息子のサッカーの成長が停滞。以前はエースだったのに、今はがつがつボールに向かわず周りを見る姿勢に。積極性がないと思われているのか、レギュラーを外されることも。中間子で空気を読むのが上手な子ではあるけど、サッカーの技術を磨いてもメンタルが向いてないとレギュラーになれないの?親としてどうサポートすればいい?と悩むお母さんからのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんがお母さんにアドバイスを送ります。どうして子どもにサッカーをさせているのか、今一度考える機会になるのでぜひ参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<やらないなら出て行けと5歳児に言うコーチに腹が立ちます問題<サッカーママからのご相談>こんにちは。 この2年ほどずっと息子のサッカーが前に進まない感じなのでご相談させてください。子どもは幼稚園からサッカーをはじめ、1年生まではエース級でした。しかし、2年生くらいからがつがつボールに向かって行くというよりは周りを見るようになり、どちらかというと仲間がボールを持っているなら自分は見守るという姿勢に変わりました。仲間にぐいぐい行く子がいないときには自分が行くし、ポジションがフォワードになれば点も決めるのですが、コーチには積極性がないと思われているのか、最近ではレギュラーから外されることも出てきました。いくら技術を磨いても、メンタルもサッカー向きにしていかないとレギュラーにはなれないということなのでしょうか。相談の子は3人兄弟の真ん中ということもあり、空気を読むのが1番上手だと思います。性格の問題なので、自分がその評価を悔しいと思うなら自ら変わるのを見守るべきなのか、親として何かできることはあるのか、悶々とする日々です。<島沢さんからの回答>ご相談ありがとうございます。子どもが試合に出られないと、親はつらいですね。中学、高校では競争が生まれてきますが、小学生時代は楽しくサッカーをやって欲しいものです。「親として何かできることはあるのか?」と質問されていますが、これが「息子がレギュラーに返り咲くために、親にできることは何か?」と尋ねられているのでしょうか?であれば、特に何もないと答えるしかありません。親の対応によってレギュラーになれるわけではないからです。■周りを見れるということは、サッカーを正しく認識しているお母さんは、お子さんがレギュラーになれないのは「性格の問題」とおっしゃっていますが、お子さんの性格には何の問題もなさそうです。そのあたりはご相談文だけではジャッジできかねますが、私にはこれから楽しみな子に見えます。がつがつボールに向かって行くというより周りを見るようになったのは、とてもいいことです。低学年はボール目指してワッと集まりがちですが、「仲間がボールを持っているなら自分は見守るという姿勢」があるのはサッカーというスポーツに対する認識が正しい方向に進んでいる証のように見えます。みんながボールに集まるのではなく、広がって、スペースをつくることがサッカーでは重要だからです。母さんが書かれているように「仲間にぐいぐい行く子がいないときには自分が行くし、ポジションがフォワードになれば点も決める」のなら、何の問題もないでしょう。逆にうまく成長している気さえします。がつがつと自分でドリブルばかりしている子を起用するコーチばかりであれば、そのチームはもしかしたら試合や大会に勝ちたいだけなのかもしれません。しかし、高学年になるにつれて、ひとりでがつがつドリブルでいっても崩せなくなります。チームのためにバランスをとろうとしている息子さんをぜひ認めてあげてください。間違っても「がつがつ行かないとレギュラーになれないよ」などと言ってはいけません。■何のためにサッカーをさせているのか、いま一度考えてみようそもそもお母さんは、息子さんに何のためにサッカーをやらせていますか?なぜ応援しているのでしょうか?そこをまず考えてみましょう。私は、小学生時代はやっているスポーツの面白さや楽しさを味わうのが一番重要だと考えます。レギュラーになることよりも、子どもがサッカーを楽しむために親がどう寄り添えばよいか。それについて三つほどアドバイスさせてください。■アドバイス(1)親が気にしすぎたり焦らないことひとつめ。サッカーの育成や技術の習得について、お母さんがどの程度知識をお持ちかはわかりませんが、「サッカーをするのは息子である」ということを意識してみましょう。例えば、息子さんが「一年生まではエース級」だったのに、今はレギュラーから外されていることをお母さんは気に病んでいらっしゃいます。私への質問が、技術があってもメンタルがサッカー向きでないとレギュラーになれないのか?と焦りが見られます。お母さんが気に病んだり、焦ってしまうと、息子さんにとって逆効果です。■アドバイス(2)子どものサッカーに入れ込みすぎない「試合に出ないと応援してもらえない」と、強いストレスを与えることになります。親御さんのなかには、「試合に出られないのならやめてしまえ」などと抑圧して子どもが発奮するのを待つとおっしゃる方もいますが、間違ったやり方です。実は、わが子が試合に出られない状況に親のほうが耐えられないだけです。そのため八つ当たりしているように見えます。そうならないためには、親が子どものサッカーに入れ込み過ぎないこと。これがふたつめです。応援するのは悪いことではありませんが、彼のサッカーをみる視点を変えてください。勝ったか負けたかを一緒に喜んだり、悔しがったりしてもよいのですが、どこか冷静さを保ってください。■アドバイス(3)現状を悩みそうになったら「子どもには未来がある」と思い出してそこで三つめ。冷静さを保つには、どんなマインドセット(心の持ち方)にすればよいのでしょうか。現状をあれこれと思い悩みそうになったときは、子どもには未来があることを逐一思い出してください。競技は違いますが、メジャーリーグで奮闘している大谷翔平選手は最近流れているCMでこう言ってます。「そのとき上手くないってことは、それほど大事なことではなくて、その先どれだけ上手くなるか。いまだに僕はピークではないですし。今負けていたとしても、これから先勝っていけばいいことです」今ではない、これから先にどう成長していくか。それが大切だと考えたら、小学生の今、レギュラーでないとか、そんなことが些末なことに思えてくるはずです。■答えを親が出してはいけない(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)以上三つのことが理解していただけたら、その次は息子さんの話をじっくり聞いてあげてください。レギュラーになれなくてつらいのか。試合に出られなくてもサッカーが楽しいのか、そうじゃないのか。その際、どうすればいいかといった答えを、お母さんが出してはいけません。悩むのは親ではありません。子どもに悩んでもらうこと。悩んで、自分なりに答えを出して、動き出す。それが成長というものです。そのプロセスを決して邪魔せず、見守りましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年04月13日冬晴れの1月に東京都江東区で中村憲剛さんのサッカー教室が行われました。子どもたち向けのサッカー教室と保護者向けのトークイベントが行われたこの企画。今回はサッカー教室の様子をレポートします。■小学生30人を対象にサッカー教室を実施よく晴れたフットサルコートに、小学生30名が集合しました。メインコーチを務めるのが中村憲剛さん。現役時代は川崎フロンターレの中心選手として活躍し、引退後は若手選手の指導やサッカー解説などを務め、人気を集めています。さらにはMCとして、名古屋グランパスや川崎フロンターレで活躍した中西哲生さんが参加。憲剛さんの指導内容に合わせて解説するなど、トレーニングを盛り上げていきました。■「正確に止めて蹴る」を実行するにあたり最も大切なもの最初のトレーニングは「2人組での対面パス」。パス&コントロールは、憲剛さんのプレーの代名詞「正確に止めて蹴る」を実行するにあたり、もっとも大切なものです。憲剛さんは子どもたちのプレーを見ながら「棒立ちではなく、ステップを踏みながらやろう」「足のインサイドを使い、体の前でボールを止めよう」と実演を交えながら、わかりやすく伝えていきます。続いて、憲剛さんは「さっき言ったことを意識しながらやったら、すごくサッカーっぽくなった。次はパススピードを意識しよう」と実演。転がってきたボールを両足でピタッと止める姿は、現役時代さながらです。憲剛さんのアドバイスによって、子どもたちの動きがどんどん変わっていきます。それを見て「良くなったよ。パススピードが上がったね!」などの声をかけながら、子どもたちの間を巡回していきます。■1つ1つのプレーにこだわる大切さを伝えた2つ目のトレーニングでは、4人の中心に1人の選手が入り、前後左右からのパスをコントロールして、横の選手にパスを出す動きを繰り返していきます。憲剛さんは「意識することはなんだろう?思い出してみよう」と投げかけると、子どもたちから「足踏み、インサイドにボールを当てる、体の前で止める」などの返事がかえってきます。憲剛さんは「そうだね。それを忘れると、せっかくいいトレーニングをしたのにもったいない。意識してやってみよう」と、1つ1つのプレーにこだわることの大切さを伝えていました。さらには、子どもたちのプレーを見ながら「ミスは問題ないよ」「慌てないで」など、プレーの後押しをする声をかける姿が印象的でした。■中西さん、憲剛さんともに短時間での成長に驚いた中西さんからは「この後にする、ゲームを想定しながらやろう」とアドバイスが送られ、ふたりとも、プレーを見ながら「良くなったね!」と短時間の成長に驚いていました。その後の「3対1のボール回し」では、憲剛さんがディフェンス役になり、子どもたちのプレーとシンクロしながら「遠い足で止める」「左足に出せるよ」「一回でボール止めれば、相手を見れるよ」など、一緒にプレーしながら声をかけていきます。そして「さっき言ったことを意識してやったら、パスは回った?」と質問。子どもたちからは「パススピードが早くなった」などの反応がかえってきます。それを受けて、憲剛さんは「さっき言ったことを意識してやるとボールは回る。ボールを持っている人の技術も大事だけど、ボールを持っていない選手のポジションも大事。試合と同じだからね」と語りかけていました。■「大事なのは自分の考えたことを積極的にやること」憲剛さんからのアドバイス最後のゲームでは、中西さんも飛び入り参加し、場を盛り上げます。中村さんは「ここまでやったことを全部意識しよう。ゲームには全部が詰まっている。みんな、頭の中を整理できたと思うから、ゲームで出そう。失敗してもいいよ。大事なのは、自分の考えたことを積極的にやること」と、子どもたちの背中を押していきます。憲剛さん、中西さんともに、子どもたちと一緒にプレーし、アドバイスを送りながら、楽しそうにボールを蹴っていました。そして、1時間におよぶトレーニングは終了。最後に中村さんは子どもたちに向けて、次のようなメッセージを送っていました。「短い時間だけど、積極的にやってくれたことに感謝しています。今後、みんなが試合を楽しむために必要なことを教えたので、ここで終わりにせず、常に意識してもらえたらと思います。また会えることを楽しみにしています!」■「憲剛さんからパスをもらえてうれしかった」子どもたちも大満足イベント終了後、子どもたちに感想をうかがいました。「中村憲剛さんのパスの一つ一つがすごくて、教え方もわかりやすかった。憲剛さんからパスをもらえたのがうれしかったし、みんな仲良くしてくれてよかった」(リュウジくん/小6)「中村憲剛さんから『ナイス!』と言ってもらえたのがうれしかった。パスをするときに、意識することを知ることができたのでよかった。憲剛さんはあこがれの人なので、会えてうれしい」(イオリくん/小5)子どもたちは、あこがれの中村さんと一緒にボールを蹴ることができて、ユニフォームにサインをもらうなど、かけがえのない思い出になったようでした。
2022年04月13日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が悩む「後ろに下がりながらボールをコントロールするのが苦手」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中は常に動きながらボールをコントロールしたり、ドリブルやパスをします。前方向に動くだけでなく、ボールを取られないよう後ろに下がりながらパスを受けることも。しかし、そもそも前方向に動くより後ろに動くこと自体が日常の中では多くなく、バックステップで下がりながらのコントロールは初心者には難しいもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合の中で相手にとられないよう後ろに下がりながら自分が思った通りにボールをコントロールできるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して、親がボールを持って立つ2.親が転がしたボールを子どもはバックステップで下がりながらインサイドでコントロール3.慣れてきたら親がDF役になってボールを取りに行き、子どもはドリブルでそれを交わす【トレーニングのポイント】・後ろに下がりながらしっかりボールを見る・ボールの中心をインサイドでとらえる・まずは足元に止めることを意識・止め方が強いと次のプレーにスムーズに繋げられないので、自分のイメージしている強さ、スピードでコントロールする感覚を覚える・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年04月12日アルビレックス新潟からドイツに渡り、ハンブルガーSVではキャプテンも務めた、酒井高徳選手。帰国後はヴィッセル神戸の主力としてプレーし、昨シーズンは全試合に出場した。現在、なでしこジャパンフィジカルコーチとして活躍する大塚慶輔氏は、酒井選手がアルビレックス新潟ユース時代からの付き合いで、パーソナルコーチとして10年以上、サポートを続けている。先頃、大塚氏が代表を務める株式会社ライフパフォーマンスと一般社団法人日本アスリートフード協会が、『スポーツコンディショニング推進委員会』を設立した。両社が長年培ったコンディションサポートの知見を活かし、10代を始めとするジュニア・アスリートのパフォーマンスを高めることを目的とした『ジュニア・アスリートサポーター養成講座』を開講する運びとなった。そこで今回は酒井高徳選手と大塚氏に「サッカーに必要なコンディショニング」について、理論と実際の取り組みを話してもらった。(取材・構成鈴木智之)【PR】アスリートサポーター(ジュニアアスリートサポーター)の詳細はこちら>>■年代別代表で芽生えた想い――酒井選手は子どもの頃から「絶対にプロになるんだ!」と強い気持ちを秘めていたそうですが、その背景にはどのようなことがあったのでしょうか?酒井:一番は、プロになって親に恩返ししたいという想いです。当時から、プロになる以外の選択肢は自分にはないと思っていました。もうひとつは、年代別の日本代表を経験させてもらって、海外の選手と対峙できたことです。当時から、「早くこっち側(海外)の人たちとサッカーがしたい」と思ったんです。アルビレックス新潟ユースの先輩の中にも、年代別代表を経験した人がいたので、その人たちに近づかなければ同じステージには立てないんだなと思って、日々を過ごしていました。大塚:対談の1回目でも話したけど、当時から、その覚悟はすごいものがあったよね。酒井:年代別代表に選ばれたときに、「どうすれば海外の選手たちに勝てるんだろう」と感じて、日本に戻ってきてトレーニングをして、また海外に行くことを繰り返していました。その過程で、自分の基準が少しずつ上っていきました。高校生のときから危機感を持って、高い目標を持てたのは良かったと思います。大塚:高徳選手の言う通りで、「三つ子の魂、百まで」ではないですが、プロになる前に、自分に何が必要なのか、何が大事なんだということを、選手自身が学ぶ必要がありますし、それがあるからこそ上を目指すことができるんだと思います。【PR】アスリートサポーター(ジュニアアスリートサポーター)の詳細はこちら>>■戦うことの重要性――アルビレックス新潟ユースからトップチームに昇格し、21歳でドイツに行くわけですが、フィジカル面も含めて、最初から通用した手応えはありましたか?酒井:僕以外に、海外でプレーする日本の選手の発言を聞いても、「やっぱりそうだよね」と感じるぐらい、日本人のテクニック、技術面は通用するんです。でも、技術的に上手い選手は世界にゴロゴロいるわけで、ドイツはとくにそうなんですけど「戦う」ことがすごく大切で、インテンシティをどれだけ出せるかが重要視されます。インテンシティを体現することの重要性を、ドイツに行った当初はわからなくて「自分の方がうまいじゃん。全然通用するな」と思っていたのですが、いざ試合に出ると発揮できませんでしたね。大塚:ドイツに行った頃は、よくそういう話をしていたよね。「練習では通用すると思っていたことが、試合では通用しなかった」って。酒井:違いを感じたのがフィジカル面で、Jリーグにいた頃はフィジカルが強い方だと思っていたんです。だからドイツでもやれるだろうと思っていたのですが、いざプレーしてみると、子どものように扱われました。腕一本で体を抑えられて「クソっ」と思いながらボールを奪いに行ってもびくともしない。単純にアスリートとしての能力に雲泥の差があるんだなって、ドイツに行って痛感しましたね。大塚:高徳選手がすごいのは、そこで逃げずに、課題に立ち向かってクリアしたこと。最初は足りなかったけど、しっかり取り組んで体を作っていけば、ブンデスリーガで長い間、主力としてプレーできるんだと証明できたのは、僕の中でもすごく大きな出来事でした。