GIGAスクール構想によるICT教育の浸透は、子どもたちの学習スタイルを大きく変化させました。前編ではICTの活用はサッカーにも必要とされる「主体性」を育みやすい側面があることをリクルートEd-tech総研所長の山下真司さんが解説してくれました。ICT教育による効果をある程度理解すると、次に思うことは親である私たちがどう捉え、寄り添っていくべきかということかもしれません。まず大切なことは「今までとは違う」というマインドセットを行うことだと山下さんは言います。それはどういうことなのでしょうか。ICT教育への親の向き合い方についてアドバイスをいただきました。(取材・文:小林博子)(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:今話題の「ICT教育」はサッカー、勉強で主体的に学ぶ姿勢が身につく!?ICT教育のメリットとは■使う時間も使い方も「自分で決める」こと自宅で画面を見つめる時間が長くなった我が子の姿を見ると、「目が悪くなるのでは」と心配になる方は多いはず。使っていい時間を決めるなどの対策を講じているご家庭も多いことでしょう。ですが、使う時間はひとまず子どもに決めさせてあげましょう。前編でお伝えしたように、学校では今、子どもたちの学び方が大きく変化していて、「主体性のある学び」に重点がおかれています。ICTをツールとして活用することで、その学びがさらに加速すると考えられています。1人1台の端末、つまり子どもたちの学習のためのツールだからこそ、使う時間や使い方といったルールも主体性を尊重してあげるほうがベターだといいます。もしかしたら「好きなだけ使う」と決める子もいるかもしれませんが、そこは少し我慢してください。なぜそう決めたのか、それについてどう思うのかを問い、否定せずに見守ってあげることが大切です。■親が決めたことを守らせると、良くない結果が出た時に「ママ/パパのせいだ」と他責的に子どもは次第に、自分自身で決めたことが自分に良い影響を及ぼしてくれたのかを振り返るときがくるはずです。親にタブレットを使う時間を制限されていたらできないことです。自分の判断をもう一人の自分が客観的に評価できれば、自らの意志で改善に取り組むでしょう。これは「自己調整力」と言われるものであり、学習力に必要な「メタ認知」を強くしてくれます。このようなケースのように、絶対的な正解がないものに対しては、自分で考えて得られる「納得解」を見つけることが大切です。なお、親が決めたことを守らせるスタイルにはもう1つの懸念があります。それは子どもが物事の結果を他責的に捉える習慣がつきやすくなってしまうこと。「宿題が終わらなかったのはママ/パパが決めた制限時間のせい」など、真摯に振り返ることができずに他者のせいにしてしまうかもしれません。■検索は「知識の獲得」であり、思考を阻害するものではない疑問や知りたいことがあるときに、手元にタブレットがあるとすぐに調べることができます。すぐに解答を得られるため、「自分で考える」ことが阻害されはしないかと心配になるという親御さんもいます。それに対しては、「知識と思考は別」と心得るべきです。検索して得られるのは「知識」に過ぎません。大事なのは子どもが持っている知識と得られた知識を組み合わせたり、「活用」したり、「なぜだろう」と考えるクセをつけることです。さらには検索で得られた情報が本当に正しいかどうかも考えることも大切です。ここでの親御さんの役割は、「なぜ知りたいと思ったのか」「それは事実なのだろうか?」「その知識を得てどう思うか」といった問いをお子さんに投げかけてみてください。いわゆる「クリティカルシンキング(前提を疑う思考)」です。情報を鵜呑みにして終わるのではなく、まず「?」を持つこと。そして「?」だったものが「!」になる学習プロセスによって、より深い次元の学びを得られるのです。■子どもではなく「親」が変わらなければならない激動の変化に対し、親はどのように考え、どう接したらいいのでしょうか。学校からGIGAスクール構想やICT教育に関するパンフレットなどが配布されていますが、それを読むだけでは、親はどう捉えどう接していいのかわかりにくいという話をよく聞きます。自分が学生時代に経験していないことなのでなおさらですよね。ご家庭では、子どもの自主的な学びの姿勢を信じて見守ることが今保護者に求められます。子どもが自ら考える姿勢を尊重してあげること。「私が子どもの頃とは全く違う」というマインドセットがとても大切になります。■教員はTeach(教える)ではなく、Coach(導く)立場に変化これからの教育において、学校での教師の立場は「ティーチ(teach)」ではなく「コーチ(coach)」「ファシリテート(facilitate)」に変化しています。リクルートが提供する『スタディサプリ』を活用いただいている学校でも、算数や国語、英語といったような積み上げ学習は『スタディサプリ』のようなICTツールでの学びで効率的におこない、先生たちは生徒と向き合う時間により時間をかけています。教師が一方的に教えるのではなく、子どもたち同士で学び合い、一人一人の学びが深まるように導く授業づくりをするということです。子どもたちは「教えてもらう」ではなく「学び取る」という姿勢になります。学びのベクトルの向きが真逆に変わっていきます。言うならば、子どもを取り巻く学習環境も、それを見守る親御さんのマインドも今は大きな過渡期。戸惑うのは当たり前です。自分たちが経験してきた授業スタイルとは異なるのですから。頭では理解していても心が追い付かないということもあるかもしれませんが、これからの社会を生きる子どもたちに必要な力をつけていくために必要だと捉えてみてはいかがでしょうか。大事なのは学びの本質です。サッカーでも学校生活でも、社会人になっても大事な「主体性」を身につけるために、子どもの考える姿勢をサポートしてあげましょう。
2022年03月18日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が苦手とする「ダイレクトのミドルシュート」を克服するトレーニングをご紹介します。試合でゴール前にいるとき、味方から浮き球のクロスボールが飛んで来たら絶好のシュートチャンス。ダイレクトに蹴ってゴールを決めるときに使うのがボレーシュート。しかし、最初のうちはダイレクトで合わせるタイミングが分からなかったり、ボールにしっかりミートしてゴールの枠に飛ばすのが難しいもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合の中で絶好のシュートチャンスを逃さずボレーシュートが打てるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親と子が数メートル離れて立ち、親がボールを子どもの足元に転がす2.子どもはボールに向かって軽く走りながらミートして親に返す3.慣れたらゴールに向かってダイレクトでシュート【トレーニングのポイント】・ボールをよく見て足に当てる・走りながら蹴る・力めば強いボールが蹴れるわけではない。しっかりインパクトすること・身体全体を使う・ボールが来たところに自分の身体を合わせて迎えに行く・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月15日新型コロナウイルスの影響により、オンライン授業を取り入れた学校も多いと思いますが、子どもがノートパソコンやタブレットの画面に向かっている姿を目にするというこれまでとの変化に戸惑ってしまうという親御さんも多いようです。今後、教育現場に広まっていくといわれるICT教育。ですが、どんな風に取り組めばいいのでしょうか。そんなお悩みにお答えくださったのは、リクルートEd-tech総研所長の山下真司さん。