最近よく耳にするようになった「子どもの自己肯定感」。平成26年度版のこども・若者白書で、諸外国に比べて日本の子どもたちの自己肯定感が低いことがわかり、国も提言を出しています。子どもが自分の存在意義や価値を認めることができるのは、その後の成長においてとても大事です。しかし、その育み方次第では、自己中心的なわがままな性格になってしまう危険性もはらんでいます。そうならないように、何に注意すればいいのかを知っておきましょう。今回は、「自己肯定感」とセットで考えなければならない「自己寛容」についてお話しいたします。自己肯定感とは?独立行政法人国立青少年教育振興機構で理事長を務める鈴木みゆきさんは、子どもの自己肯定感について以下のように話しています。■なにかに挑戦するときに「わたしにはできる!」と思うこと■「自分が大事な存在だ」「自分はここにいていいんだ」と自分を認める意識■「自分が好きだ」という気持ちこのように、自己肯定感とは、自分の存在価値を認め、自分を信じてあげられる気持ちを持つことです。そして、自己肯定感を高めるには、さまざまな体験をしたり、家族の愛情を感じることがよいとされています。しかし、自己肯定感を持つことはとても大切ですが、どうやら気をつけなければいけないポイントがあるようです。自己肯定感の落とし穴思考回路や習慣などの人としての基礎は12歳までにほぼ決まると言われています。ですので、それまでに自己肯定感を持てるようになることはとても大事で、そのために親の言葉がけや接し方がとても重要になってきます。心理カウンセラーの中野とも子氏は、子どもの自己肯定感を以下の3つに定義づけています。(1)無条件の自己肯定感(2)条件付きの自己肯定感(3)自己肯定感の低い状態もちろん、いちばんいい状態は(1)です。注意したいのは(2)の状態で、誰もがつい陥りがちなのだとか。例えば、「テストでいい点数を取ったときだけ褒める」「かけっこで1番になったときだけ褒める」など、条件付きで愛情を示すことを続けると、子どもは「何か成果をあげないと自分の価値がない」と感じるようになってしまいます。そしてもうひとつの懸念が、自己肯定感の高まりが「自分は完璧」という行きすぎた感情を生んでしまうこと。これにより「自分は正しい。悪いのは周り」という自己中心的な思考回路に陥ってしまい、人間関係などに悪影響を及ぼす可能性が出てきます。大切なのは「自己肯定感」と「自己寛容」のバランスどちらの懸念も、ある感情を持つことで解消できます。それが「自己寛容」。自己寛容とは、“自分を許す” “弱い自分も受け入れることができる” ことです。この「自己寛容」がベースにあって初めて「自己肯定感」が生きてきます。「自己寛容」の要素が欠けたまま「自己肯定感」だけを育むと、自分を過信し、できない自分を認めないうえに、それを人のせいにするようになってしまうのです。「〇〇くんがボールをパスしてくれなかった。パスをもらえたら、絶対に点を決められたのに!(ゴールできなかった)」我が子がこんなふうな発言をしたら、親としてショックですよね。とはいえ、大人でもこのような人はいるのではないでしょうか?「任せてくれたら必ず結果を出せたのに、直属の上司がいろいろと文句をつけてくるからさぁ……(結局結果を出せなかった)」「自己寛容」はアドラーの幸せの3条件のひとつでもあります。子どもの自立を促すのは「他者信頼」→「他者貢献」→「自己寛容」のサイクルの繰り返しです。・自己を犠牲にすることなく、信頼する相手のために見返りを期待せずに貢献する。・その結果、相手の心からの「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉をもらう。・不完全な自分でも、だれかの役に立てば、こんなに喜んでもらえるんだと実感する。(引用元:NIKKEI STYLE|ありのままの自分・夫・子どもを認める勇気)このような経験から実感を積み重ねていくなかで、子どもは自分の価値を認め、自立していくのだそうです。これこそまさに「自己肯定感」ですね。「自己寛容」+「自己肯定感」に効く3つの習慣子どもが自分を信じ、許し、ありのままを受け入れる度量を身につけるには、ポジティブマインドをもつ必要があります。そのために、日頃の親の接し方がとても大切なのは言うまでもありません。しかし、それは難しいことではなく、ちょっとした意識を持つだけのようです。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』の著者、教育専門家の石田勝紀氏が推奨する方法をご紹介します。(1)GOODニュースを毎日語り合う毎日の会話の中で「今日のGOODニュースは?」を定番にすることをおすすめされています。些細なことでもなんでもいいのです。「お天気がよくて気持ちよかった」「友だちとおしゃべりして楽しかった」など。このときコツは「今日のBADニュース」を先に聞くこと。会話の最後がいい話で終わると気分も良くなり、その習慣が前向き思考への道筋になります。この効果は企業研修でも実証済で、GOODニュースを語り合うことでプラス思考になり、社内の雰囲気も業績もアップしたのだそうです。(2)得意なことを徹底して「認める」子どもの自己肯定感を伸ばすコツは「褒める」のではなく「認める」こと。褒めるのは大げさになりがちなので、認めるくらいのほうが、子どもにとってもモチベーションを高めるちょうどいいテンションなのだそうです。「よくできるね。すごいね!」と言われたら、もっと認めてもらおうと子どもは頑張ろうとします。得意なことには特に徹底してこのスタンスを続けるといいでしょう。ただし、勉強に関して「すごいね」の声かけは、子どものプレッシャーにもなりがちなので注意が必要です。(3)「ではどうしたらうまくいくだろう」を口癖にする誰しも失敗はするものです。長い人生、うまくいかないこともたくさんあります。大切なのは次。「じゃあ次はどうするのか?」と考える習慣をつけることです。テストの結果が悪かったり、友だちと喧嘩してしまったり。その事実を叱るのではなく、事実を踏まえて次を考えることは確実に思考を前向きにします。そしてこれは、自らの失敗も含めてありのままを受け入れるという「自己寛容」のトレーニングにもなるのです。石田氏はこの3つのほかにも、子どもの行動に対して「助かった」「なるほど」「知らなかった」など、子どもの貢献や考えを認める声かけもとても有効だとおっしゃっています。これらは石田氏の多くの経験から特に効果があったものだそうですが、だからと言ってお子さんによっては合わないこともあるかもしれません。完璧を目指すのではなく、「まずは試しに」くらいの感じで始めてみてはいかがでしょうか。親自身も “自分を追い込まない” ことが肝心です。***「自己寛容」も「自己肯定感」も、ベースにあるのは親子の信頼関係です。それが試されるのは子どもが失敗したとき。失敗や喪失体験の際、子どもの悲しみや辛さに親が寄り添い、共感することが、子どもの心の安定を築き、「失敗しても大丈夫。どんな自分も愛されている」と実感できる基盤となります。子どもの日々の小さなことにも心を寄せることが、とても大切なのですね。(参考)マイナビウーマン 子育て|【専門家】自己肯定感を育てる、親子のコミュニケーション方法ウーマンエキサイト|子どもの自己肯定感「ほめて伸ばす」は正しい?わが子を“自信満々の自己中”にしないためにBusiness Journal|人の一生は12歳までに決まるという残酷な現実NIKKEI STYLE|ありのままの自分・夫・子どもを認める勇気東洋経済ONLINE|「前向きな子」の親が実践する“3つの声かけ”
2018年12月11日「ピアジェの心理学を知れば、子どもの発達がよく分かる!?有名な『4つの発達段階』をまとめてみた」でもお伝えしたように、人間にはいくつかの「発達段階」があると考えられています。心理学者ジャン・ピアジェ (1896~1980)の場合、「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形式的操作期」という4つでした。発達段階の区分や名称は、学者によって異なります。心理学者エリク・H・エリクソン(1902~1994)は、「乳児期」「青年期」「成人期」など8つの発達段階を提唱しました。こちらのほうがなじみ深く、イメージしやすいかもしれませんね。エリクソンによる発達段階論は、教員志望者だけでなく、保育士を目指す人たちにも学ばれています。保育士試験で頻出のためです。保育士志望者はなぜ、エリクソンの理論を学ぶことを求められているのでしょう?それは、子どもならではの特性を理解し、発達段階を意識して接する必要があるから。もちろん、子どもを持つ皆さんにとっても有用な知識です。我が子だけでなく、自分の発達段階も意識することで、人生観が新たになるかもしれません。今回はエリクソンの発達段階論を、できるだけ分かりやすくご説明しましょう。心理学者エリクソンの人物像エリク・H・エリクソンは1902年、デンマーク系ユダヤ人の母親からドイツで生まれました。父親は不明。エリクソンが3歳になると母親は小児科医と結婚し、彼が実の父親だと伝えましたが、エリクソンは信じられなかったそうです。また、エリクソンは実の父親に似たのか金髪に青い目で、母親夫婦とは異なる見た目だったそう。そのためユダヤ教会では「異邦人」、地元の学校では「ユダヤ人」と呼ばれ、アイデンティティーに苦しんでいたようです。この頃の経験が、心理学者としての研究に影響しているのかもしれません。学校を卒業後、エリクソンは画家を目指しましたが、やがて挫折。失意のうちに過ごしていたとき、ウィーンに学校を設立しようとしていた親友に呼び寄せられます。そこでエリクソンは教師として活躍し、周囲の人から才能を認められ、児童分析家となりました。1933年にドイツでヒトラー内閣が成立すると、反ユダヤ主義を恐れてエリクソンは米国に渡ります。そこで彼は次々と成果を挙げ、精神分析家・児童分析家として名声が高まりました。イェール大学の人間関係研究所では文化人類学者たちと交友を深め、精神分析に文化人類学を取り入れることを思いつきます。その成果が、1950年に出版された『Childhood and Society』(『幼年期と社會』全3巻、日本教文社、1954~1956年/『幼児期と社会』全2巻、みすず書房、1977~1980年)に反映されているといえるでしょう。この本は発達心理学の古典的名著として知られています。また、現代で「アイデンティティー」「モラトリアム」という心理学用語が一般的に使われるようになったのも、エリクソンの影響といえるでしょう。エリクソンの「心理社会的発達理論」とはエリクソンが提唱した論は、「心理社会的発達理論(psychosocial development)」と呼ばれています。人間の心理は、周囲の人々との相互作用を通して成長していくという考えです。その特徴は以下のとおり。-人間の発達段階を8つに分けている。-各発達段階に「心理社会的危機(psychosocial crisis)」がある。-人間は心理社会的危機を乗り越えることで、「力(virtue)」を獲得する。「発達課題(development task)」と呼ばれることもある心理社会的危機は、「〇〇対△△」というかたちで表されます。たとえば、18~40歳にあたる「初期成人期(young adult)」の心理社会的危機は「親密対孤立(intimacy vs. isolation)」。この時期、多くの人は、家族以外の他者との長期的で親密な関係を形成しようとします。うまくいけば、「力」として「愛情(love)」を獲得できるでしょう。愛は人生を豊かにします。結婚生活にもかかせないものです。しかし、他者との関りを避けたりコミュニーションを適切にとれなかったりすれば、この発達段階における心理社会的危機を乗り越えられず、孤独に陥る、ということになります。では、心理社会的発達理論における8つの段階を順に見ていきましょう。エリクソンの発達段階1:乳児期「乳児期(infancy)」という発達段階は、およそ0歳~1歳半にあたります。この時期に直面する心理社会的危機は「信頼感対不信感(trust vs. mistrust)」。人間の赤ちゃんは無力で、一人では生きていくことができません。そこで、泣くことで助けを求め、母親をはじめとする周囲の人から世話されることで育ちます。このとき、周囲の人から適切なケアを受けられれば、赤ちゃんのなかで世界に対する信頼感が構築されます。「みんなは自分を助けてくれる」という気持ちです。うまくいけば、「期待(hope)」という力を得ることができます。しかし、泣いても誰かが来てくれるわけでもなく、世話してもらえないとしたら?赤ちゃんは世界に対する不信感を抱き、「誰も自分を助けてくれない」と思うようになります。そのため、赤ちゃんに対し適切なケアが行われないと、その子の人生観に大きな悪影響を与えてしまうと考えられています。エリクソンの発達段階2:幼児前期「幼児前期(early childhood)」は、およそ1歳半~3歳にあたります。直面する心理社会的危機は「自主性対羞恥心(autonomy vs. shame)」。この時期の子どもは、歩いたりしゃべったりするようになります。とても活発な子もいて、親の手を振りほどいて走り出したり、何に対しても「イヤ」と言ったり……などは、よく聞かれる話ですね。子どもは積極的な挑戦や親のしつけを通し、排せつや着替えなど、赤ちゃんの頃は周りの人にやってもらっていたことを、一人でできるようになっていきます。親が子どもに、自分でやってみる機会を与え、適切なタイミングで手伝ってあげれば、子どもは自信をつけて、さらにいろいろやってみようという気持ちになれるでしょう。その結果、「意欲(will)」という力を獲得します。しかし、親が子どもに先回りして何でもしてあげたり、挑戦して失敗した子どもを過度に叱ったりすればどうでしょう?子どもの自主性は育たず、むしろ羞恥心を覚えてしまい、新しい物事に挑戦しようという意欲は生まれづらくなります。エリクソンの発達段階3:遊戯期3~5歳頃は「遊戯期(play age)」。「自発性対罪悪感(initiative vs. guilt)」が心理社会的危機です。保育園や幼稚園で、友だちと活発に遊ぶ時期ですね。世界に対して強い興味を持ち、「どうして○○なの?」という質問を連発したり、ごっこ遊びをしたりします。とにかくエネルギーがあり余っている状態といえるでしょう。このような子どもらしい様子に対し、親がうっとうしがる態度を見せたり、過度に厳しいしつけを施したりすると、子どもは罪悪感を覚えてしまいます。もちろん、公共の場所での適切なふるまいを教えるなど、適度なしつけは大切です。自発性と罪悪感のバランスがうまくとれれば、子どもは心理社会的危機を克服し、「目的意識(purpose)」という力を獲得できます。エリクソンの発達段階4:学童期およそ5~12歳は「学童期(school age)」です。克服するべき心理社会的危機は「勤勉さ対劣等感(industry vs. inferiority)」。小学校に通いはじめ、勉強の楽しさを知る時期です。学期中や夏休みにこなすべき宿題が次々に出されるので、「計画的に課題を仕上げ、提出する」ということを覚えます。それを繰り返すことで自信がつき、自分には「能力(competency)」があるということを理解するのです。しかし、勉強が最初から得意な子どもばかりではありません。数の概念が理解できなかったり、計画的な勉強のやり方がわからなかったりして困っている子もいます。そのような状況に対し、周囲の大人が適切にサポートせず、ただ叱っているだけでは、問題は解決できません。子どもは「自分にはできない」と劣等感を抱き、その影響はのちの人生に暗い影を落とすことでしょう。子どもが劣等感を抱かず、かつ傲慢にもならないよう、適度に褒めたりアドバイスをしたりする必要があります。エリクソンの発達段階5:青年期12~18歳頃は「青年期(adolescence)」です。立ち向かうべき心理社会的危機は「アイデンティティー対アイデンティティーの混乱(identity vs. identity confusion)」。思春期にあたるこの時期は、「自分って何だろう」「将来、どうやって生きていこう」など、自身について特に思い悩むときです。皆さんも「自分は何がやりたいんだろう?」「『自分らしさ』って何?」など、さまざまなことを考えた経験があるのではないでしょうか。「自分はこういう人間だ」とある程度確信できるようになれば、アイデンティティーが確立されたといえ、「忠誠(fidelity)」という力が得られます。自分で選んだ価値観を信じ、それに対して貢献しようとすることです。たとえば、「○○の国民として義務を果たそう」「地球に住む生き物として、自然環境を守らなければ」などと強く思い、行動することが該当します。一方で、アイデンティティーが確立できないと、「自分は何なのだろう」「何のために生きているのだろう」と悩みつづけることになります。共同体のなかに自分の居場所を見つけることが、アイデンティティーの確立につながるでしょう。エリクソンの発達段階6:初期成人期18~40歳頃は「初期成人期(young adult)」と呼ばれています。乗り越えるべき心理社会的危機は「親密対孤立(intimacy vs. isolation)」です。生まれた家庭や学校を離れ、多くの人との関係を築く時期です。恋愛を経て結婚に至る人も多いでしょう。新たな家族や友人との長期的・安定的な関係を通し、「愛情(love)」という力を獲得します。幸福な人生を送ることにつながるでしょう。しかし、他者に積極的に関わることをためらったり、長期的な人間関係を築くことを怠ったりすると、人間は孤独になります。家庭を持つことが難しくなってしまうでしょう。エリクソンの発達段階7:壮年期40~65歳頃は「壮年期(adulthood)」です。克服するべき心理社会的危機は「ジェネラティビティー対停滞(generativity vs. stagnation)」。ジェネラティビティーとはエリクソンによる造語で、「次世代育成能力」などと訳されます。子どもを育てたり、職場の後進を育成したりなど、自身が属する共同体において後の世代に貢献することです。自分の時間やエネルギーを子どもや若者に使うことで生きがいを感じるという人も多いのではないでしょうか。これにより、私たちは「世話(care)」という力を獲得します。一方、共同体に関与せず常に自分のことだけ考えて生きている……このような状況は「停滞」と呼ばれます。この年齢になると、「世界に自分の足跡を残せただろうか」と考える人もいるのではないでしょうか。次の世代に何も残せず「停滞」していると感じると、このあとの「老年期」で辛くなるかもしれません。エリクソンの発達段階8:老年期最後は、およそ65歳以上を指す「老年期(mature age)」です。乗り越えるべき心理社会的危機は「自己統合対絶望(ego integrity vs. despair)」。多くの人が仕事を定年退職し、老後の生き方を模索していることと思います。寿命を前にして、これまでの人生を振り返ることもあるでしょう。それぞれの発達段階において、心理社会的危機を乗り越え、「力」を獲得できたでしょうか。満足のいく人生だったでしょうか。自分の死後に残るものはあるでしょうか?これらの質問に納得がいったならば、最後に「賢さ(wisdom)」を得られるでしょう。しかし、自分の人生に満足がいかず、多くの後悔を抱えていたらどうでしょうか?子どもの頃や青春時代、大人になってから……それぞれの発達段階に対し「こんなはずじゃなかった」という気持ちが強いと、人生をやり直したくなるかもしれません。しかし、時間を巻き戻せるわけはなく、寿命が迫っています。絶望的な気分となり、穏やかに余生を送る、というのは難しそうです。***エリクソンの発達段階論を知ると、子どもへの接し方だけでなく、親である自分の人生にも思いを巡らすことになるのではないでしょうか。読者の皆さんの多くは、6段階目の「初期成人期」にいることと思います。それまでの6つの段階における心理社会的危機をクリアできていたか振り返りつつ、お子さんの心理社会的危機についても考えてみてください。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアジェの心理学を知れば、子どもの発達がよく分かる!?有名な「4つの発達段階」をまとめてみた東京工芸大学学術リポジトリ|教育心理学的視点からエリクソンのライフサイクル論及びアイデンティティ概念を検討するJ-STAGE|E. H.エリクソンの心理社会的発達理論における「世代のサイクル」の視点慶應義塾大学学術情報リポジトリ|エリクソンの発達論に関する一考察 : その基本的視座について京都大学学術情報レポジトリ|E. H. Erikson のアイデンティティ理論と社会理論についての考察東京国際大学|アイデンティティ概念の理論的背景と問題点について―精神分析的観点による再検討のために―Simply Psychology|Erik Erikson’s Stages of Psychosocial DevelopmentPoole, Sarah and John Snarey (2011), “Erikson’s Stages of the Life Cycle”, Encyclopedia of Child Behavior and Development, Vol. 2, pp.599-603.