■自己主張や自己判断の力をつける――今回『ジュニア・アスリートサポーター養成講座』を開講しましたが、ジュニアのときから良い習慣をつけて、良い取り組みをすることの大切さはどう感じていますか?大塚:世の中にたくさんの情報がある中で、どれが自分の子どもにとって必要なのか。正しい知識はどれなのかと、精査できない人が大半だと思います。その方々に向けて、高徳選手を始め、長年トップアスリートをサポートしてきた実績から導き出した、正しい情報をお伝えしたいです。情報を得ることで、親子間でコミュニケーションが生まれますよね。僕は子どもたちを指導するときに「習ったことを、自分の口で保護者に伝えよう」と言っています。食事についても、選手から保護者に話をして「こういう理由で、こういうものを食べたいから、こういうものを作ってほしい」と、家族間で積極的にコミュニケーションをとってもらえたらと思っています。酒井:自己主張や自己判断力を、子どもの頃から身につけるのはすごく大事なことですよね。自分のことを管理できる人はステータスの高い人間だと、僕はいまになって思います。それを早くから学ぶことができるのは、素晴らしいことですよね。大塚:自己管理の話でいうと、高徳選手は「自分のコンディションやパフォーマンス向上のために、お金と時間を使う選手がすごく少ない」と言っているよね。それは自己投資の大切さや方法を知らないからであって、子どもの頃から、プロになって、長く活躍するために当たり前のことなんだと理解していれば、コンディションやパフォーマンスに対して、より真摯に向き合う人が増えると思っています。酒井:ドイツにいた頃は、体をケアする器具を買ったり、練習以外の時間でスポーツジムに行ったりと、時間とお金を費やす選手をたくさん見てきました。サッカー選手ができることって、時間とお金を犠牲にして、自分のパフォーマンスを上げることしかないわけです。楽をしようと思えばいくらでもできるのですが、そうせずに自己投資をして、パフォーマンスアップに取り組む選手が多く、その結果、大成した選手をたくさん見てきました。自分の経験を振り返ってもそう感じているので、目標を達成するために、お金や時間をある程度費やすのは、必要なことだと思います。■トップアスリートのコンディショニングをすべての人に――酒井選手も高校時代のベース作りがあったからこそ、プロ入り後、すぐに活躍できたわけですよね。酒井:そのとおりで、高校3年間は自分が選手として大きくなった時期です。その体験がなければ、いまの自分はないと断言できます。大塚:プロ選手の成果は、ピッチでベストのパフォーマンスを発揮することです。子どもたちの成果は、試合に勝つ、大会で優勝する、プロになることではなく「自律すること」だと思ってます。サッカーやスポーツを通して、目標のために自分を律して、目標達成を目指して取り組む過程が大切で、自律を促すきっかけのひとつとして、生活習慣やコンディショニングに目を向けてもらえたらと思っています。酒井:たしかに、そうですね。大塚:僕らのビジョンに『トップアスリートのコンディショニングをすべての人に』があります。今回の『ジュニア・アスリートサポーター養成講座』を通して、高徳選手とともに、長年かけて研ぎ澄ませたエッセンスを伝えられたらと思っています。そうすることで子どもたちも、高徳選手と同じベクトルでプロサッカー選手を目指してるんだ、繋がっているんだと感じることができると思うので、保護者の方々に正しい情報を啓蒙していきたいです。<第3回に続く>【PR】アスリートサポーター(ジュニアアスリートサポーター)の詳細はこちら>>
2022年04月12日2020年度の高校サッカー選手権大会で山梨学院高校を日本一に導き、前任の神奈川大学では日本代表のMF伊東純也選手(KRCヘンク)らを飛躍に導いたのが、長谷川大さんです。指導者としてのキャリアをスタートさせた秋田商業高校での監督時代は、「社会よりも厳しい状況をあえて作り出し、社会に出た時に厳しいと思わせないようにしたいと考えていました」と振り返りますが、以降は自主性を育むため、選手が考え、判断する指導を重視するようになりました。今回は指導者としての転機となった神奈川大での指導についてお聞きしました。(取材・文:森田将義写真提供:長谷川大監督)2020年の高校サッカー選手権で優勝した山梨学院高校サッカー部でも選手たちとの対話を大事にしていた<<前編:元山梨学院サッカー部・長谷川大監督が育成年代で大事にする「再現性」を生む指導とは■環境が変わったタイミングは、自分を変えるチャンス母校でもある秋田商からの転勤を言い渡されたのを機に、新たなチャレンジを決めた長谷川さん。声を掛けてくれたのは、関東2部リーグに所属していた神奈川大でした。「当時は秋田商業で選手、監督、先生をやっているから長谷川大があると思われていた。秋田商業では上手く行っていても、他に行ったら同じ指導は出来ないと思われていたと思います。ですから、自分が他のチームに行った際も、そこにある文化に応じて自分はこういう事もできるんだと示したかった。大学に行くからには、真に新しいチャレンジをしたかったんです」。そのため「俺はずっとこうやって指導してきた」、「俺の考えはこうだから、生徒もこうしろ」といった上から目線での押し付けた指導ではなく、選手一人ひとりがどんな背景を持って、大学に進んだのか、どんな想いを持って今ここにいるのかを知る所からスタートしました。同じ環境に身を置いていると何かを変えるには勇気がいりますが、環境が変わったタイミングは何かを変えるチャンス。長谷川さんを新監督に迎えた神奈川大の選手にとっても、立場や見られ方を大きく変えるチャンスでもありました。神奈川大に就任した当初は、周囲から「厳しい人が来るぞ」と伝えられていたため、緊張する選手も多かったのですが、時間が経って打ち解けていくと「大さんは怖い人じゃなかったですね」と笑顔で言われるまで距離が近付いていきました。就任した2014年は、現在はV・ファーレン長崎に所属するMF奥田晃也選手が2年生でした。長谷川さんが「今まで見てきた中で、サッカーセンスはトップクラス」と評する程の素質がありながら、自らが理想とするプレー像に拘り過ぎ、スタッフからは「アイツは一生懸命やらないから、ダメ。使えない」と評価されていました。認められるような評価を受けられないと感じていた奥田選手は、3年生になるタイミングで「このまま続けても仕方ないので、サッカー部を辞めます」と長谷川さんに伝えてきたそうです。奥田選手に、チャンスは誰にでもあるというのをもう一度分かって欲しかった長谷川さんはコーチと話して、「もう1回、チャンスを与えても良いかな?」と思えるように促しました。奥田選手ともサッカーだけでなく、プレー以外の事までたくさん話し、持っている可能性に気付かせ、ピッチで強みとして発揮できるよう導きました。最終的にはチームの中心選手へと変貌し、プロ入りを掴むまでになりました。■エネルギーの方向を変えるのが、指導者の役割奥田選手のようなケースは、どのカテゴリーでも珍しくありません。その理由について、長谷川さんはこう話します。「サッカーで力を発揮できない選手は、指導者に『お前は、もういいよ』と言われて、『それなら僕も、もう良いですよ』と拗ねているのがほとんど。ちゃんとプレーした上で、ダメだったと受け入れられる心理状態ではない。活躍している選手と同じ土俵で見られていると感じられないのです」。奥田選手に、チャンスは誰にでもあるというのをもう一度分かって欲しかった長谷川さんはコーチと話して、「もう1回、チャンスを与えても良いかな?」と思えるように促しました。奥田選手ともサッカーだけでなく、プレー以外の事までたくさん話し、持っている強みをピッチで発揮できるよう導きました。最終的にはチームの中心選手へと変貌し、プロ入りを掴むまでになりました。ヤンチャと言われる選手、手がかかる選手に対する対応も同じです。押さえつけたり、除外するのは簡単かもしれませんが、長谷川さんはこう話します。「教育的な立場に関わっている人間は、まずは一人ひとりの個性や強みを認めてあげる事。エレルギーの強い子に対して、『アイツは言う事を聞かない』、『アイツはダメだな』と思ったら、ずっと印象が変わらないままの指導者も多いけど、僕はそうした子どもの方が、きっかけ一つで社会に貢献できる人間になれる気がします。何かを成し得る人は、周りが感じるくらいの大きなエネルギーを持っている。そのエネルギーを押さえつけて消すのではなく、『エネルギーを違う方向に出してみたらどうだろう?』と思わせるのが、教育現場や育成年代の指導者に必要だと思います」。こうして個に応じた対話を重ねるようになったのは、大学生を教えるようになってからの長谷川さんの変化です。■選手自らが考えるのは、一番厳しい選手一人ひとりを見て強みを認め、伸ばす指導をモットーにしている長谷川監督声掛けの内容も意識するようになったと言います。以前は思い通りにプレーできない選手を見ると「お前は難しいな、ダメだ」と厳しい言葉をかけていましたが、そうした言葉をかけると選手は聞く耳を持たなくなってしまうためです。「育成年代で『お前は、もういいよ』と言われている選手は、強みよりも弱みをフォーカスされているから。守備ができない、走れない、戦えない、言う事を聞かないとか。でも、その選手が持っている人としての強みをまず認めて、強みを伸ばすために努力していくように導くのが大切なんです」まずは選手がピッチで長所を発揮できた際に「ナイスプレー」と声をかける事で、長所が強みとなれるよう更に磨いていこうと指導しました。しばらく選手を観察した上で、「ここも良くした方が更に良いんじゃない?」、「ここが解消されたら、お前の強みがもっと伸びる」といったアプローチをして、選手に自身の強みと弱みを理解させ、考えさせました。画一的だった秋田商業時代とは比べると選手へのアプローチは優しくなりましたが、選手が誰かを傷つけたり、迷惑をかけたりした際は厳しく接する事も忘れていません。「厳しい指導と選手の主体性を育む指導は、両極端にあると考えがちですが、どちらかではなく両方が大事」と話す長谷川さんは、「自分で考えることが、選手にとって一番厳しいと思う」と続けます。高校、大学と違うカテゴリーを経験したからこそたどり着いた長谷川さんの考えや指導法は、サカイクの読者であるジュニア年代の指導者や親御さんにも役立つヒントがあるのではないでしょうか。
2022年04月11日サッカーをするお子さんを持つ保護者、そして子どもたちが参加したサッカー教室イベント。第一部は名古屋グランパスや川崎フロンターレで活躍した中西哲生さんの司会による、中村憲剛さんのトークセッションが行われました。テーマは「サッカーをする子どもとの関わり方」。貴重な内容の一部を紹介します。■親は子どもの鏡指導者へのネガティブ発言は子どもにも移る憲剛さん自身、サッカーをする子を持つパパということで、サッカー選手・指導者の視点に加え、父親の立場からも話してくれました。まず、中西さんから「保護者の態度が、子どもに影響を及ぼすと思いますか?」という質問に対しては、「それは間違いないですね。親は子どもの鏡だと思います」と即答。「親が監督・コーチに対してネガティブなことを言うと、自然と子どももそうなってしまいがちです。なので、僕はネガティブな事はなるべく言わないようにしています」とスタンスを述べます。■ポジティブな声掛けの重要性お子さんが小学生の頃は「試合を見ながら、チームメイトの良いプレーを積極的に褒めていた」そうで、「そうすると、それが他の保護者にも伝わって、みんなで子どもたちの成長を見守ろうという雰囲気になっていくんですよね」と、ポジティブな声掛けの大切さを話します。中西さんからは「科学的にも、人間はネガティブなことを言うと、通常の3倍定着しやすいそうです」という話があり、「それもあって、僕が選手を指導するときには、ネガティブなことは一切言いません」と実体験を教えてくれました。「つまり、うまくいったことを定着させようと思ったら、ネガティブなことの3倍言わないといけないわけです。そのため、良かったことは何度も言います」と、ポジティブな声掛けの重要性を強調します。参加者のみなさんにも「このことを覚えておくと、子どもに対してネガティブなことを言おうとしたときに、踏みとどまることができると思います」とアドバイス。憲剛さんも「普段の3倍、褒めることを心がけましょう」と同調していました。■子どもが何考えているか聞きたいから「問いかけ」をする中村家では、お子さんに問いかけをよくするそうで、その理由を「子どもが何を考えているか、頭の中を覗きたいんです」と話します。「うまくいったプレーがあったとして、なんでうまくいったのか。それを子ども自身の言葉で聞きたいんです。子どもって、僕ら大人が思っているよりも想像性が豊かです。小学校高学年になると、会話ができてくるので、僕にとって楽しい時間です」現役引退後、時間をみつけては、お子さんのサッカーを見に行くという中村さん。試合を見ていて、プレーについて言いたくなることはあるそうですが、そこはぐっと我慢。ただし、お子さんが「あること」をしないときは、強くたしなめるそうです。「これは妻とも共有しているのですが、子どものプレーを見ていて、チームのために走らない、自分がボールを取られても奪い返さないなど、チームのために頑張ることができなかったときは注意しています」シュートを打つ、パスを出すといったプレーの向上にはトレーニングが必要ですが、チームのために頑張ることは、意識の持ち方ひとつで、すぐに実行に移すことができます。「頑張ることは、意識次第ですぐにできるようになるので、小学3年生ごろから言っていました。『自分が守備の選手だったとして、前の選手がボールを奪われたのに、取り返しに行かなかったらどう思う?』という話はよくしました」そのような対話を続けることで、お子さんのプレーは変わっていき、いまでは「行きすぎじゃない?(笑)」というほどハードワークするようになったそうです。■「怒られなかった育成年代」がプロでのプレーにいい影響を与えた中西さんは、現役時代にともにプレーした、ストイコビッチ選手とのエピソードを教えてくれました。「ストイコビッチ選手は、子どもの頃から、A、B、Cと3つのパスの選択肢を持っていたそうです。子どもの頃はパワーがなくて、パスが通らなかったこともあったけど、当時の指導者から『体が大きくなれば、そのパスは通るようになる。アイデアを持ち続けてプレーしてほしい』と言われたそうです」創造性あふれるプレーで、世界中のサポーターを魅了したストイコビッチ選手。憲剛さんは「僕にとっても、あこがれの選手のひとりでした」と話し、自身の子ども時代のエピソードを語ります。「僕が小学生時代に所属していたチームも同じで、子どもの考えを尊重してくれていました。なんでそこにパスを出したんだとか、なんでそんなプレーをするんだって、言われたことがないんです。『いまのパス面白いね。だけど通らなかったね。じゃあ、次は通るように練習しよう』。そういうチームでした」憲剛さんは「子どもの頃から、プレーのアイデアを尊重してもらったおかげで、いろんなことに挑戦しようと思ったし、人が驚くようなプレーをしたいと思って練習してきました。その過程で生まれたミスに対して、怒られなかった育成年代を過ごしてきたことは、間違いなく現役時代に生きています」と感謝を口にします。■子どもが楽しくサッカーできるかは親にかかっていると言って過言ではないそしてイベントの最後に、次のようなメッセージを送っていました。「子どもが楽しくサッカーができるかは、お父さん、お母さんにかかっていると言っても過言ではないと思います。指導者ももちろんそうですが、一日の中で一番長くいるのは保護者ですから。その中で、親と子どもで一緒に成長していくことが大切なのだと思います。僕自身、失敗と後悔を繰り返しながら、親として成長していきたいと思っています。僕も頑張ります。一緒に頑張っていきましょう」司会が旧知の中西さんだったこともあり、「普段しない話を、結構しちゃいました」と笑顔を見せる中村さん。参加者のみなさんは、ここでしか聞けない体験談やエピソードをたくさん知ることができて、大満足の様子でした。<イベントの様子>