新しい学習指導要領やGIGAスクール構想についての解説と、子どもたちの学びにどんないい効果があるのか、分かりやすく教えていただきました。勉強面だけでなく、サッカーでも必要な「主体的に学ぶ」姿勢がつくのだそうです。(取材・文:小林博子)(写真は少年サッカーのイメージ)【関連記事】大津高校平岡総監督「主体的なチャレンジを後押しするのも信頼関係があってこそ」■ICT教育とはインターネットの技術者を育てる授業ではないICT教育とは何か、皆さんご存じですか。学校関連の情報で目や耳にするけれど、あらためて訊かれるとよくわからないという方も多いのでは。ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを意味します。これまでよく耳にしたITはインターネットの技術そのものを指しましたが、ICTはネットの通信や情報処理だけでなく、情報や知識の共有などコミュニケーションをより重視しています。小学校で導入される「プログラミング」も、システムエンジニアを育てる授業と思っている方もいるようですが、あくまで「論理的思考」や物事が動くロジックを理解するためのものであり、ICT教育もプログラミングもどちらもパソコンやタブレットをツールとして使いますが、Webの仕組みなどを理解することを目的としたものではありません。子どもたちが今、タブレットやPCを使ってオンライン授業を受けていたり、課題を提出したりしているのは、ICTを活用した学習活動の充実を図る文部科学省の「GIGAスクール構想」という教育プロジェクトによるものです。「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字を取り名づけられました。■突如始まったように見えるICT教育、実は日本が遅れている分野GIGAスクール構想とは具体的には、学校における高速通信ネットワークを整備するとともに、小中学生がPCやタブレットなど1人1台の端末を持ち、ICTを利活用した教育を行うというもの。実は日本はその分野においては他国から大きく遅れをとっており、文部科学省が2019年にこの構想を発表したという経緯があります。「子どもたちの学びを止めない。コロナ禍でオンライン授業の必要性が急に高まったことで、学校のICT利用が行われるようになった」とお考えの方も多いようですが、前述したようにGIGAスクール構想はコロナウイルスが蔓延する前の2019年に発表されたものです。もともとは2023年までに5か年計画で順次進める予定だったものを、コロナウイルスにより一気に前倒ししたにすぎません。リクルートが提供する『スタディサプリ』もコロナ禍をきっかけに多くの学校で導入・活用が進みました。「Society5.0」社会 の到来と言われる今、ICT教育の普及に拍車がかかったことは、子どもたちの将来を考える上でよかったとポジティブに捉えるといいでしょう。とはいえ、コロナ禍の混乱の中で学校からタブレットが配布され、必要に迫られて急にオンライン授業が開始されたという印象は否めないですよね。こちらの気持ちや知識の準備がない中で突然端末を手にしている子どもを前に、保護者はどう関わってあげるのが正解なのか悩んでいるという声も耳にします。■「主体性」はサッカーでも教育においても重要なキーワードサカイクの理念である「自分で考えるサッカー」は、子どもが自ら考えて決める「主体性」を育むことを軸においていますが、その考えがまさにこれからの学校教育でも重要視されています。今年の「大学入学共通テスト」でも話題となりましたが、大まかに言うとこれまでのように「過去問の演習を重ねた暗記パターン」の学習スタイルではなく「授業や日常生活の中で課題を発見し、解決方法を構想できるか」「物事の本質を理解しているか」が問われています。それには思考力や判断力、表現力が必要で、これらはいわゆる「主体的な学び」により培われる能力でもあります。■教室では積極的に手を上げられない子もツールを通せば意見を出しやすくなることもICT教育は一人ひとりの子どもたちの主体性を育んでいくのに適したツールとも言えるでしょう。例えば授業中は子どもたちそれぞれが端末を通して自分の意見や考えを発信することができ、それをモニターに映しながら自分とは違う考えを知り、意見交換をして考えを深めたりする学習が取り入れられています。従来のように挙手して先生から指名された人だけが発表をするという授業風景とは異なっています。消極的な性格の子でも自分の考えを発信しやすくなったり、先生は多くの子どもの考えを紹介しながら、気づきを促して子どもたちの思考を深めることができます。それにより、自己肯定感が上がりやすくなり、非認知能力の育成にもつながっていきます。また、色々な考えがあることを知ることは「気づき」を得たり、新たな問いが生まれたりすることで学習意欲が高まります。「もっと知りたい、勉強したい」という気持ちは「主体性」のなによりも大きな原動力になります。■デジタルツールを使うことで実現できる個別最適、協働的な学び専門用語では「個別最適な学び」「協働的な学び」と呼ばれ、文部科学省が新しい学習指導要領の実施において一人一人の子どもたちの学習活動を充実させるためのキーワード。ICTを活用することで実現しやすくなったと言えるでしょう。主体性や協働する力は、学びの現場や入試で問われる力だけではなく、生涯を通して問われるスキルです。社会人になってからも、効率をよくする仕組みや業務の改善、見直しや新ビジネスの検討等など、どの立場の方も求められるスキルなので、社会人である親御さん世代は納得しやすいはずです。親子で戸惑いも多いICT教育かもしれませんが、多様な子どもたちが個性を活かしながらこうしたスキルを身に着けるにはもってこいともいえます。サッカーで必要な「自分で考える」ことにも良い影響を及ぼしてくれるかもしれません。■「文武両道」にもメリットがサッカーをはじめ、スポーツを頑張る子どもにも、ICT教育の活用は良い影響があります。動画や写真を共有してチーム内で意見交換をし、プレーの改善について考える機会が増えたりといったハード面はもちろんのこと、学ぶ場所や時間が制限されにくいため、サッカーをする時間と勉強をする時間のやりくりをしやすくなることも考えられます。ICTの活用により「文武両道」にも追い風が吹くと思えるのではないでしょうか。「自分で考える」を勉強にもサッカーにも。これからを生きる子どもたちにはぜひ、ICTを賢く利用して主体性をしっかり身につけてもらいたいですね。
2022年03月14日サッカーの練習には反復練習が欠かせないけど、メニューが単調になりがちで子どもも飽きやすいし保護者からも「またあの練習?次のステップに進まないの?」と言われる。土台がしっかりしてないと今後難しい技術を上積みしてもグラグラしてしまうから、反復練習は譲れない。だから、楽しくできるメニューを教えて。とのご相談。楽しくない基礎練習、みなさんはどうしていますか?今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちが楽しんで行えるメニューなどをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<プレスをかけられると焦ってボールを失う。落ち着いてビルドアップできるようになる練習は?<お父さんコーチからのご質問>池上さんこんにちは。近所のチームに頼まれて、数年前から指導に関わっています。私自身、高校までサッカーをしていた経験があるので、わが子は所属していないのですが依頼されて、という流れになります。相談したいのは、反復練習についてです。低学年(U-7)を担当しているので、キックやシュートの基礎を身につける練習が多いのですが、メニューの組み方が単調なので、週2回の練習ですが子どもたちが基礎練習の反復に飽きているように見えます。