2018年12月10日ドイツで生まれた「シュタイナー教育」(インタビュー第1回参照)を、幼稚園から一般の高校にあたる高等部まで、15年間の一貫教育でおこなう東京賢治シュタイナー学校。その幼児部「たんぽぽこどもの園」ではどのような活動をしていて、それらは一般の幼稚園とどうちがうのでしょうか。幼児部教師の池田真紀先生に、まずは1日のスケジュールから教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビュー・校内撮影のみ)記事冒頭画像:東京賢治シュタイナー学校 校内紙芝居や絵本でなく「素話」である意味――たんぽぽこどもの園では、子どもたちがどんな活動をしているのか、1日のスケジュールを教えてください。池田先生:8時15分から8時半までの間が登園時間で、その後、室内で「自由遊び」があります。お絵描きやごっこ遊び、積み木遊び、それから針でなにかを縫うといった手仕事など、さまざまな遊びをします。この時間では、大人から指示されて決められた遊びをするのではなく、子どもが遊びを生み出していくことが大切です。子どもたちは、自分が想像したものを、丸太、積み木、布、木、木の実といった、お部屋にあるさまざまな素材を使ってかたちにしていき、さらに友だちと一緒におこなう体験をしていきます。たとえば、おうちをつくって家族ごっこ、オリジナルの物語による人形劇ごっこといった具合です。代々、子どもたちの中で伝承されて、毎年やるのはお祭りごっこですね。お囃子や獅子、白狐の格好をした子どもたちが、テーブルの上に乗って演じます。まるで本当のお祭りを見ているみたいでとても楽しいですよ。また、3歳から6歳までの子どもが同じ部屋で過ごしますから、兄弟のように関わり合う姿には温かいものがあります。10時になったら、おもちゃなど使ったものの「お片づけ」。その後は「ライゲン」という活動をします。――そのライゲンというのはどんなものですか?池田先生:一般の幼稚園でいうところの、「リズム遊び」に近いものですね。内容は季節を取り入れたもので、歌や音、言葉とともにその物語のなかで想像しながら教師とともに動きます。たとえば、教師がハトになったらハトに、ネズミになったらネズミにと、みんなで輪になって教師の模倣をします。7歳までの子どもは、模倣することであらゆることを身につけることができます。それも、どのような思いでその行為をしているのかという内面のありようまで模倣する。また、ライゲンでは、みんなで「中心に集まる~広がる」「ジャンプ~小さくなる」などの対の動きも取り入れます。それは、「収縮と拡散」「静と動」というリズミカルな動きの体験です。こういった動きも教師と一緒にすることで、子どもたちの体が健全につくられていくのです。――なるほど。スケジュールの続きを教えてください。池田先生:11時になったら「お弁当」の時間。そして、今度は外での「自由遊び」をします。子どもたちはとてもダイナミックに遊びます。のぼり棒にロープを横にかけると、そこはお猿島。てっぺんにはかわいい子ザルに扮した子どもがいます。ブランコも子どもたちは大好き。ふたつのブランコに板を渡すと、何と6人乗りの宇宙船に。ジャングルジムにも板をかけて、2階建てや屋根付きのおうちをつくります。その他、鬼ごっこ、縄跳び、竹馬、砂山つくり、泥だんごやごちそうつくり、などなど、とにかく体を動かし、感覚をフルに働かせて遊ぶ時間です。1時間ほど遊んだら、またおもちゃをすべてもとの場所に戻して、お部屋に入ったら「お着替え」です。みんなが着替え終わるまでお絵描きをして待って、最後に「お話」の時間がある。これは、「素話」です。紙芝居や絵本を見せるのではなく、教師が子どもたちを見渡しながらお話をするということですね。――それにはどんな理由があるのですか?池田先生:わたしたちは「ファンタジーの力」と呼びますが、幼い子どもは、たとえば、雲を大好きなクマに見立てるなど、強い想像力を持っています。教師の素話によって、子どもはたくさんのイメージをつくることができる。そのイメージを大切にすればするほど、内側の世界が豊かになり、その後の思春期における内面形成、思考形成の土台になるのです。お話は10分から15分程度。そして、13時半に降園となります。【たんぽぽこどもの園の1日】08:30 登園、自由遊び(室内)10:00 片づけ、ライゲン11:00 お弁当、自由遊び(戸外)12:30 片づけ・着替え、お話13:30 降園東京賢治シュタイナー学校 校内決まったリズムと繰り返しが健康な体をつくる――このスケジュールはずっと変わらないものですか?池田先生:いえ、わたしたちは「1週間のリズム」と呼びますが、曜日によって少しだけ内容が変わります。たとえば、火曜日は「自由遊び」の時間に「にじみ絵」という絵の具を使った活動、水曜日はライゲンの代わりに「オイリュトミー」という身体表現をします。【たんぽぽこどもの園の1週間のリズム】月曜日:お散歩火曜日:にじみ絵水曜日:オイリュトミー木曜日:みつろう粘土金曜日:お掃除池田先生:でも、朝の自由遊びを、日によって10時までにしたり11時までにしたりするといったことはなく、1日の基本的な流れはずっと一緒ですね。なぜかというと、子どもは「繰り返す」ことで「安心感」を得るからです。いつもより自由遊びの時間が長いなど、やることが変わると子どもはドキドキして不安になってしまう。毎日、同じリズムで子どもが安心して過ごせることは、気持ち良く呼吸できて、脈拍が整うことにもなります。このリズムと繰り返しが、健康な体をつくっていきます。――オイリュトミーとはどんな活動なのでしょうか。池田先生:オイリュトミー用のドレスを着て、専科の教師の話を聴きながらいろいろな動きをするというものです。幼児においては、体を生き生きとさせる効果があります。――ライゲンとのちがいはどういったものになりますか?池田先生:オイリュトミーは、たとえば、言葉なら「く」や「う」の動き、音程なら「ラ」や「ミ」の動きというふうに手や腕の位置、動きが決まっています。一方、ライゲンにはそういう決まりはありません。言葉で説明するのは難しいのですが、ライゲンはイメージしながら動くものですね。スケジュールはただの時間の区切りではない――一般の幼稚園との大きなちがいはどこにあると考えていますか。池田先生:一般の幼稚園も、スケジュールは決まっているかと思います。ただ、わたしたちの園では、それによって「なにが子どもにもたらされるか」という観点をとても大切にしています。どうして絵本ではなく素話にするかということもお伝えしましたが、わたしたちの園でおこなう内容には、一つひとつに意味があります。お片づけもそう。お片づけはみんなが取り組みます。それも、年少さんはひもを巻く、年長さんは大きな積み木を運ぶというふうに役割が決まっている。毎日その時間になると、お部屋中に広がったおもちゃを決まった場所に戻してあげて、お部屋が綺麗になり、全員が「気持ち良くなった」という体験をする。この体験は、一人ひとりに「収縮と拡散」の心地よいリズムを与えます。シンプルですが、すべての行為に意味があるのです。■ 東京賢治シュタイナー学校■ 東京賢治シュタイナー学校幼児部たんぽぽこどもの園■ 東京賢治シュタイナー学校 インタビュー一覧第1回:「点数」で子どもを評価しない――力強い意志を育む「シュタイナー教育」の本質第2回:「模倣となりきり」で想像力が伸びる――感覚がフル稼働する「シュタイナー教育の1日」第3回:お片づけに“小人さん”が登場!?――「豊かなイメージ」が日々の子育てにも生きる(※近日公開)第4回:1年生が「円形の席」で学ぶこと――シュタイナー教育が重視する「学びのベース」(※近日公開)【プロフィール】東京賢治シュタイナー学校1994年、30年以上にわたり公教育に携わった鳥山敏子氏が公立学校を退職し、天地人のつながりのなかに生きようとした宮沢賢治の生き方を理想として長野・美麻に若者のための学びの場「賢治の学校」を立ち上げる。その後、ドイツのシュタイナー学校の見学をとおして「子どものための学校」こそ必要だとし、1997年に東京・立川に拠点を移して前身である「東京賢治の学校」を創設。1999年に幼児部、2005年には高等部を開設。2013年より現校名となる。池田真紀(いけだ・まき)東京賢治シュタイナー学校幼児部教師(クラス担任)。「古くならないいまの時代に合ったシュタイナー教育」を目指す。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月10日“デキる子” が育つ家には、以下のような特徴があるようです。「地球儀にホコリがかぶっていない」「図鑑が床に置いてある」「オセロや将棋などのボードゲームが手の届く範囲にある」また、『頭のよい子が育つ家』の著者である四十万靖氏は、「優秀な子に子ども部屋は必要ない」と言い切っています。はたしてその理由は……?■参照コラム記事はこちら↓子どもの知的好奇心を刺激する、“学びに効果的な” 部屋づくり
2018年12月09日「シュタイナー教育」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ドイツで誕生した教育思想ですが、おそらく多くの人にとって耳慣れないものでしょう。日本でシュタイナー教育をおこなう東京賢治シュタイナー学校の取材をとおして見えてきたのは、一般常識や他人の意見でぶれることのない、力強い「意志」を育てる教育でした。同校幼児部教師・池田真紀先生(写真右)と、学校教師・鴻巣理香先生(写真左)にお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/石塚雅人(インタビュー撮影のみ)ドイツで生まれ日本の風土に合わせて発展――そもそも、「シュタイナー教育」とはどんなふうにはじまったものでしょうか。池田先生:もともとはオーストリアの哲学者であるルドルフ・シュタイナー氏がはじめた教育です。当時は第一次大戦のさなか。「健全な人間が育たないと健全な社会には変えられない」という、社会運動の一端としてはじめられたそうです。鴻巣先生:当時のドイツの普通教育は、いまの小学4年生くらいまで。その後は、上の学校に進むのか、あるいは社会に出て徒弟制度のなかで働くのか、その時点で決めないといけませんでした。その頃、シュタイナーの講演を聴いた大きなタバコ会社の社長が、彼に「学校をつくってほしい」と依頼しました。従業員のほとんどはごく短い期間の普通教育を受けただけだったということもあり、従業員たちが「子どもたちには彼らに合う場でしっかり学ばせてあげたい」と社長に要望したのだそうです。そうして、はじめてのシュタイナー学校が誕生しました。池田先生:その後、日本に伝わった当時は、ドイツでの手法をそのまま踏襲していたようです。でも、日本のなかでそれぞれの学校や幼稚園が試行錯誤しながら、その地域に合ったシュタイナー教育をおこなうようになっています。ただ、根本となる「人間」とはなにか、というとらえ方は、どこのシュタイナー教育も同じものです。子どもたちの年齢と成長に合った教育――その根本である、シュタイナー教育の特徴というとどんなものになるのでしょうか。池田先生:「子どもの年齢や発達にふさわしい教育を与える必要がある」という発想ですね。まだ合わないものを早くさせたり、逆に必要なことをさせなかったりということではなく、そのときそのとき、成長を続ける子どもに合ったカリキュラムを組んでいます。鴻巣先生:シュタイナー教育は1919年にはじまり、2019年に100周年を迎えます。でも、100年たったからといって、子どもが育っていくために必要なものは変わりません。子どもの年齢、成長に合ったものを手渡していくということが、シュタイナー教育のいちばんの特徴だと思います。当校の教師は、一般の公立校や私立校で教師をしていた者がほとんどですから、一般の学校とのちがいをよくわかっています。そのちがいとは、人間のとらえ方、発達に関する観点ですね。幼児期に体ができてはじめて勉強ができる――シュタイナー教育では、0〜7歳、7〜14歳、14〜21歳という7年単位で人間の成長をわけて考えているとのこと。実際に、7年が区切りになっていると感じますか?鴻巣先生:本来、人間の成長はひとつながりのものです。でも、学校制度のなかでここからは上の学年だというふうにわけざるを得ません。そういうなかで子どもたちをどう発展させるかというところは、学校であり教師が工夫するしかない。わたしたちの教育は、幼児だからここまで、1年生だからこれをやる、2年生だからこれをやると押し付けるものではありません。もちろん、各学年で取り組むべきカリキュラムはあります。それは、それぞれの「時期に合っている」もので、「彼らの成長を助ける」ものだということです。池田先生:7歳を例にすると、「歯が抜ける」ことが大きなサインとなります。乳歯が抜けるのはだいたい1年生の前後です。それが、シュタイナー教育では、「きちんと体ができた」「勉強ができるようになった」というサイン。0歳から7歳までのあいだは、勉強させるのではなく、きちんと体をつくってあげることが大きなテーマなのです。鴻巣先生:乳歯が抜けると、すでにその下には永久歯が準備されていますよね。ということは、体のなかでもっとも硬いものをつくっていた大きな力が余っているということ。その力を使って「覚える」ということが可能になる、とシュタイナー教育では考えているのです。一般の学校だと、1年生になるといきなり勉強に入ります。でも、まだ体ができあがっていない幼児の名残がある状態では、「覚える」ことがすごく難しいのだと私たちは見ています。シュタイナー教育が育む自分を信じる力――シュタイナー教育を受けた子ども、そうでない子どもで、その後にどんなちがいが出るものでしょうか。鴻巣先生:卒業生がよく口にするのは、「根拠のない自信がついた」ということ(笑)。それは、小さい時期を競争しないで育っているからだと思います。もちろん、高等部など上の学年に進めば切磋琢磨することも必要ですが、基本的には「この子は100点、この子は50点」というふうに点数で子どもを評価しません。そうすると、「これは自分がしっかりできる」「この子はこういうことが上手だから教えてもらおう」という考えが身について、なにかが「できないから責められる」という経験がないのです。それが「根拠のない自信」につながっているのではないでしょうか。――とはいえ、大学進学などを考えれば、競争も必要になってきます。鴻巣先生:当校の卒業生たちは、「点数」で進路を選びません。偏差値がいくつだからこの大学に行くというようなことはしないのです。「○○先生がいるから」「学びたいことを学べるから」と明確な志望理由を持っていますし、進学しない子にもきちんと理由がある。そして、「ちがう」と思ったら、また戻って自分がやるべきこと、やりたいことを探している。その「へこたれない力」は、本当にすごいと思いますね。もちろん、卒業後に夢を持ちながらもまだ中途半端な状態にある子もいます。若者ですから、そういう時期があって当然でしょう。ただ、そんな子も、「いまの仕事が一生の仕事ではないけど、学ぶところがあるからいまはこれをやる」というふうに、自分が立っている位置をきちんと理解しています。池田先生:当校の教師が、いろいろな生き方を認めていることも大きいかもしれません。普通だと、高校卒業の時点で進学先や就職先など送り出す先が決まっていないと、教師も心配しますよね。でも、当校の教師はいろいろな可能性を認めて待ってあげている。それで、「先生たちは自分をちゃんと受け止めてくれている」「ひとりじゃないんだ」「やっていける」と感じているのではないでしょうか。■ 東京賢治シュタイナー学校■ 東京賢治シュタイナー学校幼児部たんぽぽこどもの園■ 東京賢治シュタイナー学校 インタビュー一覧第1回:「点数」で子どもを評価しない――力強い意志を育む「シュタイナー教育」の本質第2回:「模倣となりきり」で想像力が伸びる――感覚がフル稼働する「シュタイナー教育の1日」(※近日公開)第3回:お片づけに“小人さん”が登場!?――「豊かなイメージ」が日々の子育てにも生きる(※近日公開)第4回:1年生が「円形の席」で学ぶこと――シュタイナー教育が重視する「学びのベース」(※近日公開)【プロフィール】東京賢治シュタイナー学校1994年、30年以上にわたり公教育に携わった鳥山敏子氏が公立学校を退職し、天地人のつながりのなかに生きようとした宮沢賢治の生き方を理想として長野・美麻に若者のための学びの場「賢治の学校」を立ち上げる。その後、ドイツのシュタイナー学校の見学をとおして「子どものための学校」こそ必要だとし、1997年に東京・立川に拠点を移して前身である「東京賢治の学校」を創設。1999年に幼児部、2005年には高等部を開設。2013年より現校名となる。池田真紀(いけだ・まき)(写真右)東京賢治シュタイナー学校幼児部教師(クラス担任)。「古くならないいまの時代に合ったシュタイナー教育」を目指す。鴻巣理香(こうのす・りか)(写真左)東京賢治シュタイナー学校教師(1年生クラス担任)。「正直であるというところから人間は真の強さを生み出す」を信念とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月08日英語で会話をする際、特に難しい場面は何かと聞かれると、何かを断るときと反論を述べるときだと答える人は少なくありません。どちらも、下手をすると相手の顔をつぶしたり、聞き手を不快な気持ちにさせたりする可能性があるので、たしかに難しい場面ですね。そこで今回は、英語で上手に断り、反論する方法についてお話ししましょう。「断る」対象は2つある?「断る」には、2つの種類があります。・頼み事を断る・申し出や勧めを断る英語力の要となる「慣用表現」をマスターするには、ネットワーク化して覚えるのが大切でしたね。それぞれのシーンに合わせた、慣用表現ネットワークをご紹介しましょう。1. 依頼を断る「すみません」依頼を断るときはまず、申し訳ない気持ちを表すことが大切です。すみません、ちょっと無理なんです。I’m sorry I can’t.残念ながら無理なんです。I’m afraid I can’t.しかし、これだけだと相手は納得しないかもしれません。そこで、断る理由を付け加える必要があります。さらに、“Why don’t you ask …?”(……に聞いてみたら?)のように、代わりの提案をしてあげると親切ですね。2. 感謝しつつ申し出を断る「ありがたいのですが」せっかくの申し出やお誘いを断るときは、まず感謝の意を示しましょう。申し出はとてもありがたいのですが……。Thank you very much for the offer, but ….尋ねてくれて本当にありがたいんだけど……。Thanks for asking, but ….お気持ちはうれしいのですが……。It’s nice of you to ask, but ….いや大丈夫。ありがとう。No, thank you.こうすることで、角が立たずにすむはずです。3. やんわりと申し出を断る「そうできたらいいんだけど」さらに、「自分としては受け入れたい」という気持ちを表現することで、婉曲的に断る方法もあります。そうできたらいいのですが……。I wish I could, but ….ぜひそうしたいところだけど……。I’d really love to, but ….喜んでそうしたいんだけど、無理なんだ。I’d be happy to, but I just can’t.相手の立場を尊重しながら、やんわりと断ることができるでしょう。4. きっぱりと否定する「反対です」次に「反論」する際に便利な表現をご紹介します。まずは、ある意見に対して反論するときの、最も直接的な言い方はこちら。反対です。I disagree.いえ、賛成できません。No, I don’t agree.反論があります。I have an objection.その案には反対です。I’m against the plan.賛否両論がある議論の場では、反対の立場であることをはっきりと言明することは、決して失礼なことではありません。否定することに過剰な心配をする必要はないのです。5. やんわりと否定する「実を言えば」しかし、反論されることはもちろん、相手にとって嬉しいことではありませんね。下手をすると、相手の気分を害してしまうことになりかねません。そこで時には、相手を傷つけないように配慮した言い回しが求められます。実を言えば、……に少し懸念があります。Actually, I’m a little bit concerned about ….議論をふっかけようというのではありませんが……。I don’t mean to argue with you, but ….このようなフレーズから始めることで、唐突な反論を避けることができます。聞き手も心の準備ができるはずです。6. 相手を立てながら否定する「そうとも言えるけど」まず相手の意見を立て、それから相手と異なる自分の意見をやんわりと述べる方法もあります。相手の言っていることに真っ向から反論することなく、部分的に否定する形です。そうとも言えるけど……。You could say that, but ….あるところまでは賛成だけど……。I agree with you up to a point, but ….うーん、君のいいたいことはわかるけど……。Well, I see what you mean, but ….相手の立場に理解を示しつつ、自分の意見を述べることで、相手に理性的に考える機会を与えることができるでしょう。7. 相手に再考を促す「◯◯はどうなるの?」相手にもう一度考え直してもらいたいときは、こんな表現が便利です。ええ、それはもっともだけれど、……はどうなるの?Yes, that makes sense, but what about …?ここでも相手の考えを尊重するフレーズから始めることで、やんわりと伝えることができます。8. 相手の意見を正す「一言いいたい」もちろん、必要に応じて、もっとはっきりと伝える言い方もあります。君は間違っていると思うよ。I think you’re mistaken.実際問題としては……。The fact of the matter is ….ちょっと一言いいたいのですが……。May I just mention that …?相手の意見を直接的に正すことができる立場なのか否かは、相手との距離感によっても変わります。使うときは注意してくださいね。9. 論外だと感情的に否定する「ありえない!」信じられない考えや、自分の立場とは真っ向から異なる意見を耳にしたときは、感情的に反論することもあるでしょう。それは論外だ。That’s out of the question.そんなのありえない。That’s impossible.正気じゃないよ!You’re out of your mind!無理難題をぶつけられたときにも使えるフレーズです。9つにわたって、断る・反論するための表現をまとめてご紹介しました。どちらも、相手の立場を尊重しながら伝えることがポイントです。学校や家庭で、ぜひ使ってみてくださいね。
2018年12月07日食育が注目され、子どもの食が改めて重要視されるようになった昨今。何を食べるかはもちろん大切なことですが、「料理をする」という行為自体にも教育的効果があるようです。今回は、子どもが料理をすることのメリットと、おすすめの親子料理をご紹介します。子どもは「親と一緒に料理がしたい!」と思っている東京ガスが行った「親子料理に関する実態調査」によると、子どもと一緒に料理をしたい母親は約9割、父親でも約6割にのぼっています。しかし実際、一緒に料理をしている家庭は「月1日以下」が6割以上です。また、子どもの意見として、「親と一緒に料理がしたい」が約9割、「一人で料理したい」も約1割という結果が出ており、子どもがいかに料理に興味があるかがわかります。それでも料理をしない理由は、「親から断られる」「親が忙しそう」など、親の都合で「言い出しにくい」と思っている子どもが多いこともわかりました。ただでさえ忙しい時間帯である夕方に、親子一緒に料理をするのはなかなか難しいですよね。ですが、どうやら「料理」には数え切れないほどの効果があるようです。親子料理のメリット3つ「食べる」ことは、人が生きていくうえで欠かせない要素であることは言うまでもありません。しかし、その単純と思える行為には、様々な行動や意味、意図が宿っています。「美味しく食べるため」「大切な誰かのため」「気分転換や趣味で」など――。親と一緒に料理をすることで、子どもは大切な “何か” を感じ取るはずです。では、具体的なメリットをみていきましょう。【五感が発達する】調理をする際、私たちはいろいろな機能を駆使しています。味覚(味見をする)、触覚(切ったり混ぜたりなど食材を触る)、嗅覚(調理中の匂い)、視覚(素材の色や調理によって変わる食材の色)、聴覚(トントンと切る音やジュージューと焼く音など)、いわゆる五感です。料理という一連の行動でフル稼働する五感によって、脳が活性化され、子どもの感性はどんどん豊かになっていきます。【好奇心を育む】調理は実験と同じです。火を通すと変化する色や質感、食材の組み合わせで変わる味や食感など、実体験することで興味を掻き立てられる要素がふんだんにあります。はじめは親の言うとおりにやっていても、だんだん想像力が働くようになって、「こうしたらどうなるかな?」とアイディアも湧いてくるはず。このとき、ぜひ親御さんも一緒に新しい発見を楽しんでみてください。【親子のコミュニケーションが増える】共同作業はコミュニケーションに最高の効果があります。調理は親主導になるとは思いますが、お手伝いから一歩進んで、「一緒に料理をする」という意識を持って作業すると、お互いの信頼関係もより深まり、子どもの自信や達成感にもつながるでしょう。一緒に料理する習慣ができれば、子どもの知識も増えてきますので、お買物のときにメニューの相談や食材や調理法などについての会話も増えます。また、親子で料理している頻度が高いほど、家族が仲良しで幸福感が高いという調査結果も出ています。【食や人への感謝の心が生まれる】作ってもらって食べるだけでは分からないことに気づけます。親が忙しいなか料理する大変さや、美味しい野菜を作る農家の人の苦労など、料理をすることから見える世界が広がり、人や物を大切にする気持ちや感謝の心を育むことができます。このように、「料理する」ことから派生する学びは想像以上に多いことがわかります。“将来必ず必要になる” 3つの能力料理をすることでたくさんの学びを得られることがわかりました。では、その経験が実際にどのような力になっていくのでしょう。次は、料理をすることで発達する、“将来必ず必要になる” 3つの能力についてみてみましょう。【能力1:豊かな表現力】調理中には様々な食材に触れます。食材の名前を覚える、素材の色、手触りなどを表現することで語彙が増え、親との会話とも相まって、表現力が身につきます。このような調理などのお手伝い効果は「自分の考えをわかりやすく説明できる」「感情コントロールがうまくできる」「率先して行動できる」といった将来の仕事能力につながると、内閣府の調査結果で証明されています。【能力2:高い集中力、忍耐強さ】年齢に応じて作業目標(トマトのヘタをとる、ケーキの生地を混ぜるなど)を決めることで集中力が増し、達成感を得やすくなります。達成の満足感は次への意欲にもつながり、頑張る気力と忍耐力が育まれるプラスのループに。この「ひとつのことに集中して取り組む」ルーティンは、家での学習習慣にも好影響を与えることがわかっています。【能力3:創造力と思考力】料理には創意工夫が不可欠です。バランスを考えながら食材を組み合わせ、完成形を想像しながら、計画的に作業するという、クリエイティビティと論理性が必要な知的作業で、創造力と思考力がかなり鍛えられます。野菜を切るほうが先か、それとも鍋を火にかけるほうが先か――、お子さんはどちらを優先するのでしょう?年齢別オススメの親子料理【2歳半~小学生まで】簡単なお手伝いなら2歳半から「親子料理」は可能!管理栄養士の川口由美子さんが勧める子どもの年齢に応じた「親子料理」をご紹介します。【2歳半~◎サンドイッチ】パンに好きな具材を挟むお手伝いをしてもらいましょう。パンとハムや野菜、ゆで卵などの具材を用意しておけば簡単です。パンの種類や野菜の種類を変えて、何度も作ってみてください。具材を一緒に考えることで思考力もアップ!【3歳~◎おにぎり】少し冷めたご飯をラップにくるんでにぎにぎ。粘土遊びの延長感覚でできます。具を入れたり、ふりかけをかけたり、味付けも好きにしてもらいましょう。市販の可愛いおにぎり型を使っても楽しいですね。【4歳~◎肉団子】「生のお肉は食べない」「調理中は他のものは触らない」などのルールを理解できるようになるのは4歳ごろ。本格的な調理スタートとして肉団子を作ってみましょう。お手伝いは、こねて→丸めるところまで。火を使うのはまだ少し先です。【5歳~◎お好み焼き】幼児包丁でキャベツを切ったり、卵を割ったり、より調理らしいことを始められる年齢です。ホットプレートで自分で生地を焼くこともできるように。「一人でできた!」という自信が自己肯定感を向上させます。トッピングも楽しみましょう。【小学生~◎カレー】小学生になったら、最初から最後まで一人で作る料理に挑戦。ジャガイモや人参の皮むき、お肉と野菜を炒めて煮込むという、調理のシンプルな手順を体験できます。野菜はレンジでチンして柔らかくすることで怪我を回避する方法もあります。形が多少不揃いでも、カレーライスなら気にせず美味しくいただけますね。他にも食品会社キッコーマンの子供向けサイト「きっずキッチン」にも、簡単レシピや食に関する情報がわかりやすく掲載されています。また、お子さまの料理スタートにぴったりな書籍はこちらです!『こどもキッチン、はじまります。(太郎次郎社エディタス)』石井由紀子 著、はまさきはるこ 絵太郎次郎社エディタス(2017)著者の石井由紀子先生はモンテッソーリ教育を学び、教員ディプロマの資格を持っています。簡単で美味しいレシピはもちろんのこと、「子どもの五感」や「子どもが水を好きなわけ」「大人のスピード、子どものスピード」など、子どもの成長と料理の関係について書かれたコラムはとてもためになりますよ。***子どもと一緒に料理をするとき、一番心配なのが怪我や火傷ですよね。子供料理研究家の武田昌美さんが子ども料理教室で最初に伝えることが3つあるそうです。それは3つの危険、「火」「刃物」「ばい菌」についてです。火に関しては実際に手をかざして熱さを体感させる、刃物対策はダンボール製の包丁でまず使い方を練習させる、「ばい菌は汚いから調理前には手を洗う」と理解させるなど、危険の理解には、はじめが肝心。そのうえで、小さな怪我は恐れずに調理に慣れてもらうことが大事だということです。そして何より重要なのは「失敗しても大丈夫」と伝えること。多少手順が違っても料理はできますし、失敗から学ぶことはたくさんあります。叱らず前向きに促すスタンスが、料理好きな子どもを育みます。“親子料理” で親に必要なのは、寛容と勇気と忍耐なのかもしれませんね。(参考)ウチコト TOKYO GAS|【生きる力を育む!】子どもと一緒に料理するメリット7つTOKYO GAS|「親子料理の意識と実態2014」を発行Woman Excite|2歳からでも料理はできる!始める前に伝えたい3つのこと【子供に料理を教えたい!Vol.1】All About|子供も作れる!親子で作る年齢別オススメ料理5選All About|親子一緒に料理すると向上する!子どもの能力3つ学研ゼミ|「子どもと料理」は効果的な学習体験StudyHackerこどもまなび☆ラボ|子どもを成長させる料理体験を!『夏野菜たっぷりおかずマフィン』【夏休みの自由研究(家庭科)】StudyHackerこどもまなび☆ラボ|包丁は本物を。熱の危険は“温度体験”で覚える。『冷や奴のカリカリじゃこのせ』【夏休みの自由研究(家庭科)】
2018年12月06日子どもは3歳を過ぎると、ごっこ遊びなどの空想力を活かした遊びをするようになります。子どもの空想力は非常に豊かで、大人が想像もつかないような生き物を生み出したり、突拍子もない展開を引き起こしたりします。空想の内容によっては、親が「空想の世界ばかりに入り浸っているようで心配」「現実との違いがわからなくなったらどうしよう」と感じることもあるようですが、空想力は子どもが成長するうえで欠かせないものです。今回は、空想力によって身につく力や、空想力向上のための方法について紹介します。空想力が子どもにとって大切な理由『本物の学力は12歳までの「作文量」で決まる!』の著者、樋口裕一氏は、毎日の会話から空想力を鍛えることをすすめています。例えば、テレビドラマを活用し、「犯人は誰だと思う?」「主人公はこれからどうすると思う?」などの会話が、作文力、国語力をつけるのです。また、JAPAN絵本よみきかせ協会代表理事であり、こどもまなび☆ラボ絵本部顧問でもある景山聖子先生は、子どもの空想力について以下のように話しています。幼児期は人生の中で唯一、空想の世界で見たり聞いたりしたことを「現実」の出来事として体験できる、貴重な時間――。幼児期の子どもは、絵本での出来事を実際に体験したかのように感じるのだそうです。たとえば、パパと一緒に魚釣りに行き、日が沈むまで存分に遊び尽くす様子が描かれた絵本を読み聞かせたとしたら……?「パパ、またおさかなつかまえに行こうね。おもしろかったね、おいしかったね。」こんなふうに言うのだそうですよ。そして、この空想力を使った疑似体験が、子どもの様々な力を養ってくれるのだそうです。空想力でこんな力が身につくでは、空想力によって身につく力を見てみましょう!【1】思いやり空想力を使ってごっこ遊びなどをする子どもは、自分以外の誰かになりきります。例えば「ヒーローになって悪者を退治する」「犬や猫など人間以外の動物になる」などです。そうすることで「ヒーローになって悪者を退治すると、誰かに感謝される」「犬や猫はこうすると楽しい気持ちになる」など、行動次第でさまざまな感情を呼び起こすことへの気づきにつながります。このとき、親が「こんなふうにしたらもっと感謝されるんじゃない?」「こうしたら、もっと喜んでくれると思うよ」などとポジティブな感情を導くためのアドバイスをすると、思いやりの気持ちが養われます。【2】体系的思考空想力がある子どもは、例えばバナナがあった場合、その購入者や生産者、調理法や売っているお店など、さまざまなことを疑問として親に投げかけたりします。これは物事に対して付随する多くの情報を分析・分類する体系的思考を養うことにつながります。親としては、子どもに質問攻めにされるのに飽き飽きしてしまうこともあるかもしれません。しかし、空想力向上のためには大切な過程です。できる限り向き合い、一緒に考えてみましょう。【3】プレゼンスキル子どもが空想上のストーリーなどを話すことは、自分の考えをプレゼンしているという意味もあります。親にとっては支離滅裂な内容だったとしても、子どもの空想にしっかりと耳を傾けてあげましょう。時々、内容についての質問するのもおすすめです。そうすることで、自分の意見や考え方をしっかりと相手に伝えるプレゼンスキルの向上につながります。【4】対人能力空想上でさまざまな人物を演じる子どもは、立場によって感情や役割が変わることを自然と覚えていきます。例えば、おままごとでお母さん役の子どもは、赤ちゃん役の子どもを優しくあやし、お父さん役の子どもは堂々とした振る舞いで家族の中心人物になったりします。この場合、子どもの家族の言動を真似ているケースも多いです。自分とは違う立場の人物になりきり、それに合った振る舞いをしていくことで、人との関わり方を学ぶきっかけとなり、やがて対人能力の向上につながります。空想力を身につけるためのポイント子どもの空想力をアップさせるためには、以下の工夫が効果的です。■子どもの空想を否定しない時に子どもは、残酷で暴力的な空想をすることがあります。親としては心配になるかもしれませんが、それを頭ごなしに否定してしまうと、子どもは空想すること自体が楽しくなくなる可能性があります。そうならないために、空想そのものは否定せず、残酷さや暴力がネガティブな感情をもたらすことを教えましょう。例えば、誰かを叩いたりする空想をしている場合は「もし〇〇ちゃんが誰かに叩かれたら、どう思う?」と、その後を想像させるような問いかけをします。子どもが良くない空想をしていた場合は、物事の善悪を教えるチャンスとして捉えるようにしましょう。■大人ならではの空想で一緒に遊ぶ子どもの空想が大人には思いつかないようなものであるのと同じように、大人の空想は子どもにとって新鮮なものです。子どもが空想のストーリーについて教えてくれたり、ごっこ遊びに誘ってきたりしたときには、ただ子どものペースに合わせるのではなく、親独自の空想で対応しましょう。大人ならではの空想は子どもにとっては意外なものであり、大きな刺激になることがありますよ。■親子で絵本を作る子どもの空想を絵本にしましょう。子どもが絵を、親が文章を担当して、1冊の絵本を作り上げます。空想上の物語を絵として表現する作業は、表現力・空想力アップに有効です。また、絵本作りを通した親子の共同作業は絆を深めることや思い出作りにもなります。***子どもの空想力は、その時期ならではの視点や考えが詰まった貴重なものであり、情緒面の発達に大きく影響します。親は子どもの空想を見守りつつ、思う存分空想できる環境を整えてあげましょう。文/田口るい(参考)Gymboree|「ごっこ遊び」は子どもの成長に不可欠なものだった!?あそびのもりONLINE|赤ちゃんの育ちと空想遊び保育ing|空想の世界を持っていて、お友達とうまく遊べない様子おむつのパンパース|幼児の活動:幼児のゲームと遊びの種類Study Hacker こどもまなび☆ラボ|現実と空想を区別できるのは6歳以降?親の”救世主”読み聞かせで、子どもは絵本を「体験」する樋口裕一著(2016),『本物の学力は12歳までの「作文量」で決まる!』,すばる舎.