2022年04月11日2020年度の高校サッカー選手権大会で2度目の日本一に輝いたのが、山梨学院高校です。立役者となったのは、監督として指揮を執った長谷川大さん。イヤホンを耳にし、ベンチから指示を送る姿が覚えている人も多いのではないでしょうか。優勝の原動力となった的確な試合分析に加え、選手育成にも定評があり、前任の神奈川大学監督時代には日本代表のMF伊東純也選手(ベルギー・KRCヘンク)を指導しています。昨年度限りで山梨学院高の監督を退任し、この春からはS級ライセンスの取得を目指す長谷川さんに育成年代での指導に関する考え方をお聞きしました。(取材・文:森田将義写真提供:長谷川大監督)選手たちに支持を与える長谷川監督。選手たちとは対話を大事にしていたという■再現性を生むためには、自分で答えを見つけようとする姿勢が大事「純也はこうしなさい、ああしないさないと強制的に指導されてきたら、たぶんサッカーをやめていたと思います。ずっとノビノビ自由にやってきたから、今がある」。伊東選手について評する通り、長谷川さんも神奈川大時代は選手の自主性を大切にする指導を行ってきました。選手に具体的なアドバイスを送るのは選手が壁にぶつかった時のみ。基本的には選手自らが考え、判断するよう促してきました。象徴的なのは、伊東選手が4年生だった頃のエピソードです。シュートが入らなくなったため、ドリブルスピードを落とし、顔を上げる事でシュートの質を上げようとしていた伊東選手に対し、「外しても良いよ。だったら、今まで5本打っていたのを8本打ってみろ。そうすれば1本ぐらい多く入るかもしれない。君はシュートを増やして、点をとるタイプだ」とアドバイス。その結果、再び大学サッカーで活躍し始め、その後の飛躍へと繋がりました。スランプに陥る前にアドバイスするのも一つの手ですが、長谷川さんの考え方は違います。「指導者が正解を教えてしまうと再現性が生まれません。一番大切なのは、自分で答えを見つけようとする姿勢を育む事。幼少期にやっていた「かくれんぼ」を思い出しても、誰かに居場所を教えて見つけるより、自分で工夫して見つけた時の方が喜びは大きい。成功体験を1度味わうと、子どもは同じ方法を再現しようとする。成功した時にちゃんと誉めてあげるぐらい、指導者がちゃんと見てあげていれば、また同じ事をやってみようとなる。成功しなくなった時には、また新しい事が必要だとヒントを与えてあげれば良い」。■指導者を始めたばかりの頃はゲームのスイッチボタンを押しているだけだった2019年度に移った山梨学院高でも大学生に接するのと同じスタンスで指導を行っていましたが、現役時代を過ごし、指導者としてのキャリアを始めた秋田商業高校時代は今とは全く違う指導法だったと言います。商業高校はその名の通り、接客業を始めとしたビジネスに必要な知識やマナーを身に付ける高校です。「商業は人作り。お客さんは神様という発想で耐性と言いますか、お客さんに理不尽な事を言われても、我慢する力を身に付けるのが商業高校の強みと教わっていた。だから、先生の言う事は絶対だし、周りから言われる事も絶対に守らなければいけない」(長谷川さん)。そうした考えは、サッカー部の指導でも変わりません。今でこそ伝統だった坊主頭を廃止し、髪を伸ばし始めるなど時代に合った指導が行われていますが、長谷川さんが監督だった時代は「社会よりも厳しい状況をあえて作り出し、社会に出た時に厳しいと思わせないようにしたいと考えていました」。また、コーチから監督になったのは30歳になる直前で選手の育成以上に、どうすれば勝てるのかを主に模索していました。「今にして思うと、若い頃はゲームのスイッチボタンを押しているだけだった。指導者がボタンを押せば、言われた所にボールを蹴って、諦めずに走りなさいというだけだった。選手には誰でも良いと言っているのと等しいくらい同じことを求めていました。そうしたマインドの指導者は、『アイツは使えない』なんて言葉が自然に出てくる。使えないというのは、自分が思っている通りに動かないから。『アイツは使える』というのは良い選手ではなく、自分が意図したプレーをひたすらやってくれるから」。■教育としてサッカーを教えるなら、自分で考える土壌を作らなければいけない2020年の高校サッカー選手権では山梨学院高校を率いて優勝を手にした長谷川監督(写真右)当時の厳しい指導は、高校を出て就職する選手も多いチームならではで、社会に出る選手の将来を思ってのもの。今とは時代背景も違うため、長谷川さんの指導は決して間違っていたとは言えません。ですが、母校を離れて指導者として様々なキャリアを積むうちに考え方に変化が生まれました。「使える選手を育てるのは、仕事として監督に使われるプロになってからでも良い。教育としてサッカーを教える際は、自分で考える土壌を作らないといけない。自分で考えられる選手が、ロジック(論理)をしっかり理解した上で、自ら進んで行動するのが凄く大切。指導者に言われて理由なくやるのとは全く意味合いが違います」。考え方に大きな変化が生まれたのは、2014年に神奈川大の監督となり、これまでの高校生から大学生を指導するようになってからです。以前は高校の部活動でよく見られる一糸乱れぬような挨拶や行動が何よりも素晴らしいと考えていましたが、大学に行くとそれぞれのスタイルで行う挨拶や、個々の責任ある行動力を目の当たりにしました。高校とは違い、全員が揃ってきちんと挨拶するわけではありませんが、より自主性が求められる中でも、礼儀が大事と考え、敬意を示すためにとっている大人としての行動です。「彼らの立ち居振る舞いをとても素晴らしいと思ったんです。高校の集団的指導が素晴らしいと考える文化しか知らなかったけど、大学生はよく考えて、自分たちにとって今必要なことをやっている。今までの指導とは両極端かもしれませんが、どちらも大事だと気付いた時に、一番大切なのは真ん中だと思いました。組織として団結した行動もできるし、それぞれが考えて行動もできる。大学生への指導で出た答えが、『その場に応じた確かな行動力とその説明責任を果たせる逞しい人作り』でした」。選手に対する考え方が変わった長谷川さんが、神奈川大でどんな指導を行っていたかは具体例を交えながら、後編で紹介します。
2022年04月07日子どもにサッカーノートを書いてほしい、サッカーノートを書くことで上達につなげてほしい、と願う親御さんは多いもの。ですが、「何となく」書いているだけではただの日記になってしまうことも多く、上達につながるとは言い切れません。サッカーの上達につなげるためには、サッカーノートをどのように活用すればいいのでしょうか。サッカーノートを書き始めて上達を実感したと証言する子どもたちに、その活用法などを聞きました。シンキングサッカースクールの選手たちも、サッカーノートを書いて自分が上達していることを実感しています藤代さん監修!1日10分で書けるサッカーノート>>【関連記事】サッカーノートを書かせるのは親の自己満足!?「とりあえず書く」を脱却してサッカー上達に繋げる活用法■書くことで「自分の現在地」がわかるサカイクとしつもんメンタルトレーニングが開発した『サカイクサッカーノート』は、子どもたち自身が「今の自分を理解する」工夫が施されているため、課題が明確になり、近い目標が立てやすくなるので、上達を実感しやすいと指導者も選手たちも声を揃えます。今回、シンキングサッカースクールの小学生たちに「サッカーノートを書き始めて実感している効果」を聞いてみました。選手たちの声(一部抜粋)・質問があるから書きやすい(小3男子)・書き始めたら自分の目標が見えて、目標達成のために頑張るようになった。その結果、前は出来なかったことができるようになって、上手くなったことを感じる(小3男子)・自分の課題が分かって、どう動けばいいか分かるようになった。相手DFの動きが読めるようになって、ついていけるようになった(小3男子)・書き始めるようになって、練習中の自分の動き、相手のポジショニングなど状況を覚えておくようになった。状況を記憶しておけるようになり、振り返って「あの時こうすればよかったのか」など気づきになっている。その結果、次はどうしようか考えて練習に取り組むようになり、前は判断が良くなかったところも改善され、上達を実感している(小6男子)・書き始めた3か月前は、1ページ40~1時間かかった。今は10分くらいで書けるようになった。自分のプレーを振り返って書くページがあるので、プレーを覚えておくことが身についたので、練習後の記入時間も短くなった。(小6男子)■今の自分がわかると目標が立てやすいいかがでしょうか。サカイクサッカーノートは、サッカーを始めた時を振り返る項目や、自分がサッカーを通じてどんな風になりたいかなど自分を見つめなおすページが最初に設けられています。そして、普段の練習前後に記入するページは、左ページが練習前に「(今日の)試合・練習で実現したいこと」、そのためにどんな工夫をするかを書き、練習後に記入する右ページには、「今日の練習でうまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「どうすれば(うまくいかなかったことが)よりよくなるか」を振り返る項目と、その日の練習で印象に残ったプレーをフォーメーション図に記入する項目を設けています。子どもたちは往々にしてすぐには達成が難しい「大きな目標」を掲げがちなものですが、サカイクサッカーには自分自身を見つめる項目があることで、「"今の自分"がわかったから、次にどうすればいいかの課題が見えて、目標が立てやすかった。だから目標達成できた」という声も多く聞かれました。■しつもんに答えるだけで自分を客観視できるように「今の自分の位置」を客観的に見つめるのは、大人でもなかなか難しいものですが、サカイクサッカーノートならしつもんに答えて書いていくだけで、自分を客観視し、いま何ができて何ができないのか、できるようになるにはどうしたら良いかを自然と考えるようになります。その結果、現時点の課題が見えやすくなり、課題解決のためにどうしたらいいか、どんなことをコーチに質問すればいいか、などに気づくようになるのです。そういったことを通じて、上手くなるための思考と行動が身についていく、これこそがサカイクサッカーノートの特長です。■上達を実感するとますます書くのが楽しく出来なかったことが出来るようになったり、サッカーの上達を実感すると、ますますサッカーノートを書くのが楽しくなるものです。今回お話を聞いた子どもたちも、「最初は苦戦したけど、今は楽にかけている。サッカーが上手くなるのを感じているから楽しい」という子も多くいました。保護者の方々もそんなわが子の成長を見るのが嬉しいという方も多く、中には楽しそうな子どもの様子に触発され、「私も書いてみたい」と、シンキングサッカースクールで開催された保護者サッカー体験会に参加してサカイクサッカーノートの振り返りページを別の紙に書いて提出したお母さんも。サッカーノートを最初から上手に書ける子、うまく活用できる子は少ないものです。まして、市販の(サッカーノートではない)ノートを与えても、何を書けばいいかわからず続かない子も多いと思います。「どんなことを書くか」「何を意識するか」を自分で理解し、自ら成長し続ける力になるサッカーノートを与えてあげることで、子どもを伸ばすサポートをしてあげてください。藤代さん監修!1日10分で書けるサッカーノート>>
2022年04月06日子どもがサッカーを始めると、練習や試合の送迎で車の出番が多くなります。子どもだけでなく、チームメイトを乗せたり、ボールやマーカーなど試合会場に着いてから練習で使う道具の運搬など、これまでとは違う車の使い方になります。そろそろ買い替え時期となると、そんな用途ありきで検討するご家庭も多いのではないでしょうか。そこで、中古車情報メディア『カーセンサー』の西村泰宏編集長に、サッカーをする子がいる家庭におすすめな車の選び方を伺いました。(取材・文:小林博子)子どもがサッカーを始めると、車で送迎する機会が増えることも。(写真は少年サッカーのイメージ)■荷物多め&車内が汚れる!子どもがサッカーを始めた家庭の車事情まずは、これからサッカーを本格的にする子どもがいるという方にもわかりやすいよう、サッカーファミリーの一般的なカーライフをご紹介します。中にはチームでバスを持っているクラブもあるかもしれませんが、親の車出しがあるチームは少なくありません。サッカー少年たちの荷物は、ボールと着替えを入れた大きなバックパックというケースがほとんどです。子ども1人だけを乗せるならそのバックパック程度ではありますが、試合の送迎などでチームの子どもたちを乗せる場合、それぞれがバックパックを持っていますので、荷物だけでかなりのスペースを割くことに。さらに、「試合当番」があるチームの場合は、日除けのタープや折りたためるベンチ、夏は大きなドリンクジャグなどを運ぶこともあり、荷物だけでなかなかの量になります。そして、車内が汚れがちなのも特徴です。子どもたちは泥や砂埃などで通常よりもシートや床を汚しがちですし、小学生年代だと車酔いする子も少なくないので、車酔いをする子がいる場合は車内で嘔吐されてしまうことも......。車は何人乗りが最適で、どれくらいのスペースがあれば十分か、そして汚れに強い内装は?など、考えなくてはならない項目は多岐にわたります。子どもがやりたいと言って始めたサッカーですが、大会出場などが増えるにつれ、このように車選びにも影響がでることがあるのです。■選択肢は「ミニバン」だけ?答えはNO!そんなことを考慮すると、とにかく大きくて、荷物をたくさん積めて、汚されてもいい内装の車にするのが正解なのかと思いがち。そこで候補にあがるのはミニバンやワゴンですが、車好きな親御さんの中には「いかにもファミリーカーという印象の車は嫌だ」と思う方も多いようです。そんなニーズに応えるべく、カーセンサーの西村編集長が車選びで考えるべきことをサッカーファミリーバージョンで考えた、4つの観点を教えてくれました。人と荷物をたくさん乗せるなら、アルファードのようなミニバンしか選択肢にないの!?とあきらめなくても大丈夫です(写真提供:カーセンサー)■その1.乗る年数とサッカー以外の用途は何か?まず、お子さんの年齢によって、何年間サッカー向けの車が必要かをまずは考えてみましょう。と西村さんは言います。その間、送迎は週何回あるのか、遠征などで何人も乗せる回数は年何回あるのかなども想定してみることが大事だそう。遠征で大人数を乗せるのが年数回の場合は、その時だけレンタカーを活用するのも手段のひとつ。「わざわざそれだけのために大きなミニバンを購入する必要はないのかもしれません」と西村さん。また、サッカー以外の用途についても考えてみて欲しいと西村さんは言います。特に小学生の保護者世代のご家族に多いのが、キャンプなどのアウトドアレジャーも積極的にしたいというケース。この場合も荷室が広い車を選びたくなるはずです。「サッカーのためだけ」ではない基準が増えます。車を買うときはどうしても「今の生活」に目を向けがちですが、少し先の未来を見据えることで、よりクリアに考えることができ、よい選択ができるはずです。とアドバイスをくれました。■その2.リセールバリューを重視するのか車を購入する際に「リセールバリュー(再販価値)」を考慮するかを考えるのはあたり前になっていますが、サッカーファミリーの場合は、前述したように必要な大きさや汚れの程度が通常と異なる特別な期間になることもあるので、一般的な概念とは切り離して考えてみてください。と西村さんは言います。その結果、もしかしたら「次の1台は乗り潰す(=リセールバリューは考慮しない)」という選び方になるかもしれません。その場合は、前述した「その1.」で想定した年数の間に乗れる、リーズナブルな中古車を探すという選択肢が新たに生まれますし、その年数はサッカー送迎仕様で選ぶと割り切ることができるでしょう。ちなみに、日本製のアルファード(トヨタ)やヴェルファイア(トヨタ)など大型のVIP系ミニバンやハイエース(トヨタ)などの商用車は海外での人気が高く、10万キロを超える走行距離があっても売れやすい傾向にあるのだそう。リセールを考える場合は、少々値段が高くてもこれらの海外で人気がある車を選ぶのも手です。■その3.荷物は外付けという選択肢もサッカーの荷物のことを考えると、荷室の広さを重視しがちですが、実は「外付け」という選択肢があることも知っておくと、選択の幅が広がると西村さんは教えてくれました。具体的には、車体の上に取り付ける「ルーフキャリア」などです。スノーボードやサーフィンをする人たちも良く使用していますね。外付けで荷物を積めると思うと、荷室の大きさだけに固執せずとも、必要なスペースを確保できるかもしれません。■その4.車酔い・汚れ対策は内装にこだわるより、カーシートに別売りのカバーを西村さん曰く、車内が汚れるという懸念点から、シートの材質にこだわりたいと思う方が多いかもしれませんが、欲しい車との掛け合わせでピッタリのものを見つけることは困難なためあまりおすすめではないのだそう。それよりもサッカーをする子どもがいるご家庭におすすめなのは、シートカバーを使うことなのだとか。最近では、さまざまなタイプのシートカバーが1つ1万円以下で購入できます。ひと昔前の概念だとやぼったいイメージがあるかもしれないシートカバーですが、アウトドアブームの昨今は、キャンパーやサーファー向けの汚れや水に強くておしゃれなデザインのものもたくさん販売されています。汚されたら取り外して丸洗いできますし、たとえお子さんが嘔吐したら破棄して新調しても大きな出費にはなりません。リセールバリューを考える上でも、シートカバーで覆うことで車内をきれいに保つことは有効な手段です。子どものサッカーの送迎が発生する時期は、車以外にも生活の様々なことが影響してくると思いますが、「サッカーだけ」にとらわれず、親子が快適かつに過ごせて良い思い出をたくさん作れるような車選びをしていただくための参考にしてください。