また、見学している保護者の方も「今日もあのメニューですか?次のステップに進まないのですか」と言ってくる方もいます。学校のドリルのように、次々と進んでいくイメージを持たれているのだと思いますが、ある程度反復練習は必要だと思っています。地味でつまらない基礎練習を、何とか飽きずに楽しめるようなメニューにしたいのですが、何か良いアドバイスはいただけませんでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。高校までサッカーをされていたそうなので、ご自分が教えてもらったことを伝えているのでしょうか。インサイドキックはこうやるんだよと教えて覚えさせる。その手順で進めていくと、どうしても反復練習は多くなりますね。さまざまな本のなかに練習メニューが書かれているし、この連載でもお伝えしているので良かったらチェックしてみてください。ネットなどで探しても、トレーニングメニューはたくさんあります。それらを試しては、指導している子どもに合うようにやり方を変化させることが重要です。■変化や競争を入れて楽しめる練習メニュー例えば、ご相談者様が教えておられる7歳以下ではこんな練習をやってはどうでしょうか。2人1組でキックの練習をするとします。止めて蹴るのでボールコントロールの練習にもなります。ただし、まだ6~7歳なので、ボールがどこに飛ぶかわかりません。遠くに飛んだボールを追いかけてとってくるのは時間のロスです。そんなとき、コンクリートの壁にそれぞれ向き合って蹴ってみる。うまく蹴ると、自分のところに返ってきます。そんなふうに変えるとロスがなくなります。また、反復練習には楽しみがあまりありません。そこで、蹴って上手く返ってうまく止められたら、後ろの線に下がれる。少しずつ遠くから蹴られるようになる。競争ですね。子どもたちは生き生きと取り組みます。■反復練習の根本的な問題、楽しく取り組めるようになる方法とはいえ、反復練習には根本的な問題があります。細分化しすぎると、試合で使えない技術になります。よって、ぜひゲームを中心に練習を組み立ててください。ゲームの中でうまくボールに足が当たらなかったり、チャンスだったのにボールをコントロールできなかったりします。そこを経てから「さっきはこうなっちゃったから練習してみよう」とキックの練習をやってみるといいでしょう。そうすると、反復練習に取り組むモチベーションも変わってきます。■練習したことを試合でトライすることで上達する少し練習したら、それを試合のなかでも使ってみます。例えば「パスするときは、さっき練習したインステップキックをやってみよう」と促します。試合の中でトライすることで上達します。試合中、常に上手く蹴れなくてまったく構いません。指導者もそこにイライラしたりせず、サッカーというスポーツの成り立ちを理解することを優先させてください。パスをつないで、みんなでゴールを奪う。そのために何をしたらいいかな?そういった問いかけをしてあげましょう。■インサイド→アウトサイドなど「段階を踏む」ものではないこの連載でも伝えていますが、私が考えるサッカーの指導は、ドリブルができるようになったら、次はパス。パスも基本技術といわれるインサイドキックができるようになったら、アウトサイドキックと「段階を踏む」ものではありません。もしもキックがうまくできない子どもがいるのであれば、ボールを変えてみてください。風船だとか、ビーチボール、ソフトバレーボール、あるいは3号級などの小さいボールにしてキックをさせてあげてください。私のチームでも2年生でインステップキックができない子にソフトバレーボールを使ってみたところものの10回程度蹴っただけでインステップに当てるコツを掴んでくれました。これは最新の研究(運動学習理論)というものから証明されていることです。上述したように、技術練習よりもミニゲームに時間を割きます。小学校低学年から、もっといえば幼稚園児も、試合をします。攻守はもちろんのこと、すべての技能が含まれているのが試合だからです。一見すると、どの技能が上手くなっているのかは、わかりづらいかもしれません。けれども、年齢が低ければ低いほど、サッカーというスポーツの仕組みや感覚、楽しさを伝えていったほうがいいと考えます。この子どもの育ちを、私は「らせん階段」みたいなものだと考えています。池上正さんの指導を動画で見る>>■身につけた技術を使うタイミングを理解するには時間が必要(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)らせん階段は、横から見ていると、より高いところへのぼっていくのがわかります。ところが、らせん階段をずっと上のほうから眺めると、どう見えるでしょう。柱のまわりをグルグル回るだけで、まるで元の場所に戻ってくるように見えます。子どものサッカーも同じです。大人は階段の上のほうにいるので、子どもが上達したように見えません。例えば、ドリブルのフェイントができるようになる。体得したけれど、どこでどのタイミングで使うと有効なのかを理解し、実践するまでに少し時間がかかります。一度やってみて「ああ、ここで使うんだ!」と気づいて、トライする。失敗したら、どうして失敗したかを考えて工夫します。子どもは自分が踏んでいるプロセスをうまく言語化はできませんが、早い遅いの個人差はあれ、そんなふうに階段をのぼっています。そういった成長のプロセスをぜひ保護者の方々に、らせん階段に例えて保護者に説明してください。そうすれば「子どもをどう育てるか」という視点を共有できます。そういった作業もコーチの大切な役割です。まずは、試合を軸にするトレーニングに切り替えましょう。以前とは変化していて、それが今は主流なのだと理解していただけるとうれしいです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年03月11日「あのコーチは厳しいけど、情熱があっていいコーチだ」。みなさんの周りにもそんな発言をする方いませんか?随時声を出して指示するなど熱い姿勢を見せる方を「情熱がある」コーチをありがたがる親御さんの声は少なくありませんが、はたしてそれは子どもたちを伸ばす指導なのでしょうか。いつもは保護者からの相談にスポーツと教育のジャーナリスト・島沢優子さんがアドバイスを授けるこの連載ですが、今回は編集部からの質問に答えていただきました。(構成・文:島沢優子)(写真はフリー素材)<<Bチームで苦しむ中学生の息子にどんな言葉をかければいいのか問題<サカイク編集部からの質問>みなさん「情熱のある指導者」の「情熱」意味をはき違えていませんか?熱い指導は保護者にとってわかりやすく、いかにも子どものことを思っているように映ります。しかし、あれこれ言い過ぎ、指示しすぎる指導は選手を恐縮させ、逆に子どもたちの考える機会・思考力を奪うことにつながるのではないでしょうか。(もちろん人格を否定するような発言は言語道断です)子どもたちのことを本当に考え実践する指導者たちが持つ「情熱」とは、どんなものなのか。今回は、過去から変わらず続く価値観が現代の子どもたちの指導に合っているのか、というテーマについてお送りします。<島沢さんからの回答>先日、池上正さんと、祖母井秀隆さんが、とあるリモートセミナーに登場されていました。池上さんはサカイクで連載されたり、講習会をしています。池上さんが師匠と仰ぐ祖母井さんは元ジェフユナイテッド市原・千葉でGМなどを歴任し、2007年には当時フランスリーグ1部だったグルノーブル・フット38のGМも務めました。恐らく皆さんはご存知でしょう。セミナーの中で、池上さんがジェフで中学生チームを指導したときの話が出ました。■保護者がコーチの指示を求める試合中、保護者から池上さんにこんな声が飛んだそうです。「どうして何も言わないんですか?相手のコーチはたくさん指示を出してますよ」語気鋭く訴える父親に、池上さんは答えます。