大好きなプールもコロナ禍で閉鎖に……。結局、卒園まで一度も入ることは叶いませんでした。1年間通って就学へUpload By カタバミ授業風景を見学していても、まちゃはふざけ合うお友達の間に座っていても、大人しく座って紙芝居や絵本などを集中して見ていました。担任の先生は20年以上療育園に勤務されていて、就学も担当するベテランでした。就学に向けた面談では「まちゃくんは45分座っていられそうですから特別支援学級を考えてみてください」と、担任の先生がアドバイスをしてくださったことが心強かったのを覚えています。夏はプールはなくても外で水遊びがあり、うれしそうにはしゃぐまちゃの姿を見ることができました。運動会や卒園式などの行事は子どもたち全員が参加できるおおらかなもので、親もハラハラすることなく落ち着いて観覧することができ、とてもありがたかったです。私自身も卒業アルバム委員になったことで、障害があるお子さんのママたちと穏やかに交流することができました。それは、幼稚園でも児童発達支援事業所でも、叶えられなかったかけがえのない出会いでした。1年間通ってみて、療育園は施設も内容も含めて、私とまちゃどちらにも、とても合っていたのだと思います。そして、私たち親子にたくさんの経験をくれた大切な思い出の場所になりました。執筆/カタバミ(監修:室伏先生より)療育園でのまちゃくんの成長の様子やカタバミさんのお気持ちなどを共有してくださり、ありがとうございました。コロナ渦のためにさまざまな制限があったことは残念でしたが、お二人にとって合った療育園に通園できましたこと、幸いでしたね。カタバミさんもまだ十分に慣れない環境での委員のお仕事、大変なことも多かったことと思いますが、頑張られましたね。中には、入園に不安を感じられる保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、療育園での丁寧で適切な関わりは、発達を伸ばしてくれることはもちろんですが、お子さん、そして親御さんの情緒的な安定にも繋がるのではないでしょうか。もし相談などを通じて選択肢に挙がりましたら、ぜひ積極的に見学などしてみていただけるとよいかと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月09日娘の外出を阻むものは二つ。一つ目は「男性」。父親でもおかまいなし!6歳の時に自閉スペクトラム症、軽度知的障害の診断を受けた娘がいます。幼少期の外出では本当に苦労しました。娘には苦手なものが二つありました。「男性」と「ハンドドライヤー」です。0歳の時からでしょうか、娘は男性が苦手でした。それが自分の父親であってもです。きっかけはいまだ分かりませんが、「夫の抱っこで泣かない」場面を見たことがないくらいでした。ですので、夫が居ても私はほぼワンオペ育児、短時間であっても一人で外出はできない……これもつらいところでした。1歳になると、向こうから知らないおじさんが歩いてくるだけで騒ぎ出します。外に出て男性がいない……なんて場面、なかなかないですよね?それでも、娘を夫に預けて買い物に行くことができないため、トラブル前提で娘を連れて買い物へ行っていました。Upload By ユーザー体験談買物中に前方から男性が歩いてくるだけでも泣きそうになる娘。そんな娘を抱っこすると両手がふさがってレジでお金が払えず……。いま思うと本当に大変だったなと思います。ただ、娘は「外が好き」という面があったので、お出かけは移動のとき人に会う機会を減らせる、車を使うようになりました。二つ目は「ハンドドライヤー」。このせいで外のトイレが使えない……!乳幼児期から外でトイレに行くと泣く娘。ずっと原因が分からないままでしたが、3歳になってやっとわかりました。ハンドドライヤーでした。Upload By ユーザー体験談娘は3歳から保育園に入園したのですが、そこで掃除機が苦手なことが発覚しました。なんでだろう?と思っていたのですが、どうやら音が怖かった模様。そこで「トイレが苦手なのはハンドドライヤーの音のせいなんだ!」と気づきました。そんな娘を連れての買い物は大変です。