2022年04月05日アルビレックス新潟からドイツに渡り、ハンブルガーSVではキャプテンも務めた、酒井高徳選手。帰国後はヴィッセル神戸の主力としてプレーし、昨シーズンは全試合に出場した。現在、なでしこジャパンフィジカルコーチとして活躍する大塚慶輔氏は、酒井選手がアルビレックス新潟ユース時代からの付き合いで、パーソナルコーチとして10年以上、サポートを続けている。先頃、大塚氏が代表を務める株式会社ライフパフォーマンスと一般社団法人日本アスリートフード協会が、『スポーツコンディショニング推進委員会』を設立した。両社が長年培ったコンディションサポートの知見を活かし、10代を始めとするジュニア・アスリートのパフォーマンスを高めることを目的とした『ジュニア・アスリートサポーター養成講座』を開講する運びとなった。そこで今回は酒井高徳選手と大塚氏に「サッカーに必要なコンディショニング」について、理論と実際の取り組みを話してもらった。(取材・構成鈴木智之)【PR】アスリートサポーター(ジュニアアスリートサポーター)の詳細はこちら>>■生活習慣を見直すことで、パフォーマンスが向上――まず『ジュニア・アスリートサポーター養成講座』について聞かせてください。大塚:サッカーに限らず、様々なスポーツでプロを目指している子はたくさんいます。子どもたちをサポートをする保護者に向けて、本当に必要な情報を提供するために、この講座を作りました。私はJリーグのフィジカルコーチとして17年間活動し、酒井高徳選手を始め、トップレベルのアスリートのパーソナルサポートをしています。その中で、とくに大切だと感じたのが「生活習慣」です。そこを見直すことで、選手のパフォーマンスが向上していく様子を間近で見てきました。今回は高徳選手と対談することで、世の中の人たちに啓蒙できればと思い、この場を設けさせていただきました。酒井:僕が大塚さんに出会ったのは、アルビレックス新潟ユースの頃なので、10年以上の付き合いになりますね。コンディショニングやパフォーマンスアップの指導をしていただいたおかげで、Jリーグやブンデスリーガでプレーできました。自分のキャリアを振り返ると、大塚さんとの取り組みが結果として現れていて、コンディショニングを含めた生活習慣の重要性はとても大きなものだと感じています。大塚:だいぶ長い付き合いだよね。酒井:コンディショニングに関して、専門的に取り組み始めたのが21歳の頃だったので、もっと早い時期、それこそ小学生ぐらいから目を向けていれば良かったなと思います。なので大塚さんの取り組み(ジュニア・アスリートサポーター養成講座)はすごく良いものだと思いますし、子どもたちの発育発達に通じるところがありますよね。保護者の方や子ども自身が、早い段階で正しい知識を得ることができるのは良いことだと思います。■プロになるとは、独り立ちすること――大塚さんにうかがいますが、酒井選手とともに、どのような取り組みをしてきたのでしょうか?大塚:サッカー選手が1日の中でトレーニングしている時間は2、3時間です。そこはクラブの管轄なので、タッチすることができません。我々としては、トレーニング以外の時間をいかにしてサポートできるかに重点を置いて、栄養士やドクター、トレーナーとチームを組んで、包括的にサポートしてきました。これは決して押し付けではなく、高徳選手自身が「自分はこうなりたい」「このレベルに到達したい」という目標があり、そのために「いまはここが課題だ」「ここを向上させるにはどうすればいいんだろう?」と感じているところに、我々がアプローチしていく形です。睡眠や栄養などのコンディション面だけでなく、フィジカルやモビリティ向上のトレーニングまで、様々な角度からサポートしています。酒井:そもそもの話をすると、アルビレックス新潟ユース時代に、プロを目指す上で体を作らなくてはいけない、プロで戦える体ってなんだろうと考えることからスタートしました。当時から大塚さんには、体のことや生活習慣など、様々な面で指導をしてもらっていました。その経験があって、コンディショニングにより目を向けるようになりました。自分で言うのもなんですが、トップに上がったときに、フィジカル面で引けを取らない形でスタートできたのは、ユース時代のベース作りがあったからだと思います。自分がプロの世界に入ったときに、あらためて「高校3年間、上を見据えて指導してくれていたんだ」と気がつきました。大塚:僕は育成年代を含め、たくさんの選手を見てきましたが、高徳選手の「覚悟の量」はケタ違いだと感じました。高校1年生の頃から「自分は絶対にプロになるんだ。そのためにはどんな努力も惜しまない」という気持ちが強かった。ユースに所属していたので、間近にトップチームの選手がいる環境だったのですが、自分から積極的に話しかけに行ったり、練習で2人組を作るときも、必ず上手な選手と一緒にやったり。プロになるんだという信念と覚悟は、図抜けたものがありましたね。酒井:面と向かって言われると恥ずかしいですね(笑)。大塚:その延長線上に、「ヨーロッパで活躍したい」「世界で通用する選手になりたい」という気持ちがあって、アルビレックスからドイツへとステップアップしていったわけです。21歳でドイツに足を踏み入れて、最初は通用するレベルじゃなかったかもしれないけど、厳しい環境でさらに自分を成長させていった。その道を選ぶ意思、覚悟の強さが、高徳選手が伸びていった要因のひとつだと思います。酒井:プロになることは、独り立ちすることでもあります。そこで解き放たれて、自分の好きなことをするのか。それともプロとして、一流を目指して取り組むのか。その分岐点がある中で、僕は自分を高めることを選んできました。僕が新潟でプロになった頃、大塚さんは別のクラブにいたのですが、個人的に連絡を取って、パーソナルという形で見てもらうようにお願いをしました。大塚さんとスタッフの方々と「世界で通用する選手になるためには、こうならなくちゃいけない」という目標を掲げてやってきましたし、僕自身、「海外で活躍するためにはなんでもやるぞ」というモチベーションで取り組んでいました。■酒井高徳の取扱説明書――ドイツでプレーするにあたり、具体的にどういう取り組みをされたのでしょうか?酒井:生活面では、食事の管理、体重、体脂肪、睡眠の管理です。食事は試合から逆算して、いつ何を食べるかを、試行錯誤しながら作り上げていきました。具体的には、試合の2日前から炭水化物を中心に、体にエネルギーを貯めるような食べ方をして、試合後すぐに、オーツミルクとプロテインと甘酒をミックスしたものを飲みます。それから食事をして、翌日は疲労回復や免疫の回復に効果がある物を食べます。基本的には自分の体と対話をしながら、食べ物を選ぶようにしていました。大塚:食べ物やリカバリーの内容などは、選手によって少しずつ変わります。それが「酒井高徳の取扱説明書」のようなもので。酒井:まさにそうですね。僕の場合、ドイツにいた頃は、試合前におにぎりやフルーツを食べていたのですが、日本に帰ってきてからは、少し空腹の方がパワーが出やすいように感じたので、試合会場でバナナを半分だけ食べています。食事の内容は、年齢とともに変わりましたね。大塚:ドイツの頃は、リカバリーの方法も試行錯誤していたよね。基本的に、試合後はホテルに泊まらず、バスに乗って何時間もかけて家に帰るわけで。試合後の移動でどうやって睡眠をとるかを考えて、クッションをいろいろ試したり、リカバリーウェアを着るのが嫌だったので、ブランケットタイプを使ったり。酒井:ドイツの頃は年間で50試合以上、多いときは60試合近く出ていました。毎日が試合の連続なので、とにかくリカバリーが重要なんですね。それに加えて日本代表の試合もありました。日本で試合をして、深夜の飛行機でドイツに戻って、中2日で試合をして、翌月も同じスケジュールとか。それを8年ぐらいやりました。大塚:リカバリーの方法は、細かいところまで相談したよね。酒井:かなり大変な思い出として残っています(笑)。そのおかげもあって、僕はこれまで、ケガやコンディション不良で欠場したことがほとんどありません。日本に戻ってきてからも、昨シーズンは全試合に出場しました。連戦に耐えられるケアや準備を続けているからこそ、試合に出続けることができているんだと思います。■『チーム酒井高徳』としてサポート――リカバリーに関して、トレーニング面では、どのようなことをしていたのですか?酒井:試合間隔が中2日なのか、3日なのか、夏か冬かによっても変わってくるのですが、基本的に試合の翌日は有酸素運動をして、疲労はあるけど、体が気持ちいいと感じる強度で動かしていました。あとはその時々で、気になる箇所のストレッチやモビリティのトレーニングですね。怪我に繋がらないために、筋力的な刺激を入れる部分と、全く使わないでしっかり休ませる箇所を分けて取り組んでいました。グラウンド外では交代浴をしたり、睡眠の質を上げるアイテム使って、睡眠時間を記録していました。大塚:考え方として、試合直後からリカバリーは始まっています。プレー中以外の、すべての時間をリカバリーに使うぐらいの気持ちです。酒井:本当に、生活のすべてですもんね。食事も睡眠も生活リズムも、メンタル面も含めてのリカバリーなので。そのなかでも生活習慣は大切で、奥さんと一緒に大塚さんの話を聞いて、食生活も実践しましたし、筋トレやモビリティのトレーニングでは、動画を送ってもらい、見ながらトレーニングしていました。『チーム酒井高徳』として、いろんな人にサポートしてもらったからこそ、連戦の中で疲れない体作りができて、ピッチで良いパフォーマンスが発揮できたと思っています。<第2回に続く>【PR】アスリートサポーター(ジュニアアスリートサポーター)の詳細はこちら>>
2022年04月05日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が悩む「前に動きながらボールをコントロールするのが苦手」を克服するトレーニングをご紹介します。試合中は常に動きながらボールをコントロールしたり、ドリブルやパスをします。ボールをインターセプトするときや、フォワードの選手が落としたボールを前に運ぶときなどによく使われる動きでもあります。しかし、最初のうちは前に動きながらボールを自分の思った所にコントロールすることが難しいもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合の中で自分が思った通りにボールをコントロールして前方向に進めるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して、親がボールを持って立つ2.親が転がしたボールを子どもは前進しながらインサイドでコントロール3.慣れてきたら親がDF役になってボールを取りに行き、子どもはそれを交わす【トレーニングのポイント】・ボールの中心をインサイドでとらえる・自分のイメージしている強さ、スピードでコントロールする感覚を覚える・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年04月04日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が悩む「ドリブルが上手くできない」を解決するトレーニングをご紹介します。サッカーを始めたばかりのころは、「ドリブルが上手にできるようになりたいけど、どんな練習をすればいいのかわからない」という人が多いもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、相手を見ることや切り返しなど、ドリブルの基本動作が身に付きます。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親子で対面して、子どもがボールを持って立つ2.ゴールに見立てた目印を置き、じゃんけんで勝ったらゴールに向かって走る。負けた方(親)はゴールを通さないように塞いで、子どもをタッチしにいく3.ある程度動きを覚えたら、ドリブルしながらやってみる4.慣れてきたら切り返しにもチャレンジしてみるサッカーを始めたばかりでドリブルがおぼつかない場合は、親が動きのスピードを遅くしたり制限をつけてあげる【トレーニングのポイント】・最初は動きを覚えるためにボールを持ったまま行う・サイドステップやバックステップなども入れてみる・ドリブル中はしっかり相手を見る・相手が近づいてきた時にしっかり切り返しをして、空いている場所を素早く通ることを意識する・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月31日最近よく耳にする「ポジショナルプレー」ってなに?そんな人に「入門編」としておすすめなのが3月に発売された『こどもポジショナルプレー~ボールを追うサッカーから、ボールを追いかけるサッカーへ~』です。ポジショナルプレーをわかりやすい表現で解説するとともに、ポジショナルプレーが身につく練習メニューも紹介。本書にポジショナルプレーの達人として登場する中村憲剛さんも「これからはポジショナルプレーを標準装備する時代」とおすすめしています。本書の中から今回はポジショナルプレーを意識した「『+1』のビルドアップ」の解説と練習メニューを紹介します。<<ポジショナルプレーの鍵となる「中間ポジション」の位置と役割■「『+1』のビルドアップ」って何?数的優位をつくるためのビルドアップのしかたマンチェスター・シティやチェルシー、バルセロナ。日本でいえば川崎フロンターレや横浜F・マリノス。近年、世界各国で優勝を争うチームの多くがビルドアップを重視し、ポジショナルプレーに取り組んでいます。その理由はたくさんありますが、きっかけのひとつにはルールの変更がありました。2019年にルール変更があり、ゴールキックの際に攻撃側のフィールドプレーヤーが自陣のペナルティーエリア内でボールを受けることができるようになりました。すると以前のように大きく前線に蹴らずに、自陣から短いパスをつなぐチームが増えました。最初にペナルティーエリア内で受ければ、相手はペナルティーエリアの外にいるため、プレスをかけられずに試合を再開することができます。そこでポジショナルプレーを有効に使えば相手を崩していくことができるからです。前線からボールを奪いにくる相手に対して、どうやってビルドアップをしていくのか。そのひとつのアイディアが数的優位の「+1」を作ることです。相手が1トップでプレッシャーをかけてくる場合は、2人でビルドアップを始める。相手が2トップなら、3人でビルドアップを始めるという具合です。これも相手を困らせるポジショナルプレーのひとつと言えます。■「+1のビルドアップ」トレーニングメニューポジショナルプレーの眼【ねらい】ポジショナルプレーで、「意図的に」突破する【準備】1.15m×40(25+15)mのグリッドを作る2.攻撃側4人と守備側3人を図のように配置する【ルール】1.エリア外の2人からスタート2.エリア外の2人はパス交換しながら、エリア1の守備者2人と味方1人の動きを見てパスを入れる3.パスがつながったところで、エリア外にいた2人もエリア1に入り、攻撃側3人vs守備側2人の数的優位を作る4.同様にエリア2で待つ味方へパスをつないでから移動し、エリア2で4vs3(守備側2人もエリア2へ)5.最終的に奥のラインをドリブル突破したら攻撃側の勝ち■練習のポイントゲーム形式ではないですが、攻撃方向を決めてエリアを2つ設けることで、必然的に縦の距離(深さ)ができます。エリア外→エリア1→エリア2と相手のゾーンに進入していくことで、ビルドアップから相手の守備ラインをひとつずつ突破し、前進していく感覚を身につけるトレーニングです。パスだけでなくドリブルもプレーの選択肢に入ってきます。攻撃側は数的優位の状況で、どうすれば次のエリアにボールを前進させることができるか。たとえばエリア1では中間ポジション(守備側2人の間)にうまく立ってボールを受け、ターンすることができれば次のエリアへ縦パスを入れたりドリブルで運べます。中間ポジションでパスを受けられなくても、相手のマークを引きつけられれば、ほかの選手がフリーになって次のエリアへ縦パスを入れたり、ドリブルで運べます。狭いエリアで強度の高いプレーをする中で、相手と味方の位置を見ながら「レーン」や「中間ポジション」を見つける眼を養えば、試合でもポジショナルプレーで「意図的に」相手の守備を突破することができるようになるでしょう。ビルドアップはサッカーの攻撃を組み立てる大事な要素です。小学生年代からその基本はしっかり身につけておきたいもの。親御さんもこのようなサッカーの基本を知っておくことで、お子さんと一緒にサッカーを見るのが楽しくなったり、子どものサッカーへのかかわり方がもっと楽しめるようになることでしょう。
2022年03月31日最近よく耳にする「ポジショナルプレー」ってなに?そんな人に「入門編」としておすすめなのが3月に発売された『こどもポジショナルプレー~ボールを追うサッカーから、ボールを追いかけるサッカーへ~』です。ポジショナルプレーをわかりやすい表現で解説するとともに、ポジショナルプレーが身につく練習メニューも紹介。本書にポジショナルプレーの達人として登場する中村憲剛さんも「これからはポジショナルプレーを標準装備する時代」とおすすめしています。本書の中から今回はポジショナルプレーの鍵となる「中間ポジション」の解説と練習メニューを紹介します。<<ポジショナルプレーでよく聞く「5レーン」とは何なのか。5レーンの解説■「中間ポジション」って何?相手と相手の間に立つことで、どちらがマークにつくか迷うポジショナルプレーを実践する上では、「中間ポジション」というものを活用していく必要があります。「中間ポジション」とはなにか。読んで字のごとく「間」のポジションなのですが、これは「相手と相手の間」を意味します。相手の目の前に立つのではなく、相手と相手の間である「中間ポジション」に立つことでどのようなメリットがあるでしょうか。最大のメリットは、相手を迷わせることです。例えば相手のSBとCBの間に立つことで、相手はどちらがマークについていいか迷ってしまいます。また、どちらかがマークについたら、マークについたDFはもともと自分が守っていたところにスペースを空けてしまうことになります。■「中間ポジション」トレーニングメニューとめる蹴る【ねらい】中間ポジションでボールを受ける技術を磨く【準備】1.中央にマーカーを1m四方に置く2.5人組で、中央に1人。四方に1人ずつ、図のように配置する【ルール】1.マーカー中央の受け手の選手(青)を中心にパス交換2.中央の受け手は1から受けたら2へ。2から受けたら3へと連続してパス交換を続ける3.ワンタッチで方向転換して、次のタッチでパスをする4.トラップしたボールがマーカーから出ないようにプレーする5.1人4周(右回り、左回り2周ずつ)行い、5人が順に交代していく■練習のポイント良い立ち位置を意識できるようになると、3人や4人の守備者の中間点にポジションをとることの利点に気がつきます。しかし、ボールを受けたときにコントロールが体から大きく離れてしまっては、次のプレーにつながりません。中間ポジションで仕事ができる選手の特徴は「ターンの技術」の高さです。ポイントになるのは、「ボールは止める、体が動く」という言葉。ボールをコントロールするときに軸足が地面についたまま方向転換しようとすると、ミスが起こりやすいです。そこで、ボールタッチの瞬間に軸足をスッと抜いて次にプレーしたい方向を向くと、タッチする足も力が抜けて、ボールも止るようになります。ターンの「質」が理解できると、練習の「質」も上がること間違いなし!まだ指導現場では浸透していないチームもあるので「中間ポジション」と言われても親御さんにはピンとこないかもしれません。それでも親御さんもサッカーの最新戦術などを何となくでも頭に入れておくと、お子さんと一緒にサッカーを見るのが楽しくなったり、子どものサッカーへのかかわり方がもっと楽しめるようになることでしょう。