「いや、私は選手が自分で考えてプレーするかどうかを見ています。実は日本一厳しいコーチかもしれませんよ」■怒鳴ったり指示を与える言動は、子どもの自立と成長を育む多くの日本人は、怒鳴ったり、叱ったり、煽ったりする態度からしか「厳しさ」をイメージできません。しかし、池上さんは「主体的に取り組まなければ、君は何も獲得できないよ」というメッセージを込めた態度を一貫して取ってきました。私は、それが真の厳しさだと考えます。怒鳴ったり指示を与える言動は、実は甘やかしているのかもしれません。怒って刺激を与えているのですから、それは「世話を焼いている」ことになります。それは時に「過干渉」にもなります。子どもに対し過度に干渉する言動は、自立と成長を阻む。このことは現在、教育界や幼児教育、保育の世界でも少しずつ認識されています。この大事なことを、すでに40年近く前から共有していたのが、前述した池上さんと祖母井さんなのです。セミナーで上記の話が出たとき、祖母井さんは「そうだね。池上、フェンス越しに呼びつけられたねえ」と笑みを浮かべながら振り返っていました。■日本でも池上さんらが40年近く前から自主性を尊重するコーチングに取り組んでいたさて、さきほど書いた40年近くの話です。ドイツの大学を卒業され、欧州の育成指導に詳しい祖母井さんが、オランダのサッカー協会が育成の指導者用に制作した一本のビデオテープを池上さんに見せてくれました。そこには向こうのクラブのトレーニングの様子が紹介されていました。池上さんはコーチと選手の姿に大きな衝撃を受けたそうです。コーチが笛を吹いて選手を動かし、指示命令を繰り返すといった日本によくある練習風景はそこにはありませんでした。選手を煽るのではなく、じっと見守って良いプレーはほめる。何よりコーチと選手が頻繁に対話をしている。子どもが自分の意見をきちんと伝えている。そしてコーチもそれを歓迎している。そのことにとても驚いたそうです。祖母井さんから、「ほら見て!(指導が)一方的じゃないよ」といわれ、「本当にそうですね」と答えたといいます。池上さんはYMCAで子どもにサッカーを教え始めたてまだ数年でしたが、その際祖母井さんに「おまえのところから育成を変えていけよ」と言われました。池上さんはそれ以前から子どもの自主性を尊重するコーチング法を自分なりに追求していましたが、「このやり方をもっと深めていこう」と再確認したと話されていました。これが、お二人が「考える力と創造力をひきだす指導」を追求し始めた出発点になったのかもしれません。恐らく、コーチの誰もが子どもをしかり飛ばし、時には暴力もあった時代、しかもこんなに若い頃から、指導のパラダイムシフトに取り組まれていたのです。■「厳しい指導」が暴走すると、生徒の自殺につながることも私は、2012年に大阪の市立高校でバスケットボール部員が顧問による不適切な指導が原因で自死した事件のルポを本にするなどして以来、スポーツ指導の実態や改革について取材してきました。指導者の中には「私は熱血なので」「私は厳しいので、子どもは怖がっているかも知れませんが」と自虐的に話す人は少なくありません。子どもは怖がっているけれど、自分は子どものことを考え、愛情をもって指導しているといいます。ところが、この怒鳴ったり、叱ったり、煽ったりする「厳しさ」は、本人が感情的になりすぎると、指導が暴走します。ご本人も制御できない場面が出てきます。指導現場での生徒の自殺事件はどれもその果てに起きています。一方で、子どもや生徒が、暴言など不適切な指導をするコーチを慕う場面は少なくありません。なぜかといえば、暴力を受けたり怒られるのは「自分のせい」という自責の念が湧くからです。この心理は「コーチに認められたい。見捨てられたらおしまいだ」という「見捨てられる恐怖」によるものと思われます。■怖いコーチが見せる「瞬間的な優しさ」に惑わされず本質を見て(写真はフリー素材)心理学の専門家によると、暴言の多い怖いコーチが少しでもやさしいふるまい、言葉がけ、行動をすると「被害者である子どもはそこを掬い取ってしまいやすい」と言います。つまり、他者からみたら良くない指導者なのに、被害者にとってはそれだけではないからです。やさしくされたこともある、大事にされた瞬間もある。その瞬間のイメージが大きく残り、揺れ動いてしまうわけです。このような指導者に気をつけなくてはいけません。当事者である子どもは判断しづらいのですから、親がそのような眼で指導者を見る。そのためにはぜひ、さまざまな変化があることを学んでほしいと思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年03月10日タニラダーインストラクター制度1期生として、コーチを務めるクラブで「コーディネーショントレーニング」を導入し、タニラダーメソッドで子どもたちを指導する菅沼勇作さん。今回はプレー面の変化と子どもたちの感想。そしてタニラダー発案者・谷真一郎さんのメッセージを紹介します。菅沼勇作さんがコーチをするFCレガーロは「ボールを保持し、相手との駆け引きを楽しむ」をテーマにしており、「そのためには相手からボールを奪い、マイボールにすることが必要」という考えのもと、ボールを奪うプレーを重視しています。「うちのチームには、それほどスピードのある子がいるわけではありません。それでも、ボールを奪うためには、相手から離されないことが必要になるので、スピードアップと効率的な動きを身につけるために、タニラダーでトレーニングをしています」ボールを奪いに行く際には接触プレーもありますが、タニラダーでトレーニングをするようになってから、滑ることやケガが減ったそうです。「効率的な動きを身につけることで、守備だけでなく、攻撃の場面でも成果が出ています。ジュニア年代は技術を身につけることも大切ですが、それと両輪でケガをしないための体の動かし方、効率の良い動き方をトレーニングすることも必要だと思っています」■子どもたちも感じるトレーニングの効果FCレガーロの子どもたちもトレーニング効果は感じており、「足が楽になったし、いつもよりスムーズに足が動くようになった」「手を横に振っていたのを、縦で振ることを教えてもらってから、走るのが速くなった」とうれしそうに話します。「足の爪先の方を地面について、バネが足に入っているように、跳ぶように走ったら速くなった」(れんせいくん・小学3年生)。「いつも足のかかとから地面についていたのを、つま先からつけるようにしたら速くなった」(ひらりさん・小学3年生)子どもたちの進化はめざましく、集中的にトレーニングをすることで正しいランニングフォームを身につけ、走るスピードも明らかに速くなっていました。【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>■タニラダーメソッドを広げる仲間を募集タニラダーメソッドで、子どもたちを成長に導いている菅沼さん。タニラダー発案者の谷真一郎さんも「彼は賢くて感受性も高いので、いい指導者になると思います」と太鼓判を押します。チームで「ボールを奪う」ことから逆算して、タニラダーを使ったアジリティトレーニングを行っていることについて、谷さんは「ステップがしっかり踏めると、相手のボールを奪うことができるようになるので、マイボールになる回数が増えます」と話し、こう続けます。「相手からボールを奪うことができれば、ドリブルやパス、シュートなど、自分のやりたいプレーに持ち込めるようになります。正しいステップを身につける前と後とでは、見える景色が違うはず。より楽しく、うまくサッカーをプレーするためにも、ぜひ正しいステップを身につけて、違う世界を感じてほしいです」タニラダーメソッドが開発されて、今年で10年目を迎えます。メソッドも年々ブラッシュアップされ、Jリーガーから子どもたちまで、レベルを問わず、動きの質を向上させた選手が続出しています。