娘がトイレに行きたいとなると、一度自宅に戻り、再び買い物へ行かなくてはなりません。スーパーへは車で片道15分から20分位、この往復の手間と、一度商品をカゴから出して戻し、再びカゴに入れる作業……。もう、面倒でイライラしてしまいます。ただ、どうしようもないので諦めて淡々と行うだけでした。低学年頃になると、もう間に合わない!というときは外でのトイレも決行しましたが、自分がハンドドライヤーを使わなくてもほかの人が使う音もダメなので、逃げるようにトイレから出てきていました。これらの苦手は療育で乗り越えられました!「男性」「ハンドドライヤー」、実は現在はほぼ克服できています。ハンドドライヤーについては、就学後通いだした療育で相談したところ掃除機の音で慣れていこうということになりました。娘の近くで掃除機をかけてもらうと最初はさすがに気にしていましたが、徐々に慣れていってくれました。また嫌な音があるときは自分から離れることも覚えてくれました。Upload By ユーザー体験談その後、遠出をした高速道路のサービスエリアで、ちょっと強めに誘ってトイレに座らせてみたところ、無事トイレをすることができたので、とても褒めました。そうすると、ホテルのトイレも大丈夫になり、次の日の観光地の農場でも成功。これをきっかけに、ついに外のトイレに問題なく行けるようになりました。ただ、ハンドドライヤーを使うことはないので、ハンカチは忘れないようにしています。また、男性についても療育の実習のお兄さんと手をつないだり、触れ合う機会をつくることで、2年生頃にようやく大丈夫になりました。いまでも、大きな声を出したり怒鳴るような人は苦手ですが、そういう人がいたらその場から立ち去るようにしているようです。Upload By ユーザー体験談いまは公共交通機関を使い自力で登校しています現在、高等特別支援学校1年生の娘は自力でバスと電車を使い通学しています。幼少期のような外出トラブルはもうありません。ここまでできるようになるか正直不安でしたが、予想を超えてくれました。ここまで自立できホッとしています。娘は明るい性格で、ダンスや歌が大好きです。やりたいことを精一杯やりつつ、人生を謳歌して欲しいです。私は、時間がある限り、後ろから見守っていきたいです。イラスト/taekoエピソード提供/にじいろ(監修:藤井先生より)特定の物が苦手というのは自閉スペクトラム症のお子さんに認められることがあります。小学校に入る前は手立てがないような感じがして大変だったかと思いますが、小学校低学年の頃には療育施設などに相談して少しずつ症状が和らいでいったのですね。聴覚過敏などがあっても、安心・安全な状況を確保しつつ、音に慣らしていくことで克服できることがあります。ご家庭だけで工夫しようとしても限りがあることもあり、療育施設や支援の先生などに相談して、一緒に取り組んでいくと良いと思います。読者の方の励みになる体験の共有をしていただき、ありがとうございます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月08日未診断だった弟・ふーの就学相談。5月の予約から、親の面談、本人の面談、発達検査、集団行動観察・精神科医面談と続きましたわが家は二人兄弟です。兄のミミは小4で、自閉スペクトラム症(ASD)があります。年長さんの弟・ふーは、年中のときに受けた児童精神科で、診断名はつけられないけれどつけるとしたら自閉スペクトラム症の傾向があり、繊細で敏感なタイプと言われています。それからはふーは、週1回の児童発達支援、月1回の自治体の療育を続けていました。そして4月、年長になった、ふー。5月から就学相談が始まるので、私はすぐに申し込みました。就学相談の予約は電話で取ることができます。最初は親のみで区役所へ行き、担当の方と面談をしました。そこで私たちは、就学相談を希望する理由や困りごと、例えば、ふーは少しの注意でもショックを受け機嫌を損ねることがあり、原因が分かるときはまだいいけれど、どの言葉や行動が嫌だったのか、全く分からないときもあることを伝えました。