2022年03月30日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が悩む「最初はどんな練習をすればいいの?」を解決するトレーニングをご紹介します。サッカーを始めたばかりのころは、他のスポーツ体験の有無にかかわらず「どんな練習をしていいかわからない」という人が多いもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、ボールを触る力加減、ボールのどこを触ればどこに行くのか、などが理解できてドリブルの動作が身に付きます。親は難しい動きはありません。【やり方】1.最初はボールを持たず、親子でじゃんけんをして負けた方が勝った方の周りをまわる2.動き方に慣れたら、同じやり方でドリブルをしながら回る3.慣れたら秒数を制限するなど、よりスピーディーにできるように難易度をあげてみる【トレーニングのポイント】・ボールをよく見て足に当てる・どこに当てるのか、どのぐらいの力加減で触るのかを意識する・サイドステップやバックステップなども入れてみる・優しくボールタッチして自分の思った所にコントロールする・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月29日最近よく耳にする「ポジショナルプレー」ってなに?そんな人に「入門編」としておすすめなのが3月に発売された『こどもポジショナルプレー~ボールを追うサッカーから、ボールを追いかけるサッカーへ~』です。ポジショナルプレーをわかりやすい表現で解説するとともに、ポジショナルプレーが身につく練習メニューも紹介。本書にポジショナルプレーの達人として登場する中村憲剛さんも「これからはポジショナルプレーを標準装備する時代」とおすすめしています。本書の中から今回はポジショナルプレーの鍵となる「5レーン」の解説と練習メニューを紹介します。■「5レーン」って何?ピッチを縦に5分割してそれぞれのレーンに選手を配置近年、ポジショナルプレーについての説明で「5レーン」という言葉がよく聞かれます。どのような考え方かざっくりと説明すると、ピッチを縦に5分割し、それぞれの「レーン」に選手を配置するというものです。相手が4バックの場合、DFだけでこの5つのレーンをすべて埋めることはできず、誰のマークについていいか迷うことになります。この「相手を迷わせる位置どり」が、ポジショナルプレーの基本になります。■「5レーン」トレーニングメニュー5レーンから始まる3vs2【ねらい】レーンの意識付け&どこに立つと攻撃が優位になるか理解させる。【準備】1.12m×20mのグリッドの中に5レーンを作る。2.攻撃側は3人、守備側は2人。3.最初は皆それぞれ異なるレーンにしか立てない。【ルール】1.まずは攻撃側の1人目が好きなレーンを選び、自由に位置を決めて立つ2.守備側の1人目は、異なるレーンに入りながら攻撃側の1人目をマーク3.その後も同じように攻撃側の2人目→守備側の2人目→攻撃側の3人目が異なるレーンにそれぞれ入っていく。4.5人が5つのレーンを埋め、立ち位置を決めたところから、指導者が攻撃側にボールを渡して3vs2がスタート。ここからはレーンに関係なく動くことができ、攻撃側はドリブルで奥のラインを突破したら勝利。■練習のポイント最初はボールを使わずに、立ち位置を考えることに集中させるところがポイントです。こうして5人が異なるレーンに入ると、数が1人多い攻撃側が有利な状況を作り出せるということを理解できると思います。異なるレーンに入るだけでなく、攻撃側の3人が同じ高さに立たない(縦ズレ)ことで相手がマークに付きづらくなるということも、この練習を通して感じることができると思います。まだ指導現場では浸透していないチームもあるかもしれませんが、親御さんもサッカーの最新戦術などを何となくでも頭に入れておくと、お子さんと一緒にサッカーを見るのが楽しくなったり、子どものサッカーへのかかわり方がもっと楽しめるようになることでしょう。
2022年03月29日長かった冬に別れを告げ、春休みに入ると練習試合などの機会も増えてくると思います。このタイミングで「あらためて基本的なサッカーのルールを確認したい!」という人にピッタリなのが今年2月に発行された『イラスト・図解でかんたんアップデート! サッカーの最新ルール(監修:公益財団法人日本サッカー協会)』です。2019年のルール改正でハンドの解釈やゴールキックの方法も変わっているので、"最新ルール"を確認したい人にもおすすめです。本書の中から今回は、大きく変わったルールの一つでもある「ゴールキック」について抜粋して紹介します。■「ゴールキック」とはどんなルールなのかルール変更によりペナルティーエリアでも受けられるようになった得点以外でゴールラインを越えた後に、試合を再開する方法のひとつがゴールキックです。最後に相手競技者が触ってゴール枠外のゴールラインを越えた場合にゴールキックになります。ゴールキックはゴールエリア内であれば、どこからでも始められます。静止したボールが蹴られて、明らかに動けばインプレーです。以前はペナルティーエリア外にボールが出るまでは、インプレーになりませんでしたが、近年にルールが変更されて、ペナルティーエリア内でも受けられるようになりました。ゴールキックのボールが直接相手ゴールに入った場合、その得点は認められます。味方ゴールに入った場合、相手のコーナーキックになります。■「ゴールキック」で反則が取られるとき相手はペナルティーエリア外に相手競技者はインプレーになるまで、ペナルティーエリア外にいなければなりません。速やかにエリア外へ出る必要があり、エリア内で邪魔をすると反則になります。相手がエリア内にいてもリスタートは可能相手がペナルティーエリア内にいても、リスタートすることは可能です。ただし、ペナルティーエリアを出ようとしていた相手が、インプレーになった直後にボールを奪いにいく行為は反則にはならず、プレーは続行されます。クイックリスタート時には注意が必要です。最初のうちは分かりにくいルールの一つですが、今のうちに概要だけでも知っておくことで、お子さんの試合観戦がもっと楽しくなりますよ。
2022年03月28日「月謝を払っているんだから、ちゃんと上手くしてほしい」という保護者への対応、どうしたらいい?とのご相談。すぐ習得できる子もいれば、時間がかかる子もいて、一概にこれを教えればいつまでに上手くなるというものでもないのに、かけているお金と成果(上達)が比例しないといって、すぐに上達することを求めてくる保護者達。じつは、指導者の悩みの中でも多く聞かれる内容です。みなさんならどうしますか?今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、悩めるコーチにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<「またあの練習?」サッカーには欠かせない反復練習に飽き飽きの子どもたちを楽しませる練習メニューを教えて<お父さんコーチからのご質問>サッカースクールコーチです。はじめまして。私が指導しているのは、チームを持たず試合などは行わないサッカースクールです。当然レベルもバラバラで、「運動体験をさせたくて」と親が連れてきた子や、近隣のチームに所属しつつサッカーの技術を高めたい子、チーム練習がない日の放課後を過ごす場所として通っている子もいます。教えているU-10年代(小3)は全員で12名です。悩みは保護者からの要求です。「月謝を払っているんだから、ちゃんと上手くしてほしい」という声を度々いただくのですが、親御さんの気持ちも分かりますが、子どもによっては練習メニューをすぐ習得できる子もいれば、時間がかかる子もいて、一概にこれを教えればいつまでに上手くなるというものでもないですよね。本人のやる気が大事なので見守ってほしいと思うのですが、かけているお金と成果(上達)をコストパフォーマンスのように捉えている方も少なくありません。池上さんならどのように保護者に理解してもらいま<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。親御さんから「もっと上手くしてほしい」と言われる。指導者の間でよく聞かれる話です。サカイクの読者の皆さんはもうご存知かと思いますが、少し以前からサッカーコーチの皆さんは子どもの自主性、主体性を伸ばす指導を目指しています。■親世代が受けた指導と180度違うので「教えてくれない」と解釈してしまうところが、親御さん世代が受けた教育やスポーツ指導とは180度違う性質のものなので、彼らからすると、「コーチは子どもに何も言ってくれない」「ほったらかしで教えてくれない」と解釈してしまうようです。ここは、指導者自らが親御さんたちに向けて「こんな理由で、こんな方針をたて、このような指導をしている」ときちんと説明しましょう。■トレーニングがアジャストしていない可能性ももうひとつのチェック項目は、トレーニングの質です。トレーニングそのものがアジャストしていなくて子どもたちが上達しない、という側面があることも忘れてはいけません。コーチとして、自らの指導を省みることはなかなか難しいことですが、サッカー経験のない親たちが「上手くなっていない」と言うのであれば、余程のことかもしれません。例えば、私のトレーニングは毎回メニューが変わります。そのうえ、同じメニューを長々とやりません。これができたから次に移る、という考え方ではないのです。同じことを長くやってしまうと、子どもは飽きます。短い時間で目先を変えてどんどんやるほうが、子どもたちは楽しくやれます。■ミニゲームでは練習のテーマを思い出させる声掛けをご存知のように、練習は「マッチ‐トレーニング‐マッチ(М・T・М)」といって、最初にミニゲームをして、そこで足らないものを練習し、最後にまたミニゲームをしてその日練習したことにトライしてもらいます。ミニゲームの質が、最初と最後で変わっていることが目に見えてわかる。それが理想です。例えば、最初のゲームでワンツーをもっと使おうという目標を定めます。それに付随した練習を行った後、最後にミニゲームでワンツーをどんどんやってもらいます。そうすると、ミニゲームでの勝敗などに懸命になってしまい、どんなテーマでその日練習したのかを子どもたちは忘れがちです。そういうときこそコーチの出番です。「今日は何を練習したかな?」「今のところ、サイドでワンツーができたよね」そんなふうに声掛けをします。できているチームや選手をほめたり、できないときに「どうしたらできるかな?」と尋ね、自分で考えてもらいます。このあたりは決して親受けを狙うわけではありません。必要な指導を、必要な場面で行う。これが重要です。このようにいつも質問を投げかけながらトレーニングをする方法は、フィードバックと言われています。この手法は今世界で注目されています。その時その時の状況を認知させることで、自己解決策を見つけさせていく方法です。そういったことがスムーズに行えるようにするには、まずは自分の指導に問題ないのかを考えてみることが肝要です。■能力や動機付けがバラバラの子が一緒にやる重要性を保護者に説明しよう「運動体験をさせたくて」と親が連れてきた子。近隣のチームに所属しつつサッカーの技術を高めたい子。チーム練習がない日の放課後を過ごす場所にしている子。サッカースクールなので、いろいろなレベルがあるのは当然のことです。書いていらっしゃる通りです。だからこそ、練習も当然いろんなことをやらなくてはいけません。そのことを理解したうえで、以下の三つのことに目を向けてみましょう。ひとつめ。能力や動機付けがバラバラの子が一緒にやる重要性を、親御さんたちに説明しましょう。能力がバラバラだけど仕方なく一緒にやってます、という感覚ではなく、バラバラのほうが子どもたちはひとり一人が上手になるということをまずは相談者自身が理解してください。そのうえで、そのことを保護者に伝えます。その際はきちんと理論武装し、どうすれば保護者を納得させられるかをよく考えて臨みましょう。それでも親たちが「お金を払ってるんだからもっと上手くして」と言ってくるのであれば、子どもたちをレベル分けして練習させるのか、もう一度練習の方針を説明するのか考えてみましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>■いつも全体で動かす必要はない。習熟度に合わせた練習もできる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ふたつめ。ご相談者様が受け持っている12名という人数は、とてもいい規模感です。全体で練習を動かしながらも、子どもたちの「個別性」を追求できる人数と言えます。例えば、みんなでキック練習をしていれば、うまく蹴られない子には手厚く指導してあげられます。12名のなかには必ずできている子、もしくは早くマスターしてしまう子がいますから、その子のプレーを可視化し真似することでほかの子も上達します。メニューによっては「君はこういうことやってみよう」「君たちはあっちでこれをやってみよう」と習熟度別にやることもできます。ひとりのコーチでも、12名全員に声をかけることができます。いつも全体で動かす必要はありません。そんな練習のやり方もあるのです。■ただ漠然と練習しているわけではないことを説明しようみっつめ。練習後の話をぜひ親御さんにも聞いてもらいましょう。どんなテーマでどう取り組んでいたのか。ただ漫然と練習をしているわけでないことを理解してもらいましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年03月25日長かった冬に別れを告げ、春休みに入ると練習試合などの機会も増えてくると思います。このタイミングで「あらためて基本的なサッカーのルールを確認したい!」という人にピッタリなのが今年2月に発行された『イラスト・図解でかんたんアップデート! サッカーの最新ルール(監修:公益財団法人日本サッカー協会)』です。2019年のルール改正でハンドの解釈やゴールキックの方法も変わっているので、"最新ルール"を確認したい人にもおすすめです。本書の中から今回は、ジャッジの基準についてわかりにくいという声も多い「ハンド」について抜粋して紹介します。■「ハンド」の判定基準腕と肩の境界線とは?近年、はっきりと明確化審判が「ハンド」と判定する基準を知っていますか?ポイントは「わざと触ったかどうか」なのです。サッカーでボールを手や腕で扱えるのはGKだけです。それ以外の競技者が手や腕でボールに触ると、基本的にはハンドという反則になります。ですが、そのすべてが反則になるとは限りません。ボールが手や腕に触れた行為は故意なのか、またはそのときの手や腕の位置が妥当だったかが、この反則の基準です。肩で触るのは反則にはなりません。では、どこからが腕でしょうか?腕と肩の境界線は、腕の付け根になる脇の奥が基準です。腕を下げた状態で、その脇の奥から地面と平行に線を引きます。それを境界線として、それよりも上が肩で下が腕になります。■「故意かどうか」の判定基準故意のハンドと取られるかどうか判定の基準腕に当たった場合でも、故意とみなされなければハンドにならないこともあります。では、どんな場合に故意と判定されるのでしょうか。ボールが手や腕に当たったとき、故意だったのかは本人にしかわかりません。それを審判が判定するのは難しいことです。審判が故意かどうかを判定するとき、ボールが当たる直前の状況を見ます。1.ボールやその進行方向に対して手や腕が動いているか2.手や腕が体の幅を広げるような位置にあるか3.手や腕がプレー状況に応じた自然な動きかボールが当たる直前にその軌道に向けて手や腕を動かしていないか、また手や腕が不自然な位置ではなかったかを確認しています。手や腕が体から離れた位置にあった状況でそこにボールが当たれば、ハンドの反則になる可能性が高まります。このように、手に当たったらすべて「ハンド」を取られるわけではありません。そのため、サッカーを始めたばかりの頃は特にわかりづらいルールの一つと感じるでしょう。プレーをする子どもはもちろん、サッカー経験のない保護者の方も試合を見に行って「今のはハンドなの?」「さっきはOKだったのに、今のプレーは手に当たったのにハンドじゃないの?」と疑問に思ったこともあるのでは。今のうちに概要だけでも知っておくことで、お子さんの試合観戦がもっと楽しくなりますよ。
2022年03月24日長かった冬に別れを告げ、春休みに入ると練習試合などの機会も増えてくると思います。このタイミングで「あらためて基本的なサッカーのルールを確認したい!」という人にピッタリなのが今年2月に発行された『イラスト・図解でかんたんアップデート! サッカーの最新ルール(監修:公益財団法人日本サッカー協会)』です。2019年のルール改正でハンドの解釈やゴールキックの方法も変わっているので、"最新ルール"を確認したい人にもおすすめです。本書の中から今回は、サッカーのルールの中でも最初は特にわかりにくい「オフサイド」について抜粋して紹介します。■「オフサイド」は゛待ち伏せ禁止"のルールどこでボールを受けるとオフサイドになるか、わかりますか?オフサイドを簡潔に解説すると、「待ち伏せを禁止するルール」と言えます。ゴール前に残ってプレーできないように考えられており、このルールによって競技のスピーディーさやダイナミックさ、インテリチックでクレバーな要素がサッカーに生まれています。まずは、オフサイドポジションを理解しましょう。後方から2人目の相手競技者より前方に位置することです。多くの場合、最後方はGKなので、最後方の相手フィールドプレーヤーよりゴールラインに近い位置になります。図のように、GKを含めた相手競技者の最後方から2人目の位置を基準にオフサイドラインがあり、そのラインよりゴールラインに近い位置にいることが、オフサイドポジションにいる状態になります。また、最後方や最後方から2人目に複数の競技者が並んでいることがあります。その場合も、最後方から2人目が基準となります。最後方に2人の競技者が並んでいれば、そこがオフサイドラインになります。ただし、オフサイドポジションにいるだけでは反則になりません。そのポジションにいて、味方競技者がパスしたボールに対してプレーしようとすることで、初めて反則となるルールがオフサイドです。■「オフサイドポジション」の判定基準手や腕が前方に出ていてもOKオフサイドラインよりも前方に出ていればオフサイドポジションとなりますが、手や腕だけが出ていてもオフサイドポジションにはなりません。プレーできる体の部位が基準になります。イラストのような状況では、相手競技者の右足がオフサイドラインになります。右手がそれよりも前方ですが、この場合はオフサイドラインよりも後方にいるという判定になり、オフサイドポジションではありません。オフサイドラインの基準となる部位オフサイドラインについても、相手競技者の手や腕は関係ありません。イラストのように相手の右手が後方に位置していますが、この場合では相手の左足先がオフサイドラインの基準になります。相手の右手より後方にいるように見えますが、左足先よりも前方に出ているためオフサイドポジションになります。オフサイドラインの基準になる競技者がGKであっても同じで、手や腕でプレーできるGKでもそこは基準に含まれません。オフサイドはプロでも引っかかるプレーです。サッカーを始めたばかりの頃は特にわかりづらいルールの一つと感じるでしょう。プレーをする子どもはもちろん、サッカー経験のない保護者の方も試合を見に行って「今どうして笛が吹かれたの?」「何が反則だったの?」と疑問に思ったこともあるのでは。今のうちに概要だけでも知っておくことで、お子さんの試合観戦がもっと楽しくなりますよ。