日本サッカーをより良くするために、動きのスタンダードを上げる。そのために谷さんを始め、タニラダーインストラクターは活動を続けています。谷さんは「タニラダーメソッドを指導できる仲間を増やし、最終的にはこの動きを日本のスタンダードにしたいです」と言葉に力を込めます。「僕を始め、これまでのインストラクターの人数では、日本中に広めるには限りがある。そう感じて、インストラクター制度を作りました。指導できる人が増えることで、僕たちだけではたどり着くことのできなかった子どもたちにリーチすることができます。その結果、子どもたちが変化し、成長するチャンスも増えると思います」子どもは、大人が想像している以上の速度で進化していきます。「とくに小学校低学年はすぐに変わります。見て感じて、真似をする力がすごいんです。子どもたちは『変われる力』を持っていることを、より多くの人に知ってもらいたいです。ラダートレーニングで動きが変わると、自信がつき、プレーも変化します。日常が変わればプレーが変わる。その感覚をぜひ知ってほしいです」谷さんはタニラダートレーニングに興味を持つ指導者に向けて、次のメッセージを送ります。「サッカー指導者の方は、どうしてもボールコントロールを始めとする技術面に意識が行きがちです。それも大切ですが、動きの質を高めることにも目を向けてもらえると、技術面もさらに上手くなると思います。そのことに、多くの指導者、子どもたちに気がついてほしいです」さらに、このように付け加えます。「そのためには、タニラダーを指導できる仲間が必要です。急募と言っていいでしょう。ぜひ僕と一緒に学び、子どもたちをより良い選手へと成長させる、手助けをしてあげてほしいと思っています」タニラダーインストラクターは4期生を募集中。谷さんのメッセージにピンと来た方は、こちらにアクセスしてみてください。きっと、新しい世界が待っているはずです。【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>
2022年03月09日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が苦手とする「ボールキープ」を克服するトレーニングをご紹介します。試合では、相手にボールを奪われないようにしっかりキープしなければなりません。しかし、ボールを取りに来る相手が届かない場所にボールを置いてボールを守るのが難しいもの。親子で遊びながらボールキープの基本、原理を理解する動きを繰り返し、苦手意識を払しょくしてあげましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、身体を上手に使って足元でしっかりボールキープができるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親が手でボールを持ち、ある程度の高さに固定2.子どもはボールのどこにミートすればいいか、止まっているボールに足を当てて感覚をつかむ3.少し助走をつけて、ボールに足を当てる動きをやってみる4.慣れたら、親は数メートル離れたところから山なりのボールを投げ、子どもは地面に落ちる前にしっかり当ててシュート5.ボールの高さを変えるなど、難易度を上げる【トレーニングのポイント】・最初は足のどこに当てるか感覚をつかむ・ボールをよく見て足に当てる・蹴る時に上体を反ってしまうとボールは上に飛んでしまうので、身体を被せるようにしてミートする・高いボールのときは身体を寝かせて足を高く上げる・低いボールのときは身体を被せてシュート・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月08日子どもからプロ選手まで、「足が速くなった」「動きのキレが増した」「1対1に強くなった」などの支持を得る、タニラダートレーニング。サカイクはより多くの人にタニラダーを経験してもらうため「公認インストラクター制度」を開始しました。2021年9月に1期がスタートし、これまで約40人が資格を取得。公認インストラクターとして活動を続けています。今回は1期生の中から、所属クラブで「コーディネーショントレーニング」を導入して活動の場を広げている、菅沼勇作さんに話をうかがいました。東京都東村山市で活動する『FCレガーロ』で指導をする菅沼勇作さん。柔道整復師の資格を持ち、コーチ兼トレーナーとして活動をしています。本格的にコーチを始めたのは2年前。その後、タニラダーインストラクターの資格を取得し、アジリティをメインとした「コーディネーショントレーニング」を導入。子どもたちの動きの改善に取り組んでいます。「子どもたちのアジリティや運動能力を向上させるために、谷さんのメソッドが役立つと感じていました。インストラクター制度ができると聞いて、『これを受講すれば、自分も子どもたちに、谷さんの知識を還元できるかもしれない』と思い、1期生に申し込みました」【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>■正しい動きを身につける重要性インストラクター資格を取得するための講義は、コロナ禍ゆえオンラインで行われました。菅沼さんはタニラダーメソッドを学ぶ中で「お手本を見せる立場の自分が、正しい動きをすること」の重要性を再確認したと言います。画像:実技試験のフィードバック「子どもたちに動き方を説明するときに、インストラクターである自分が、正しい動きを実演して見せる必要があります。自分ではできていると思っていた動きも、細かいところに修正点があり、そこを谷さんに指導してもらえるのですごく勉強になりました」谷さんのアドバイスを受けることで「自分の動きを客観的に見ることができた」と話す菅沼さん。理論を理解することで動きの精度が高まり、晴れて公認インストラクターの道を歩み始めました。■チームに導入して起こった変化資格取得以降、自身が指導をするチームでコーディネーショントレーニングを導入。サッカーのトレーニングに加え、動きの質を高めるタニラダートレーニングを取り入れることで、子どもたちのプレーに変化が出てきたと言います。「タニラダーでトレーニングをする前は、足の入れ替えやステップワークがうまくいかず、ズルっと滑ってしまう場面をよく目にしました。それが、タニラダーでトレーニングを積むことで、足のつき方、パワーポジションなどを身につけ、滑る子が減りました」それまでは前のめりになっていたり、かかとに荷重する『後ろ重心』の子が多く、不安定な動きにつながっていたそうです。それが、トレーニングをすることで改善され「ケガをする子も減った」と話します。「滑らないためにはどうすればいいかをトレーニングに落とし込むことで、重心のコントロールがうまくなりました。その結果、サッカーのプレーにも良い影響が見え始めてきました」チームの監督からも「動きが変わってきたね」と言われることもあるそうで、菅沼さんは「タニラダートレーニングをしているからだと思います」と笑顔を見せます。子どもたちも、楽しみながらタニラダーに取り組んでいるそうで、「スクールでは楽しむことが50%。動きを正確にやることが50%の割合で取り組んでいます」と話し、こう続けます。「子どもたちは、楽しみながら動きを身につけています。動きが変わると、プレーも変わるんですよね。それは子どもたちも感じていて『ボールが取れるようになった』『相手についていけるようになった』『守備ってこうやってやるんだ!』と言う子もいました」チームトレーニングでは、練習前のウォーミングアップで、動きのドリルを10分から15分ほど実施しているそうで「子どもたちの理解度にもよりますが、1ヶ月ほどで成果が出てきます」と、成長度合いを感じています。「タニラダーは、チームとして簡単に取り入れられるところがメリットだと思います。谷さんに教えてもらったことをチームに還元することで、子どもたちの動きが変わります。それは目に見えて感じますね」インタビューの中で「自分が学び、身につけたことを、子どもたちに還元できることがうれしい」と、繰り返し話してくれた菅沼さん。■動きが身につくまで谷コーチによる細かくフィードバック受講期間中は、谷さんが親身になって何度もやりとりをしてくれたそうで「この動きをもうちょっと修正しようなど、細かく指導してくれるので、自分の動きも変わりましたし、子どもたちにデモンストレーションを見せるときに、正しい動きができるようになりました」と自身の成長も感じています。菅沼さんの指導を受けた子どもたちの動きが変わり、チームとしての結果に変化が現れる未来が楽しみです。インストラクター制度は4期生を募集中。興味のある方は、こちらにアクセスしてみてください。【アーカイブ受講も可】タニラダー認定資格C級ライセンス講習開催>>