そして後日、別会場でふー一人で職員さんと面談、発達検査を受け、その1ヶ月後、集団行動観察と精神科医との面談がありました。当日、私が時間を間違えてふーを急がせてしまいましたが、ふーはぐずることなく会場に行くことができました。ASD の兄ミミだったら、急な予定変更はグズって大変なので、スムーズに出掛けられるふーは、私にとって「めちゃくちゃ良い子」と映っていました。Upload By taeko未診断のふーも、自閉スペクトラム症の兄・ミミと同じく「特別支援教室」判定に面談、検査が終わってから1ヶ月、ついに結果を聞く日になりました。親が結果を聞くだけなので、私1人で区役所へ向かいました。ふーの就学問題、どうなるのか何年も前から考え続けてきました。緊張しつつも冷静に、職員さんからの話を聞きました。職員さんからは、ふーも「特別支援教室」に通う事が必要であると伝えられました。ミミと同じでした。詳しく聞くと、ふーの就学相談での発達検査はほぼ標準だったとのこと。特別支援教室が必要だと判断したのは、保育園や療育へのヒアリング、審査委員会を経ての結果とのことでした。Upload By taeko長い帰り道、時間があったのもあり、つい余計なことを考えてしまいました。ふーもミミと同じく配慮が必要ということが、正直ショックだったのです。やや怒りっぽいところがある自閉スペクトラム症のミミとは違い、穏やかでいつもニコニコしているふー。ふーの笑顔はとてもかわいくて、こちらを温かい気持ちにしてくれます。「どうしてこの子が……」と思ってしまいました。未診断だったふーも特別支援教室に行くことになるなんて。きっと私も発達障害なんだろうな。私も療育受けたかったな……。発達障害の親が発達障害の子どもを育てたら空回りだらけ……。負のスパイラルです。どんどんどんどん暗い思いにとらわれていってしまいました。……いけない。プラスに考えないと!だからこそ、療育、特別支援教室に通うことで世の中に助けてもらおう。療育を受けられる子どもたちは恵まれているんだ、配慮してもらえるんだ。かかりつけの小児科医の先生の「本人が困るから、療育や特別支援教室に行ったほうが良いよ」という言葉を思い出し、ふーが困りごとをクリアして行くため、自分の気持ちを表現できるようにするため特別支援教室行くんだ!と自分に言い聞かせました。私を心配した長男の温かい心遣い。私の子どもたちはとても優しく育っているから、大丈夫帰宅後もそんな事をもやもやと考えていたら、どうやら表情に出ていたようです。私を心配してくれたミミが気を遣って、なんとお風呂を洗いお湯を沸かしてくれました。このミミのやさしさが、私を負のスパイラルから引き上げてくれたのでした。私の子どもたちはとても優しく育っているから、大丈夫。Upload By taeko執筆/taeko(監修:鈴木先生より)保護者の接し方次第で、ASDの子どもの態度は変わります。相手の気持ちを読み取ることが苦手なASDの子どもが気遣ってお風呂を沸かしてくれたことは、素晴らしい行動ですね。今回のように、保育園などで配慮が必要と判断され、診断名のないまま特別支援教室へ行くお子さんが多くみられます。なぜ、そのお子さんが特別支援教室と判定されたのか、私は、専門医のきちんとした診断を受けてから歩んでいくことをおすすめしています。診断によって、将来の方向性がある程度わかるからです。羅針盤のない航海よりも、羅針盤を使って目標をもって進むほうが、親御さん、お子さんにとってメリットが多いと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月08日障害の診断を受けて一番に考えたこと長女が小学校4年生だったある日、私は担任の先生から呼び出されました。「ゆいさんを見ていると、授業の進度についていくのが少し大変そうに感じます。もしよかったら一度専門の機関で相談してみては……」と先生から薦められました。その後長女は発達に関する検査と診察を受け、軽度の知的障害・ASD・場面緘黙と診断されました。検査の結果を受けて小学校の先生方と話し合い、算数など苦手な教科のときは特別支援教室で授業を受けることにしました。