2022年03月24日体験の時、一番楽しそうだったから入会したのに、練習が始まったら「周りはできるのに自分はできない」とサッカーに行きたがらないことも。それでもようやくサッカーが楽しくなってきていたのに、ある時コーチの一言で「もうやだ、帰る」とコートから出てきた。できない子に何も教えてくれないのに、その言い方はどうなの?子ども目線で考えないコーチに腹が立つ。親としてどうするのが正解?と悩むお母さんからのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんがお母さんにアドバイスを送ります。親にとっての「良い子」が抱えるリスクのお話も参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<「厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」は本当?熱血コーチの情熱は子どもを伸ばすか否か問題<サッカーママからのご相談>5歳の息子はサッカーを始めて1年半ほどになります。県内でも強豪クラブチームに入会しました。そこを選んだ理由は、体験に行ったとき息子が1番楽しそうにサッカーをしていたからです。ですが、入会してからの練習では「周りはできるのに自分はできないからやりたくない、サッカー行きたくない」と言って、なかなか楽しんでやらない時期がありました。すぐに辞めるのは簡単でが、嫌なら辞めればいいといった辞め癖をつけたくなかったので、些細なことでも褒めてきました。そのおかげで「サッカーが楽しい」と思えるようになってきたのは最近です。そんな時、小学生の子に押されたりボールを投げられたりすることが続き、心が折れたみたいで、また「行きたくない」と言い始めました。それでも「小学生のお兄ちゃんも悪気があったわけではないと思うよ、みんな一生懸命頑張ってるからね」など言って連れて行っていました。しかし先日、前々から指導方法や態度が悪い意味で気になるコーチがいて、そのコーチが息子のグループを担当していました。ドリブルの練習が始まり、息子は苦手だったのか上手くできずオロオロしていると、そのコーチに「やらないなら出て行って下さい」と言われ、「もうサッカーなんてやりたくない、嫌だ、帰る」と言いながらコートから出てきました。やってないわけではなく、出来ないからどうしていいのか分からずいたのに、ボールにも慣れてない子にそんなことを言うのかと腹が立ちましたが、他のコーチがどうにかなだめてくれて、本当に助かりました。サッカーができるようになるために行ってるのに、まずは教えようともしない、子ども目線で考えない、成長させようとしないコーチに腹がたってしょうがないのですが、親が腹を立てても息子の成長には繋がりませんよね。そんなときどうしたらいいのでしょうか?親としてコーチに何か言うべきだったのでしょうか?それとももっと違う言葉で息子をなだめるべきだったのでしょうか?何が正解だったのか、考えてもわかりません。本当は、多少言われても小学生の子たちに意地悪されても、強くなるために息子自身で整理できたり、割り切れたりできるようになってほしいのですが......。長くなってしまいましたが、アドバイス頂けると幸いです。<島沢さんからの回答>ご相談ありがとうございます。まだまだ理解がおぼつかない5歳児に向かって「やらないなら出て行って下さい」と命じたのですね。いま、指導の方法はさまざま進化しており、子どもが自ら主体的に動くことを大切に扱うコーチングが進められています。■本人が楽しく通えているのであれば、ひとまずその点を大事にして例えば、お母さんは相談文に「教えようともしない、子ども目線で考えない、成長させようとしないコーチ」と書かれています。いただいたご相談文からだけでは事情を100%把握はできないのですが、そのコーチはもしかしたら手取り足取りではなく、子どもが自分からやるのを見たかったのかもしれません。でも、目の前の子どもがそうならず、つい言ってしまった。決して良いことではないかもしれませんが、そうともとれます。そのうえ、息子さんがそう言われて出て行ったとき「他のコーチがどうにかなだめてくれて本当に助かりました」と書かれています。お母さんが「態度が悪い」と感じているコーチはひとりいるけれど、それを他のコーチがカバーしているようです。息子さんが楽しく通っているのであれば、ひとまずこのチームに通わせればいいのではないでしょうか。■親としての正解は「何もしない」ことそして本題です。お母さんの「こんなときはどうすればいいか?」の質問にお答えします。「親としてコーチに何か言うべきか」「違う言葉で息子をなだめるべきだったか」お母さんはこれらを挙げて「何が正解だったか考えてもわからない」とおっしゃっています。私の答えは「何もしない」です。子育てにおいて、良いサッカー指導者やチームを選ぶなど子どもにとって良い環境を用意するのは親の役目のひとつですが、いつも恵まれて清流を渡れるわけではありませんよね。「渡る世間に鬼はなし」とは言いますが、世の中いろんな人がいて、スポーツや教育現場でもハラスメントやいじめなどさまざま社会課題があるのが現実です。■かわいそうだからといって転ばぬ先の杖を用意しないこと。見守る意識を持ってそんな時代に子育てをする親御さんは、子どもを見守ることをもっと意識してほしいと思います。親は良かれと思って、ついつい世話を焼いてしまいます。まずい指導をしているコーチには何か言いたくなるし、子どもを奮い立たせよう、意欲的にしたいとさまざま手を打ちます。無論、そういったことも大事でしょう。暴力や暴言がある指導環境に子どもを置いておくことは避けるべきだし、落ち込んでいれば励ましてもいいでしょう。しかし、常に転ばぬ先の杖を用意すれば、子どもは親がその都度差し出してくれる杖をつかないと歩けなくなります。世話を焼くことで、足腰が鍛えられなくなります。転んだら痛いから転ばないように自分で気をつけて歩いたり、自分で考えて転ばずに楽しく歩ける道を選ぶ力を身に付ける。そういった気づきや選択こそが、皆さんがよくおっしゃる「生きる力」だと考えます。お母さんからの投書にも「強くなるために息子自身で整理できたり、割り切れるようになってほしい」と書かれています。本当にそう思われるのならば、以下のことを参考にしてみてください。■子どもを思うなら自分で考えたり、気づく時間を与えようまず、息子さんにもう少し自分で考えたり、何かに気づく時間を与えてあげてください。「小学生の子たちに意地悪されても」と書かれていますが、意地悪と言うよりも子どもって残酷ですよね。言いたいことを言う。そういうものです。逆に、お行儀がよく小さいときから物分かりがよく、分別が付きすぎるのも考え物だと私は思っています。取材で出会った親子や、わが子2人を育てる中で、たくさんの子どもの成長過程を見てきましたが、親御さんからの干渉が強く抑圧されている子どもたちは、自分で主張したり、素直に感情を出す経験をさせてもらえません。そうすると、大人になって自分で動き、人生の選択をしなくてはならない年齢になっても、どこか自信なさげに見えます。そのように「良い子が抱えるリスク」があると考えます。小児科医や、大学の先生方、サッカーの指導者に取材すると、皆さん口を揃えて良い子の行く末を心配しています。■子どもに逆境を味わう余白を与えてあげるのも親の役目(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)子どもに、逆境を味わう余白を与えてあげるのも親の役目です。私が尊敬する脳科学者の先生は「親の"心配"が"信頼"に変わるプロセスが子育てなんだよ」とおっしゃっていました。辞め癖をつけたくなかったので、些細なことでも褒めてきた。そのおかげで息子さんは「サッカーが楽しい」と思えるようになってきた、と書かれています。辞め癖がつくかもしれないというのは「心配」ですね。「でも、サッカーを辞めても、この子はまた好きなことを自分で見つけるだろう」と思えるのが「信頼」です。心配よりも、信頼のほうが子どもを成長させます。どうか見守る術を身に付けてください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年03月23日この春からサッカーチームに所属するお子さんを持つ保護者の方に、最初に知っておいてほしいこととを5つご紹介します。お子さんがサッカーを心から楽しんで、人としても成長するために保護者はどんなサポートをすればいいのか。「応援のしかたってどうすればいい?」「ケガの対処法は?」など初めての事だらけで心配な新米お父さんお母さんは子どものサッカー応援の基礎として、すでにお子さんがサッカーを始めて何年も経つ保護者の方は改めて、子どもがサッカーを楽しむための「親の心得」としてご確認ください。指導者の皆さんやサッカー少年少女の親として先輩の皆さん、この春からチームの一員になったお父さんお母さんたちにこのページをシェアしてくださいね。子どものサッカーに関わる保護者のみなさんに、大切にしてほしい"親の心得"■正しい応援マナー試合ではどんな声援を送ればいいの!?「応援」と一口に言っても、ただ「頑張れー」と言えばいいのか、子どもを伸ばすような言い方があるのか、迷いますよね。よく知らなくて恥ずかしい思いをするのも嫌だし......と思っている親御さんは少なくないものですよね。ダメ出しや、否定の言葉が良くないことはわかっていても、どんな声掛けで応援すればいいのか意外に思いつかなかったりするのでは?声かけにも、子どもを伸ばす「プラスの言葉」があります。子どもたちの成長にとって、どんな言葉がプラスで、どんな言葉がマイナスなのか、今のうちから正しい応援スタンスと、声かけについて確認しておきましょう。正しい応援スタンスと声かけについて詳細はこちら>>■【サッカー最新ルール】8人制にも本格適用!新ルールをおさらいサッカーのルールって、未経験者には難しいですよね。試合を見に行って、「今どうして笛が吹かれたの?」「今何のファウル?」となることもあるのでは。学生時代にサッカーをしていた保護者にとっても、ルール改正などでご自身がプレーしていたころとは変わっているルールもあります。ファウルの判定が良くわからなくてモヤモヤするまえに、少年サッカーの新ルールの中で特徴的なものをチェックしておきましょう。飛んでくるボールを怖がる子どもたちにありがちな「ハンド」の基準など新ルールの詳細はこちら>>■【ケガの処置】傷口は水で流すが正解!?応急処置の基本サッカーではグラウンドで転んだり、試合以外の場面でケガをすることも。ケガの対応もお父さんお母さんが学生の頃の常識とは異なっているものがあります。サッカーの中でよくある、転んだときにできる擦り傷。昔は消毒液をつけたと思いますが、最近の常識は「水で洗い流す」です。傷口を洗い流すことで感染症予防にもつながるのだとか。ほかに子どもが良くするケガといえば「打撲」などの外傷です。打撲などの対処法「RICE処置」の基本を知って、お子さんをサポートしてあげましょう。ケガの応急処置、打撲などのRICE処置の詳細はこちら>>■【突然倒れたとき】知らなきゃいけないAEDの使い方サッカーで心配なのは、擦り傷や打撲などの外傷だけでなく、心臓震とうなどによる心停止もあります。グラウンドで子どもが突然倒れたときの対応も、ぜひ知っておいてほしいもの。学校や公共施設などでもAEDの設置が進んでおり、使用場面の理解も進んでいますが、実際使用したことがないと不安なものですよね。子どもたちを守る大人の皆さんに知っておいてほしい、スポーツの現場で命を守るための処置。知識として頭に入れておくだけでも、少しは違うものです。救急隊員が教える正しいAEDの使い方の詳細はこちら>>■子どものサッカーに関わる保護者のみなさんに、大切にしてほしい"親の心得"子どもにとって一番楽しいのは誰かにやらされることではなく、自分で考え、判断し、プレーすることです。主体的にサッカーに取り組み、チャレンジするためには"親の関わり方"がとても重要なのです。わが子を見守り、自立を育む親でいるためにこれだけは大切にしてほしい10のこと。まず最初にこれを押さえましょう。子どもが心からサッカーを楽しむための「サカイク10か条」>>子どものサッカーに関わる保護者のみなさんに、大切にしてほしい"親の心得"
2022年03月22日GIGAスクール構想によるICT教育の浸透は、子どもたちの学習スタイルを大きく変化させました。前編ではICTの活用はサッカーにも必要とされる「主体性」を育みやすい側面があることをリクルートEd-tech総研所長の山下真司さんが解説してくれました。ICT教育による効果をある程度理解すると、次に思うことは親である私たちがどう捉え、寄り添っていくべきかということかもしれません。まず大切なことは「今までとは違う」というマインドセットを行うことだと山下さんは言います。それはどういうことなのでしょうか。ICT教育への親の向き合い方についてアドバイスをいただきました。(取材・文:小林博子)(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:今話題の「ICT教育」はサッカー、勉強で主体的に学ぶ姿勢が身につく!?ICT教育のメリットとは■使う時間も使い方も「自分で決める」こと自宅で画面を見つめる時間が長くなった我が子の姿を見ると、「目が悪くなるのでは」と心配になる方は多いはず。使っていい時間を決めるなどの対策を講じているご家庭も多いことでしょう。ですが、使う時間はひとまず子どもに決めさせてあげましょう。前編でお伝えしたように、学校では今、子どもたちの学び方が大きく変化していて、「主体性のある学び」に重点がおかれています。ICTをツールとして活用することで、その学びがさらに加速すると考えられています。1人1台の端末、つまり子どもたちの学習のためのツールだからこそ、使う時間や使い方といったルールも主体性を尊重してあげるほうがベターだといいます。もしかしたら「好きなだけ使う」と決める子もいるかもしれませんが、そこは少し我慢してください。なぜそう決めたのか、それについてどう思うのかを問い、否定せずに見守ってあげることが大切です。■親が決めたことを守らせると、良くない結果が出た時に「ママ/パパのせいだ」と他責的に子どもは次第に、自分自身で決めたことが自分に良い影響を及ぼしてくれたのかを振り返るときがくるはずです。親にタブレットを使う時間を制限されていたらできないことです。自分の判断をもう一人の自分が客観的に評価できれば、自らの意志で改善に取り組むでしょう。これは「自己調整力」と言われるものであり、学習力に必要な「メタ認知」を強くしてくれます。このようなケースのように、絶対的な正解がないものに対しては、自分で考えて得られる「納得解」を見つけることが大切です。なお、親が決めたことを守らせるスタイルにはもう1つの懸念があります。それは子どもが物事の結果を他責的に捉える習慣がつきやすくなってしまうこと。「宿題が終わらなかったのはママ/パパが決めた制限時間のせい」など、真摯に振り返ることができずに他者のせいにしてしまうかもしれません。■検索は「知識の獲得」であり、思考を阻害するものではない疑問や知りたいことがあるときに、手元にタブレットがあるとすぐに調べることができます。すぐに解答を得られるため、「自分で考える」ことが阻害されはしないかと心配になるという親御さんもいます。それに対しては、「知識と思考は別」と心得るべきです。検索して得られるのは「知識」に過ぎません。大事なのは子どもが持っている知識と得られた知識を組み合わせたり、「活用」したり、「なぜだろう」と考えるクセをつけることです。さらには検索で得られた情報が本当に正しいかどうかも考えることも大切です。ここでの親御さんの役割は、「なぜ知りたいと思ったのか」「それは事実なのだろうか?」「その知識を得てどう思うか」といった問いをお子さんに投げかけてみてください。いわゆる「クリティカルシンキング(前提を疑う思考)」です。情報を鵜呑みにして終わるのではなく、まず「?」を持つこと。そして「?」だったものが「!」になる学習プロセスによって、より深い次元の学びを得られるのです。■子どもではなく「親」が変わらなければならない激動の変化に対し、親はどのように考え、どう接したらいいのでしょうか。学校からGIGAスクール構想やICT教育に関するパンフレットなどが配布されていますが、それを読むだけでは、親はどう捉えどう接していいのかわかりにくいという話をよく聞きます。自分が学生時代に経験していないことなのでなおさらですよね。ご家庭では、子どもの自主的な学びの姿勢を信じて見守ることが今保護者に求められます。子どもが自ら考える姿勢を尊重してあげること。「私が子どもの頃とは全く違う」というマインドセットがとても大切になります。■教員はTeach(教える)ではなく、Coach(導く)立場に変化これからの教育において、学校での教師の立場は「ティーチ(teach)」ではなく「コーチ(coach)」「ファシリテート(facilitate)」に変化しています。リクルートが提供する『スタディサプリ』を活用いただいている学校でも、算数や国語、英語といったような積み上げ学習は『スタディサプリ』のようなICTツールでの学びで効率的におこない、先生たちは生徒と向き合う時間により時間をかけています。教師が一方的に教えるのではなく、子どもたち同士で学び合い、一人一人の学びが深まるように導く授業づくりをするということです。子どもたちは「教えてもらう」ではなく「学び取る」という姿勢になります。学びのベクトルの向きが真逆に変わっていきます。言うならば、子どもを取り巻く学習環境も、それを見守る親御さんのマインドも今は大きな過渡期。戸惑うのは当たり前です。自分たちが経験してきた授業スタイルとは異なるのですから。頭では理解していても心が追い付かないということもあるかもしれませんが、これからの社会を生きる子どもたちに必要な力をつけていくために必要だと捉えてみてはいかがでしょうか。大事なのは学びの本質です。サッカーでも学校生活でも、社会人になっても大事な「主体性」を身につけるために、子どもの考える姿勢をサポートしてあげましょう。