2018年12月06日我が子に「立派な人間になってほしい」と願うのは、親であれば当然です。でも、「立派」とは何を指すのでしょう?勉強ができて良い大学へ進学し、大手企業に就職することも、確かに「立派」ですね。しかし、どんなに優秀でも、社会の一員としての義務を果たそうとしなかったり、道徳的意識が低かったり、他者を尊重できなかったりするようでは、心配になってしまいます。では、そのような意識は自然に身につくものなのでしょうか?労働意識の低下や、積極的に社会と関わろうとしない傾向が見られるなど、現代を生きる若者はさまざまな問題に直面しています。そのようなニュースを目にするたびに、子どもの将来について漠然とした不安を抱えてしまう親御さんも多いはず。今回は、子どものうちに身につけたい「社会性」についてお話します。「自分は社会の一員である」という意識をもつ社会性を身につけるーー。普通に生活していれば自然と身につくんじゃない?と考えがちですが、世の中の決まりや道徳的意識、他者への敬意などを養うことは容易ではありません。それは長らく親の仕事として考えられていましたが、近年では小学校で「道徳」の授業が必修化になるなど、学校や社会全体で考えるべき重要な課題となりました。そんななか注目すべきは『シティズンシップ教育』です。初めて耳にする方も多いかもしれませんが、イギリスでは必修科目にもなっているくらい重要な教育でもあります。シティズンシップ(citizenship)は、日本では「市民性」と訳されます。「スポーツマンシップ」「リーダーシップ」など「~~シップ」は、「意識」「権利」「気質」というニュアンスであることから、『シティズンシップ』は「市民社会でいかに振る舞うか」といった概念であるといえます。2002年に本格的にシティズンシップ教育を導入したイギリスの場合、社会に積極的に参加し、責任と良識のある市民を育てるための教育としてスタートしました。その結果、問題解決能力や価値観形成や人間関係の共感能力が高まり、自分への信頼感も増していくなど、たくさんの良い効果をもたらしたのです。現在、日本の公民教育では、政治や経済の仕組みを学習するにとどまっています。しかし、イギリスのシティズンシップ教育では、そのシステムに参加するスキル、考え方、コミュニケーションについても学習するのです。たとえば、社会の問題を解決するためにどこから情報を仕入れるか判断し、どのような手段を用いるのか、どのようにして他者と合意形成を行うのか、どのようにして相手を説得するのか、といった実際的な社会参加・政治参加を学習しているのです。このように、アクティブ・ラーニングの見地からも大いに期待できる『シティズンシップ教育』。日本でも、ここ数年じわじわと広がりを見せており、御茶ノ水女子大学付属小学校や大阪教育大学付属池田中学校なども「市民科」の授業として取り入れ始めています。日本にも広がるシティズンシップ教育「市民科」の授業2006年、経済産業省は『シティズンシップ教育』を学校で普及させるための提言を行いました。■経済産業省が定義する『シティズンシップ』多様な価値観や文化で構成される社会において、個人が自己を守り、自己実現を図るとともに、よりよい社会の実現に寄与するという目的のために、社会の意思決定や運営の過程において、個人としての権利と義務を行使し、多様な関係者と積極的に(アクティブに)関わろうとする資質その目的は、一人の市民として社会に貢献する姿勢を養うことのほかに、他者との適切な関係を築き、個性を発揮し、自己実現を行い、より良い社会づくりに関わるために必要な能力を身につける、というものです。たとえば、すでに「市民科」の授業として取り入れている御茶ノ水女子大学付属小学校では、社会的論争問題を見る重要な視点としての「3つの眼」を育むために、ある課題にみんなで取り組みます。■社会を見る3つの眼とは1.社会には、一個人の工夫や努力で、できることとできないことがある2.個人の利害と社会全体の利害は必ずしも一致しない3.だから世の中は、広い視野から社会を調整するしくみが必要であると共に、一人ひとりの工夫や努力が必要であるここで論題の具体例をご紹介します。・もしもお茶小が火事になったら・あと30年で埋立地がなくなってしまう。東京をゴミの山から救うにはどうしたらいいだろう・他県の友だちに東京らしいところベスト3を紹介しようこのようなテーマをもとにみんなで議論をするのですが、重要なのは「それぞれの立場の長所と短所を考えること」です。自分と同じ意見もあれば正反対の意見もある。さまざまな意見を聞き、話し合いを進めることで、広い視野で物事を見る訓練にもなりそうですね。シティズンシップの根底にある倫理観・正義感教育ジャーナリストの斉藤剛史氏によると、いじめ問題を考えるとき、この『シティズンシップ教育』が子どもたちにしっかりと根づいていることがわかるそうです。悲しいことに、日本だけでなく世界各国でいじめ問題は無くなりません。しかし斎藤氏は、「日本と海外ではいじめの傾向に違いが見られる」と述べます。たとえば、諸外国ではいじめが起こったときに間に入る「仲裁者」となる子どもが多い一方で、日本の場合はいじめを見て見ぬ振りをする「傍観者」となる子どもが多いといいます。また、いじめ問題への対応姿勢として、日本では「被害者救済」という視点が主流である一方で、他の国ではいじめをした “加害者” を繰り返し指導するという対応が中心です。この対応の根拠となっているのが『シティズンシップ教育』であると言われています。なぜなら、民主主義の社会を支えるためには、暴力などで他者の権利や安全を阻害することがあってはいけない、つまりいじめは社会を支える市民として許されない行為である、という教育が根底にあるからです。子ども一人ひとりの個性の違いはありますが、社会全体としてのルールやモラルをそれぞれがしっかりと理解し、実践することで社会秩序を守ることにつながります。「やっていいこと」「絶対にやってはいけないこと」「それはなぜ?」「ルールを守らないと世の中はどうなってしまうの?」……これらは教えなくても自然と身につくものではありませんよね。幼児のときは両親や祖父母など身内の大人が伝えるべきでしょう。では、学童期に入ったら教える必要はないのでしょうか?いえ、むしろ、より具体的かつ積極的に学ぶべきは、物事への理解が進むこの時期なのです。***『シティズンシップ』は、子どもたちがこれから社会に羽ばたいていくうえで、非常に重要で絶対に身につけなければならないものです。しかし、決して難しい問題ではありません。自分の身の周りの物事に目を配り、心を寄せ、真剣に考えて問題解決に向けて行動をする、という社会の一員としての意識を高めることが大切なのです。(参考)全国社会科教育学会|イギリスで導入された「新しい市民性教育」の理論と方法シティズンシップ教育推進ネット|シティズンシップ教育とは同志社大学 学術研究年報2008年|日本におけるシティズンシップ教育の可能性神奈川県立総合教育センター|「シチズンシップ教育」推進のためのガイドブックベネッセ教育情報サイト|日本と海外のいじめ対策を比較必修教科「シティズンシップ教育」とは
2018年12月05日お子さんと話していて、「この話し方、私にそっくり!」「いつの間にかパパの口癖がうつってる!」と驚いたことはありませんか?それもそのはず。子どもは家庭の中で言葉を覚え、家族の会話を聞いて言葉の使い方を学びます。だからこそ、親御さん自身も気づかないうちに話し方の癖が身についてしまうのです。小学校低学年の子どもは、これまで親やお友だちとの会話で使ってきた言葉とはまた違う “きちんとした言葉” を学び始めます。でも、はたして、授業で学ぶような言葉の意味をちゃんと理解できているのでしょうか?今回は、子どもの語彙力を向上させるために家庭でできること考えていきましょう。就学前の語彙力は入学後の成績を左右する!?小学校入学直前の6歳児200人を対象に語彙力調査を実施したところ、子どもたちの間で深刻な『語彙力格差』が生じていることがわかりました。たとえば、「礼儀」「蔵書」といった11歳レベルの語彙力が身についている子がいる一方で、2歳児レベルの語彙力しか習得できていない子もいたそうです。その差はなんと9歳分!(StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ついに子どもたちにも「語彙力」ブーム到来!語彙力格差に負けないためにできることより)なぜこのような語彙力の格差が生まれてしまったのでしょうか?四天王寺大学の今井進氏は「家庭における教育力の格差が顕著になったと言われる昨今、ますます子どもたちの言語能力にも個人差が生じている」と述べています。幼児期の言語や知識の獲得が、自らの体験・経験を通じて行われるがゆえに、その体験・経験の差が保護者の意識や経済的な条件に依存していることは重大な問題である。(引用元:四天王寺大学紀要 第50号(2010年9月)|小学校国語科教育における授業研究の意義についてーまどみちお「きりかぶのあかちゃん」の事例研究ー)それぞれの家庭の事情、保護者の教育力、その子どもの特性など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているため、家庭内における教育への意識の高さに差が生じるのは仕方ありません。ただし、「やばい」「ウケる」「マジ」「ムカつく」……といった言葉を身近な大人が多用している環境であれば、子どもたちにその影響が色濃く出てしまうのは間違いないでしょう。就学前の子どもは話し言葉が中心の「生活言語世界」です。しかし小学校へ入学すると、書き言葉も加わった「文字言語世界」へと移行していきます。もし簡単な話し言葉だけしか使えなければ、授業で学ぶ多くの単語や表現を理解するのに困難をともなうでしょう。「つまずきことば」ってなに?小学校1年生の教科書には、次のような言葉が登場します。「たたきつける」「こらしめる」「こわごわ」このような表現をすんなりと理解できる1年生は少ないかもしれませんね。しかし、先生や親御さんの説明を聞いて自分なりに納得し、使い続けることでいずれ理解できるようになるでしょう。熊本大学の茂木俊伸准教授によると、このような言葉を『つまずきことば』と呼ぶそう。■「つまずきことば」とは?各教科において、学習者(児童)にとってスムーズな意味の理解が難しく、指導者による何らかの手当てを必要とする(と予想される)語または語彙を指す。実は、この『つまずきことば』、理解できないまま放っておくと大変なことになるのです。子どもにとって「つまずき」が生じる言葉というのは、決して難しい言葉だけを意味するのではなく、自分の日常生活からの距離(普段使わない言葉)も含まれます。その問題点として、そもそも子どもにとって見慣れない言葉は、その理解自体が学習活動に含まれる、ということ。つまり「言葉」に「つまずく」と、学習がそこから先に進まなくなる可能性があるというわけです。2007年~2009年度の科学研究費基盤研究による「幼稚園・小学校の全領域における国語力の向上を図るカリキュラム開発の基礎研究」をもとに調査した『つまずきことば』の具体例を挙げていきましょう。まず、子どもたちにとって最も「つまずく」言葉は動詞が多く、とくに「動詞+動詞」形の『複合動詞』が多いということがわかりました。「たたきつける」「なりわたる」(1年)「ねむりこむ」「弱りはてる」(2年)「食いちがう」「見立てる」(3年)複合動詞は前後の動詞どちらかでも意味がわからなければ理解できないため、つまずきやすい傾向にあります。そして次に、「ひやり」(1年)「いそいそ」(3年)といったオノマトペ(擬音語・擬態語)が多いことがわかりました。日本語のオノマトペは感覚的な理解が求められる語彙であり、本質的な理解や説明の難しさをともなうため、大人でも使用や説明が困難である特殊な言葉だと言えるでしょう。ほかにも「しょうじ(障子)」「土間」「やぶ(藪)」「びょうぶ(屏風)」「霜柱」「床の間」など、現代ではあまり馴染みのないものや、「こっけい」「おおかた」「きょとん」「ほんのり」「そっぽ」といった、子どもたちが意味を捉えられない「つまずきことば」も教科書に登場します。読書以外で有効な “語彙を増やす工夫”『つまずきことば』を減らすには、語彙力を上げるほかありません。ここでは、“読書以外で” 語彙力をアップさせる方法をいくつかご紹介します。教育評論家の親野智可等氏は、勉強の敵とも思える「テレビ」が語彙力アップに有効であると述べます。例えば、水田耕作の場面を映しながら「いまは代掻き(しろかき)」の真っ最中です」というナレーターがあったとする。代掻きといっても大人でさえ知らないかもしれない。これは、水田に水を引き込んで、土をかきおこしならす作業である。こうして文字で説明しても、水田耕作のやりかたを見たことがなければピンと来ないだろうが、テレビはまさに映像で説明してくれる。代掻きを理解するのに、図鑑や国語辞典よりもはるかに役に立つ。(引用元:親力講座|「語彙力」が学習の源。「勉強の基本・国語力」会得にも「豊富な語彙」は必要不可欠。「日常生活」で楽しみながら「身につける方法」とは。)もちろん、ダラダラと長時間視聴するのではなく、観る時間と番組の内容を選んであげることが大前提です。日常生活では縁がない言葉も映像を通して視覚情報を得ることにより、子どもの記憶に残りやすくなります。ほかにも、「しりとり」や「なぞなぞ」が語彙を増やすのに役立つと親野氏は述べます。もし親が使った言葉を子どもが理解できなければ、その場ですぐに辞書を引くようにするとより効果的です。また、花まる学習会代表の高濱正伸氏は、「見たこと、感じたことを「比喩」で表現する」ことをすすめています。比喩が使えると表現に奥行きが出るだけでなく、その状態を相手に印象的に伝えることができるのです。たとえば、「今朝は寒いね」だけで終わってしまうところを、「今朝は凍えるような寒さだね」「今朝は身体が縮こまるような寒さだね」と表現することから始めてみましょう。慣れてきたら、少し難しい比喩表現にもチャレンジしてみます。「燃えるような夕焼け」「抜けるような青さ」「水を打ったような静けさ」など、何かにたとえると表現に深みと味わいが加わることを、子ども自身に身をもって学ばせるのです。本をたくさん読むこと以外でも、日常会話のなかで語彙を増やすことは可能です。そのためにも、親御さん自身もさまざまな表現方法を使って子どもとの会話を楽しみましょう。***大事なのは「日常的に」「さまざまな」言葉を使うように意識すること。そうすることで教科書の中でたくさんの言葉に出会ったとしても、「この言葉、知ってる!」とつまずかずに前に進むことができるでしょう。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ついに子どもたちにも「語彙力」ブーム到来!語彙力格差に負けないためにできること四天王寺大学紀要 第50号(2010年9月)|小学校国語科教育における授業研究の意義についてーまどみちお「きりかぶのあかちゃん」の事例研究ー鳴門教育大学研究紀要 第28巻 2013|小学校国語教科書における「つまずきことば」の分析親力講座|「語彙力」が学習の源。「勉強の基本・国語力」会得にも「豊富な語彙」は必要不可欠。「日常生活」で楽しみながら「身につける方法」とは。DIAMOND online|子どもの日本語力が危ない!?家庭で国語力を高める6つの方法
2018年12月04日現在、白梅学園大学子ども学部の教授として、子ども教育のプロフェッショナル養成に携わる増田修治先生。その名を教育界に広めたのは、小学校の教員だった時代にはじめた「ユーモア詩」というものでした。その独特の試みは、2002年にはNHK『にんげんドキュメント 詩が躍る教室』で取り上げられ、大きな反響を呼びました。「ユーモア詩」とは一体どんなもので、子どもたちにどういう影響をもたらすものなのでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)学校にこそ「笑い」が必要みなさんは、学校とはどういうものだと考えていますか?教師も子どもも真面目で一生懸命に勉強をするべき場所――そんなふうに思っていないでしょうか。教師を長くやっていると、教師こそそのように思い込み、「学校はこうあるべきだ」「子どもはこうあるべきだ」という考えにとらわれてしまいがちです。かつてのわたしもまた、そういう教師になってしまっていました。でも、その思い込みを完全に打ち破ってくれたのが「ユーモア詩」だったのです。じつは、これは偶然に発見したもの。わたしがある小学校で4年生の担任をしていた頃、ひとりの男の子が書いた詩を学級通信に載せたのです。それは、「おなら」という詩でした。おなら国広伸正(4年)だれだっておならは出る。大きい音のおならを出す人もいれば小さい音のおならを出す人もいる。なぜ、音の大きさが違うのだろう。きっとおしりの穴の大きさが違うんだ。わたしはこの詩を見たとき、正直、「ばかじゃないのか」「くだらないことを書いて」と思いました(笑)。でも、事前に「どんな内容でも学級通信に載せる」と約束していたため、載せないわけにはいかない。そして、どうなったかというと……この詩を見た子どもたちは15分も笑い転げているんです。じつはこの頃、わたしのクラスは子ども同士の関係があまりうまくいっていませんでした。でも、この詩でみんなが笑い転げている。なかには、「マヨネーズの星型の部分をお尻にはめたらどうなるのか」なんてばかなことを言う子どももいました(笑)。そのとき、気づいたわけです。「子どもたちは笑ってつながりたいんだ」「学校にこそ笑いが必要なんだ」と。子どもはうんちやおしっこ、おならの話が大好きですよね。その子どもたちの「面白い」「楽しい」という感覚に教師が近づかなかったら、彼らといい関係が築けるわけがありません。そうして、はじめたのがユーモア詩でした。ルールはありません。なにをどう書いてもいい。そして、そのうち、ユーモア詩がびっくりするような出来事も引き起こしました。そのきっかけとなったのが、この詩です。弟ってすごい?並木勝也(4年)こないだ弟が外を走っていました。弟が「ぼく、すごいのできるよ!」と言いました。弟は走りながらぼうしやクツもぬぎました。そしてクツ下もぬげてズボンもぬげました。それから弟はぼくに「まっ、お前じゃできねーな。」と言いました。そんなのやりたくねーよ!これを見て、わたしは並木君に「面白い、見てみたい」と言いました。並木君の弟は当時、年長さん。服を全部脱いで裸になって「すごいでしょ?」と自慢げに言う彼を、わたしは「すごいね、たいしたものだね」と褒めまくりました。その2週間後、並木君が「弟が技に磨きをかけたから、また見てほしいそうです」と(笑)。もちろん、見に行きましたよ。今度は服を全部脱ぐまでの時間が大幅に短縮されていた。わたしは「もう名人芸だね」と大絶賛しました。じつは、並木君の弟は、保育園ではちょっと問題がある子どもでした。ところが、小学校に入学したらきちんと座って真面目に授業を受けている。「僕は小学校の増田先生に褒められた、できるはずだ」と思ったそうなんです。そうして、6年生になったらなんと児童会長になっちゃった。わたしは、ただ裸になることが早いと褒めただけ。それなのに、子どもにとってはそれが自信になる。どんなにばかばかしいことでもいいんですよ。「いいよね、面白いよね」と言ってあげることが、その子どもを認めてあげることになる。大人は、子どもがいわゆる「いいこと」をしたときにだけ褒めますよね。そうすると、子どもはその「枠」のなかにしかいられなくなる。自己肯定というのは、「いいこと」のようなプラスのことだけに働くものではいけません。マイナスのことも含めて、「あなたはそのままでいいよ」と言ってあげなければ、本当の自己肯定感は育たないのです。子どもの本音を知り観察眼や表現力を伸ばすユーモア詩が影響を与えるのは、子どもだけに限りません。親同士、親子の関係も変えていきます。たとえば、この詩もそういうきっかけになりました。ボディービルダー長川翼(3年)この前テレビで、ボディービルダーの大会をやっていた。さっそくぼくとお兄ちゃんは、服をぬいでパンツ1枚になり、ボディービルダーのまねをした。それを見ていた父ちゃんは、「それじゃダメダメ!」と言いながら、けつにパンツをくいこませて歩いていた。おかしくておかしくてみんなで大笑いした。でもこれで終わるわけがない。最悪なのは母ちゃんだ。とても人に見せられないパンツ1枚のかっこうで、ボディービルダーのまねをしていた。あれでも一応女なんだろうなー。すごい家族ですよね。でも、内容が内容だけに、掲載前にお母さんに掲載の許可をもらいにいったんです。すると、「先生、うちはもう確認はいりません、あきらめました」と。このあとの長川君の言葉の輝きといったらなかったですね(笑)。そして、あるとき、父兄にユーモア詩の感想を寄せてもらったのです。すると、なんと7人ものお母さんが長川君の詩に言及しているではありませんか。「わたしは長川君のお母さんを尊敬しています、あんなことを書かれたらわたしなら生きていけない……」と(笑)。こうして、親同士のつながりも深まることにもなりました。さらには、お父さんと子どもの関係も変わった。共働き家庭が増えているとはいえ、仕事に忙しいお父さんはどうしても子育てはお母さんにまかせがちです。たまに子どもに学校の話を聞くにしても、「どうだ?頑張っているか?しっかり勉強しているか?」というような内容になってしまう。もちろん、子どもからすれば面白くありません。でも、ユーモア詩を目にすれば変わる。「●●君って面白いな、どんな子なの?」「ところで、おまえはどんなことを書いているの?」と、お父さんが子どもの友だち関係を知り、親子のコミュニケーションをしっかり取れるようにもなるのです。もちろん、「ちゃんとしたもの」を書こうとしなくていい自由な表現のなかで、言葉による表現力も格段に上がっていきます。わたしは作文の指導なんてしませんでしたが、作文の全国コンクールで優秀賞を取る子どもも出てきたくらいです。ユーモア詩は、家庭ですぐにでもできるものです。ここにあるような詩を例に見せて、子どもに自由に書かせればいいだけ。ただ、「なにを書かれても絶対に怒らない」と約束してあげることがルールになる。普段の会話ではなかなか出てこない子どもの本音を知り、観察眼や表現力を伸ばすことにもつながるはずです。『遊びにつなぐ! 場面から読み取る子どもの発達』増田修治 著/中央法規出版(2018)■ 子ども教育のエキスパート・増田修治先生 インタビュー一覧第1回:クイズで育む!?子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方第2回:非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?