通常学級の授業は長女にとっては進度が早く、苦手な教科はついていくのが難しいので、この取り出しタイプの指導は長女にぴったりだったと思います。(※自治体により制度は異なります)ただ、一つ心配なことがありました。同じクラス中でほかの子どもたちと一人だけ違うことをすることで、友達から違和感を持たれることはないか、友達との関係が変わってしまうのではないかということでした。Upload By 吉田いらこ女子グループの中で浮いてしまうのでは…?長女はおとなしいタイプなので友達と喧嘩をすることはありませんでしたが、人間関係って何がきっかけで変わってしまうか分からないから……と、私は少し不安に感じていました。「もし長女が友達とうまくいかないようなことがあったら、保護者としてはどう対応したらいいのだろうか……」など心配しながら過ごしていました。ある日、長女が学校から帰ってきて「今日友達がうちに遊びに来るよ」と言いました。しかも「一緒に宿題をするんだ」とうれしそうに言うので私はちょっと焦ってしまいました。特別支援教室で出された長女の宿題は、通常学級の宿題とは違い、長女の学力に合わせた易しい内容のものです。一緒に宿題をするって、どうするんだろう……?Upload By 吉田いらこ自分の考えが恥ずかしくなったけれども私の心配は全く無用なものでした。友達数人でわが家に集まり宿題が始まったのですが、皆が長女に勉強を教えてくれるのです。それは子どもたちにとってはとても自然で当たり前のことのようでした。私は、自分が心配をしすぎていたことが恥ずかしくなりました。特別支援教室で授業を受けること、そんなことで友達は態度を変えたりなんてしないし、長女も何も変わりません。私だけが「この子は皆と違う」と枠をつくって囲っていました。障害の診断がついたことで変わったのは大人の私の意識だけ。しかも悪いほうに……。Upload By 吉田いらこ長女に障害の診断がついたことで私自身は変な方向に意識を変えてしまっていたのです。この状態では、私は第三者が掛けてくれる優しい声を、逆にネガティブに受け取ってしまうかもしれません。これからは私が考えを改めないといけないなと痛感した出来事でした。そして、何も変わらない子どもたちに大切なことを教えてもらったありがたい出来事でもありました。成長と同時に長女にはこれからも新たな悩みが出てくるかもしれません。でも、母である私自身がなんでもフラットに受け止められる状態でいられるよう努力していきたいと思っています。執筆/吉田いらこ(監修:藤井先生より)特別支援教室に転籍したらいじめられるのかも、と親御さんが心配されることがあります。今回の吉田いらこさんも、友達関係が変わってしまうのかも、と心配されていたようですが、心配は無用だったようですね。親だからこそ、子供が困らないようにと心配してしまうのは仕方がないのですが、案外平気なこともたくさんあります。今回のように、心配無用だったなということを知り、親自身、大人自身が教えられる場面もたくさんあります。子育て中は、こうなったらどうしようと心配になることもあるかもしれませんが、そうなったらそうなったときに考えれば良い、とどんと構えることも時には必要かと思います。素敵なエピソードの共有をありがとうございました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月07日弟とうまくコミュニケーションが取れない姉ですが…広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。2人の弟(長男・小学1年生、次男・1歳9ヶ月)がいます。娘はコミュニケーションが苦手という特性があり「話すこと」「察すること」などが苦手です。しゃべることのできない次男に対しては特にその傾向が強いようで、うまくコミュニケーションが取れません。そのため、中学1年生という年齢ですが、次男のお世話を率先してすることはなく、私もあまり任せません。周りの人からみると「あの大きなお姉ちゃんは、弟の面倒を見ないのだろうか……」と思われているかもしれないと、私が感じることもしばしば……。