2022年03月08日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が苦手とする「ボールキープ」を克服するトレーニングをご紹介します。試合では、相手にボールを奪われないようにしっかりキープしなければなりません。しかし、ボールを取りに来る相手が届かない場所にボールを置いてボールを守るのが難しいもの。親子で遊びながらボールキープの基本、原理を理解する動きを繰り返し、苦手意識を払しょくしてあげましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、身体を上手に使って足元でしっかりボールキープができるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.最初は子どもが手でボールを持ち、腕の使い方など動きの基礎を覚える2.足を使って実践。足や腰、お尻など体全体を使って相手をブロック。親はボールを奪おうとする3.できるようになったら、親がボールを持ち、子どもがボールを取りに行く動きをやってみる【トレーニングのポイント】・最初は手でボールを持ち、相手から遠くに置くことや腕の使い方を覚える・足でやる際は、腰やお尻など体全体を使ってブロックする・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年03月04日『FCバルセロナ』の小学生向け公式アカデミーであるバルサアカデミーを日本において展開する株式会社Amazing Sports Lab Japanは、FCバルセロナとライセンス契約を締結し、ZERO-BALANCE Soccer Fieldにおいて、「バルサアカデミー広島校」を2022年5月より開校します。広島校は、福岡校、葛飾校、奈良校、横浜校に次ぐ5校目となります。バルサアカデミーは日本代表の冨安健洋選手(アーセナル)をはじめ、高江麗央選手(町田ゼルビア)、藤川虎太朗(ギラヴァンツ北九州)、桑原海人(レノファ山口)ら8人のプロ選手を輩出した実績を持ち、久保建英(マジョルカ)は日本で開催されたバルサアカデミーキャンプでMVPを獲得しカンテラに入団したことは広く知られています。<バルサアカデミー広島校の特長>■FCバルセロナの下部組織と共通のトレーニングメソッドを学びます広島校は、FCバルセロナから派遣されるスペイン人テクニカルダイレクターが広常駐し、バルサが目指す魅力的なサッカーに必要なテクニック、戦術、体力、精神力をカンテラ(下部組織)と同じトレーニングメソッドに基づいて指導します。■自分のレベルと意識に合わせたクラスを選べるバルサ育成クラス(経験者)バルサキッズクラス(入門・初級クラス)バルサアカデミー広島校では、選手それぞれの「意識レベル」「プレーレベル」が最も適した選手同士でプレーすることが選手の成長を最大限引き出すことができると考えているため、2つのクラスを用意し小学校2年生までは、自分のレベルと意識に合わせてクラスを選べるように設定しています。これまでのバルサアカデミー同様、「技術面」「戦術面」「ゾーンごとの優先順位」「メンタル面」「バルサの価値観」という5つの要素を連動したメニューや常にボールを使いながら状況判断を伴うトレーニングを通して世界で活躍できる選手の育成をするだけでなく、県下の小学校、保育園、幼稚園などに訪問サッカー教室を行い、広島の子どもたちにも貢献していく予定です。開校にあたり、事前のオンライン説明会を開催しますので、バルサアカデミー広島校にご興味のある方はぜひご参加ください。【バルサアカデミーオンライン説明会】日時:3月13日(日)19:00~内容:アカデミーの概要、メソッドの紹介、年間行事、入会方法などを説明させていただきます※Zoomを使っての説明会となります。※入退室自由説明会用の申し込みフォームはこちら>>【レベルチェック&クラス分けセレクション日程】会場:ZERO-BALANCE Soccer Field住所:広島県安芸郡熊野町平谷二丁目17-10■第一回:3月21日(月・祝)■第二回:3月22日(火)※定員に達したクラスが発生した場合、追加日程を準備させていただきます。■対象年齢、定員バルサキッズクラス(入門・初級)新年長、新小1年生~新小2年生:24名バルサ育成クラス(経験者)新小1年生~新2年生:36名新小3年生~新6年生:48名■参加費:3,300円(税込)※事前振り込みとなります※サッカーを行える服装、トレーニングシューズ(スパイクも可)、すね当て、水筒(水のみ)、タオル、必要であれば着替えを持参の上ご参加ください。体験会・セレクションの詳細やお申込みバルサアカデミー広島校セレクション・体験トレーニング参加申込フォーム>>その他スクール詳細は公式HPよりご覧くださいHP:■お問い合わせバルサアカデミー広島校福岡県大野城市栄町3丁目1-24C L U B春日原2FTEL:092-558-7708
2022年03月03日子どもがサッカーを始めるとき、どのチームに入れればいいのかわからない。ということはありませんか。サッカーチームといってもその種類はさまざまであり、少年団(スポ少)が良いのか、クラブチームが良いのか、などチーム選びに迷っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、サッカーのチームを選ぶ前に知っておきたいこととして所属先の種類やその違い、チームを選ぶときのポイントなどについて解説します。サカイクが作った「サッカーはじめてセット」300セット限定でご予約受付中!>>■「所属先」の種類は大きく分けて2つサッカーチームを選ぶ際は、まず所属先の種類を理解しておく必要があります。所属先の種類は大きく以下の2つに分けることができます。・チーム(少年団、クラブチームなど)・スクールここでは、それぞれの所属先の概要について解説します。■チームチームには、選手がサッカー協会に選手登録を行ったうえで所属します。公式戦を戦う場合、所属先のチームで出場することとなります。そして、このチームには大きく分けて以下のような種類があります。・少年団・クラブチームどちらも同じサッカーチームですが、所属しているメンバーの特徴や入団方法などに違いがあります。■少年団(スポ少)少年団は、基本的に学校単位もしくはその学校の周辺地域の子どもたちが中心となって活動しているチームです。地域に根付いたチームであり、指導者も選手の保護者やチームのOB、近隣住民によるボランティアで行われているケースがほとんどです。後述するクラブチームと比較すると、月謝も最低限となっており、月2〜5,000円程度となっています。チーム運営は選手の保護者によって行われているため、当番制で練習や試合への帯同が必要となるケースもあります。入団にあたっては特にセレクションなどは行われておらず、誰でも入団できる点が特徴です。同じ地域に暮らす子どもたちが集まるため、友達が在籍しているケースも多く、子どもにとっても入団しやすいといえるでしょう。