第3回:子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」第4回:“おなら”に“裸”、なにを書いてもOK!?「ユーモア詩」が伸ばす子どもの力【プロフィール】増田修治(ますだ・しゅうじ)1958年3月8日生まれ、埼玉県出身。1980年、埼玉大学教育学部卒業後、小学校教諭として埼玉県朝霞市内の小学校に勤務。「ユーモア詩」に取り組み、子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図るとともに、楽しい学級づくり、保護者とのコミュニケーションづくりをおこなう。2002年にはNHK『にんげんドキュメント 詩が躍る教室』が放映され反響を呼んだ。2008年3月末で小学校教諭を退職し、同年4月より白梅学園大学准教授。現在は同大学子ども学部子ども学科教授。『小1プロブレム対策のための活動ハンドブック』(日本標準)、『「いじめ・自殺事件」の深層を考える—岩手県矢巾町『いじめ・自殺』を中心として—』(本の泉社)、『先生! 今日の授業楽しかった!—多忙感を吹き飛ばす、マネジメントの視点—』(日本標準)など教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月04日あまり好ましくないとされる、日本人の国民性として挙げられるもののひとつが「コミュニケーション能力の低さ」です。人前でのスピーチなどは大人でも苦手だという人も多いのではないでしょうか。しかし、そういう「自己表現」の力が役立つのは、なにもスピーチやプレゼンテーションの場だけではありません。子ども教育のプロフェッショナル養成に携わる増田修治先生は、「自己表現力が子どもの『自立』にも関わる」と語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)「自立」とは自己表現により周囲に助けてもらうこと日本人は、「表現力に乏しい」と評価をされることが多い民族です。これには、もともとの国民性も影響していると見ることができますが、教育によるところも大きいはず。いまの日本の教育は、「自己表現力」も含めてさまざまな「自己〜」が育ちにくいものなのです。たとえば「自己肯定感」もそのひとつかもしれません。日本人の自己肯定感の強さは先進国で最低という調査結果が出ています。いくつかの理由がありますが、子どもたちに「なんでもしっかりできる子がいい子」だというプレッシャーがかかっていることも要因のひとつ。親も含めて、多くの大人が暗黙のうちにそういう評価基準を持っていませんか?そうすると、少しでも失敗すると、子どもは「自分はいい子じゃない」と思ってしまう。これでは、自己肯定感が弱くなるのも当然ですよね。でも、「なんでもしっかりできる子」はどこかで無理をしているものです。それに、そういうしっかりした子どもであっても、ずっと壁にぶつからないで生きていけるということはあり得ません。どんな人間であっても、人生のどこかで大きな壁にぶつかるものです。でも、そのときに「どうすべきか」という手段を知らなかったらどうでしょうか?立ち上がって再び力強く人生を歩みだすということが難しくなるでしょう。大事なことは、「なんでもしっかりできる子」に育てることではありません。壁にぶつかってもいいけれど、そのときに大切となるのは、きちんと「自己分析」ができること。勉強中にどうしてもわからないことがあったとしましょう。そのとき、自分の力を測り、区分けし、「ここまではできるけれど、ここからがわからないから教えてほしい」と周囲に助けを求められるかどうか。そこが重要になる。大人だって、ひとりで生きているわけではありませんよね。誰もがいろいろな人に助けてもらって生きている。「自立」するということは、人の力を借りないことではなく、むしろ、「うまく人に助けてもらう」ことなのです。そして、そのときに必要とされるのは、自分の置かれた状況を自分の言葉で語って助けを求める、それこそ「自己表現力」ではないでしょうか。話を聞いてもらった経験が多い子どもだけが、話を聞ける子どもになるその自己表現力を伸ばしてあげるためにも、子どものもっとも身近にいる大人である親が子どもとしっかりコミュニケーションを取るべきです。きちんとコミュンケーションが取れるということは、その時点で良好な関係ができていることでもあり、親子間の「応答性」が育っているということになる。ひとりがしゃべって、もうひとりはずっと黙って聞いている。こんなものはコミュニケーションでもなんでもありません。コミュニケーションとは、相互が話して聞く、応答を指すもの。その応答によって互いを知り、感情を共有したりするなかで、子どもの自己表現力が養われていきます。でも、残念ながら、それができていない親御さんも目立ちます。ここで、わたしがスーパーで目撃した出来事を紹介しましょう。お母さんが、「今日は好きなアイスクリームを食べていいから、決めておいてね」と言って、アイスクリームボックスの前に子どもを置いていきました。子どもはブツブツとなにやらひとりごとを呟いています。ちょっとだけ耳を傾けてみると、「どうしようかな、バニラにしようかな、チョコにしようかな」と悩んでいるようです。しばらくして、「よし、バニラにしよう」と言った。決まったのかと思いきや、今度は「コーンにしようかな、カップにしようかな」とまた悩んでいる(笑)。そして、「カップはけっこう食べているからコーンにしようかな」「コーンにしてチョコをトッピングすれば両方食べられるな」なんてことを言っているところに、お母さんが買い物を終えて戻ってきた。すると、お母さんが言いました。「なにやっているの!まだ決まらないの?じゃ、これでいいでしょ」と。そんなことでは、いままで子どもが悩みながら考えていたことが一瞬でパーです。子どもの頭がいちばん働いているのは、悩んで考えているとき。親は子どもとしっかりコミュニケーションを取って、その考える時間を保証してあげる必要がある。それが、自分の考えをしっかり表現する力のみならず、「自己選択」して生きているという実感を子どもに持たせることになり、ひいては、自己肯定感を育むことにもなるのです。親はよく「ちゃんと先生の話を聞きなさい」と言いますよね。でも、親が子どもの話を聞いていなかったら、話を聞ける子どもにはなりません。話を聞いてもらった経験が多い子どもだけが、話を聞ける子どもになるのです。小さい子どもは「あれなに?」「これなに?」と親にいっぱい話しかけると思います。そのとき、きちんと話を聞いて「あれはこうだよ」と丁寧に答えてあげる。すると、そのコミュニケーションのなかで、子どもは「話を聞いてもらえることが心地良いこと」だとわかってくる。だからこそ、「人の話もちゃんと聞こう」という人間に育つのです。また、そういう子どもでなければ、学力だって伸びていきません。小学校で授業をきちんと聞けない子どもは、大半が周囲からこぼれてしまうものですからね。そして、きちんと話を聞く姿勢は、学力を伸ばすだけにとどまらない。多くの人の言葉に耳を傾けるのですから、当然、人間性も同時に育っていくのです。『遊びにつなぐ! 場面から読み取る子どもの発達』増田修治 著/中央法規出版(2018)■ 子ども教育のエキスパート・増田修治先生 インタビュー一覧第1回:クイズで育む!?子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方第2回:非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?第3回:子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」第4回:“おなら”に“裸”、なにを書いてもOK!?「ユーモア詩」が伸ばす子どもの力(※近日公開)【プロフィール】増田修治(ますだ・しゅうじ)1958年3月8日生まれ、埼玉県出身。1980年、埼玉大学教育学部卒業後、小学校教諭として埼玉県朝霞市内の小学校に勤務。「ユーモア詩」に取り組み、子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図るとともに、楽しい学級づくり、保護者とのコミュニケーションづくりをおこなう。2002年にはNHK『にんげんドキュメント 詩が躍る教室』が放映され反響を呼んだ。2008年3月末で小学校教諭を退職し、同年4月より白梅学園大学准教授。現在は同大学子ども学部子ども学科教授。『小1プロブレム対策のための活動ハンドブック』(日本標準)、『「いじめ・自殺事件」の深層を考える—岩手県矢巾町『いじめ・自殺』を中心として—』(本の泉社)、『先生! 今日の授業楽しかった!—多忙感を吹き飛ばす、マネジメントの視点—』(日本標準)など教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月03日子どもが読書好きになることで、読解力や想像力、論理的思考や感受性が向上するなど、多くのメリットが期待できることは耳にしたことがあるかもしれません。それに加えて、近年では「数学の基礎知識」と「ITスキルの高さ」に影響を及ぼすこともわかってきています。国語以外の教科への理解度にもつながるからこそ、早いうちから読書習慣を身につけさせたいものです。子どもに読書を習慣づけるには、まずは家庭環境から。では、いったいどうやって読書を日常に取り入れていけばいいのでしょうか?ある調査から導き出された読書と成績の関係性いつも読書をしている友人に、「どうしてそんなに本が好きなの?」と聞いたことはありませんか?すると「小さいころからの習慣」「家にたくさん本があったから」「親が読書好き」といった返事が返ってくることが多かったはずです。それはあながち偶然ではなく、育った家庭での読書環境が成長してからの読書習慣につながることは、さまざまな調査から明らかになっています。さらに最近では、読書環境にまつわる “ある調査結果” が話題となりました。それは「16歳の時に家に何冊本があったか?」という調査から判明したのです。オーストラリア国立大学と米ネバダ大学の研究者たちによるこの調査は、かなり大規模なものでした。まず、2011~2015年に31カ国の国と地域で、25~65歳の16万人を対象に行われた「国際成人力調査」の参加者に「16歳の時に家に何冊本があったか?」と質問しました。その後、読み書き能力、数学、情報通信技術(ICT)のテストを受けてもらいました。その結果、本がほぼない家庭で育った人たちは、読み書きや数学の能力が平均よりも低いことがわかったのです。調査対象者の国や性別、年齢層は幅広く、現在の職業もバラバラであるにもかかわらず、本がある家庭 / ない家庭で育ったことによる影響が、この調査によって表面化されました。そして、自宅にあった本の数とテストの結果は比例する、と結論づけたのです。ちなみに、「16歳の時に家に何冊本があったか」の、国別のランキングと平均冊数は以下の通りです。1位エストニア218冊2位ノルウェー212冊3位チェコ204冊4位デンマーク192冊5位ロシア154冊6位ドイツ151冊7位オーストラリア148冊8位英国143冊9位カナダ125冊10位フランス117冊上位は北欧が占めていますね。日本は、というと「14位/102冊」という結果でした。世界全体の平均は「115冊」なので、平均よりも少し少ないといったところです。家に置いてある本を思わず数えてしまった人もいるのではないでしょうか。この調査は「16歳の時」というのもポイントのひとつです。親が所有している本、親が子どものために選んで買ってあげた本に加えて、「子ども自身が自分の目で選んだ本」も含まれるからです。幼い頃に培った読書経験や読書習慣は、確実に「16歳の本選び」にもつながります。読書量は算数の成績を左右する!?またこの調査結果からは、「言葉の読み書き」(文系の能力)と「数学」(理系の能力)、さらにITスキルの高さは決して別物ではない、ということがわかりました。その結果を裏付けるように、ベネッセが行なった調査でも「読書量が多いほど算数の偏差値が高い」傾向が見られたのです。2016~2017年にかけて、4万2696人の小学5年生を対象にベネッセが独自に行なった調査は、読書量と学力テスト(国語、算数、理科、社会)の結果を分析するというものでした。その結果、10冊以上読んだグループはいずれの教科でも偏差値が平均1.9ポイント上がりました。なかでも注目すべきは算数の結果です。どの教科よりも、「読書量が多い」グループと「まったく読書をしない」グループの偏差値に大きな差が開いたのです。(画像引用元:時事ドットコム|読書量多いほど算数向上=「問題正確に読み取る」ー民間調査)この結果を受けて、ベネッセ教育総合研究所は「(読書によって)与えられた問いや条件を正確に読み取る力を高めているのではないか」という見解を示しています。自分の子どもについて、「ちゃんと勉強しているのに、算数のテストでなかなか点数が上がらない」とお悩みではありませんか?もしかしたら、算数の問題集をたくさんこなすよりも、読書量を増やして読解力を高めることで、効果が出てくるかもしれませんよ。子どもを本好きに!おすすめは “親子読書タイム”学研ホールディングスが2015年に行なった「子どもの読書実態調査」によると、“親の読書量”と“子どもの読書量”には深い関係があることがわかりました。その調査結果では、親が本をまったく読まない子どもは1ヶ月の読書量が平均2.1冊であるのに対し、親が本を1ヶ月に6冊以上読む子どもは1ヶ月の読書量が平均6.9冊にものぼったのです。つまり、親自身が本を読む習慣がなければ、いくら子どもに「本を読みなさい」と言ったところで効果は期待できないでしょう。逆に、親が読書をする習慣があり、本を読む姿を子どもに見せてさえいれば、生活の中に本が存在していることが “当たり前” になるのです。教育評論家の親野智可等氏は、子どもを本好きにするためには「親子で毎日決まった時間に読書をする」ことをおすすめしています。子どもだけの読書タイムでもいいですが、圧倒的に大きな効果があるのは家族みんなが同じ時間に読書する「家族読書タイム」です。お父さんもお母さんも、おじいさんもおばあさんも、この時間は本を読みます。こういう状態なら、子どもも自然に読むようになりますし、気も散りません。この時間は読書をするのが当たり前、という雰囲気にすることが大事です。(引用元:東洋経済ONLINE|子どもが自動的に「本好き人間」になる仕掛け)家族みんなで、というのは慣れるまでは大変かもしれません。しかし親野氏は、「1日10分でも1ヶ月で300分。まったくのゼロの状態に比べれば大きな違いです」と述べます。たとえば夕飯の後、ただなんとなくテレビを観るのではなく、リラックスした気持ちで本を開いてみてはいかがでしょうか。家族みんなで読書を習慣づけることができれば、子どもにとってそれが「日常」となります。本を読むことを無理強いするのではなく、本を通じて家族のコミュニケーションタイムを作ることから始めませんか?***本を読むのはいいことだと頭ではわかっていても、忙しい日々に追われて心に余裕がなくなると、つい読書から遠ざかってしまいますよね。1日5分でも10分でも、親子で一緒に読書を楽しむ時間を作ることで、ストレスが解消されたり、子どもの話に耳を傾ける余裕が生まれたりするのではないでしょうか。(参考)Newsweek日本版|子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査時事ドットコム|読書量多いほど算数向上=「問題正確に読み取る」ー民間調査ダ・ヴィンチニュース|子どもの読書量と家庭のコミュニケーションには深い関係がある!?円満家庭の秘訣とは…東洋経済ONLINE|子どもが自動的に「本好き人間」になる仕掛け
2018年12月02日これからの子どもたちに必要とされるのは、テストだけでは測ることができない力――「非認知能力」だとされています。もちろん、将来の夢を子どもが叶えるためには、いわゆる学力である「認知能力」も必要でしょう。ただ、子ども教育のプロフェッショナル育成に携わる増田修治先生は、「認知能力を育むためにも非認知能力が重要」だと語ります。まずは、現在の教育現場が直面する問題から語ってもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)日本の教育が抱える「見えない貧困」問題いま、日本の教育は「貧困」という大きな問題に直面しています。「世帯収入が高いほどその家庭の子どもの学力も高い」という調査結果は、ニュースなどを通して耳にしたことがある人も多いことでしょう。貧困にはふたつの種類があります。ひとつは「絶対的貧困」で、もうひとつが「相対的貧困」。絶対的貧困にあたるのは世帯年収が約60~70万円を下回る世帯。月収が5万円以下で、食べものや着るものにも困るほどです。一方の相対的貧困は、世帯年収が120万円ほどの世帯。この相対的貧困は「見えない貧困」ともいわれていて、わたしは大きな問題だととらえています。この世帯の子どもは、食べものは食べているし衣服に困るほどではない。つまり、見た目は普通なのです。でも、その世帯の子どもたちは、さまざまな機会を奪われている。どんな機会かといえば、サッカーをしたくてもサッカーシューズは買ってもらえないし、バレエを習いたくても月謝を払ってもらえない。当然、学習塾に行くこともできません。この相対的貧困にあたる世帯の割合が、いまの日本ではどんどん増加しているとされています。「子ども食堂」というものを聞いたことはありますよね。貧困世帯の子どもたちを集めて食事を与え、同時に勉強も見てあげるという社会活動です。そこに来る子どもたちは、やはり学力が低い傾向にある。貧困世帯の子どもは、先にお伝えしたように学習塾には通えません。となると、自分で勉強しなければならない。でも、学習教材など自分で勉強できる環境が整っているわけでもないわけです。となると、その子どもにとって勉強できる唯一の場所は学校です。ところが、子ども食堂に来る子どもたちのなんと約8割が学級崩壊を経験しているというではありませんか。学級崩壊したクラスでは、まともに授業を受けることができません。そういう子どもたちは、勉強する機会を完全に奪われているのです。逆に、学級崩壊によって勉強する場所がないから、子ども食堂に通っているとも言えます。非認知能力の育成に欠かせない、子どもの声に耳を傾ける姿勢では、貧困家庭に育つと学力を伸ばすことができないのかというと、そうではありません。貧困世帯の子どもにも、貧困ではない世帯の子どもと遜色ない学力を持つ子どもたちがいます。彼らの共通点はなにかというと、「非認知能力が高い」ことです。非認知能力には、「朝ごはんを毎日食べる」といった生活習慣、「毎日の勉強時間の目安を決めている」といった学習習慣、あるいは、つらいことや困ったことがあったときに学校の先生に相談できるなどのコミュニケーション能力といったものも含まれます。これらは、一般的には貧困ではない世帯の子どものほうがしっかりと身につけている傾向にあるのですが、貧困世帯に育ちながら学力が高い子どもも、こういった基本的な習慣、非認知能力を身につけているのです。これがなにを表しているかというと、「非認知能力が認知能力を発達させる」ということです。2000年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームズ・ヘックマンらは、40年にわたる長期追跡調査の分析により、「非認知能力がその後の認知能力の発達を促し、その逆は確認できない」と結論づけました。非認知能力が高い子どもはテストの点数もあがるが、テストの点数がいいからといってその子どもの非認知能力が伸びるわけではないのです。となると、今後の乳幼児教育や小学校教育は大きく変わっていく必要があります。いつまでもテストで高得点を取ることだけが素晴らしいと評価する教育では駄目なのです。もちろん、これは学校などの教育現場だけの問題ではありません。家庭教育も、「非認知能力を伸ばす」ことを意識しておこなうべきでしょう。とはいえ、身構えるような必要はありません。大事なのは、「子どもの話をきちんと聞く」こと。教育に熱心な親ほど、子どもの言うことに耳を貸さず、「これが子どものためになるんだ」と勉強や習い事を押し付ける傾向にあります。それでは、まったくの逆効果。まずは、「なにかやりたいことある?」と子どもに聞いて一緒に考えること。そのなかで、互いに折り合いをつけていくべきでしょう。宿題ひとつ取っても、「●時になったから宿題をやりなさい」では駄目。「何時になったら宿題に取り掛かれる?」と子どもに聞いてください。そうして決めた時間は、親が決めたものではありませんよね?これはつまり、子どもに選択権を渡しているということ。そうすれば、親からすれば「あなたが決めたことでしょう?」と言えるし、子どもからすれば「自分で決めたのだからやらなくちゃ」と、自発性や意欲、責任感を養うことにもなる。多くの親は、その過程を省いてしまっているように感じます。そうではなくて、親と子どもそれぞれが納得する「一致点」をつくるコミュニケーションをたくさん取ってください。そういったことが、子どもの非認知能力を育んでいくのですから。『遊びにつなぐ! 場面から読み取る子どもの発達』増田修治 著/中央法規出版(2018)■ 子ども教育のエキスパート・増田修治先生 インタビュー一覧第1回:クイズで育む!?子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方第2回:非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?第3回:子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」(※近日公開)第4回:“おなら”に“裸”、なにを書いてもOK!?「ユーモア詩」が伸ばす子どもの力(※近日公開)【プロフィール】増田修治(ますだ・しゅうじ)1958年3月8日生まれ、埼玉県出身。1980年、埼玉大学教育学部卒業後、小学校教諭として埼玉県朝霞市内の小学校に勤務。「ユーモア詩」に取り組み、子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図るとともに、楽しい学級づくり、保護者とのコミュニケーションづくりをおこなう。2002年にはNHK『にんげんドキュメント 詩が躍る教室』が放映され反響を呼んだ。2008年3月末で小学校教諭を退職し、同年4月より白梅学園大学准教授。現在は同大学子ども学部子ども学科教授。『小1プロブレム対策のための活動ハンドブック』(日本標準)、『「いじめ・自殺事件」の深層を考える—岩手県矢巾町『いじめ・自殺』を中心として—』(本の泉社)、『先生! 今日の授業楽しかった!