2022年03月18日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が苦手とする「ダイレクトのミドルシュート」を克服するトレーニングをご紹介します。試合でゴール前にいるとき、味方から浮き球のクロスボールが飛んで来たら絶好のシュートチャンス。ダイレクトに蹴ってゴールを決めるときに使うのがボレーシュート。しかし、最初のうちはダイレクトで合わせるタイミングが分からなかったり、ボールにしっかりミートしてゴールの枠に飛ばすのが難しいもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合の中で絶好のシュートチャンスを逃さずボレーシュートが打てるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親と子が数メートル離れて立ち、親がボールを子どもの足元に転がす2.子どもはボールに向かって軽く走りながらミートして親に返す3.慣れたらゴールに向かってダイレクトでシュート【トレーニングのポイント】・ボールをよく見て足に当てる・走りながら蹴る・力めば強いボールが蹴れるわけではない。しっかりインパクトすること・身体全体を使う・ボールが来たところに自分の身体を合わせて迎えに行く・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月15日新型コロナウイルスの影響により、オンライン授業を取り入れた学校も多いと思いますが、子どもがノートパソコンやタブレットの画面に向かっている姿を目にするというこれまでとの変化に戸惑ってしまうという親御さんも多いようです。今後、教育現場に広まっていくといわれるICT教育。ですが、どんな風に取り組めばいいのでしょうか。そんなお悩みにお答えくださったのは、リクルートEd-tech総研所長の山下真司さん。新しい学習指導要領やGIGAスクール構想についての解説と、子どもたちの学びにどんないい効果があるのか、分かりやすく教えていただきました。勉強面だけでなく、サッカーでも必要な「主体的に学ぶ」姿勢がつくのだそうです。(取材・文:小林博子)(写真は少年サッカーのイメージ)【関連記事】大津高校平岡総監督「主体的なチャレンジを後押しするのも信頼関係があってこそ」■ICT教育とはインターネットの技術者を育てる授業ではないICT教育とは何か、皆さんご存じですか。学校関連の情報で目や耳にするけれど、あらためて訊かれるとよくわからないという方も多いのでは。ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。これまでよく耳にしたITはインターネットの技術そのものを指しましたが、ICTはネットの通信や情報処理だけでなく、情報や知識の共有などコミュニケーションをより重視しています。小学校で導入される「プログラミング」も、システムエンジニアを育てる授業と思っている方もいるようですが、あくまで「論理的思考」や物事が動くロジックを理解するためのものであり、ICT教育もプログラミングもどちらもパソコンやタブレットをツールとして使いますが、Webの仕組みなどを理解することを目的としたものではありません。子どもたちが今、タブレットやPCを使ってオンライン授業を受けていたり、課題を提出したりしているのは、ICTを活用した学習活動の充実を図る文部科学省の「GIGAスクール構想」という教育プロジェクトによるものです。「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字を取り名づけられました。■突如始まったように見えるICT教育、実は日本が遅れている分野GIGAスクール構想とは具体的には、学校における高速通信ネットワークを整備するとともに、小中学生がPCやタブレットなど1人1台の端末を持ち、ICTを利活用した教育を行うというもの。実は日本はその分野においては他国から大きく遅れをとっており、文部科学省が2019年にこの構想を発表したという経緯があります。「子どもたちの学びを止めない。コロナ禍でオンライン授業の必要性が急に高まったことで、学校のICT利用が行われるようになった」とお考えの方も多いようですが、前述したようにGIGAスクール構想はコロナウイルスが蔓延する前の2019年に発表されたものです。もともとは2023年までに5か年計画で順次進める予定だったものを、コロナウイルスにより一気に前倒ししたにすぎません。リクルートが提供する『スタディサプリ』もコロナ禍をきっかけに多くの学校で導入・活用が進みました。「Society5.0」社会 の到来と言われる今、ICT教育の普及に拍車がかかったことは、子どもたちの将来を考える上でよかったとポジティブに捉えるといいでしょう。とはいえ、コロナ禍の混乱の中で学校からタブレットが配布され、必要に迫られて急にオンライン授業が開始されたという印象は否めないですよね。こちらの気持ちや知識の準備がない中で突然端末を手にしている子どもを前に、保護者はどう関わってあげるのが正解なのか悩んでいるという声も耳にします。■「主体性」はサッカーでも教育においても重要なキーワードサカイクの理念である「自分で考えるサッカー」は、子どもが自ら考えて決める「主体性」を育むことを軸においていますが、その考えがまさにこれからの学校教育でも重要視されています。今年の「大学入学共通テスト」でも話題となりましたが、大まかに言うとこれまでのように「過去問の演習を重ねた暗記パターン」の学習スタイルではなく「授業や日常生活の中で課題を発見し、解決方法を構想できるか」「物事の本質を理解しているか」が問われています。それには思考力や判断力、表現力が必要で、これらはいわゆる「主体的な学び」により培われる能力でもあります。■教室では積極的に手を上げられない子もツールを通せば意見を出しやすくなることもICT教育は一人ひとりの子どもたちの主体性を育んでいくのに適したツールとも言えるでしょう。例えば授業中は子どもたちそれぞれが端末を通して自分の意見や考えを発信することができ、それをモニターに映しながら自分とは違う考えを知り、意見交換をして考えを深めたりする学習が取り入れられています。従来のように挙手して先生から指名された人だけが発表をするという授業風景とは異なっています。消極的な性格の子でも自分の考えを発信しやすくなったり、先生は多くの子どもの考えを紹介しながら、気づきを促して子どもたちの思考を深めることができます。それにより、自己肯定感が上がりやすくなり、非認知能力の育成にもつながっていきます。また、色々な考えがあることを知ることは「気づき」を得たり、新たな問いが生まれたりすることで学習意欲が高まります。「もっと知りたい、勉強したい」という気持ちは「主体性」のなによりも大きな原動力になります。■デジタルツールを使うことで実現できる個別最適、協働的な学び専門用語では「個別最適な学び」「協働的な学び」と呼ばれ、文部科学省が新しい学習指導要領の実施において一人一人の子どもたちの学習活動を充実させるためのキーワード。ICTを活用することで実現しやすくなったと言えるでしょう。主体性や協働する力は、学びの現場や入試で問われる力だけではなく、生涯を通して問われるスキルです。社会人になってからも、効率をよくする仕組みや業務の改善、見直しや新ビジネスの検討等など、どの立場の方も求められるスキルなので、社会人である親御さん世代は納得しやすいはずです。親子で戸惑いも多いICT教育かもしれませんが、多様な子どもたちが個性を活かしながらこうしたスキルを身に着けるにはもってこいともいえます。サッカーで必要な「自分で考える」ことにも良い影響を及ぼしてくれるかもしれません。■「文武両道」にもメリットがサッカーをはじめ、スポーツを頑張る子どもにも、ICT教育の活用は良い影響があります。動画や写真を共有してチーム内で意見交換をし、プレーの改善について考える機会が増えたりといったハード面はもちろんのこと、学ぶ場所や時間が制限されにくいため、サッカーをする時間と勉強をする時間のやりくりをしやすくなることも考えられます。ICTの活用により「文武両道」にも追い風が吹くと思えるのではないでしょうか。「自分で考える」を勉強にもサッカーにも。これからを生きる子どもたちにはぜひ、ICTを賢く利用して主体性をしっかり身につけてもらいたいですね。
2022年03月14日サッカーの練習には反復練習が欠かせないけど、メニューが単調になりがちで子どもも飽きやすいし保護者からも「またあの練習?次のステップに進まないの?」と言われる。土台がしっかりしてないと今後難しい技術を上積みしてもグラグラしてしまうから、反復練習は譲れない。だから、楽しくできるメニューを教えて。とのご相談。楽しくない基礎練習、みなさんはどうしていますか?今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちが楽しんで行えるメニューなどをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<プレスをかけられると焦ってボールを失う。落ち着いてビルドアップできるようになる練習は?<お父さんコーチからのご質問>池上さんこんにちは。近所のチームに頼まれて、数年前から指導に関わっています。私自身、高校までサッカーをしていた経験があるので、わが子は所属していないのですが依頼されて、という流れになります。相談したいのは、反復練習についてです。低学年(U-7)を担当しているので、キックやシュートの基礎を身につける練習が多いのですが、メニューの組み方が単調なので、週2回の練習ですが子どもたちが基礎練習の反復に飽きているように見えます。また、見学している保護者の方も「今日もあのメニューですか?次のステップに進まないのですか」と言ってくる方もいます。学校のドリルのように、次々と進んでいくイメージを持たれているのだと思いますが、ある程度反復練習は必要だと思っています。地味でつまらない基礎練習を、何とか飽きずに楽しめるようなメニューにしたいのですが、何か良いアドバイスはいただけませんでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。高校までサッカーをされていたそうなので、ご自分が教えてもらったことを伝えているのでしょうか。インサイドキックはこうやるんだよと教えて覚えさせる。その手順で進めていくと、どうしても反復練習は多くなりますね。さまざまな本のなかに練習メニューが書かれているし、この連載でもお伝えしているので良かったらチェックしてみてください。ネットなどで探しても、トレーニングメニューはたくさんあります。それらを試しては、指導している子どもに合うようにやり方を変化させることが重要です。■変化や競争を入れて楽しめる練習メニュー例えば、ご相談者様が教えておられる7歳以下ではこんな練習をやってはどうでしょうか。2人1組でキックの練習をするとします。止めて蹴るのでボールコントロールの練習にもなります。ただし、まだ6~7歳なので、ボールがどこに飛ぶかわかりません。遠くに飛んだボールを追いかけてとってくるのは時間のロスです。そんなとき、コンクリートの壁にそれぞれ向き合って蹴ってみる。うまく蹴ると、自分のところに返ってきます。そんなふうに変えるとロスがなくなります。また、反復練習には楽しみがあまりありません。そこで、蹴って上手く返ってうまく止められたら、後ろの線に下がれる。少しずつ遠くから蹴られるようになる。競争ですね。子どもたちは生き生きと取り組みます。■反復練習の根本的な問題、楽しく取り組めるようになる方法とはいえ、反復練習には根本的な問題があります。細分化しすぎると、試合で使えない技術になります。よって、ぜひゲームを中心に練習を組み立ててください。ゲームの中でうまくボールに足が当たらなかったり、チャンスだったのにボールをコントロールできなかったりします。そこを経てから「さっきはこうなっちゃったから練習してみよう」とキックの練習をやってみるといいでしょう。そうすると、反復練習に取り組むモチベーションも変わってきます。■練習したことを試合でトライすることで上達する少し練習したら、それを試合のなかでも使ってみます。例えば「パスするときは、さっき練習したインステップキックをやってみよう」と促します。試合の中でトライすることで上達します。試合中、常に上手く蹴れなくてまったく構いません。指導者もそこにイライラしたりせず、サッカーというスポーツの成り立ちを理解することを優先させてください。パスをつないで、みんなでゴールを奪う。そのために何をしたらいいかな?そういった問いかけをしてあげましょう。■インサイド→アウトサイドなど「段階を踏む」ものではないこの連載でも伝えていますが、私が考えるサッカーの指導は、ドリブルができるようになったら、次はパス。パスも基本技術といわれるインサイドキックができるようになったら、アウトサイドキックと「段階を踏む」ものではありません。もしもキックがうまくできない子どもがいるのであれば、ボールを変えてみてください。風船だとか、ビーチボール、ソフトバレーボール、あるいは3号級などの小さいボールにしてキックをさせてあげてください。私のチームでも2年生でインステップキックができない子にソフトバレーボールを使ってみたところものの10回程度蹴っただけでインステップに当てるコツを掴んでくれました。これは最新の研究(運動学習理論)というものから証明されていることです。上述したように、技術練習よりもミニゲームに時間を割きます。小学校低学年から、もっといえば幼稚園児も、試合をします。攻守はもちろんのこと、すべての技能が含まれているのが試合だからです。一見すると、どの技能が上手くなっているのかは、わかりづらいかもしれません。けれども、年齢が低ければ低いほど、サッカーというスポーツの仕組みや感覚、楽しさを伝えていったほうがいいと考えます。この子どもの育ちを、私は「らせん階段」みたいなものだと考えています。池上正さんの指導を動画で見る>>■身につけた技術を使うタイミングを理解するには時間が必要(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)らせん階段は、横から見ていると、より高いところへのぼっていくのがわかります。ところが、らせん階段をずっと上のほうから眺めると、どう見えるでしょう。柱のまわりをグルグル回るだけで、まるで元の場所に戻ってくるように見えます。子どものサッカーも同じです。大人は階段の上のほうにいるので、子どもが上達したように見えません。例えば、ドリブルのフェイントができるようになる。体得したけれど、どこでどのタイミングで使うと有効なのかを理解し、実践するまでに少し時間がかかります。一度やってみて「ああ、ここで使うんだ!」と気づいて、トライする。失敗したら、どうして失敗したかを考えて工夫します。子どもは自分が踏んでいるプロセスをうまく言語化はできませんが、早い遅いの個人差はあれ、そんなふうに階段をのぼっています。そういった成長のプロセスをぜひ保護者の方々に、らせん階段に例えて保護者に説明してください。そうすれば「子どもをどう育てるか」という視点を共有できます。そういった作業もコーチの大切な役割です。まずは、試合を軸にするトレーニングに切り替えましょう。以前とは変化していて、それが今は主流なのだと理解していただけるとうれしいです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年03月11日「あのコーチは厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」。みなさんの周りにもそんな発言をする方いませんか?随時声を出して指示するなど熱い姿勢を見せる方を「情熱がある」コーチをありがたがる親御さんの声は少なくありませんが、はたしてそれは子どもたちを伸ばす指導なのでしょうか。いつもは保護者からの相談にスポーツと教育のジャーナリスト・島沢優子さんがアドバイスを授けるこの連載ですが、今回は編集部からの質問に答えていただきました。(構成・文:島沢優子)(写真はフリー素材)<<Bチームで苦しむ中学生の息子にどんな言葉をかければいいのか問題<サカイク編集部からの質問>みなさん「情熱のある指導者」の「情熱」意味をはき違えていませんか?