でも、家での娘は頼りになる部分も多いのです!長女、家事に関してはかなりの戦力で大助かり!弟のお世話は苦手な娘ですが、家事に関してはわが家でかなりの戦力!洗濯、掃除は完璧。私が次男の寝かしつけに苦戦していたら、洗濯物を干してくれていたり、乾いた洗濯物をたたんで、片づけてくれたりします。寝かしつけをしようとして、そのまま寝落ちし、夜中に「あ!洗濯物!」と飛び起きると、娘が全部片づけてくれていたことが何度もありました。Upload By SAKURA私が朝、次男の支度で慌てている間に、全部屋に掃除機をかけてくれます。娘がいなければ、間違いなく私の家事、育児は回らないでしょう。Upload By SAKURA私は、そこで気がつきました。娘は自分で考えて動くことより、やることの順序がはっきり分かって、決まりきったことが得意なんだ……。それならそれでいい……。Upload By SAKURAそれからは、次男のことに関しては、私がトイレやお風呂の時の最低限の見守りだけやってもらい、「オムツを持ってきて」「絵本を読んであげて」「牛乳をついであげて」など、やることが分かりやすく、シンプルなお手伝いを頼むようにしました。娘と次男は、一般的な中学1年生と1歳の姉弟関係とは、少し違うかもしれませんが……Upload By SAKURAいつの間にか隣同士に座って、テレビを見ていたり、つかず離れずの姉弟です。最近は、「上の子が中学生なら、下の子の面倒を任せられるでしょ」というようなことを言われたら……Upload By SAKURA隠さず現状を伝えています。「偉いね~」などと娘を褒められた時には、とても誇らしい気持ちになります。娘にも、度々感謝の気持ちを伝えるようにしています。Upload By SAKURAちなみに、今回登場しなかった長男は、次男と遊ぶのが大得意。Upload By SAKURA特に「遊んであげて」と言ったことはありませんが、いつの間にか2人で走り回っていたり、笑い転げていたりしています。察することも上手なので、次男がどうしてほしいかも、よく気がつきます。おしゃべり大好きで、自分の気持ちや、想像した相手の気持ちを教えてくれる長男とは、娘も相接しやすいようです。お姉ちゃんだからとか、お兄ちゃんだからとか、年の差があるからとか、そういうことに縛られず、今は、それぞれの得意分野で本領を発揮してもらっています。執筆/SAKURA(監修:初川先生より)娘さん(あーさん)の得意なこと、それが家事育児を日々回していく中でとても頼もしい戦力となっているというエピソードをありがとうございます。娘さんには自閉スペクトラム症があり、自分から何かを察して動く、相手の気持ちを想像するといったことは苦手とされています。実際、下の子たちのお世話を頼んだ際にそれを痛感されてきたのですよね(※前回までのコラム参照)。ただ、逆に、決まっていること、ルーティンとなっていることであったり、作業のはじめとおわりが明確なことは、あーさんは上手にできるようですね。SAKURAさんは家事と育児をやっていくわけですが、家事に関して、あーさんはとても助けてくれる存在なのですね。長男くん(きーさん)はあーさん、なーさん(次男くん)とのコミュニケーションのつまずきを翻訳してくれたり、なーさんに合わせて楽しく遊んでくれたり、上の子たち二人がそれぞれの持ち味を生かしつつ、日々の生活がお互いにとって心地よいものになるようにうまく助け合っていることが感じられますね。苦手なことを頑張らせるのではなく、得意なことで家族という集団生活をみんなでつくり上げている感じ、素敵だなと感じました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月06日川崎病とは?原因、かかりやすい年齢はある?川崎病は、1960年代に川崎富作氏によって報告された、子どもに特有の全身の血管に炎症が起こる病気です。一番気をつけなければいけないのは、心臓に合併症を起こす場合があることです。まれに重篤な合併症を起こす可能性がありますが、適切な診断や治療を受ければ重症化しないことが多いです。