—多忙感を吹き飛ばす、マネジメントの視点—』(日本標準)など教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月02日テストで測ることができる力を「認知能力」、テストで測ることができない力を「非認知能力」と呼ぶことは見聞きしたことがあるかもしれません。でも、非認知能力が具体的にどういうものか、なかなか明確にイメージしにくいのも事実。それがどんなもので、なぜいま必要とされるのか――。教えてくれたのは、子ども教育のプロフェッショナルを養成している白梅学園大学の増田修治先生です。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)非認知能力とは能動的な心情を自分のなかにつくり出せる力「非認知能力」がどういうものかを知ってもらうため、まずは次のクイズに挑戦してみてください。Q:次の野菜や果物は水に浮くか、沈むか。1.ピーマン2.キュウリ3.ナス4.バナナ5.リンゴ6.ニンジン7.ジャガイモこれは、わたしが4歳児に出したクイズです。水槽を用意して1から順に、実際に答えを確かめながら進めました。ピーマンは……水に浮きますよね。4歳児も多くが正解しました。ところが、次のキュウリは子どもたちの答えがけっこうわかれた。正解は次のナスも含めて浮く。大人であれば、料理中にこれらを洗うときに水に浮かぶ様子を見たことがある人も多いでしょう。それでは次のバナナとリンゴは?このふたつも浮くんですね。では、子どもたちはニンジンについてはどう答えたでしょうか。それは「浮く」でした。なぜそう思うのかと聞いたら「これまでの全部が浮くから」と。子どもたちはちゃんと考えているんです。これまでの正解を聞いて、「野菜や果物は水に浮く」と考えたわけです。でも、答えは「沈む」なんですよね(笑)。それでは、最後のジャガイモはどうでしょう?答えは……「沈む」です。「野菜や果物は水に浮く」という仮説は正しくありませんでした。でも、別の仮説が浮かんできませんか?そう、基本的に地下にあるものは水に沈んで、地上にあるものは浮くのです。そして、このクイズの後、子どもたちは家に帰ってお風呂にいろんな野菜や果物を浮かべてみた。これが、簡単に言えば非認知能力です。このクイズで、なにが浮く浮かないといった知識を教えようとしたわけではありません。子どもたちはクイズをとおして、自分の頭でうんと考えた。そして、「面白い」だとか「やってみよう」「調べてみよう」という気持ちになった。こういう能動的な心情を、自分のなかでつくり出せる力――それが非認知能力なのです。AIの発達が進むこれからに求められる非認知能力いま、この非認知能力が「子どもたちの人生を決める」とも言われています。というのも、時代が大きな曲がり角にきているからです。これからは人工知能、いわゆるAIが社会を大きく変えていきます。そして、そのAIをどういう方向で使っていくかを考えられる人間が必要とされる。AIの時代になるからこそ、これまでとちがった角度からものを見ることができる、あるいは新しいものや発想を生み出せる力が求められるのです。それこそ、テストでは測ることができない、非認知能力そのものでしょう。また、オックスフォード大学の研究によると、「AIの発達によって今後10年で現在の約47%の仕事が自動化する」との試算が出ています。たとえばですが、バーテンダーの仕事は77%の確率でなくなるとか。他にもスポーツの審判員やレジ係、データ入力係、集金人などもなくなる仕事だとされています。これは遠い未来の話ではありません。現在進行形ではじまっているものです。いま、「スマートガスメーター」の導入が全国で進んでいることをご存じですか?これは、ガスの使用量を無線通信回線で把握するというメーター。つまり、これまで検針員がやっていた仕事がなくなるということです。なくならない仕事は、教師や保育士など人間相手の仕事、それからデザイナーといった創造性が必要な仕事などに限られてきます。単純な仕事は基本的にどんどんなくなるので、これからは自ら仕事を生み出すような人間になっていかないとならない。それがいいかどうかはともかく、そうならざるを得ないのです。それこそ、他人とどう接するか、どういう新しい発想を持って創造性を発揮するかといったことは、なかなか点数にできるものではありません。それらはまさに、非認知能力だということです。重要性を増している幼少期における非認知能力を伸ばす教育ここで4歳の子どもを対象におこなわれた「マシュマロ・テスト」と呼ばれる実験をご紹介しましょう。その内容は、子どもにマシュマロをひとつ渡して「食べずに15分待てばもうひとつマシュマロをあげるよ」と告げるというもの。すると、2個目をもらえるまで我慢できる子どもと、我慢できずに食べてしまう子どもにわかれた。この実験でわかるのは、「自制心」が育っているかどうかということ。自制心も重要な非認知能力です。そして、実験はこれで終わりではありません。その後の追跡調査により、2個目をもらえるまで我慢できる自制心がある子どもは、少年期には学力が高くて誘惑に強い、青年期には教育水準が高くて肥満率が低い傾向にあることがわかりました。一方、我慢できずに1個目のマシュマロを食べてしまった子どもは、対照的に学力が低い、肥満率が高いといった結果が出たのです。【マシュマロ・テストの追跡調査結果】これは、4歳時点における自制心という非認知能力の有無が、その後の人生を大きく変えたということに他なりません。まだ幼い4歳でのちがいとなると、「非認知能力の優劣は遺伝的に決まっているのか」という疑問を持った人もいるでしょう。でも、そうではありません。「幼少期における教育」の重要性が高いということです。そして、今後は非認知能力を伸ばすための教育がより重要となるとわたしは考えています。このマシュマロ・テストで2個目をもらえるまで我慢できた子どもというのは、「先を見通して考える」ことができたということ。言い換えれば、ものと時間などの「つながり」が見えているということです。ところが、いまはそういった「つながり」がどんどん見えなくなっている、あらゆるものが「ブラックボックス化」している時代なのです。たとえば、自動車もそう。むかしの自動車はいまのものより構造がはるかに単純で、整備士にはなにがどうなって自動車が動くということがすべて見えていた。でも、数多くの複雑な電子部品が使われているいまの自動車だとそうはいきません。整備士にも理解できていない部分が多く、調子が悪い部分を基盤ごと取り替えるということになる。こういうことがあらゆるものにおいて起きているため、「つながり」というものが見えにくくなっているのです。読者のなかに、子どものころに時計やいろいろなものを分解してもとに戻すのが好きだったという人はいませんか?わたしがそうで、たいてい部品が余っちゃって捨てることになっていましたけどね……(笑)。ただ、それは子どもにとって大切なことなのです。非認知能力なんてものが知られていなかったむかしは、そういうふうに自然に「つながり」を知って非認知能力を伸ばす環境にありました。ところがいまはそうではない。だからこそ、意図的に非認知能力を伸ばすよう働きかけをしていく必要があるのです。『遊びにつなぐ! 場面から読み取る子どもの発達』増田修治 著/中央法規出版(2018)■ 子ども教育のエキスパート・増田修治先生 インタビュー一覧第1回:クイズで育む!?子どもの「人生を決める」非認知能力の伸ばし方第2回:非認知能力が高い子どもは、「認知能力」も伸びていく。ではその逆は――?(※近日公開)第3回:子どもの自己表現力を伸ばし、自己肯定感を高める「親子コミュニケーション」(※近日公開)第4回:“おなら”に“裸”、なにを書いてもOK!?「ユーモア詩」が伸ばす子どもの力(※近日公開)【プロフィール】増田修治(ますだ・しゅうじ)1958年3月8日生まれ、埼玉県出身。1980年、埼玉大学教育学部卒業後、小学校教諭として埼玉県朝霞市内の小学校に勤務。「ユーモア詩」に取り組み、子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図るとともに、楽しい学級づくり、保護者とのコミュニケーションづくりをおこなう。2002年にはNHK『にんげんドキュメント 詩が躍る教室』が放映され反響を呼んだ。2008年3月末で小学校教諭を退職し、同年4月より白梅学園大学准教授。現在は同大学子ども学部子ども学科教授。『小1プロブレム対策のための活動ハンドブック』(日本標準)、『「いじめ・自殺事件」の深層を考える—岩手県矢巾町『いじめ・自殺』を中心として—』(本の泉社)、『先生! 今日の授業楽しかった!—多忙感を吹き飛ばす、マネジメントの視点—』(日本標準)など教育関連の著書多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年12月01日人に何かを頼むという行為は、日常的に行われていますね。・~してくれる?・~してくださいませんか?・すみませんが、……。・ちょっとお願いがあるのですが、……。このように、何かを頼む際の表現には、慣用化されたものが多くあります。決まりきったフレーズなので、一度覚えてしまえばすぐに使えて便利なものばかりです。この中から実際にどんな表現を選ぶかは、依頼の内容や、頼む側と頼まれる側の人間関係によります。例えば、学校で生徒が先生に対して使う言葉と、家庭でお母さんが子どもに対して使う言葉は、大きく異なるでしょう。「おきまりのセリフ」を覚えてしまえば会話が楽になる何かを頼むときは、言語を問わず自然に丁寧になるものですね。英語でも、依頼表現は基本的に丁寧ですが、丁寧さの度合いには違いがあります。そして、どの表現を選ぶかは、相手とどれくらい親しいかをはじめとした、社会的な距離関係などが関係します。そこで、英語で何かを依頼するときに使える代表的な表現を、丁寧さのレベル別に、まとめてご紹介しましょう。先生にお願いをするとき、親子の間で頼み事をするときに、ぜひ使ってみてください。学校の授業や留学先ではもちろんのこと、家庭内でも日常のことを英語で話す工夫をすることで、英語が身近な言葉に感じられるはずです。1. 前置き表現「ちょっとお願いがあるのですが」日本語でも依頼する前には「すみませんが」「ちょっとお願いがあるのですが」のような言葉から始めますね。同じことが英語でも言えます。・Excuse me, ….・Can I ask you a favor?・If it’s not too much trouble, ….このような一言を付け加えるだけで、聞き手も心の準備ができますね。2. 依頼する「してくれない?」遠まわしの表現は、丁寧さも高くなります。丁寧度の高い表現① I was wondering if it would be possible for you to ….② Would it be possible for you to …?③ Do you think you could possibly …?④ Could you (please) …?⑤ Would you mind …?例えば①のフレーズは、過去形で、さらに進行形が使われ、「~はどうかと考えていたところです」という意味合いになります。間接的なぶん、とても丁寧な表現です。カジュアル且つ丁寧な表現⑥ Can you …, please?⑦ Please ….⑧ Do …, will you?親しい間柄で「ちょっと……してほしい」という感じであれば、⑥のフレーズがぴったりです。夫婦間で「ちょっと……して」とお願いしたいときは、⑧も使えます。命令文のままだとぶっきらぼうですが、“please” や “will you” を付けることで、「お願い」という気持ちを伝えることができます。一番よく使われる英語の依頼表現は?相手の意向を尋ねるというのが依頼ですから、疑問文の形のものがほとんどです。その中でも、一番よく使われるのが④のこちらのフレーズです。・Could you please …?・Could you …, please?このように動詞の前や文末に “please” を付け足すことで、さらに丁寧な気持ちを付け加えることができます。3. 依頼に応じる「もちろん!」依頼に「いいですよ」と応じるときは、なんと言えばいいでしょうか。・Sure.・Of course.・Certainly.・No problem.短く、すっきりしたフレーズが多いので、お子さんでもマスターしやすいでしょう。4. 依頼を断る「ごめんなさい」依頼を断るときは、以下のような言葉から始めます。・Sorry.・Well, I don’t think so.・Sorry, but I can’t do it.さらに、断るときに多いのが、理由を付け加えること。“Sorry, but I’m busy right now.”(今忙しいからごめんね)のように、「なぜできないか」の理由とセットで答えられるといいですね。5. 条件をつける「……ならいいけど」時には「~ならいいですよ」と条件付で応じることもありますね。・Sure, as long as ….・OK, but only if ….・Certainly, but ….「車を貸してもらえない?」という息子に対して「5時までに返してくれればいいよ」、「スマートフォンを貸して」という娘に対して「落とさないならね」というように、条件付きで応じるのは日常的な光景です。英語で「お願い♪」の練習をしてみよう!最後に、実際に依頼の英語表現を使う練習をしてみましょう。家庭では、掃除やゴミ出しなど、家事を頼む場面がよくありますね。そんなときに便利な表現はこちら。・clean the kitchen(台所をきれいにする)・vacuum the carpet(カーペットに掃除機をかける)・air out the room(部屋を換気する)・get rid of the mold(カビを取る)・pick up the trash(ゴミを拾う)・empty the wastebasket(ゴミ箱を空にする)これらのフレーズを使って、掃除のお願いをしてみましょう。その際、この3ステップで話すと良いでしょう。①前置き②依頼③理由・状況説明例えば、このようにお願いしてみると自然です。①ちょっとお願いがあるんだけど。(Can I ask you a favor?)②部屋の喚起をしてもらってもいい?(Would you mind airing out the room?)③いま朝食を作っていて手が離せないから。(I’m busy making breakfast.)このように、さまざまな慣用表現を使って、依頼表現を作ってみてください。日常の英語化によって、英語に親近感が生まれるはずです。続けていけば、効果も期待できるでしょう。
2018年11月30日前回はジブリ映画『天空の城ラピュタ』から、親子でイギリスの社会と文化を学ぶためのヒントについてお話ししました。今回は同じスタジオジブリから『借りぐらしのアリエッティ』を取り上げます。英語圏でよく知られている児童書『床下の小人たち』を下敷きに、ジブリが作ったこの映画は、イギリスでも広く愛されています。大きな古いお屋敷に住む小人たちは、人間からいろいろなものを「借りて」生活しています。けれど、小人たちの人数はどんどん減ってきていて、主人公のアリエッティはお父さんとお母さん以外には自分のような小人を見たことがありません。そんなアリエッティが、人間の少年と出会ってしまったことから、家族の運命は大きく変わっていってしまいます。シンプルなお話ですが、安全ピンや、小さな瓶の蓋など、子供たちの身近にあるもので想像力を働かせることができるので、実際に小学校の教材に取り上げられることも多い作品です。我が家の子供が初めてイギリスの小学校に上がった時に私の目に最初に止まったのは、『床下の小人たち』をモチーフとした工作でした。映画から原作へ、原作からさらにイギリス社会の理解へつなげることもできますし、子供にとって刺激の多い様々なアクティビティへ展開しやすい物語だと言えるでしょう。ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』児童書『床下の小人たち』は非常に人気のある作品ですから、今までに何度も映画化されています。アメリカでも冒険映画に仕立てられていますし、本家イギリスでも公共放送局のBBCがテレビ映画化しています。BBC版の短いクリップをご紹介しましょう。こうしたさまざまな映像化の試みの中でも、ジブリの『借りぐらしのアリエッティ』はストーリーラインが比較的原作に忠実で評価も高いのです。舞台は日本に移されましたが、物語の大筋はあまり変えられていません。この映画ではアリエッティは、父親のポッドと母親のホミリーと一緒に日本の古い屋敷に住んでいます。和洋折衷のお屋敷で、家族は人間に見つからないように、小さなものを「借り」ながら生活をしています。14歳のアリエッティは、一人娘。お父さんと「借り」に行きたくてうずうずしていますが、初めての「借り」で人間の男の子、翔に姿を見られてしまいます。人間に見られてしまったことで、家族の生活は激変します。翔は小人たちと友達になろうとしますが、家政婦のハルさんは小人たちを捕まえようと張り切ります。しまいにはホミリーを捕まえてビンに閉じ込めてしまうのです。泥棒小人を捕まえたと、ハルさんは言います。原作『床下の小人たち』——様々な視点から物語を味わう糸口に『アリエッティ』の原作である『床下の小人たち』は、第二次大戦の記憶がまだ新しい1952年に発表されました。それから半世紀以上、ずっと英語圏の(そして日本の)子供達をワクワクさせ続けてきました。人間からいろいろなものを借りている小さな人たち、という発想が秀逸です。原作ではポッドと言う名前が(豆のさや)という意味だということがわかるようになっています。作品中で指摘はされませんが、お母さんのホミリーの名前は(教会のお説教)という意味ですから、小人たちは名前も人間から「借りて」いるのです。それにしても、子供達にお説教をする役目をしょっちゅうあてがわれてしまうお母さんの名前が「ホミリー」というのはうまくつけたものです。映画『アリエッティ』ではあまり光を当てられていませんが、原作でとても重要になるのが「借りる」ことと「盗む」ことの違いです。原作では、男の子とアリエッティはこんな会話をします。「借りる(中略)きみは、そういうんだね?」「ほかに、なんていえばいいの?」とアリエッティがききました。「ぼくなら、盗む、っていうね。」この会話の中でアリエッティは、こんな風に説明します。盗むというのは借りぐらしの小人の間で起きることで、人間のところから物をとっていくのは盗みではない、と。男の子はアリエッティの説明を面白がって受け入れます。読者である子供達も、「そうだね」と頷くのかもしれません。でも、ここで一度立ち止まって考えてみましょう。原作でも、ジブリの映画でも、小人を「泥棒」と呼び、捕まえようとするのは、使用人たちです。映画では家政婦のハルさんですが、原作では料理人のドライヴァおばさんです。使用人はお屋敷の中では弱い立場です。小さなものがなくなった時には真っ先に疑われてしまいます。切手や安全ピンであれば、なくなっても困らないでしょうが、宝石やお金がなくなったら、すぐに職を失いかねません。実際に原作ではアリエッティの家に「エメラルドの時計」が飾ってあると書いてあります。まさに、なくなった時に大騒ぎが起きて、女中が一人や二人解雇されていてもおかしくないような品物も、原作のアリエッティたちは「借りて」いるのです。家のものがいつの間にかなくなったら、お手伝いさんは困るんじゃないかな?ぐらいの会話は、親子の間で持ってもいいのかもしれません。様々な視点から登場人物を見るための仕掛けが、原作には確実に施されています。図工や体育、演劇に作話まで!イギリスの小学校での『小人たち』さて、『床下の小人たち』は、実際の教室での勉強に展開していきやすい作品です。日本語訳の出版社は実際に自分で読むのであれば小学校5・6年以上としていますが、本が好きな子供たちならずっと早くに読むでしょうし、もっと幼い子でも楽しめる質の良い映画『借りぐらしのアリエッティ』があります。実際にイギリスの小学校で教材として扱われる時も、対象年齢は6歳から12歳前後と、比較的幅があるようです。私の子供達の学校では図工の授業でアリエッティの部屋を作っていましたが、演劇や体育に展開することもできるでしょう。たとえば、演劇教育に関するこちらのサイトでは「借りゲーム」として10分程度のゲームを提案しています。目隠しをした子供が一人中央の椅子に座る。その椅子の下に鍵を置き、他の子供達は気付かれないようにとろうとする。目隠しをした子供は耳をすませ、「借りぐらし」が来たと思ったら指差してそう言う。あるいは、一人の登場人物になりきって席に座り、質問に「登場人物として」答える、というアクティビティもあります。読み、理解し、演じる。受け身におはなしを楽しむ以上のことが要求されるアクティビティです。もう少し先に行くと、物語の中心人物である人間の「男の子」になったつもりで、自分にはどんな偏見があるのか考えよう、という作業も入ってきます。その他にも、小人たちが学校に暮らすことになったという設定で続きを書いてみましょう、小人を見た人間の男の子になったつもりで日記を書いてみましょう、というように、借りぐらしの小人たちを題材に、子供達と一緒にできることはどんどん広がっていきます。映画を見ながら家庭でも『小人たち』との学びを深めよう学校で取り上げる作品は、決められた時間で読み、理解しなくてはいけませんが、家庭で読む物語は、アクティビティと読書の間に時間があいても良いのが大きな利点です。一気に全てのアクティビティに手を出すのではなく、映画を見ながら「いつか大きくなったらタイミングを見て、こういうことをしてみてもいいな」と考えると良いのではないかと思います。映画と原作の間に時間があいても大丈夫ですし、本当に小さい頃はアリエッティの「借りごっこ」から始まり、いつか、「偏見とは」というような大きな問題に移っても良いでしょう。せっかく日本を舞台に映画が作られたのですから、お子さんがもっと大きくなった時には、映画と原作の違いについて語ることもできるでしょう。子供達に愛される映画はとても良い学びの糸口なのです。(参考)メアリー ノートン (Mary Norton), 林容吉 訳(2000),『床下の小人たち―小人の冒険シリーズ〈1〉』,岩波書店.Helen Day, “The Borrowers:A Look at the book through drama” in Teaching Drama, Summer term 1., pp.1-9.米林宏昌 監督(2011),『借りぐらしのアリエッティ[DVD]』,ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社.