熱い指導は保護者にとってわかりやすく、いかにも子どものことを思っているように映ります。しかし、あれこれ言い過ぎ、指示しすぎる指導は選手を恐縮させ、逆に子どもたちの考える機会・思考力を奪うことにつながるのではないでしょうか。(もちろん人格を否定するような発言は言語道断です)子どもたちのことを本当に考え実践する指導者たちが持つ「情熱」とは、どんなものなのか。今回は、過去から変わらず続く価値観が現代の子どもたちの指導に合っているのか、というテーマについてお送りします。<島沢さんからの回答>先日、池上正さんと、祖母井秀隆さんが、とあるリモートセミナーに登場されていました。池上さんはサカイクで連載されたり、講習会をしています。池上さんが師匠と仰ぐ祖母井さんは元ジェフユナイテッド市原・千葉でGМなどを歴任し、2007年には当時フランスリーグ1部だったグルノーブル・フット38のGМも務めました。恐らく皆さんはご存知でしょう。セミナーの中で、池上さんがジェフで中学生チームを指導したときの話が出ました。■保護者がコーチの指示を求める試合中、保護者から池上さんにこんな声が飛んだそうです。「どうして何も言わないんですか?相手のコーチはたくさん指示を出してますよ」語気鋭く訴える父親に、池上さんは答えます。「いや、私は選手が自分で考えてプレーするかどうかを見ています。実は日本一厳しいコーチかもしれませんよ」■怒鳴ったり指示を与える言動は、子どもの自立と成長を育む多くの日本人は、怒鳴ったり、叱ったり、煽ったりする態度からしか「厳しさ」をイメージできません。しかし、池上さんは「主体的に取り組まなければ、君は何も獲得できないよ」というメッセージを込めた態度を一貫して取ってきました。私は、それが真の厳しさだと考えます。怒鳴ったり指示を与える言動は、実は甘やかしているのかもしれません。怒って刺激を与えているのですから、それは「世話を焼いている」ことになります。それは時に「過干渉」にもなります。子どもに対し過度に干渉する言動は、自立と成長を阻む。このことは現在、教育界や幼児教育、保育の世界でも少しずつ認識されています。この大事なことを、すでに40年近く前から共有していたのが、前述した池上さんと祖母井さんなのです。セミナーで上記の話が出たとき、祖母井さんは「そうだね。池上、フェンス越しに呼びつけられたねえ」と笑みを浮かべながら振り返っていました。■日本でも池上さんらが40年近く前から自主性を尊重するコーチングに取り組んでいたさて、さきほど書いた40年近くの話です。ドイツの大学を卒業され、欧州の育成指導に詳しい祖母井さんが、オランダのサッカー協会が育成の指導者用に制作した一本のビデオテープを池上さんに見せてくれました。そこには向こうのクラブのトレーニングの様子が紹介されていました。池上さんはコーチと選手の姿に大きな衝撃を受けたそうです。コーチが笛を吹いて選手を動かし、指示命令を繰り返すといった日本によくある練習風景はそこにはありませんでした。選手を煽るのではなく、じっと見守って良いプレーはほめる。何よりコーチと選手が頻繁に対話をしている。子どもが自分の意見をきちんと伝えている。そしてコーチもそれを歓迎している。そのことにとても驚いたそうです。祖母井さんから、「ほら見て!(指導が)一方的じゃないよ」といわれ、「本当にそうですね」と答えたといいます。池上さんはYMCAで子どもにサッカーを教え始めたてまだ数年でしたが、その際祖母井さんに「おまえのところから育成を変えていけよ」と言われました。池上さんはそれ以前から子どもの自主性を尊重するコーチング法を自分なりに追求していましたが、「このやり方をもっと深めていこう」と再確認したと話されていました。これが、お二人が「考える力と創造力をひきだす指導」を追求し始めた出発点になったのかもしれません。恐らく、コーチの誰もが子どもをしかり飛ばし、時には暴力もあった時代、しかもこんなに若い頃から、指導のパラダイムシフトに取り組まれていたのです。■「厳しい指導」が暴走すると、生徒の自殺につながることも私は、2012年に大阪の市立高校でバスケットボール部員が顧問による不適切な指導が原因で自死した事件のルポを本にするなどして以来、スポーツ指導の実態や改革について取材してきました。指導者の中には「私は熱血なので」「私は厳しいので、子どもは怖がっているかも知れませんが」と自虐的に話す人は少なくありません。子どもは怖がっているけれど、自分は子どものことを考え、愛情をもって指導しているといいます。ところが、この怒鳴ったり、叱ったり、煽ったりする「厳しさ」は、本人が感情的になりすぎると、指導が暴走します。ご本人も制御できない場面が出てきます。指導現場での生徒の自殺事件はどれもその果てに起きています。一方で、子どもや生徒が、暴言など不適切な指導をするコーチを慕う場面は少なくありません。なぜかといえば、暴力を受けたり怒られるのは「自分のせい」という自責の念が湧くからです。この心理は「コーチに認められたい。見捨てられたらおしまいだ」という「見捨てられる恐怖」によるものと思われます。■怖いコーチが見せる「瞬間的な優しさ」に惑わされず本質を見て(写真はフリー素材)心理学の専門家によると、暴言の多い怖いコーチが少しでもやさしいふるまい、言葉がけ、行動をすると「被害者である子どもはそこを掬い取ってしまいやすい」と言います。つまり、他者からみたら良くない指導者なのに、被害者にとってはそれだけではないからです。やさしくされたこともある、大事にされた瞬間もある。その瞬間のイメージが大きく残り、揺れ動いてしまうわけです。このような指導者に気をつけなくてはいけません。当事者である子どもは判断しづらいのですから、親がそのような眼で指導者を見る。そのためにはぜひ、さまざまな変化があることを学んでほしいと思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年03月10日タニラダーインストラクター制度1期生として、コーチを務めるクラブで「コーディネーショントレーニング」を導入し、タニラダーメソッドで子どもたちを指導する菅沼勇作さん。今回はプレー面の変化と子どもたちの感想。そしてタニラダー発案者・谷真一郎さんのメッセージを紹介します。菅沼勇作さんがコーチをするFCレガーロは「ボールを保持し、相手との駆け引きを楽しむ」をテーマにしており、「そのためには相手からボールを奪い、マイボールにすることが必要」という考えのもと、ボールを奪うプレーを重視しています。「うちのチームには、それほどスピードのある子がいるわけではありません。それでも、ボールを奪うためには、相手から離されないことが必要になるので、スピードアップと効率的な動きを身につけるために、タニラダーでトレーニングをしています」ボールを奪いに行く際には接触プレーもありますが、タニラダーでトレーニングをするようになってから、滑ることやケガが減ったそうです。「効率的な動きを身につけることで、守備だけでなく、攻撃の場面でも成果が出ています。ジュニア年代は技術を身につけることも大切ですが、それと両輪でケガをしないための体の動かし方、効率の良い動き方をトレーニングすることも必要だと思っています」■子どもたちも感じるトレーニングの効果FCレガーロの子どもたちもトレーニング効果は感じており、「足が楽になったし、いつもよりスムーズに足が動くようになった」「手を横に振っていたのを、縦で振ることを教えてもらってから、走るのが速くなった」とうれしそうに話します。「足の爪先の方を地面について、バネが足に入っているように、跳ぶように走ったら速くなった」(れんせいくん・小学3年生)。「いつも足のかかとから地面についていたのを、つま先からつけるようにしたら速くなった」(ひらりさん・小学3年生)子どもたちの進化はめざましく、集中的にトレーニングをすることで正しいランニングフォームを身につけ、走るスピードも明らかに速くなっていました。【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>■タニラダーメソッドを広げる仲間を募集タニラダーメソッドで、子どもたちを成長に導いている菅沼さん。タニラダー発案者の谷真一郎さんも「彼は賢くて感受性も高いので、いい指導者になると思います」と太鼓判を押します。チームで「ボールを奪う」ことから逆算して、タニラダーを使ったアジリティトレーニングを行っていることについて、谷さんは「ステップがしっかり踏めると、相手のボールを奪うことができるようになるので、マイボールになる回数が増えます」と話し、こう続けます。「相手からボールを奪うことができれば、ドリブルやパス、シュートなど、自分のやりたいプレーに持ち込めるようになります。正しいステップを身につける前と後とでは、見える景色が違うはず。より楽しく、うまくサッカーをプレーするためにも、ぜひ正しいステップを身につけて、違う世界を感じてほしいです」タニラダーメソッドが開発されて、今年で10年目を迎えます。メソッドも年々ブラッシュアップされ、Jリーガーから子どもたちまで、レベルを問わず、動きの質を向上させた選手が続出しています。日本サッカーをより良くするために、動きのスタンダードを上げる。そのために谷さんを始め、タニラダーインストラクターは活動を続けています。谷さんは「タニラダーメソッドを指導できる仲間を増やし、最終的にはこの動きを日本のスタンダードにしたいです」と言葉に力を込めます。「僕を始め、これまでのインストラクターの人数では、日本中に広めるには限りがある。そう感じて、インストラクター制度を作りました。指導できる人が増えることで、僕たちだけではたどり着くことのできなかった子どもたちにリーチすることができます。その結果、子どもたちが変化し、成長するチャンスも増えると思います」子どもは、大人が想像している以上の速度で進化していきます。「とくに小学校低学年はすぐに変わります。見て感じて、真似をする力がすごいんです。子どもたちは『変われる力』を持っていることを、より多くの人に知ってもらいたいです。ラダートレーニングで動きが変わると、自信がつき、プレーも変化します。日常が変わればプレーが変わる。その感覚をぜひ知ってほしいです」谷さんはタニラダートレーニングに興味を持つ指導者に向けて、次のメッセージを送ります。「サッカー指導者の方は、どうしてもボールコントロールを始めとする技術面に意識が行きがちです。それも大切ですが、動きの質を高めることにも目を向けてもらえると、技術面もさらに上手くなると思います。そのことに、多くの指導者、子どもたちに気がついてほしいです」さらに、このように付け加えます。「そのためには、タニラダーを指導できる仲間が必要です。急募と言っていいでしょう。ぜひ僕と一緒に学び、子どもたちをより良い選手へと成長させる、手助けをしてあげてほしいと思っています」タニラダーインストラクターは4期生を募集中。谷さんのメッセージにピンと来た方は、こちらにアクセスしてみてください。きっと、新しい世界が待っているはずです。【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>
2022年03月09日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が苦手とする「ボールキープ」を克服するトレーニングをご紹介します。試合では、相手にボールを奪われないようにしっかりキープしなければなりません。しかし、ボールを取りに来る相手が届かない場所にボールを置いてボールを守るのが難しいもの。親子で遊びながらボールキープの基本、原理を理解する動きを繰り返し、苦手意識を払しょくしてあげましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、身体を上手に使って足元でしっかりボールキープができるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親が手でボールを持ち、ある程度の高さに固定2.子どもはボールのどこにミートすればいいか、止まっているボールに足を当てて感覚をつかむ3.少し助走をつけて、ボールに足を当てる動きをやってみる4.慣れたら、親は数メートル離れたところから山なりのボールを投げ、子どもは地面に落ちる前にしっかり当ててシュート5.ボールの高さを変えるなど、難易度を上げる【トレーニングのポイント】・最初は足のどこに当てるか感覚をつかむ・ボールをよく見て足に当てる・蹴る時に上体を反ってしまうとボールは上に飛んでしまうので、身体を被せるようにしてミートする・高いボールのときは身体を寝かせて足を高く上げる・低いボールのときは身体を被せてシュート・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月08日子どもからプロ選手まで、「足が速くなった」「動きのキレが増した」「1対1に強くなった」などの支持を得る、タニラダートレーニング。サカイクはより多くの人にタニラダーを経験してもらうため「公認インストラクター制度」を開始しました。2021年9月に1期がスタートし、これまで約40人が資格を取得。公認インストラクターとして活動を続けています。今回は1期生の中から、所属クラブで「コーディネーショントレーニング」を導入して活動の場を広げている、菅沼勇作さんに話をうかがいました。東京都東村山市で活動する『FCレガーロ』で指導をする菅沼勇作さん。柔道整復師の資格を持ち、コーチ兼トレーナーとして活動をしています。本格的にコーチを始めたのは2年前。その後、タニラダーインストラクターの資格を取得し、アジリティをメインとした「コーディネーショントレーニング」を導入。子どもたちの動きの改善に取り組んでいます。「子どもたちのアジリティや運動能力を向上させるために、谷さんのメソッドが役立つと感じていました。インストラクター制度ができると聞いて、『これを受講すれば、自分も子どもたちに、谷さんの知識を還元できるかもしれない』と思い、1期生に申し込みました」【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>■正しい動きを身につける重要性インストラクター資格を取得するための講義は、コロナ禍ゆえオンラインで行われました。菅沼さんはタニラダーメソッドを学ぶ中で「お手本を見せる立場の自分が、正しい動きをすること」の重要性を再確認したと言います。画像:実技試験のフィードバック「子どもたちに動き方を説明するときに、インストラクターである自分が、正しい動きを実演して見せる必要があります。自分ではできていると思っていた動きも、細かいところに修正点があり、そこを谷さんに指導してもらえるのですごく勉強になりました」谷さんのアドバイスを受けることで「自分の動きを客観的に見ることができた」と話す菅沼さん。理論を理解することで動きの精度が高まり、晴れて公認インストラクターの道を歩み始めました。■チームに導入して起こった変化資格取得以降、自身が指導をするチームでコーディネーショントレーニングを導入。サッカーのトレーニングに加え、動きの質を高めるタニラダートレーニングを取り入れることで、子どもたちのプレーに変化が出てきたと言います。「タニラダーでトレーニングをする前は、足の入れ替えやステップワークがうまくいかず、ズルっと滑ってしまう場面をよく目にしました。それが、タニラダーでトレーニングを積むことで、足のつき方、パワーポジションなどを身につけ、滑る子が減りました」それまでは前のめりになっていたり、かかとに荷重する『後ろ重心』の子が多く、不安定な動きにつながっていたそうです。それが、トレーニングをすることで改善され「ケガをする子も減った」と話します。「滑らないためにはどうすればいいかをトレーニングに落とし込むことで、重心のコントロールがうまくなりました。その結果、サッカーのプレーにも良い影響が見え始めてきました」チームの監督からも「動きが変わってきたね」と言われることもあるそうで、菅沼さんは「タニラダートレーニングをしているからだと思います」と笑顔を見せます。子どもたちも、楽しみながらタニラダーに取り組んでいるそうで、「スクールでは楽しむことが50%。動きを正確にやることが50%の割合で取り組んでいます」と話し、こう続けます。「子どもたちは、楽しみながら動きを身につけています。動きが変わると、プレーも変わるんですよね。それは子どもたちも感じていて『ボールが取れるようになった』『相手についていけるようになった』『守備ってこうやってやるんだ!』と言う子もいました」チームトレーニングでは、練習前のウォーミングアップで、動きのドリルを10分から15分ほど実施しているそうで「子どもたちの理解度にもよりますが、1ヶ月ほどで成果が出てきます」と、成長度合いを感じています。「タニラダーは、チームとして簡単に取り入れられるところがメリットだと思います。谷さんに教えてもらったことをチームに還元することで、子どもたちの動きが変わります。それは目に見えて感じますね」インタビューの中で「自分が学び、身につけたことを、子どもたちに還元できることがうれしい」と、繰り返し話してくれた菅沼さん。■動きが身につくまで谷コーチによる細かくフィードバック受講期間中は、谷さんが親身になって何度もやりとりをしてくれたそうで「この動きをもうちょっと修正しようなど、細かく指導してくれるので、自分の動きも変わりましたし、子どもたちにデモンストレーションを見せるときに、正しい動きができるようになりました」と自身の成長も感じています。菅沼さんの指導を受けた子どもたちの動きが変わり、チームとしての結果に変化が現れる未来が楽しみです。インストラクター制度は4期生を募集中。興味のある方は、こちらにアクセスしてみてください。【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>
2022年03月08日