■クラブチーム(Jリーグ育成組織、街クラブなど)クラブチームは、地域の垣根を超えて選手が集まってくるケースが一般的で、サッカーの指導を専門に行っている指導者によって運営されている点が特徴です。Jリーグの育成組織もこのクラブチームに含まれます。チームによっては、元プロ選手の指導者がいたり、上位の指導者ライセンスを所有している人もいたりするなど、高いレベルの指導を受けられる点も魅力の一つです。強豪チームやJリーグの育成組織となると、入団希望者が殺到するため、セレクションを行い、合格しなければ入団できないケースもあります。また、チームとしての活動日数も多く、週末や長期休暇に遠征やたくさんの練習試合を行うこともあるため、月謝は少年団よりも高く月数千円〜1万円以上になることもあるでしょう。一方で、運営体制はクラブが整備しているため、少年団のように当番制による保護者の帯同は基本的にありません。■サッカースクールスクールは、習い事としてサッカーに取り組むことのできる場所です。チームとは違って公式戦に出場することはありません。わかりやすくいうと、チームが学校、スクールは塾のようなものだと考えてください。スクールは、基本的にサッカーの知識や経験、指導者ライセンスを所有している指導者による指導が受けられ、中にはドリブルやキーパーなど特定のスキルやポジションに特化したスクールなどもあります。また、Jリーグのチームが運営しているスクールもあります。スクールによって異なる部分もありますが、活動頻度は週に1~2回程度で、月謝は数千円程度であることが一般的です。子どもによってはスクールを掛け持ちしているケースもあるなど、個人のスキルアップを目指している人に向いている所属先だといえます。■チームとスクールの大きな違いチームとスクールの大きな違いは、公式戦の有無です。チームはサッカー協会に登録をしたうえで活動しており、小学生年代であれば以下のような公式戦に出場することができます。・全日本少年サッカー大会・バーモントカップ全日本少年フットサル大会など一方のスクールはチームとしてサッカー協会に登録しているわけではないため、練習試合や私設大会などには参加できますが、上記のような公式戦には出場できません。また、チームの場合は、選手は1チームしか所属できませんが、スクールは掛け持ちできる点も大きな違いです。一方で、多くのチームで行われる合宿や遠征、卒団式、クリスマスパーティーといった各種イベントなどは、スクールでも行われるケースが多く、大きな違いはありません。■チームを選ぶときのポイントこれからサッカーチームを選ぶ場合、目的と優先順位を決めておくことが大切です。例えば、純粋にサッカーを楽しみたいのか、それともプロを目指して活動したいのかによって選ぶチームは変わってきます。前者であれば、地元の友達が多く所属している少年団の方が向いていますが、後者であればより高いレベルの指導が受けられるクラブチームの方が向いているでしょう。また優先順位に関しては、例えば練習環境を優先するのか、自宅からの近さを優先するのか、指導者を重視するのかといったポイントが考えられます。クラブチームの中には、毎回人工芝のグラウンドで練習できるケースも多く、上位の指導者ライセンスを所有している指導者による指導が受けられることも珍しくありません。ただし、子どもによって練習場に時間をかけて通う、親の送迎が必須といったケースもあるでしょう。一方の少年団は、基本的に地元の小学校などで活動しているため、送迎などは不要です。■まとめ今回は、サッカーチームを選ぶ前に知っておきたいこととして、所属先の種類とそれぞれの概要、チームとスクールの違い、チーム選びのポイントなどについて解説しました。チーム選びをする際、保護者としてはどうしても、子どもにとってのメリット・デメリットという視点で考えてしまいますが、そのように考えるのではなく、単なる「違い」として捉えることが大切です。保護者が先導してあれこれ決めるようなことはせず、子どもが行きたいところ、わが子にあったところを選ぶのを見守りましょう。サカイク10か条にもあるように、見守るのが良い親の心得であり、子どもがサッカーを楽しめるようにサポートすることが重要なポイントです。関連情報:子どものサッカーに関わる保護者に、大切にしてほしい"親の心得"「サカイク10か条」サカイクが作った「サッカーはじめてセット」300セット限定でご予約受付中!>>
2022年03月03日子どもたちのスピードアップ、動きの改善に取り組んでいる『タニラダーキャンプ』。参加したお子さんの中には、20m走のタイムが0.5秒縮まり、コンビネーションの動きでは1秒近く短縮するなど、着実に成果を出しています。今回はタニラダーキャンプに参加し、スピードアップに加えてサッカーのプレーにも大きな変化があったという、小学4年生のよしはる君のケースを紹介します。(取材・文:鈴木智之)タニラダーキャンプでスピードが上がっただけでなく、サッカーにも良い変化があったというよしはる君【春休み東京開催】「2日間でスピードを上げる」タニラダーキャンプ>>■以前は相手の切り返しについていけず、抜かれてしまっていたよしはる君がサッカーを始めたのは、小学2年生のとき。タニラダーを始めたきっかけは「年上の子と対戦するときに、スピードで抜かれてしまう」という悩みがあったからでした。よしはる君は「相手についていくことはできるんだけど、うまく止まれず、相手に切り返しをされると抜かれてしまう」と話します。相手にドリブル突破を仕掛けられたときに、背後から追いかけることはできるのですが、相手の前に入ってボールを奪うまでには、いたりませんでした。■谷コーチに直接見てもらって、改善ポイントがわかったそこでお父さんが色々と調べ、タニラダーに行き着いたそうです。すぐにタニラダーを購入し、自宅で取り組み始めました。その後、家の近所でタニラダーキャンプが開催されることを知り「谷さんに直接見てもらったら、なにかが変わるきっかけになるかもしれない」(よしはる君のお父さん。以下、同)と思い、ゴールデンウィークに開催されたキャンプに参加しました。タニラダーキャンプでは、子どもたちの動きを個別に映像で確認し、チェックポイントを挙げていきます。なかでも注視するのが姿勢です。上体が前に傾きすぎていないか、後ろ重心になっていないかなど、一人ひとりの動きを見ていきます。「よしはるの動きを映像で見ると、ボールを奪いに行きたい気持ちが強いあまり、前傾になっていたり、切り返しについていくときに後傾になり、重心をコントロールできていないことがわかりました」■キャンプで正しい動きを学んだら靴のすり減る位置が変わったタニラダーキャンプは、インストラクターの解説を親子で聞くことができます。そこで得た知識をもとに、日常生活から変えていったそうです。「足の裏の拇指球、小指球、かかとの3点で重心を感じることができるように、なるべくソールが薄くて、足裏に負担のかからない靴を履くようにしました」日々、タニラダーでトレーニングをし、日常生活から重心を意識して歩くことで、中敷きを見ると、すり減る場所が変わってきたそうです。「スパイクも同じで、いままでは後ろ重心だったので、かかとがすり減っていました。それがなくなり、中敷きの拇指球のあたりが薄くなっていたんです。これには驚きました。動きやすい場所に荷重できているんだと、変化が見られました」【春休み東京開催】「2日間でスピードを上げる」タニラダーキャンプ>>■重心をコントロールできるようになり、プレー中顔が上がるようになったタニラダーキャンプでのトレーニングの様子ゴールデンウィークに初めて谷さんの指導を受け、日常生活でも意識して過ごすこと2か月。徐々に動きが変わってきたよしはる君は、再びタニラダーキャンプに参加します。