2018年11月29日絵の具を使って白い紙を彩ることは楽しいもの。大人になり、親になった皆さんも、小さい頃は図工の時間が好きだったのではないでしょうか。親子でアート制作を楽しめたら素敵ですよね。けれど、「何を描いていいのかわからない」「子どもはまだ筆を使えなくて……」とためらう人も多いかもしれませんね。そこで今回は、大人も子どもも気軽にアートが楽しめる「ドリッピング」を紹介します。ぜひご自宅でやってみてください!芸術技法としてのドリッピングとはドリッピング(dripping)とは、その名のとおり、絵の具を「したたらせる」画法です。この芸術技法を多用したことで知られているのは、米国を代表する抽象画家ジャクソン・ポロック(1912~1956)。従来、絵とはイーゼルにキャンバス(紙)を立てかけて横から描くものでしたが、ポロックはキャンバスを床に置き、上から絵の具を垂らして作品を制作しました。筆で描くのではなく、体を使った「アクション」によって画面に絵の具を埋め尽くすポロックの制作手法は「アクション・ペインティング」と呼ばれています。芸術界に衝撃を与えたポロックの作品は、アートの歴史における金字塔として高値で取引されています。1949年に制作されたドリッピング・アート「Number 32」は2018年5月、3,409万8,000ドル(約39億円)で落札されたほどです。「Number 32」は79cm×57cmという小さめの作品ですが、画面いっぱいにほとばしる黒いしぶきは迫力たっぷり。油彩・エナメル・アルミニウム塗料による力強い作品です。保育におけるドリッピングドリッピングは前衛芸術の一種ですが、「『デカルコマニー』ってどういう意味?作品制作の簡単なやり方教えます。」でご紹介した「デカルコマニー」と同様、保育現場での芸術教育においてよく使われています。その理由は、子どもでも簡単に実践でき、芸術表現を楽しめるから。幼児の造形教育を専門とする若杉雅夫教授(浜松学院大学短期大学部)は、「ドリッピング遊び」の適齢を4~5歳とし、その教育的効果を以下のように述べています。ねらいとしては、ドリッピングを体験する中で偶然に出来た形や色のバリエーション(混色による)を楽しみ、形や色に関する感受性を高めることと、遊びの中で自然に水彩絵の具に慣れ親しみ、その性質を知ることにある。造形素材に慣れ親しむことや色や形の美しさを感じることが出来る豊かな感受性を育むことは、具体的な形を描くことを早く覚えさせるより、表現する基本的姿勢や感受性を培うためには最も大切なことと考えている。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:東海学院大学学術機関リポジトリ|幼児から児童につながる造形活動(遊び)に関する考察 : 「絵あそび」と表現能力の育成に関して)ドリッピング画法は、一般的な「お絵かき」と異なり、人間や花といった具体的なものを描くのではありません。絵の具が画面上に生み出す、偶発的な結果を味わうのです。「ていねいに塗らなきゃ」「太陽は赤いクレヨンで描かなきゃ」など、余計なことを考える必要はありません。子どもも大人も、絵の具の形や色の妙を楽しみましょう。「これ、何に見える?」などと話し合うのも面白いですよ。ドリッピングのやり方では、実際にドリッピングをやってみましょう!【用意するもの】画用紙、絵の具、筆、パレット、ストロー、新聞紙もしくはシート【やり方】1.ドリッピングは、その性質上、どうしても周囲を汚してしまいます。新聞紙もしくはシートをひき、その上で作業しましょう。2.パレットに絵の具を出し、たっぷりの水で溶きます。パレットの代わりに、使い捨てプラスチック容器でもかまいません。3.筆に絵の具をつけ、紙の上から垂らします。容器から直接、絵の具をまくのもいいですね。4.このままでも美しいのですが、手を加えてみましょう。絵の具が乾く前に、ストローで息を吹きかけたり紙を傾けたりして、絵の具を移動させます。5.完成です!何に見えるでしょうか?ドリッピングのやり方~2色を重ねる~ドリッピングによって生まれる作品は、1色でも充分に美しいもの。ですがここは、もう1色試してみましょう。1色と比べて、どのように印象が変わるでしょうか?【やり方】1.1色目が乾いたら、別の絵の具を紙に垂らします。1色目とは別の場所に置くと、バランスがよくなりますよ。2.ストローで息を吹きかけ、絵の具を移動させます。3.完成です!1色と2色、どちらがお好きですか?ドリッピングのやり方~2色を混ぜる~今度は、2色を同時に扱ってみましょう!2つの絵の具が混ざると、何色になるでしょうか?【やり方】1.2色の絵の具を、紙の別の部分にそれぞれ垂らします。2.ストローで息を吹きかけ、絵の具を移動させます。おや、絵の具のぶつかった部分が……。3.完成です!ピンクと青の混ざった部分が、紫色に変わっていますね。1色ずつ乾かして重ねた場合とは、だいぶ趣が異なります。***単純だけれど、つい夢中になってしまうドロッピング。くれぐれも、吹きすぎによる酸欠にはご注意ください。(参考)札幌市立大学学術機関リポジトリ|現代芸術論におけるデザイン学生の授業感想と教員からの通信♯1ダダイズムからポップアートと1960年代の美術までの現代美術コトバンク|アクション・ペインティングSotheby’s|Jackson Pollock NUMBER 32東海学院大学学術機関リポジトリ|幼児から児童につながる造形活動(遊び)に関する考察 : 「絵あそび」と表現能力の育成に関して
2018年11月28日「言葉」で書いて「絵」で届ける子どもに「表現力のある作文を書かせたい」と思っている親御さんは多いでしょう。実は子どもの表現力を磨くことは、そう難しいことではありません。それどころか、コツさえつかめば、とても簡単です。表現力が磨かれていくと、作文能力も飛躍的に伸びていきます。何よりも子ども自身が書くことを「楽しい」と感じるようになります。ポイントは、「『言葉』で書いて『絵』で届ける」ことです。表現力のある作文ほど、読んだ人の頭のなかで、パっと絵(場面)が思い浮かぶものです。この書き方ができるようになると、読む人が作文の内容に興味をもちやすくなります。もちろん、内容の理解も深まります。「絵」で届ける方法のひとつが「オノマトペ」の活用です。「オノマトペ」とは、「擬声語」のことで「擬音語」と「擬態語」を合わせたものです。【擬音語:物が発する音や声を描写した言葉のこと】例→グラグラ、ガタガタ、ドテッ、クシャ、ドッカーン、ガチャン、チャリン、プップー、ドドドッ、ヒューヒュー【擬態語:状態や心情、様子など、音のしないものを音として描写した言葉のこと】例→びくびく、ハラハラ、そわそわ、グダグダ、イライラ、とぼとぼ、しくしく、うとうと、キョロキョロ、シャキッオノマトペの絶大な効果とは?以下、【1】と【2】の文例を読み比べてください。【1】はオノマトペを使っておらず、【2】はオノマトペを使っています。【1】めのまえに、ふじ山が、あらわれたのです。【2】めのまえに、ふじ山が、ドーンとあらわれたのです。【1】ぼくは、おそばをすすりました。【2】ぼくは、ズズズッと、おそばをすすりました。【1】ごはんを食べたら、げんきが出た!【2】ごはんを食べたら、モリモリッとげんきが出た!【1】足がしびれて立ち上がれなくなりました。【2】足がジンジンして立ち上がれなくなりました。【1】きずがいたむ。【2】きずがズキズキいたむ。【1】クルマが走りぬけていきました。【2】クルマがビューンと走りぬけていきました。【1】犬のなき声が聞こえました。【2】クンクンと犬のなき声が聞こえました。【1】ジュースをのみました。【2】ジュースをゴクゴクのみました。【1】ひとりで家にいたら、しずかで、さみしくなりました。【2】ひとりで家にいたら、シーンとしていて、さみしくなりました。【1】おともだちが、ぼくの手をひっぱりました。【2】おともだちが、ぼくの手をグイッとひっぱりました。いずれの文例も、「絵」としてイメージしやすいのは、【1】よりも【2】ではないでしょうか。もっと言えば、【2】には【1】にはない「躍動感」や「リアリティ」が感じられます。どちらが表現力のある文章かは言わずもがなでしょう。子どもたちが大好きな漫画でもオノマトペは効果的に使われています。主人公の顔の横に「ビクっ」と書かれていると、驚いた顔の表情と相まって、主人公の驚きがより増幅して伝わります。ものによっては、いっさい吹き出し(台詞)がなく、オノマトペだけで、場面説明するようなページも少なくありません。ときにオノマトペは、文章による説明以上に、読む人にリアルな情報を届けてくれるのです。漫画を例にあげるまでもなく、子どもたちは感覚的にオノマトペが大好きです。たとえば、男の子であれば、ヒーローに変装して登場するときに「ジャーン」などと言うのではないでしょうか。あるいは、アクセサリーが好きな女の子であれば、「この宝石はキラキラしていてかわいいでしょ?」などと言うのではないでしょうか。子どもが日常のなかで自然と使っているオノマトペを、作文のなかに取り入れない手はありません。オノマトペに正解はない「あしたはクリスマスだからワクワクする」「さむくてブルブルふるえました」など、オノマトペには、お約束的な表現も少なくありませんが、子どもにオノマトペを書かせるときは、できるだけ子どもの自由な発想・感性に任せましょう。めのまえに、ふじ山が、ドーンとあらわれたのです。先ほど紹介した文例のひとつです。この場合のオノマトペも「ドーン」が正解というわけではありません。・めのまえに、ふじ山が、バキューンとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、バコッとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、ジョジョッとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、ブゥオーンとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、ニョロッとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、ジジッとあらわれたのです。・めのまえに、ふじ山が、ブ~~~ンとあらわれたのです。オノマトペに間違いはありません。くれぐれも「『ジョジョ』なんておかしいでしょ?」などと無粋なことは言わないでください。大事なのは、その子が自分でその言葉を選んだという事実です。人とは違うオノマトペが出てきたときほど「すごいね」「いいね」「かっこいいね」「すてきだね」と子どもを褒めてあげてください。文豪・宮沢賢治も愛したオノマトペもっとも、まだ作文慣れしていない子どもに「オノマトペを使って書きなさい」と言っても、難しいかもしれません。仮に「めのまえに、ふじ山が、あらわれたのです」と書いたとしたら、「どんなふうに現れたのかな?現れた様子に音をつけてみようか!」と自然な形で誘導してあげてください。また、日頃から、オノマトペを使うゲームを、親子で楽しむのもおすすめです。バナナを食べながら「食べている様子を『モグモグ』以外の音で表現してみよう」とか、「お父さんが怒っているときの様子を音で表現してみよう」とか。どんなお題でも構いません。親子のコミュニケーションも促されるうえ、情景や様子、自分の気持ちなどをオノマトペで表現するいいトレーニングにもなります。かの文豪、宮沢賢治は、オノマトペの名手としても知られています。「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました」(『注文の多い料理店』より)などが一例です。彼の作品が老若男女に愛されたのは、その独特でリアリティのある情景・感情描写にあったのかもしれません。賢治のみならず、世の子どもたちもまたオノマトペの名手です。自由な発想に彩られた子どものオノマトペは、作文の魅力とクオリティを格段に高めます。もちろん、オノマトペで表現する楽しさを知った子どもは、作文を書くことが好きになるでしょう。
2018年11月28日子どもの習い事として、ピアノは永遠の憧れかもしれません。自分がやっていたという親御さんも、やってみたかったという親御さんも、自分の子どもにピアノを習わせたいと願う人は少なくないのではないでしょうか。では、何歳から始めるべきなのでしょう?さすがに1歳では早そうですが……。今回は、子どもにピアノを何歳から習わせるべきか、4つの観点から考察します。ピアノを何歳から始めるべきか1:絶対音感を育む「絶対音感はどう養う?子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。」でも取り上げたように、人間が獲得できる音感には、絶対音感と相対音感の2種類があります。相対音感は訓練すれば大人でも得られるもの。しかし、絶対音感は小さいうちにしか身につかないといわれているのです。音楽心理学を専門とする、「一音会ミュージックスクール」の榊原彩子氏によると、絶対音感保有者が音楽のレッスンを始めた年齢で最も多かったのは5歳だと、いう調査があるそう。非保有者だと6~7歳だったそうです。また、音楽家600人以上を対象にした調査では、4歳以前に音楽のレッスンを始めた人の40%が絶対音感を持っていた一方、9歳以降に始めた人で絶対音感を持っていたのはたった9%だったそうです。これらの調査結果を考慮すると、絶対音感を身につけるためには、遅くても5歳までにピアノを始めるのがよさそうですね。ピアノを何歳から始めるべきか2:脳を発達させるピアノの練習によって脳が発達するという説は近年、多くの人に支持されています。絶対音感養成プログラムを提供している一般社団法人・日本子ども音楽教育協会の理事長・滝澤香織氏によると、右手と左手を同時に使うピアノは、右脳と左脳の両方を活性化させるそう。右脳と左脳のあいだには、神経繊維が2億本ほど詰まった「脳梁」と呼ばれる大きな束がありますが、左右の脳をバランス良く使うことで、脳梁はより太く育ち、左右の脳の伝達もより円滑になるのです。脳梁の発達のためにも、左右の手指を平等に使うピアノはとても効果的なのです。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。)精神医学を専門とするジェームズ・ハジアク教授(米バーモント大学)らの研究も、楽器を練習した子どもほど、集中力などに関する脳の部位が発達していることを明らかにしました。ピアノをはじめとする楽器の演奏には、指を正確に動かしたり、音を聞き取ったり、楽譜を読んだりなどの緻密な作業が要求されますからね。脳には、発達しやすい年齢というものがあります。米国の高名な人類学者リチャード・スキャモン(1883~1952)によれば、20歳時点での脳の発育度を100%とすると、4歳ですでに約80%、6歳では約90%にもなっているそう。それ以降の発達は非常にゆるやかです。つまり、脳が急激に発達している4歳までのあいだ、脳に刺激を与えることが重要だといえます。すると、できれば4歳までに、遅くとも6歳になる前にはピアノを始めているべきだというわけです。ピアノを何歳から始めるべきか3:体は充分に発達しているか子どもの能力を伸ばすには早いうちからピアノを始めたほうがよいとはいえ、肉体的な制約というものがあります。やはり、体幹が発達して椅子に座れるようになるまでピアノは弾けないでしょうし、鍵盤を押すには力も必要です。子どもは何歳からピアノを習えるのでしょうか?執筆や講演活動を行っているピアノ講師・笹田優美氏によると、ピアノは幼児の体にとって大きいだけでなく、指に負担もかかるそう。そして、体の骨格が安定するのは「6才前後」だそうです。もちろん、発達の速度は人それぞれ。子どもによってピアノを始めるのが何歳からなのかは異なります。笹田氏によれば、小学生になって「身体と脳のバランスが整ってくる」のを待ってからでも遅くはないそうです。とはいえ、小学生になるまで音楽に触れないというわけではありません。上述のとおり、4歳までに人間の脳は大部分が形成されています。笹田氏によれば、リトミック(身体を用いてリズムを学ぶ教育法)やダンスなど、体を通じて音楽を感じる体験がおすすめだそうですよ。ピアノを何歳から始めるべきか4:じっと座っていられるかピアノを習うのであれば、大人しく椅子に座り、先生の指示に従わなければなりません。それにはある程度の肉体的・精神的成長が不可欠ですね。このような能力は何歳くらいで身につくのでしょう?お茶の水大学子ども発達教育研究センターが2004年に発行した『幼児教育ハンドブック』によると、体を自分の思い通りに動かせるようになるのは2歳から。指先の動きも急速に発達するそうです。しかし、全身のバランス感覚が発達するのは4歳からなのだとか。そして、大人の指示に従えるかどうかは、子どもの個性によって全く異なります。素直に従う子もいれば、空想に夢中で話を聞いていない子も、周囲のことに気を取られやすい子もいるでしょう。しかし、だからといって教室に通わせないよりは、習い事を通じて落ち着いた態度を身につけさせるほうが建設的ですね。これまでの説明を振り返ってみましょう。絶対音感を会得するなら5歳まで、脳の発達を考えると6歳まで、骨格が安定するのが6歳ごろ、全身のバランス感覚が発達するのは4歳から。これらを総合すると、ピアノは4歳~6歳のあいだに習い始めるのがよさそうですね。くわえて、脳の発達のためには、4歳より早く音楽教室に通わせるのが効果的のようです。ピアノを習うメリットさて、ピアノを何歳から習うべきかがわかったところで、立ち止まって考えてみましょう。どうして子どもにピアノを習わせたいのでしょうか?「ピアノが弾けるようになる」以外に、どのようなメリットがあるのでしょう。また、上で述べたようにピアノを弾くことが脳を活性化させるとはいえ、「脳の活性化」にはどのような意義があるのでしょうか?外国語が得意になる「楽器を習うと英語力が上がる?英語を学ぶと音楽が得意に?音楽と外国語の深い関係」でもご紹介したように、幼少時に音楽のレッスンを受けていると外国語を習得しやすくなることを示した研究があります。音に敏感になるため、母語にはない外国語の音を聞き取ったり、脳内での処理能力が高まったりするそうです。たとえ音楽のレッスンを子どものうちにやめてしまっても、その恩恵はずっと続くそう。英会話スクールにお金をかけるより、効果があるかもしれません。「生きる力」が養われる「知能指数」を意味するIQ(Intelligence Quotient)は多くの人が知っていると思います。では、近年注目されているHQ(Human Quotient)――「人間指数」はどうでしょうか?認知神経科学を研究する澤口俊之教授(武蔵野学院大学)によると、HQとは「目的・夢に向かって、社会の中で協調的に生きるための脳力」。ワーキングメモリ、一般知能、自己制御、注意力、問題解決能力など、さまざまな要素を含んでいるそうです。そして、塾に通ったり、スポーツや習字、英会話を習ったりしている子どもに比べ、ピアノを習っている子どものHQは突出して高いそう。その理由を澤口教授は「両手で微妙に違う指の動きができること」と「譜面を先読みして覚えて後追いしながら弾くこと」だと推測しています。ピアノの練習によって脳が活性化された結果、目的達成のため主体的に生きていくのに必要な能力が育つようです。机に向かっての勉強だけでは得られないHQが育つことは、ピアノを習う大きなメリットだといえるでしょう。ピアノを習うのに必要な費用子どもにぜひ習わせてみたいピアノですが、やはり気になるのはお金ですよね。レッスン代や楽器の購入費用など、どれくらい必要なのでしょう?全国に展開する「ヤマハ音楽教室」の小学生向け「ピアノコース」は、月3回・1回30分で7,000~9,000円(税抜)。入会金・施設費・教材費が別途発生します。個人のピアノ教室だと、もっと安くなることが多いようです。ピアノには大きく3種類があります。発表会で弾く大きなグランドピアノ、家庭に置きやすいアップライトピアノ、夜でも練習できる電子ピアノ。総合楽器店「島村楽器」の公式サイトに掲載されている価格は以下のとおりです。-グランドピアノ:129万6,000円(税込)~-アップライトピアノ:43万2,000円(税込)~-電子ピアノ:2万8,800円(税込)~やはり、電子ピアノならば圧倒的に安いですね。音だけでなく鍵盤の重さやフットペダルの有無など、本来のピアノとは異なる点が多いとはいえ、価格の安さは習い事の続けやすさにつながります。プロのピアニストを目指すのでなければ、電子ピアノから入る選択肢も充分にありうるでしょう。***ぜひ幼少期に習っておきたいピアノ。高価なピアノを買えなくても、諦めるのは早いですよ!(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|絶対音感はどう養う?子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。StudyHackerこどもまなび☆ラボ|楽器演奏により脳が発達することが研究で明らかに。おすすめは「7歳までに」始めること。StudyHackerこどもまなび☆ラボ|楽器を習うと英語力が上がる?英語を学ぶと音楽が得意に?音楽と外国語の深い関係国立国会図書館デジタルコレクション|なぜ絶対音感は幼少期にしか習得できないのか? : 訓練開始年齢が絶対音感習得過程に及ぼす影響公立はこだて未来大学|身体的な発達心理学Roland|ピアノを始める前に知っておきたい5つのこと ~その1~お茶の水女子大学|乳幼児の発達の概要LinkedIn|How the Human Quotient Improves Careers and Companiesキャリコネニュース|ビジネスパーソンの力は「人間性知能HQ」で測れる!? 脳科学者・澤口俊之氏が「脳力」の鍛え方伝授ピティナ|今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)ヤマハ音楽教室公式サイト|ピアノコース島村楽器|鍵盤楽器島村楽器オンラインストア|電子ピアノ
2018年11月27日既刊『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』(金の星社刊、以降『ジュニアのためのスポーツごはん』)の制作秘話やスポーツ栄養についてお聞きした前編はこちら。インタビュー後編では、多くの親御さんが頭を悩ませる「朝食」についてお聞きします。朝食の重要性は充分理解していても、なかなか状況が改善されない……そんなお悩みを抱えている方は必見です!朝食のお悩みは前日の夜に原因あり!?ここ数年、ずっと問題になっているのが「朝ごはん」についてです。朝が弱い、起きられない、食欲がわかない……といったお悩みが多く寄せられていますが、具体的な解決策はあるのでしょうか?「まず、「なぜ朝ごはんを食べられないのか?」という課題の原因を生活の中から探すことをおすすめします。たとえば、寝る前の行動を思い返してみてください。寝る直前まで、スマートフォンやゲームの画面を見ていないでしょうか。ブルーライトの影響で睡眠が妨げられていて、朝目覚めが良くない、起きられない。また、夜遅い時間に消化に時間がかかる揚げ物や油っぽいメニューのものを食べていないか……などです。このように、前日の夜の行動によって翌朝食欲がない場合もあります。生活スタイルの中で改善点を見つけ出し、変えていけるところを少しずつ変えてみると、いつもより朝食を食べられるかもしれません。そうは言っても、朝起き抜けはなかなか食欲が出ないものです。時間に余裕をもって起きなきゃいけないとはわかっていても、忙しい朝に時間を捻出するのは難しい。ならば、身体を起こすために起き抜けにコップ一杯の冷たい水を飲んでみたり、少し身体を動かしてみたりと、ほんの数分でできることを探してみてはどうでしょう。今よりも朝ごはんを食べられるように、親子でいろいろなことにトライしてみると、新しい発見があるかもしれません。そのうえで、朝食のメニューの食べやすさについて考えてみましょう。「いろいろ食べさせなければ」と①主食、②主菜、③野菜、④果物、⑤牛乳・乳製品の5皿を食欲がないお子さんの前に並べてしまうと、その見た目でさらに食欲が減退してしまう可能性もあります。たとえば、トーストにハムとスライスチーズをのせると、これだけで①主食と②主菜と⑤乳製品がとれますね。そこに冷蔵庫から出すだけのプチトマトと100%果汁ジュースををプラスする。これをワンプレートのお皿にのせると、見た目もすっきりして食べる側も食が進みやすくなります。また、つくる側も後片付けの手間が減りますよね。和食ですと、前日の夜にお味噌汁を多めにつくっておいて、朝沸かして卵を落とす。それに牛乳やフルーツヨーグルトをプラスしてあげれば、立派な朝ごはんになります」つくる方も食べる方も朝ごはんにストレスやプレッシャーを感じずに、もっとシンプルに考えるといいですね。その前に、まずは生活の見直しから始めることが大事ですね。「文部科学省が推進する、子どもたちの正しい生活習慣の定着と健全な成長を目的とした『早寝早起き朝ごはん』運動は弊社も力を入れています。明治の食育セミナー活動が『早寝早起き朝ごはん』運動に貢献した活動として評価され、平成26年度には文部科学大臣表彰を受けました。誰もが大事だとわかっていながらも、生活習慣を変えることはとても難しいと思います。早寝早起き朝ごはんの必要性を理解し、改善しようと思ったときに、最初は高い目標を設定せずに「ここは変えられるかも」という部分を親子で見つけて、継続できることを探す作業をしていくことをおすすめします」「自分で考えて動く」力が子どもの自立につながるどんなに料理が好きな方でも、ときには日々の食事づくりに疲れてしまうこともあるかと思います。そんなとき「これだけを押さえていれば大丈夫」という言葉に救われることもあります。「食事は生活に密着していて、毎日のこと。献立を考えて、つくることを負担に感じるときもあるかと思います。だからこそ気負わずに、手を抜くところを自分で選択することが必要ですし、大切なことだと思います。今は本当にたくさんの情報があふれている時代です。それに振り回されないようにするには、基本的な5大栄養素の働きをしっかりとおさえておく。そして①主食、②主菜、③野菜、④果物、⑤牛乳・乳製品の「なにをプラスするか」ということを考える習慣をつけていくとよいです。5つの食品のうち、なにを加えたらバランスが良くなるかと考えたとき、外食から帰ってきて牛乳を飲む、ヨーグルトを食べる、そのような行動に自然に結びついていきます。献立を考えるとき、ごはんとおかずは優先的に考えることが多いです。また、野菜は「食べなきゃ」という意識が強いのでメニューに取り入れがちです。では、なにが足りないかと考えたとき、果物と乳製品が不足しがちなことに気がつくと思います。お子さんの食生活を見直したとき、果物や乳製品が足りないと思ったら野菜ジュースやヨーグルトなどを買って、冷蔵庫にストックしておきます。不足していたらプラスする。家に置いてあればすぐにプラスできます」足りないものをプラスする。それだけでいいんだ、と考えると肩の力が抜けて毎日の食事づくりもかんばれそうです(笑)。「あとは「全部自分で用意しなきゃ!」と思いつめないようにすることもポイントではないでしょうか。牛乳とかみかんとか、お子さんが自分で用意できる食品がたくさんあります。お子さんが自分で「なにが足りないかな?」と考えて、足りないものがわかったら自分で冷蔵庫に取りに行く。今はスポーツの現場でも「自分で考えて動く」というコーチングが主流になっています。そういう習慣をつけるようにすると、お子さんの自立を促すことにもつながっていきますし、それが習慣になれば、保護者の方にほんの少しの時間的な余裕が生まれるのではないでしょうか」「自分で考えて動く力」を養い自立を促す、これも長い目で見て親ができる子どもへのサポートであると言えますね。「「自分でやったほうが早い」と思って手を出してしまうこともあるかと思います。でもちょっとずつでも子ども自身にやらせることで、大人になったときにしっかりとした生活習慣が身についていくでしょう」明治が考える「食育」とは?書籍『ジュニアのためのスポーツごはん』のエピソードや、スポーツ栄養のお話をたっぷり聞かせていただいたところで、食品企業として明治が考える『食育』についてのお話もお聞きしました!まず、明治の食育に対する考え方・理念とは?「食事は健康づくりの源で、身体だけではなく喜びとか安らぎといった心の豊かさにつながっている、と考えています。明治では、食の大切さ・楽しさと、食のバランス、食の安全安心の3つを柱として食育活動を行っています」子どもが健やかに成長するために、会社としてサポートしたいと思うことをお教えください。「子どもが健やかに成長するために、食を知って楽しむ場所を提供して食生活をサポートしたいと思っています。食の価値や健康の大切さを伝えることで、未来を担う子どもたちが“なりたい自分”のために食品を選ぶ力『食品選択力』を身につけることを目指しています」明治が今とくに重視している栄養は何でしょう?「『ミルクプロテイン』という乳たんぱく質です。現代の日本人はたんぱく質が不足傾向にあります。子どもの成長、またシニアの健康維持のためにもたんぱく質は非常に重要な栄養素です。そのたんぱく質の中でも『ミルクプロテイン』、牛乳に含まれる乳プロテインを明治は推奨しています。詳しくは明治のHPでもご紹介していますので、ご参考になさってください(株式会社 明治|ミルクプロテイン特設ページ)」今回は貴重なお話をどうもありがとうございました!牛乳に含まれるミルクプロテインは生活の中にも取り入れやすそうですね。スポーツを頑張る子どもはもちろん、家族全員の健康を考えたとき、たんぱく質とカルシウムを積極的に摂取することが大事だと思いました。「健康は心の豊かさにつながる」毎日の食事をおいしく楽しくいただくためにも、できることから少しずつ始めていきたいですね。
2018年11月26日IQが頭の良さを表す知能指数であるのに対し、EQは「生きる力」をどれくらい持っているかを表す指数です。時代の移り変わりの中で、周りの要求に応えられる「感性」が必要とされるようになり、IQの高さよりもEQの高さが求められ始めています。そして、幼少期の親との関わりは、EQ教育の第一歩なのです。■参照コラム記事はこちら↓観劇に出かける親子は驚異的に少ない。メリットだらけの演劇鑑賞、しないなんてもったいない!