現在のところ、遺伝的な要因、細菌やウイルスなどの感染、免疫システムの過剰な反応などと関連があると言われていますが、川崎病の原因は特定されていません。4歳以下での発症が多いですが、それ以降の学童期にも発症しうる疾患です。2021年の報告によると1歳が最も多く、2歳、0歳がこれに続き、女児よりも男児に多い傾向があります。再発率は約4%と報告されています。また、欧米に比べると日本をはじめとするアジアの国々で多く発症するとも言われています。血管に強い炎症が起こることで、冠動脈(心臓に酸素を届ける血管)が瘤のように膨らむ「冠動脈瘤」ができることがあります。冠動脈瘤は大きいほど重症で、まれに心筋梗塞や突然死を招く恐れがあります。川崎病の症状は?病院受診の目安や検査、治療、予後などについて小児科医が詳しく回答!川崎病にかかると、どのような症状が出るのでしょうか。また、どのようなことが気になったら受診する必要があるのか、検査や治療はどのようなことをするのか、予後はどうなのかなど、気になることを小児科医の室伏佑香先生が分かりやすく答えてくださいました。(質問)川崎病にかかると、どんな症状が出ますか?(回答)以下の6つの主要症状のうち、経過中に下記の5症状以上に当てはまる場合は、川崎病と診断します。1. 発熱個人差はありますが、無治療ではおおよそ1~3週間にわたって熱が上がったり下がったりします。現在は発熱日数を問わず、川崎病の診断基準の一つとみなされています。2. 両側眼球結膜の充血血管が拡張して見えやすくなることで、眼球結膜(白目の部分)が赤くなります。3. 口唇、口腔所見…口唇の紅潮、いちご舌のどが赤くなる、唇が赤く乾いてひび割れる、舌が赤くブツブツが目立つようになりイチゴのようにみえる、などの症状が出てきます。4. 発疹(BCG接種痕やその周辺の発赤も含む)発疹の形態はさまざまで、蕁麻疹(じんましん)や、 麻疹(はしか)や 猩紅熱(しょうこうねつ)による発疹のように見えることがあります。5. 四肢末端の変化急性期…手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑回復期…指先からの膜様落屑手の平と足の裏が赤色または紫がかった赤色になったり、手足の指が腫れぼったくなったりします。発症から約10日ほど経つと、手足の指の皮膚がむけ始める場合もあります。6. 頚部のリンパ節の腫れと圧痛首のリンパ節が腫れ、圧痛を伴います。腫れや痛みが強い場合には、首を動かしにくくなることもあります。上記の主要症状は同時期に一気に出現せず、数日かけて揃ってくる場合もあります。また、5つの症状が揃わなくても、その他の症状や検査結果などから総合的に川崎病と診断することがあります。川崎病の症状の現れ方は個人差が大きいので、似たような症状が出ていても、必ずしも上記の症状に当てはまらないこともあります。少しでも気になる症状がある場合には、ためらわずかかりつけ医などを受診することをおすすめします。Upload By 発達障害のキホン(質問)病院ではどんな検査をするのですか?(回答)血液検査や尿検査、咽頭ぬぐいの検査などを行い、感染症のチェックや川崎病を疑う血液検査所見(白血球や炎症反応(CRP)の上昇など)があるかどうかを確認します。また、少しでも川崎病の疑いがあれば、心電図検査や心臓超音波検査(心エコー検査)などの心臓の検査を行います。そこで、心臓の動き、冠動脈瘤や心臓弁の異常の有無、心膜や心筋の炎症の有無などを確認します。心エコー検査で動脈瘤が見つかれば、心臓カテーテル検査を行うことがあります。Upload By 発達障害のキホン(質問)川崎病と診断されたら、どんな治療を受けるのでしょうか?また、入院期間はどのくらいなのでしょうか?(回答)川崎病の治療開始はできるだけ早く開始すること、いわゆる「急性期」治療が重要です。特に冠動脈疾患のリスクを抑えるために、症状が現れてから7〜10日以内に治療を行うことが望まれます。治療内容としては、1~2日間にわたり高用量の免疫グロブリン(全身の炎症を抑える)を静脈内投与し、中等量のアスピリン(血管の炎症を抑える、血液を固まりにくくする事により血栓を予防する)を経口投与します。