2018年11月25日近日こどもまなび☆ラボでスタートする連載『ジュニアのためのスポーツごはん』。この連載では、スポーツを頑張る子どもたちを支える親御さんに向けて、シチュエーション別のおすすめメニューをご紹介します。さらに、栄養面でのワンポイントアドバイスをもとに、成長期における食事面でのサポートの重要性をわかりやすく説明していきます。お楽しみに!連載に先立ち、すでに刊行されている書籍『かんたん! おいしい!ジュニアのためのスポーツごはん栄養満点パワーチャージレシピ』(金の星社刊、以降『ジュニアのためのスポーツごはん』)で監修を担当されたお一人である株式会社明治広報部の管理栄養士/公認スポーツ栄養士・高梨麗さんにお話をうかがってきました。この本を作ることになった経緯や制作の裏話、また明治が考える食育とは?盛りだくさんの内容でお届けします!スポーツを頑張る子どもと食事づくりを頑張る親御さんのために子どもが成長するにつれて、スポーツの習い事も本格的になっていきます。幼いころは遊びの延長のような気持ちでスポーツを楽しんでいた子どもたちも、次第に「もっとうまくなりたい!」「パフォーマンスのレベルを上げたい!」と、ライバルや自分自身に打ち勝ちたいという思いが高まっていきます。その姿を見て、親として全力でサポートしてあげたくなるのは当然のことですよね。スポーツを頑張る成長期の子どもたちにとって、親ができるサポートのひとつは栄養バランスが整った食事づくりです。この『ジュニアのためのスポーツごはん』で紹介されているメニューは、どれも栄養満点でおいしそう!それになんといっても簡単!毎日の食事づくりにお悩みの保護者の方が参考にしたくなるメニューばかりです。はじめに、この本ができたきっかけを高梨さんに聞いてみましょう。「出版元の金の星社さんから、「スポーツをしている子どもをサポートする親御さんのために、栄養満点で簡単にできるレシピを本にしたい」というお声がけをいただきました。さまざまな競技のアスリートの栄養サポート活動や、小・中学生への出前授業など、食育活動を広く実施している明治だからこそ、お伝えできることがあると思いご協力させていただきました」この“簡単にできる”というのは非常に重要ですよね(笑)。毎日の食事づくりが負担になってしまわないためにも、手に入りにくい材料や複雑な行程はできるだけ避けたいものです。「できるだけ馴染みのある食材を使い、工程を簡単に、しかも美味しく仕上がるようなレシピであることを心がけています。基本的な考え方は、毎食、①主食、②主菜、③副菜、④果物、⑤牛乳・乳製品、この5つを揃えること。そうすることで、成長やスポーツに必要な栄養素を満遍なくとることができます。加えて、色鮮やかになることも心がけました。色がきれいということは、たくさんの食材を使っているということです。使用している食材が多いとさまざまな栄養が集まって、「色がきれい」=「たくさんの栄養が含まれている」ということにつながります」情報があふれるこの時代、健康や栄養についての知識を簡単に得られるようになった反面、難しく考えすぎて不安になる親御さんも多いように見受けられますね。「実際に保護者の方からお話をうかがうと、みなさん、栄養のことをよく考え、お子さんの食事を作られていると感じます。ときには、頑張りすぎて疲れてしまっているというお話も聞きます。そういうときはもう少し肩の力を抜いて考えても良いのではないかとお伝えします。食事づくりというのは毎日のことですので、難しく、複雑に考えるとつくる側はもちろん、食べる側もそのプレッシャーを感じ取って負担になってしまうことも……。ですので、献立を考えるときに「①〜⑤をとりあえず揃えよう」、「色がいっぱいあったらいいな」と考えると、自然に使う食材も増えて、結果栄養満点に近づいていきます。この本はそんな考え方がベースになっていますので、本を手に取っていただいた方々から、「参考になる」との声をいただきました」子どもの健康や成長を誰よりも心配しているからこそ、親御さんたちは手を抜けずに悩んでしまうものです。だからこそ、まずは気持ちをラクにして、食事づくりを負担に感じないようにするべきですね。「たとえば外食をしたとしても「①〜⑤のうち足りないものがあったかな」と考えて、おやつでその番号を補ったり次の食事で多めに取り入れたりと、家に帰ってから不足した番号をプラスして栄養バランスをとることができます。1食単位で考えることはありません。1日単位、もしくは3日単位でもいいくらい。そのなかでうまくバランスを保つ意識をして、自分で何ができるかを考えることが大事です」スポーツ栄養学のエビデンスをバックボーンにした解説・コラムたくさんの食材を使った色鮮やかなメニューが印象的な『ジュニアのためのスポーツごはん』ですが、他にも気をつけた点などはありますか?「子どもたちの好き嫌いについてリサーチをしました。どういう食材が苦手か、その食材を好きなメニューの中に入れられないか?といったことなどを考え相談しました。また、成長期に必要なカルシウムを多く含む食材を取り入れることも心がけました。牛乳やチーズ、ヨーグルトを使ったメニューも充実しています。以前からみなさまに情報提供させていただいていたメニューを本の中に組み込んだり、現場で選手に提供して好評だったメニューを入れたりもしています。また、“冷凍食品でもOK”“めんつゆを代用してもOK”と、気軽に挑戦できるようなご提案をさせていただいています。市販のお惣菜をプラスするレシピもあります。「できるだけ簡単にしたい」という方もいれば、「やっぱりそこはこだわりたい」という方もいるので、大さじ3杯といった細かい表記をしているものもあります。どちらでも、ご自分に合った方法でレシピを活用していただければと思います」時間があれば手間をかけたい、でもちゃちゃっとつくりたいときもある……そんな親御さんにとってもありがたいですね。またこの本では、メニューに添えてある専門家ならではの解説がとても勉強になります。知っているのと知らないのでは大違い、スーパーで食材を選ぶときにも覚えておいて損はありません。「成長期の発育・発達の面とスポーツ栄養学のエビデンスをバックボーンにして、解説やコラムを書かせていただきています。難しい専門用語ではなく、一般の方にもわかりやすい表現で解説することを心がけました」たとえば試合前のメニューについて、2種類の炭水化物を取り入れたり野菜は少なめでよかったりと、一般的にはあまり知られていない「スポーツ栄養学の常識」が盛り込まれていて新鮮でした。成長期を過ぎたアスリートの方も、このような食事を取り入れているのでしょうか?「そうですね、たとえばJリーグの選手も同様に『試合前食』では炭水化物多めの食事を摂ります。試合の前日の夜から始まり、試合スタートに一番近い食事(お昼にキックオフだったら朝ごはん)にはうどん、もち、パスタ、カステラ、果物などを食べます。これはどの競技でも基本的には同じです。一般的なご家庭でも同じように考えることができます。たとえば明日、小学生が運動会で、中学生のお兄ちゃんは部活の試合があるとします。翌日のパフォーマンスのためにも、前の晩から兄弟ともに炭水化物を多めのメニューを心がけるといいでしょう」プロのアスリートをサポートする明治だからこそ伝えられること野球やサッカー、水泳など、競技によって鍛えたい能力は異なりますよね。持久力、瞬発力、足の筋力、腕の筋力……。意識して取り入れるべき栄養素にもそれぞれ違いがあるのでしょうか?「これは「競技によって」というよりも、「目的に合わせて異なる場合がある」という回答が適していると思います。まず大前提として、どんなスポーツ、どの状況でも、栄養バランスのとれた食事を3食、場合によっては補食をつける、という基本は忘れずに。成長期のお子さんはそれを継続することが大切です。人間は生まれてから2回、急速に発育・発達する時期『発育急進期』があります。第一発育急進期は乳児期・幼児期に、第二発育急進期小学校高学年から中学生くらいまでの期間なのですが、それが終わっていよいよ本格的に体づくりをする段階になり、「筋力を増やしたい」「減量したい」といった目的に応じて栄養素を強化したり減らしたりしていく、という方法をとっていきます。そのため、小学生のうちに「サッカーをやっているから」「野球をやっているから」という理由で強化するべき栄養素はとくにありません。ただし、成長期は骨が一番発育する時期ですので、骨の材料であるたんぱく質とカルシウムは不足しないように気をつけましょう」近年、若いスポーツ選手たちがめざましい躍進を遂げています。科学的な根拠に基づいたトレーニング方法が話題になることも多く、昔に比べて情報や知識が豊富であることがパフォーマンス向上に結びついていますよね。食事面においても、スポーツ栄養学に基づいた食事が何らかの影響を与えているという実感はありますか?「難しいご質問ですね、○○を食べたからといって、シュートがバンバン決まるわけではありませんので。ただ、栄養や食事をトレーニングに見合ったものにすることによって、日々、体調が良い状態で質の高い練習を継続することができ、パフォーマンス向上につながります。日本代表として活躍するような選手のみなさんは、その重要性を理解して、各々、高い意識を持ち実践されています。スポーツ選手が目標を掲げて、そこに向かうための体づくりとして、食事の重要性に気づき、実践し、その取り組みを続けている様子を見ていると、スポーツ栄養学に基づいた食事を摂ることは大切だと感じます。逆に言うと、その意識がなければトップ選手としては残れない。当然ながらトレーニングはみなさん一生懸命されます。トレーニング以外の部分、食事や睡眠といった生活全般に対して、いかに気を遣うことができるか、その差は大きいと感じます」一生懸命スポーツに打ち込む子どもが「もっと強くなりたい!」「もっとうまくなりたい!」と思ったとき、親である私たちは、技術的なことを教えられなくても食事面で大きなサポートができますね。「目標ができ、栄養バランスを考えた食事にしていこうと考えたときに、大切なことは正確な知識をもっているかどうかということです。今はSNSなどの普及で、「この栄養素は○○に効く」などたくさんの栄養・食事にまつわる情報を耳にすることが多いと思います。それが果たして正しい情報なのか判断できないまま取り入れたり、悩んだりすることも出てくるかと思います。そんなときに改めて思い出していただきたいことは、あるひとつの栄養成分だけで、何か効果が出るのではないということです。食事から摂る5大栄養素を日常的に取り入れて、バランスの良い食事①主食、②主菜、③副菜、④果物、⑤牛乳・乳製品を毎食揃えることを心がける。この知識を実践する習慣こそが、元気にスポーツを続けていく、ひいては目標達成のために重要なことなのです」***インタビュー前編では本の制作秘話やスポーツ栄養について詳しくお聞きしました。後編は多くの親御さんがお悩みの「朝食」についてです。子どもが朝食を食べない、朝起きられない……そんなお悩みにズバッとお答えいただきます!
2018年11月25日「本選びのプロ」がとっておきの情報を教えてくれる連載『まなびの本棚』第2回です。長かった夏も終わり、すっかり秋も深まってきました。食欲の秋、スポーツの秋、そしてなんといっても読書の秋!みなさんはどんな本を読んでいますか?読書欲が高まるこの時期に、ぜひたくさんの本を読みたいですね。この連載では、日販図書館選書センターで選ばれた本のランキング、そして選書のプロ・コンシェルジュによるコラムをご紹介します。きっと子どもの本選びのお役に立つはずです。選書センターについて、詳しくはこちらをご覧ください→図書館司書や教育関係者が足繁く通う『日販図書館選書センター』って知ってる?今月の人気図書ランキング1位ギネス世界記録2019クレイグ・グレンディ角川アスキー総合研2位鳥獣戯画を読みとく五味文彦 監修岩崎書店3位虫のしわざ探偵団新開孝少年写真新聞社4位鉱物・宝石のひみつ松原聰岩崎書店5位車いすの図鑑高橋儀平金の星社(※このランキングは2018年10月に集計したものです)2位は先月に続き『鳥獣戯画を読みとく』がランクイン。「日本最古の漫画」とも称される鳥獣戯画は、知れば知るほど奥深く、不思議な絵巻です。3位の『虫のしわざ探偵団』は、自然の中で見かける変なモノ=「虫のしわざ」の謎を解き明かすユニークな設定を、たっぷりの写真とわかりやすい解説で紹介しています。コンシェルコラム"本選びのプロ"選書センターコンシェルジュのおすすめの本ひみつの計画の果てにある恐怖子どもの心に刻まれる平和の意味今回は選書センターの常設フェア「YA」の棚から、2018年上半期ランキング絵本部門第10位に選ばれた注目の翻訳絵本をご紹介します。砂漠の小さな町の学校が閉鎖され、跡地に建てられた研究所。アメリカ政府によって、優秀な科学者たちが秘密の発明を完成させるために集められます。タイトルとキレイな絵から、ワクワクするようなストーリーが想像できますが、読み進めるうちに、何やら不穏な空気に胸がザワザワ。そして、最後に訪れる恐怖。絵も文章もない、真っ黒な見開きページで物語は終わります。この“計画”が、この“秘密”が何だったのか明らかになったとき、みなさんは何を思うのでしょうか。大人も子どもも、著者・訳者のあとがきまで読んで考えてもらいたい一冊です。『この計画はひみつです』ジョナ・ウィンター 文/ジャネット・ウィンター 絵さくま ゆみこ 訳鈴木出版
2018年11月24日ソニーが運営する科学教育発展のための助成財団「ソニー教育財団」。小中学校教員たちの支援が主な活動ですが、日本が世界に誇る大企業が運営するだけに国際的な活動もおこなっています。その狙いは、先生たちに狭い教育現場から海外にも目を向けてもらうこと、そして、日本では遅れていると指摘される「STEM教育」を取り入れること。公益財団法人ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さんにそれらの活動内容を語ってもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)日豪の教員同士の交流により理科の授業の質を上げるグローバル化の波が押し寄せる時代ではありますが、学校現場という狭い世界で働く先生たちが海外に目を向けるということはなかなかできるものではありません。そこで、わたしたちは国際交流にも積極的に取り組んでいます。国際的な活動にはさまざまなものがありますが、毎年おこなっているのがオーストラリアの先生たちとの交流です。オーストラリアには、ASTA(Australia Science Techers Association)という、科学の先生たちの全国的な研究組織が存在します。わたしたちが支援しているのは、そのASTAの先生と日本の先生による相互訪問。日本の先生は、ソニー教育財団が支援する熱心な理科教員の集まりである「ソニー科学教育研究会」(SSTA)(インタビュー第2回参照)に所属する先生たちです。日本の夏休み期間中に、日本の先生たちをオーストラリアにお連れして、オーストラリアの小中学校で、実際に日本でおこなっている実験などの理科の授業をしてもらう。また、南半球のオーストラリアが春休みとなる10月には、逆にオーストラリアの先生たちに日本に来てもらって、日本の小中学校で授業をしてもらいます。日本とオーストラリア、それぞれの学習方針や授業内容のちがい、子どもたちのリアクションを目の当たりにし、日豪の先生同士でのディスカッションをとおして、互いの授業の質をさらに高めてほしいと考えています。なかには、これまで一度も海外に行ったことがなく、「天地がひっくり返るほど人生観が変わった」なんて感想を言ってくれる日本の先生もいますよ。オーストラリアで受けた衝撃を、ぜひ今後の授業に生かしてほしい。画像提供:ソニー教育財団(本記事冒頭画像も同財団提供「オーストラリアとの交流」)これからの「もっと面白い時代」に生きる子どもたちを大切に育てるこの交流活動の相手国にオーストラリアを選んだことには、先生たちの長期休暇が重ならない南半球の国だからということの他にも理由があります。それは、オーストラリアが「STEM教育」に非常に力を入れている国だからです。STEMは、「Science, Technology, Engineering and Mathematics」の略。つまり、STEM教育とは、「科学、技術、工学、数学の教育分野を総称するもの」です。もともとは、2000年代にアメリカではじまった教育モデルです。これまでのオーストラリアはどういう国だったかというと、完全な資源立国でした。たとえば、石炭の輸出量は世界でも群を抜いています。そして、その主な輸出先の中国が不景気になると、オーストラリアの経済にも大きな悪影響を及ぼすとも言われるのです。そういう意味では、経済基盤が不安定な国でもある。そこで、オーストラリアは国を挙げてSTEM教育に取り組み、資源立国から工業立国、あるいは科学立国、IT立国に変わろうとしているのです。じつは、日本の夏休み中に日本の先生をオーストラリアにお連れするときは、オーストラリアの「ナショナル・サイエンス・ウィーク」というものにあたります。この1週間、オーストラリアでは国内各地で科学をもっと身近に感じられるような約1000ものイベントが開催されます。イベント会場ではなく、学校でも化学記号がデザインされたTシャツを先生たちが着ているなど、なかなか面白いんですよ。日本では「理科離れ」が問題視されて久しいですよね。文科省による平成16年版「科学技術白書」で、一般市民の科学リテラシーが他の先進諸国と比較して極めて低いことも指摘されています。それには、理科・科学というものがどこかとっつきにくい、身近なものではないという思い込みも、要因のひとつとなっているのかもしれません。理科・科学というものは、この世界のあらゆるものを研究対象とします。本来はもっと身近なものであるはずなのです。その感覚を子どもたちに持たせることが必要なのではないでしょうか。先に述べたオーストラリアのナショナル・サイエンス・ウィークにおこなわれるイベントのなかには、天文写真のコンテストや、ガラスアートと科学を関連づけたワークショップなど、アートの要素を取り入れ、科学をより身近に感じさせようという工夫が見られます。そういう意味では、ただのSTEM教育ではなく、アート(Art)を盛り込んだ「STEAM教育」こそ、これからの日本で求められるものなのかもしれません。たとえば、先進的なサービスを提供するウェブページを作成するにも、デザインというアートの要素は絶対に欠かせないもの。STEMとアートは切っても切れないものなのです。それに、これはあくまでわたしの“個人的な感覚”ですが、STEMからは「スチール(鋼)」に近い硬い印象を受けます。でも、STEAM(スチーム)だとどうでしょう?そのまま「蒸気」のような温かい印象を受けませんか?それこそ、アートが加わることでSTEMがもっと身近になる気がするのです。ソニーは、2018年の7月に「ソニーSTEAMスタジオ2018」というイベントを開催しました。「教育をエンタテインメントにすれば、未来はずっと面白くなる」というメッセージのもと、ソニーのグループ会社が開発したプログラミング教材(インタビュー第2回参照)、多くの方にもおなじみであろう犬型エンタテインメントロボット「aibo(アイボ)」などに子どもたちに触れてもらうというものです。おかげさまで、このイベントに参加した子どもたちと保護者の方からは多くの反響の声が寄せられました。AIやロボット工学の発達により、これから間違いなくもっともっと面白い時代が訪れるでしょう。その時代に生き、受け皿となる子どもたちをもっと大切に育てていかなければなりません。そこに、わたしたちが地道に続けている活動が少しでも役立てればうれしいですね。■ ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さん インタビュー一覧第1回:ソニーが“子ども投資”を59年間も続ける深い理由第2回:世界のソニーが手がける「プログラミング教育サポート」第3回:卒業生400人、みんな理系じゃないから面白い。ソニーの凄すぎる自然教室の全貌第4回:日本人教員がビックリするのも納得。豪州が取り組むSTEAM(スチーム)教育の凄さ【プロフィール】高野瀬一晃(たかのせ・かずあき)1954年1月18日生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業。1990年、ソニー株式会社入社。資材調達のエキスパートとして1993年からドイツ、ハンガリー、フランス、スウェーデンなどヨーロッパ各国に赴任。2005年に本社へ復帰し、DI事業本部、テレビ事業本部の資材部門部門長、調達本部本部長、調達担当役員(SVP)などを歴任し、2015年に定年退職。その後、公益財団法人ソニー教育財団理事長を務める。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年11月24日誰かに何かを提案する。その提案を受け入れる。これは、年齢を問わず、日々繰り返し行われている行為です。例えば、幼児が友達を誘って、こう提案することがありますね。ねえ、かくれんぼしよう!大人は、職場でこんな提案をすることもあるかもしれません。そのアイディアを、もう一度考え直してみたらどうでしょうか?この2つの例を比べてみましょう。前者は「一緒に何かをしようという提案」です。英語ではこう表現できます。Let’s play hide-and-seek.後者は「相手に何かアクションを促す提案」ですね。英語はこう言えるでしょう。It might be better to reconsider that idea.このように、一口に提案といっても、様々な種類があるのです。提案の仕方には、いくつもの定型表現があります。代表的なものを覚えておくだけで、いろいろな状況や場面で使うことができて、英語の表現の幅が広がります。前回、慣用表現はネットワーク化して、関連づけて覚えるといいというお話をしました。今回は「提案」の慣用表現ネットワークを、タイプ別にご紹介します。1-1. 相手に提案を求める「どうしたらいい?」家族旅行の行き先、勉強の仕方、家事の進め方……。家庭内では、様々なことについてお子さんや親御さんの提案を求めますね。~についてアドバイスくれない?Can you give me some advice about …?~するのに何か提案はある?How do you suggest that …?私~しようと思うんだけど、それってどう思う?What would you say if I …?子どもたち同士で遊ぶときにも、双方からの提案は欠かせません。知っておくと便利なフレーズです。1-2. 提案に対して感謝・賛同・感想を言う「ありがとう」こちらの問いかけに応え、相手が良い提案をしてくれたときは、感謝や賛同の気持ちを表したり、感想を伝えたりする必要があります。いい提案をしてくれてありがとう。Thank you for your offer.I appreciate your suggestion.大賛成!I’m all for it!そうするね。I’ll take it.わくわくしちゃうね!How exciting!きちんとお礼を述べた後に、感想を伝えたら、さらに丁寧になりますね。2-1. 相手に提案する「したらどう?」今度は、相手に何かを提案するシーンを想像してみてください。親子の会話では、子どもに「どうしよう?」と聞かれ、親が「こうしよう」と提案する場面が頻繁に見られますね。~したらどう?Why don’t you …?How about …?私があなただったら、~するでしょうね。If I were you, I’d ….ひょっとしたら~するのもいいかもね。It might be better to ….相手に「こうしたら?」と提案するときは、自分が含まれないので、相手中心の表現となります。2-2. 相手からの提案を受け入れる「やってみるね」相手からの提案を聞き入れるときは、なんて言ったらいいでしょうか。やってみるね。I’ll try.それっていいね。I’ll buy that idea.異論なし。I have no objection.「(あなたが)こうしたら?」と “You” で提案を受けているので、応答するときの主語は “I”(私)になるのがポイントです。3-1. 自分も含めて提案する「一緒にしようよ」冒頭で挙げた、幼児が友だちを誘うときの「ねえ、かくれんぼしよう」は、一緒に何かをしようという提案です。相手だけでなく、自分も巻き込んで提案を切り出すときは、こんな表現が便利です。~しましょう。Let’s ….~しませんか?Why don’t we …?一緒に~するのはどうかな?Perhaps we should ….3つ目のフレーズは、“Perhaps”(たぶん)のおかげで、押しつけがましく感じられず、使いやすい表現です。3-2. 「一緒にしよう」の提案を「ぜひ!」と受け入れる「一緒に~しない?」という提案を受けて、それに応じるときは、なんて言えばいいでしょうか。ぜひ!Sure!わるくないね!Why not?いい考えだね!That’s a good idea!もちろん!Of course!これらのフレーズは短く、丸ごと反復するだけなので、幼いお子さんでもマスターしやすいはずです。4. 提案を断る「そうできたらいいんだけど……」提案を断るときは、どう表現すればいいでしょうか。日本語では、このように語尾を濁す言い方がありますね。ありがたいんですけど、ちょっと……。一方、英語では明確に “No” と言い、申し訳ない気持ちや感謝の意を併せて伝えることで、表現を柔らかくします。いいえ、ごめんなさい。No, sorry.いいえ、でもありがとう。No, but thank you very much.そうできればいいんですが。I wish I could.3つ目にご紹介したフレーズを使えば、直接 “No” と言わずに断ることもできます。5. 曖昧な返事をする「場合によりけり」かといって、英語ではいつも白黒をつけなければならないかといえば、そうでもありません。曖昧な返事をするときに便利な慣用表現をまとめてみましょう。イエスともノーとも言いがたい。Yes and no.まあ、なんとも。More or less.場合によりけり。It depends.君次第さ。It’s up to you.うーん……。Well, let me see ….ちょっと考えさせて。Let me think about it.このようなフレーズを知っておくだけで、様々な場面での表現の幅が広がるでしょう。英語をマスターするには、英語の日常化が大切です。親子で一緒に、提案の慣用表現を練習してみてはいかがでしょうか。
2018年11月23日日本が誇る世界的大企業・ソニーが運営する科学教育発展のための助成財団「ソニー教育財団」。主な活動は小中学校教員たちの支援ですが、なかにはソニー教育財団が直接的に子どもに学習の場を提供するものも存在します。それらはどんなことを目指したものなのでしょうか。公益財団法人ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さんにその目的を語ってもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)身近なものですごいものをつくる喜びを味わう「ものづくり教室」ソニー教育財団では、「ソニーの教育助成論文」や先生たちの研修会、プログラミング教材の貸し出しなど、さまざまなかたちで小中学校の先生たちの支援をしています(インタビュー第1回、第2回参照)。そういった間接的なサポートのほか、わたしたちが直接的に子どもたちに学習の場を提供する活動もおこなっています。そのひとつが、「ソニーものづくり教室」という工作教室。子どもたちが自分の手でものをつくる楽しさを味わい、科学への興味、関心を深めて自ら学ぶ意欲を持つことを目指しています。開催場所は全国のソニーグループ関連の施設や近隣の学校。年間に約40回開催し、計1500人ほどの子どもたちが参加してくれています。2018年は、これまでに青森、山形、宮城、千葉、長野、静岡、京都、山口、長崎、大分、熊本などで開催してきました。講師は、ソニーの技術者や「ソニー科学教育研究会」(SSTA)の先生です。なにをつくるかというお題を考えてくれるのも彼らです。お題は、たとえばタッパーウェアのようなブラスチックケースを使ったICレコーダーや、ペットボトルを使ったヘッドホンなど。100円ショップですべて手に入るような身近なものでも、その仕組みを知り、工夫次第ですごいものがつくれる。それこそ、科学の醍醐味ではないでしょうか。画像提供:ソニー教育財団「自然漬け」のなかで知る自分のなにかが変わる感覚また、「科学の泉—子ども夢教室」もわたしたちが直接的に子どもたちに学習の場を提供している活動のひとつ。これは、2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生を塾長に、小学5年から中学2年までの28人の塾生と7人の現役教員でもある指導員が寝食をともにしながら「自然に学ぶ」サマーキャンプです。スマホやゲーム機の持ち込みはもちろんNG。5泊6日の間、子どもたちにはそれこそ「自然漬け」になってもらいます。今年は、新潟の当間高原でおこないました。白川先生は学生時代に山岳部に所属されていたこともあり、82歳になったいまも背筋はしゃきっと伸びているし、山歩きが大好き。そして、子どもたちのことも大好きなんです。メインの活動は、大自然のなかでさまざまな生きものに触れ、学年の異なる4人ひと組のグループで研究報告をするというものです。テーマは与えられるのではなく、子どもたち自身で決めて探求します。2018年のものを例に挙げると、カエルやカマキリ、トンボ、カナヘビ、メダカなどの生物について、運動能力、生息環境、食物としているもの、解剖による臓器の位置といったさまざまな視点からそれぞれの特徴をとらえ、研究成果を発表してくれました。画像提供:ソニー教育財団(本記事冒頭画像も同財団提供「科学の泉」)ただ、白川先生は、この活動によって子どもたちに自然科学の知識を得てもらおうとしているわけではありません。そうではなく、5泊6日の間に「自分のなかになにかを発見」してほしいと願っています。虫を触ったことがなかった子どもが触れるようになった、そんなことでもいいのです。周囲の自然や初対面の人といった「環境」のちがいによって自分のなにかが変わる感覚——それを知ることが、子どもの成長に大きく関わるのですからね。この活動は、2018年で14年目になりました。教室の卒業生は約400人になり、同窓会と言いますか、年に1回、ホームカミングデーのようなイベントもおこなっています。初期の卒業生はとっくに社会人。本当にいろいろな人間がいて、これが面白いんですよ。「科学の泉」の卒業生ですから、理系の道に進んだ人間が多いかというと、4割程度は理系ではありません。なかにはバレリーナになった、東大を出てお笑い芸人になったという卒業生もいます。そして、白川先生は「これがいいんだ」とおっしゃる。「みんな理系に進む必要はない」と。科学とひと言で言っても社会科学、人文科学といろいろなものがあります。自然科学だけが科学ではありません。それは人間も同じこと。「この世にはいろいろな人がいるからいい、それが望むところだ」。これが白川先生のお考えなのです。■ ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さん インタビュー一覧第1回:ソニーが“子ども投資”を59年間も続ける深い理由第2回:世界のソニーが手がける「プログラミング教育サポート」第3回:卒業生400人、みんな理系じゃないから面白い。ソニーの凄すぎる自然教室の全貌第4回:日本人教員がビックリするのも納得。豪州が取り組むSTEAM(スチーム)教育の凄さ(※近日公開)【プロフィール】高野瀬一晃(たかのせ・かずあき)1954年1月18日生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業。1990年、ソニー株式会社入社。資材調達のエキスパートとして1993年からドイツ、ハンガリー、フランス、スウェーデンなどヨーロッパ各国に赴任。2005年に本社へ復帰し、DI事業本部、テレビ事業本部の資材部門部門長、調達本部本部長、調達担当役員(SVP)などを歴任し、2015年に定年退職。その後、公益財団法人ソニー教育財団理事長を務める。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年11月22日「もしかして、うちの子本番に弱いタイプかも……」。そんなふうに心配しているお父さんやお母さん、ご安心を。以下に紹介する内容をご家庭で実践すれば、きっと “本番に強い子” に近づけるはずです。本番で力を発揮できない理由は……運動会、発表会、学校のテスト、スポーツの試合。子どもが人前で実力を発揮する場面は、たくさんありますね。親御さんにとっては、子どもの成長が見られる楽しみなイベントだと思います。ところが、普段の練習ではできているのに本番ではなぜか失敗、他の子は堂々としているのにうちの子は恥ずかしそうにモジモジ……なんてこと、ありませんか。親としては、ちょっとがっかりしてしまう瞬間ですよね。本番に弱い、つまり、子どもが本番で本来の力を発揮できない理由の大半は「緊張」によるものです。元サッカー選手であり、プロゴルファーの横峯さくらさんをはじめ、多くのプロアスリートやチームの専属メンタルトレーナーを務めてきた森川陽太郎氏は、著書の中でこう書いています。「本番に強いか弱いかは、緊張するかしないかの違いではなくて「緊張していても実力が発揮できるか、できないか」の違いなのです。」(引用元:森川陽太郎(2016),『本番に強い子の育て方』,ディスカバー・トゥエンティワン)ご存じの通り、「緊張」は自然に湧きあがる感情です。緊張したくない、緊張しないように、と思ったところで、自分ではどうすることもできないのです。ではいったい、緊張していても実力が発揮できるようになるには?そして、この「緊張」と子どもはどうやって向き合っていけばいいのでしょうか。その答えとなる「効果的な親の言葉かけ」、「本番に強い子になるための方法」をご紹介していきましょう。OKな言葉かけ、NGな言葉かけ緊張しているお子さんに対し、どんな言葉をかけていますか?「落ち着いて」「リラックスしよう」「大丈夫!全然緊張なんかしていないよ」つい、こんなワードで励ましていないでしょうか。でも、森川氏によれば、実はこれらはすべてNGなのだそう。「なぜなら、これらは感情を押し殺せと言っているのに等しい言葉だからです。(中略)「緊張」を感じているなら、「自分は緊張している」ということを、ありのままに受け入れることです。それが本番で実力を発揮するための大事な最初のステップなのです。」(引用元:森川陽太郎(2016),『本番に強い子の育て方』,ディスカバー・トゥエンティワン)では、次のような言葉かけはどうでしょうか。「おばあちゃんも見に来ているんだから頑張って!」「あなたなら絶対にできるはず」実はこれもNGワードです。東京成徳大学こども学部で発達心理学について教える富山尚子教授によれば、こういったプレッシャーを与えてしまうような言葉は、子どもをさらに緊張させてしまうことがあるとのこと。ではいったい、どんな言葉かけをすればよいのでしょう。富山教授は、「どれくらいできそう?」と声をかけるのが効果的だと言います。本人が「これくらいはできそう」と考える手助けをしてあげると緊張が和らぐのだそうです。歌を歌う前に緊張している子どもとの対話を例にしましょう。【OKな言葉かけ】親:「どこまで歌えそう?」子:「全部ダメかも……」親:「そっか、でもサビの部分は歌えるかな?」子:「サビは大丈夫だと思う」親:「じゃあ、そこを頑張ろう!」こんなふうに、子どもは自分ができそうなところを再確認すると比較的落ち着くケースが多いのだとか。もし、「やっぱり全部無理!」と子どもが答えた場合は、次のようなイメージです。親:「じゃあ今日は、うまく歌えなくてもいいか。みんなと一緒にステージに出るのはどう?」子:「うん、それならできるよ!」こんなふうに、小さなことでも子どもができそうなことを何か見つけてあげてください。そして、終わったあとは、本番でうまくできていたところを見つけて、それをきちんと伝えてあげることが大切です。あまりうまくいかなかったときも、「〇〇ちゃんが舞台に上がっているだけでママは嬉しかったよ」と褒めてあげましょう。そうすれば、子どもは「自分なりにうまくできた!」と思え、「次は、こういうふうにやればきっとうまくいく」と考えられるようになります。子ども自身が「うまくいかなかった」と思う経験が多く重なると、「次もうまくいかないのでは」とさらに緊張してしまう場合があるので、気をつけてあげたいですね。ピアノの発表会、サッカーや野球の試合前、苦手な科目のテストを受ける際にも使えそうな言葉かけです。ぜひ実践してみましょう。本番に強くなる方法、「OKライン」とは?森川氏は、「自己肯定感」が本番で力を発揮するための大きなポイントになると言います。例えば、「幼稚園の発表会では緊張したけど、泣かずに舞台にあがれた」「小学校の入学式では緊張したけど、自分から先生や友だちに挨拶ができた」というようなお子さんの経験、ありませんか。ここに意識を向けるのです。“緊張したけどできた” という成功体験を積み重ね、自己肯定感を育てることが、“本番に強い子” につながっていくと言います。森川氏が提唱している方法のひとつ、「OKライン」をご紹介しましょう。日常生活の中でできる簡単なトレーニングで、子どもだけではなく、大人でも効果のある方法ですよ。まず、自分が緊張してしまう場面やネガティブな感情になってしまう場面を想定します。そんな状態でも自分ができそうな行動を考えておき、それを実践できたら自分にOKを出し、“「できた」感” を味わいます。例えば、お子さんが「授業で先生に急に指されたときに、慌ててしまい発言できなかった」としましょう。その場合、「次は、バタバタと慌てて立つのではなく、ゆっくり立ってから先生の質問に答えよう」というように自分ができそうな行動(=OKライン)を決めておくのです。それができたら、次は「より大きな声で発言しよう」というようにOKラインをもう一段階上のレベルにあげていきます。「普段あまり話しかけられない子に話しかけられて、うまく話せなかった」なら、「次に話しかけられたら、目を見て挨拶をする」、それができたら「今度は自分から挨拶する」というように。ポイントは、OKラインをいきなり高いところに設定しすぎないこと。自分ができそうなことを設定して、それをクリアすることによって自信が積み重なっていくのです。まずは、緊張してしまうことや苦手なことを紙に書きだし、「これならできる」という行動を親子で一緒に考えてみるのがいいかもしれません。決して焦らずに、できることをひとつひとつクリアしていくようにしましょう。***親のちょっとした言葉かけを通して、日々少しずつ自己肯定感を高めることで、いつのまにか「本番に強い子」に。それは、大人になったときにも役立つ能力ではないでしょうか。ぜひ実践してみてください。文/鈴木里映(参考)森川陽太郎(2016),『本番に強い子の育て方』,ディスカバー・トゥエンティワン)サカイク|「落ち着いて!」「焦らない!」はNGワード。本番に弱い子どもへの正しい声がけとは?ベネッセ教育情報サイト|上手に子どもを褒めて、自信をつけてあげよう!
2018年11月21日「デカルコマニー」って何でしょう?その名を聞いたことはなくても、きっと皆さん知っているはず。幼稚園や保育園、小学校でやりませんでしたか?画用紙に絵の具をポンポンと置き、紙を半分に折って開くと、左右対称の美しい模様が現れる……あれがデカルコマニーなのです。簡単にきれいな模様が作れ、子どもが喜ぶデカルコマニー。もちろん自宅でもできますよ。今回はデカルコマニーの発祥や、作品の作り方をご紹介します。芸術技法としてのデカルコマニーの意味デカルコマニー(décalcomanie)は、フランス語の動詞「décalguer(転写する)」に由来しています。プラモデルの作成や小物のデコレーションなどに使われる「転写シール」をご存知でしょうか?シールを貼って、こすったり水でぬらしたりして模様を写すと、最初からそこに印刷されていたように見える、あのシールです。これは「デカール」とも呼ばれることがありますが、デカルコマニーと同じ語源というわけです。デカルコマニーを芸術表現として確立したのは、シュルレアリスムの画家オスカル・ドミンゲス(1906~1957)です。1920年代に発生したシュルレアリスムは、フロイトの精神分析などから影響を受けた、無意識や偶然の要素を重視する芸術運動。キャンパス上に絵の具を置き、紙を押しつけたりすることによって生まれるふしぎな模様は、まさに偶然の産物です。シュルレアリスムの代表的な画家であるマックス・エルンスト(1891~1976)やサルバドール・ダリ(1904~1989)も、デカルコマニーを用いた作品を発表しました。デカルコマニーのねらいデカルコマニーは前衛芸術のなかで生まれたわけですね。では、なぜ幼児教育で盛んに行われているのでしょうか?近畿大学九州短期大学の研究紀要に掲載された論文「演習講義『デカルコマニー・デッサン』想像から創作へ」(2017年)によると、デカルコマニーは子どもの想像力を養ってくれるそう。予想できないわくわく感と、形態の分からない左右対称画の完成に驚き、何だろうと少ないボキャブラリー(語彙)で必死に探索を始める想像力、物を見つけ出す活動が幼児にとって、楽しんで自由に、思い思いに表現をして、想像力を膨らませる絵画遊び(創作)の基盤となりえるのである。(引用元:近畿大学学術情報リポジトリ|〈論文〉演習講義「デカルコマニー・デッサン」想像から創作へ)デカルコマニーを実践するにあたって、特別な技術や道具は不要。筆を持つ必要すらないので、指先の動きが発達していない幼児でも簡単に「作品」を生み出せるのです。文部科学省の定める「幼稚園教育要領」には、幼稚園修了までの達成が期待される「ねらい」のひとつとして「生活の中でイメージを豊かにし,様々な表現を楽しむ」ことが挙げられています。子どもの感性を育み、芸術表現を楽しんでもらうには、デカルコマニーはぴったりだといえるでしょう。デカルコマニーのやり方デカルコマニーの制作過程は単純明快です。【用意するもの】画用紙、絵の具(マニキュアでも!)【やり方】1.あらかじめ、紙を半分に折って開き、折り目をつけます。これによって、どの線を中心に左右対称となるのかわかりやすくなります。2.紙の上に、チューブから直接、絵の具を出します。パレット上に出して水で溶いてもかまいませんが、色が薄くなりすぎないようにしましょう。3.出した絵の具を、指や筆を使って好きなように伸ばしてみましょう。指も筆も使わず、絵の具を点々と出すだけでも面白い表現になります。4.絵の具が乾かないうちに、折り目に沿って紙を折りましょう。絵の具がきちんと転写されるよう、全体を丁寧にこすります。5.紙が破けないよう、ゆっくりと開きましょう。6.完成です。どんな模様になりましたか?それは何に見えますか?絵の具が乾いたら、色鉛筆や絵の具で描き足して、作品としてさらに発展させるのも素敵ですね。デカルコマニーでちょうちょを作ろう上で挙げた論文によると、高校1年生にデカルコマニーをやらせて「どんな形に見えましたか?」と尋ねたところ、「蝶々」という答えが「人の顔」と並んで最も多かったそう。たしかに、中心線の周りに鮮やかな絵の具が広がっている様子は、蝶の羽に似ていますね。デカルコマニーを利用すれば、きれいなちょうちょのオーナメントが簡単に作れますよ。さっそくやってみましょう!【用意するもの】画用紙、絵の具、ハサミ、カラフルな針金あるいはモール、セロハンテープ【やり方】1.紙を半分に折って開き、折り目をつけます。2.紙の上に絵の具を置いていきます。白い部分をあまり残さないようにすると、鮮やかな蝶になりますよ。3.紙を折って全体をこすり、ゆっくりと開きます。4.絵の具が乾いたら、再び紙を折り、ちょうちょの形に切り抜きます。5.触角を作りましょう。2本の針金(モール)をゆるやかに曲げ、ちょうちょにつけます。裏側からテープで貼るのがよいでしょう。6.完成です!たくさん作って壁に貼ると、目を奪われるほど華やかになります。デカルコマニーでこいのぼりを作ろうデカルコマニーを使えば、ちょうちょの羽だけでなく、魚のウロコもカラフルに表現することができます。魚にもいろいろありますが、四角形に近い「こいのぼり」が作りやすいかもしれません。いっしょにこいのぼりを作ってみましょう!【用意するもの】画用紙、絵の具、ハサミ、のり、黒のサインペン【やり方】1.完成形を想像しやすいそう、先に紙をこいのぼりの形に切ります。2.紙を半分に折って開き、折り目をつけます。ちょうちょは左右対称でしたが、こいのぼりは上下対称です。3.紙の上に絵の具を置いていきます。線よりも点で表現すると、よりウロコっぽく見えますよ。4.紙を折って全体をこすり、ゆっくりと開きます。5.目を作ってあげましょう!別の紙を丸く切り取り、中に黒目を描いて、のりで貼ります。6.完成です。1匹ではさみしいので、たくさん作って仲間を増やしてあげましょう!***簡単だけれど、子どもも大人も楽しめるデカルコマニー。難しく考えず、色が生み出す偶然を楽しんでくださいね。(参考)富山大学学術情報リポジトリ|造形教育におけるデカルコマニーの意義近畿大学学術情報リポジトリ|〈論文〉演習講義「デカルコマニー・デッサン」想像から創作へJ-STAGE|「見立て」によりイメージを媒介させた絵画的アプローチの妥当性を検証するための基礎的研究コトバンク|シュルレアリスムSotheby’s|Max Ernst OHNE TITELSotheby’s|Salvador Dalí ANATOMIES-SÉRIE文部科学省|第2章ねらい及び内容
2018年11月20日日本が誇る世界的大企業・ソニー。その巨大企業は、じつは科学教育発展のための助成財団を運営しています。その助成財団「ソニー教育財団」は1959年から大本となる活動を開始し、現在ではその活動の幅を大きく広げています。公立校の教員が抱える問題の解決のため、また、2020年から小学校ではじまるプログラミング教育必修化のサポートのため、ソニー教育財団がおこなっている活動について、理事長・高野瀬一晃さんにお話を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹(ESS)写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)大小さまざまな規模の研修で教員のネットワークづくりを支援わたしが理事長を務めるソニー教育財団が小中学校の先生の助成をはじめたのは、1959年から。理科の先生から理科教育論文を募り、優秀な論文を執筆した先生に助成金やソニー製品を贈呈するという「ソニー小学校理科教育振興資金」です(インタビュー第1回参照)。すると、その活動が新たな展開を生みました。1963年、優秀な論文を執筆して受賞した先生が所属する学校が「ソニー理科教育振興資金受賞校連盟」というものを組織し、先生同士でネットワークをつくって互いに切磋琢磨していこうという動きが起きたのです。そこで、その先生たちの研修などに必要な費用をソニーが提供することにしました。「ソニー理科教育振興資金受賞校連盟」は、「ソニー科学教育研究会」(SSTA)と名称を変え、理科教育に関心のある先生ならだれでも参加できる会として、現在も活動を続けています。会員の先生の数は、いまでは約2000人。みなさん、理科教育に本当に熱心な先生たちです。SSTAの会員の多くは公立校の先生。じつは、公立校の先生たちはひとつの問題を抱えています。異動があっても市町村内の別の学校に行くだけということがほとんど。市町村外に異動することがあっても、都道府県内の異動にとどまります。すると、先生たちは他の都道府県の先生とのネットワークをほとんど持つことができないのです。しかも、教員独特のメンタリティーなのか、なにか授業で問題が起きたとしても、同じ市町村内の先生にはアドバイスを求めにくいらしい。おそらくは、互いにコンペティターだと認識しているのでしょう。その問題を解決するため、わたしたちはSSTA会員の先生を対象とした3泊4日の全国特別研修会というものを開催しています。集まるのは全部で約100人の先生たち。そこで、たとえば北海道、青森、広島、福岡の先生がグループとなって授業の単元(学習活動の題材)開発をおこなってもらう。こうして、先生たちは「同じ釜の飯を食った」仲になる。全国に先生同士のネットワークができ、先生たちは互いにアドバイスを求めたり、アドバイスをしたりできるようになるわけです。また、全国特別研修会の他にも、全国を4つのブロックにわけておこなう「ブロック特別研修会」や都道府県単位の支部ごとの研修会も実施しています。これらにより、草の根運動ではないですが、学校現場の授業の質を上げることに貢献できていると自負しております。プログラミング教育のキモはプログラミング言語習得ではないこういった先生たちの研修のサポートの他に、ソニー教育財団では新たな試みをはじめています。わたしはもともとソニー株式会社では資材調達に携わってきました。ビジネスの現場に長く身を置いてきた立場からも、今後のソニー教育財団がどういうミッション、ビジョンを共有し、どこに向かって活動すべきかを考えています。ソニー創業者の井深大の考えも高く掲げながらも、未来志向が必要だと思うのです。その未来志向のなかではじめたのが、プログラミング教育のサポート。いま、日本のビジネスの現場にはソフトウェアエンジニアが圧倒的に不足しています。そのため、2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されるのですが、問題はそれを教える先生たちにそのスキルや指導経験がないということ。そういう先生たちを、なんとかサポートしなければなりません。たまたまではあるのですが、ソニーでは異なるグループ会社がそれぞれにプログラミング教材を開発しました。ひとつは「MESH(メッシュ)」というもの。これは、人感センサーや光センサーなど、さまざまなセンサーやスイッチ機能を持ったブロック形状の電子タグとアプリを組み合わせ、プログラミングすることでいろいろなアイデアをかたちにできるというものです。画像提供:ソニー教育財団もうひとつは、「KOOV®(クーブ)」。こちらは、子どもたちの大好きなカラフルなブロックと電子パーツで動物やロボットなどのかたちをつくり、そこにアプリからプログラムを転送することで、自分でつくった作品を動かすことができるというものです。(本記事冒頭画像もKOOV)画像提供:ソニー教育財団わたしたちは、これらをSSTAの先生たちに無償で貸し出し、プログラミング教育に役立ててもらっています。その授業はたとえばこんな内容です。教室にゴミが散らかっているという問題があるとしましょう。そこで、MESHをつかってみんながちゃんとゴミ箱にゴミを捨てるようにするための方法を子どもたちに考えてもらう。たとえば、ゴミ箱を開けると、ゴミ箱のなかの光センサーが反応して、あらかじめ録音していた「きちんとゴミを捨ててくれてありがとう」という音声が流れるようにするとか。MESHもKOOV®も直感的に使えるビジュアルプログラミングを採用しているので、プログラミングの専門的な知識がなくても問題ありません。重要なのは、「○○すれば△△が起きる」といった、プログラミングの基本的な考え方を身につけることです。プログラミング教育というとコンピューター言語を覚えるといったイメージをするかもしれませんが、その根本となる考え方、「論理的思考」を身につけることが、重要なプログラミング教育だと思うのです。■ ソニー教育財団理事長・高野瀬一晃さん インタビュー一覧第1回:ソニーが“子ども投資”を59年間も続ける深い理由第2回:世界のソニーが手がける「プログラミング教育サポート」第3回:卒業生400人、みんな理系じゃないから面白い。ソニーの凄すぎる自然教室の全貌(※近日公開)第4回:日本人教員がビックリするのも納得。豪州が取り組むSTEAM(スチーム)教育の凄さ(※近日公開)【プロフィール】高野瀬一晃(たかのせ・かずあき)1954年1月18日生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業。1990年、ソニー株式会社入社。資材調達のエキスパートとして1993年からドイツ、ハンガリー、フランス、スウェーデンなどヨーロッパ各国に赴任。2005年に本社へ復帰し、DI事業本部、テレビ事業本部の資材部門部門長、調達本部本部長、調達担当役員(SVP)などを歴任し、2015年に定年退職。その後、公益財団法人ソニー教育財団理事長を務める。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2018年11月20日