この治療で十分に症状が改善しない場合には、免疫グロブリンを再度投与したり、ほかの治療を追加することもあります。数日熱のない状態が続けば、アスピリンを減量しますが、その後もしばらくは内服を継続することが多いです。冠動脈瘤がない症例では、炎症が治まればアスピリンの投与を中止しますが、冠動脈に異常が見られる症例では、長期にわたってアスピリンを内服します。入院期間は、1回のグロブリン点滴治療で炎症が落ち着き、解熱した場合でおおよその目安として1~2週間程度です。冠動脈瘤があったり、治療を行ってもなかなか解熱が得られない場合は数ヶ月入院することもあります。退院後も外来で、年単位でエコー検査を継続することが多いです。Upload By 発達障害のキホン(質問)川崎病が重症化すると命にかかわるのでしょうか?(回答)熱などの症状が目立っている急性期での致死率は、0.1%未満です。しかし、2~3%の確率で冠動脈瘤ができてしまうことがあります。(心臓の血管の一部が瘤のように膨らむ)冠動脈瘤ができてしまうと、血液の流れが滞って血栓ができやすくなります。ここから流れた血栓が冠動脈をふさぎ、その先の血流が途絶えて酸素が届かなくなってしまうと、心臓の筋肉が壊死し、心筋梗塞を引き起こします。だからこそ急性期の治療がもっとも重要であり、後年に心筋梗塞を生じるリスクを減らすことにつながります。川崎病は全身の血管に炎症が起こるため、さまざまな臓器にも合併症がみられます。しかしほとんどは一時的なもので、適切な治療すれば重症になることは多くはありません。まれに心筋炎、心不全、不整脈、肝障害、イレウス、けいれん、脳症など重い合併症が起こることがあります。Upload By 発達障害のキホン川崎病は治るの?後遺症や再発の可能性について川崎病の死亡例は、全国調査において2019~2021年の2年間で2例のみとなっています。また、再発の可能性は全体の約4%、後遺症を生じる例は約2.5%という結果が出ています。後遺症の内訳は、冠動脈の小瘤が1.44%、中等瘤が0.57%、巨大瘤が0.13%、心筋梗塞が 0.01%、弁膜病変が0.45%となっています。このような長期的心合併症も生じうる疾患であるため、川崎病の既往がある場合には受診時に既往がある旨を伝えましょう。また、お子さん自身で健康管理を行う年齢になったら「川崎病にかかったことがある」と伝え、本人が病歴を把握しておけるようにしておくことも必要でしょう。参考:特定非営利活動法人日本川崎病研究センター 川崎病全国調査担当グループ第26回川崎病全国調査さいごに川崎病は早期に治療を開始することがとても重要です。気になる症状があれば、ためらわず病院で受診をしましょう。川崎病患者の情報を正確に伝達するために、日本川崎病学会が監修した「川崎病急性期カード」というものがあります。臨床情報や治療、心臓合併症などの医療情報を正確に書き込むことができ、罹患後の健康管理に役立てることができます。また、多くの都道府県で治療費の補助も出るので、ホームページなどで調べてみましょう。川崎病は、このように検査方法や治療法や医療費補助、罹患後のフォローがしっかり確立されています。過度に不安がらず、適度に健康的な生活に留意しながら、普段通りに過ごすことができます。万が一何かあった場合に備え、入園や入学時に園や学校に「川崎病にかかったことがある」と伝えておくことも大切です。
2023年09月06日防災について取り組んでいることーーわが家の防災ノウハウUpload By 丸山さとこときおりホームセンターに現れる災害対策コーナーを見る度に「防災かー、見直さないとな~」と思いつつ後回しになってしまうわが家です。けれども、そんなわが家も息子が小さかった頃は今より熱心に災害対策をしていました。現在中学2年生の息子のコウには、感覚過敏による偏食がありました。特に幼児期は偏食傾向が強く、非常事態だからといって普段食べ慣れないものを食べてくれる可能性が低かったからです。日頃のコウの様子を見ていた私は、「普段食べ慣れないもの」が不安なら「食べ慣れたもの」をストックしておけば、非常時でもコウが食べやすいかもしれないと考えました。食料の備蓄方法の一つにローリングストックというものがあります。普段から食材や加工品を少し多めに買っておき、使った分を新しく買い足していくことで食料を家に備蓄しておく方法です。Upload By 丸山さとこ普段から食べているものであれば「以前は食べられたけれど久しぶりに食べてみたらダメだった」というパターンも防げて安心です。お腹に溜まるものとして乾麺やスープパスタを、栄養バランスが取れるものとして乾燥野菜やビタミン入りゼリー飲料などを備蓄しておくことにしました。ゼリー飲料や経口補水液は、発熱した際にも役立ちました。非常時の環境によるストレスを少しでも減らせるようにまた、食料の備蓄以外にも心配なことはいくつかありました。小学生の頃のコウは想定外の事態に対してパニックになりやすかったからです。コウは保育園の頃に「1日1回はシャワーを浴びなければならない」というこだわりが生まれかかったことがありました。そのため、「非常時にはシャワーを毎日浴びられないこともある」という話は、災害のニュースがあるときなど折に触れて話すようにしていました。Upload By 丸山さとこ災害時の入浴について話すときには「被災地は大変だね。早く復旧するといいね」「仮設のお風呂ができてよかったね」と雑談の形をとるようにしていました。不安が大きくならないように、日常の中で自然に伝えることを意識していました。災害などの非常時はシャワーを浴びられないだけでなく、家や避難所が埃っぽかったり、冷暖房が十分でなかったりすることもあります。そのため、わが家はキャンプへ定期的に行くようにしています。キャンプ中は埃っぽく冷暖房が不十分な環境で過ごすことになります。レジャーの中でそのような環境に慣れておくことで、災害時のコウのストレスを少しでも減らせたらいいなと考えました。Upload By 丸山さとこキャンプ場では冷蔵庫も電子レンジもない状態は普通のことです。そのため、1日に必要な食料品の備蓄量を正確に知ることができます。しかも、実際の災害時とは違い管理棟や地域のスーパーなどを頼ることができます。実際にキャンプ場で食事をしてみると、「お湯を注ぐだけの食事は手を洗わなくても衛生的に調理ができて助かるな」とか、「疲れて汗と埃でベタベタのときは食欲が落ちるな。クラッカーなら少しは食べられそう」など分かることがたくさんありました。1日に必要な飲料水の量もキャンプで分かるため、ペットボトルの水をストックしておく際に、ある程度の自信を持って数を決められるようにもなりました。災害に備えて、できることをできる形で私の知人の中には、大きな地震や水害を体験した人が何人かいます。写真を見せてもらったり話を聞いたりする中で、災害そのものはどうにもできなくても備えることはできるのだと感じました。現在のわが家の災害への備えとしては、食料品のローリングストックや非常用トイレセットのほかにキャンプ用品があります。寝具・調理器具・携帯医療キット・ライト・ポリタンク・軍手などがあるため、自宅が倒壊していなければ何とかなりそうです。Upload By 丸山さとこそのような備蓄品は一通り揃っている一方で、非常時持ち出し袋は手薄になっていると思います。現在備えている「一家で1つの防災リュック」から「1人1つの防災リュック」に変更するなどして、今のわが家にあった災害対策へと見直していきたいと思いました。執筆/丸山さとこ(監修:室伏先生)災害への対策について詳しく教えてくださり、ありがとうございます。大変参考になりました。食べ慣れたものを準備しておくことのできるローリングストック、シャワーなどのこだわりへの対応、日常の中での災害に対する意識づくり、災害時に近い環境の体験などなど。コウくんの苦手を熟知している親御さんだからこそ成せる技ですね。それぞれのお子さんの苦手や発達段階に合わせた、防災対策や災害意識づくりができると安心ですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月05日