谷さんに見てもらうと「走り方もタイムも変わってきている」と言われたそうで、サッカー経験のないお父さんが見ても「明らかに動きが変わった」と感じる場面が増えたと言います。「重心をコントロールできるようになったので、プレー中に顔が上がるようになりました。ゴール裏からよしはるのプレーを見たときに、シュートの場面で顔が上がって、ゴールを見ている視線を感じました。いままでは感覚でシュートを打っていたと思うのですが、明らかに顔が上がって、ゴールや相手をしっかり見られるようになったのは、大きな変化だと思います」■動き出しが速くなり、体重移動がスムーズになったと子ども自身が変化を実感よしはる君も、自身の動きの変化を感じています。「味方がボールを奪われたときに、『ひざをロックする動き』を使って、速く戻ることができた。動き出しが速くなったし、ドリブルで相手を抜くときも、体重移動がスムーズになったので『相手が右にずれたから、左に行ける』って感じで、ゴールへの糸が見えるようになった」よしはる君もお父さんも、動きの無駄がなくなったことで、「プレーに余裕が生まれた」と口を揃えます。よしはる君が通うスクールの保護者からも「動きがすごくスムーズだけど、特別なことをしているんですか?」と聞かれることがよくあるそうで、お父さんはタニラダーキャンプを紹介し、参加するお子さんも増えているそうです。お父さんは言います。「小学生の子どもを持つ親にとって、動き方は共通した悩みなのではないかと思います。よしはるの場合は谷さんに出会って、足裏の荷重する場所やパワーポジション、相手の切り返しについていくときの『ヒザをロックする動き』などを教えてもらって、プレーが劇的に変わりました。だから、同じ悩みを持つお子さんや保護者仲間にも、タニラダーキャンプを紹介させてもらっています」■動きが向上したらコーチに褒められ、サッカーがもっと楽しくなった普段は、サッカースクールに通うよしはる君。スクールのコーチに「動きが違うね」と褒められることもあるそうで、「サッカーがもっと楽しくなった」と笑顔を見せます。「よしはるは谷さんに出会ったことで、武器を持つことができました。動きに関しては、小学4年生という時期に始めたからこそ、すぐに身についた部分もあると思います。ベースの動きを身につけた上で、サッカーのテクニックを身につけることで、さらに良いプレーができるようになる。いまはそう思っています」その後、よしはる君はタニラダーキャンプ、タニラダー塾に参加した選手が参加出来る「アドバンスコース」に参加し、ベースの動きづくりに加え、ボールを使ったサッカーの動き(突破や守備対応)にもチャレンジ。そこでも躍動していました。動きのベースを身につけ、サッカーのプレーが向上したよしはる君。今後、様々な試合で活躍する場面が見られそうです。【春休み東京開催】「2日間でスピードを上げる」タニラダーキャンプ>>
2022年03月02日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は特にサッカー初心者が苦手とする「トラップ(=ボールコントロール)」を克服するトレーニングをご紹介します。トラップはサッカーの基本動作の一つですが、最初のころは中々上手にできないですよね。最初はどうしても大きく跳ねてしまい、足元にピタッと止めるようになるには時間がかかるもの。足元にしっかりコントロールできるようになると、ドリブルやパスなど次の動作に素早く移ることができるようになります。ボールを止める技術は、そのあとにドリブルやパスを出す際にも重要なスキルなので、親子で遊びながら苦手意識を払しょくしてあげましょう。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、足首を柔らかく使ってピタッとトラップすることがができるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親、子ともに目印で作った四角のやや後方に立つ2.ボールを持っている方が四角の中に蹴り、受ける方は四角の中でコントール(親は手で転がしても良い)3.利き足だけでなく両方の足で止める4.慣れたら浮き球を投げてコントロールするなどレベルを上げる【トレーニングのポイント】・対決ゲーム形式なので、楽しんで行う・足首をリラックスさせて、外側に開くようにして、広い面でボールをとらえる・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年02月28日子どもの入団がキッカケでパパコーチとして関わることになったお父さんからお悩み相談をいただきました。まだまだ技術も未熟で、相手にプレスをかけられると焦って良くない位置でボールを失ってしまうU-9世代が落ち着いてビルドアップできるようになる練習はある?とのこと。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちがビルドアップを理解して身につける方法をアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<雪でグラウンドが使えない!雪国で冬の間にできる技術・判断力向上メニューはありますか?<お父さんコーチからのご質問>はじめまして。教えていただきたいのは、ビルドアップについてです。自分自身は小学校の時に少しだけサッカーをかじった程度で、指導については全くの素人です。子どものチーム入団がきっかけでパパコーチになりました。U-9年代なので、まだボールコントロール技術が未熟なことや、身体の使い方も原因なのかもしれませんが、相手チームが前からプレスをかけてくると焦ってしまい、良くない位置でボールを奪われたりパスミスをしてしまいます。状況を見て、しっかり前に運べるようになるには、どんなことを意識して練習させればいいでしょうか。抽象的な質問で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。9歳以下ということなので、小学3年生ですね。そのくらいの年齢から高校生やプロにいたるまで、皆さんよく「ビルドアップ」という言葉を使われます。攻撃を構築する、ボールをつないでゴールに迫るまでのプロセスを指しますが、チームでイメージを共有しているでしょうか。もしかしたら、ビルドアップという言葉だけが先行しているかもしれません。■ビルドアップの仕組みは4種年代(小学生)で理解しておかなければならない先日、地元の高校生を指導しました。ゴールキーパーからどのようにボールをつないで前へ進んでいくか。その意味をわかっていますか?と、彼らに問いかけました。どこから攻撃するのかな? パスをつなぐことで相手がボールを獲りに来るため、次のレーンが空いていく可能性があるよね?どんなプレーが効果的かな?そうだね、ワンツーなどだね。そのような話をした後で、それらを理解するためのトレーニングをします。例えば、ボールをもってドリブルをすると、守備が寄ってきます。そこでパスを出せば、簡単に2対1になります。高校生でもそのようなことを考えていないのが現状です。その仕組みは4種で理解しておかなくてはいけません。■欧州と日本のサッカーの決定的な違い欧州と日本のサッカーを比較する話になると、欧州に住んでいたり、あちらの事情に詳しい人ほど「行われているサッカーが違う」とおっしゃいます。私は、その決定的な違いは「前へ進む力」だと考えます。4種年代では、ボールをもらったら、またパスして前に進んでいく。サイドバックがボランチとワンツーをする。そのサイドバックの選手は、次にワイドアタッカーともワンツーをする。そして結果的にシュートまで持っていく。欧州の少年たちはそんなことをします。「僕はサイドバックで守備側だから、攻撃には参加しない」そんなことを、彼らは微塵も思っていません。試合の人数の問題もあると思います。例えばドイツでは、1、2年生は5人制、3、4年制は7人制、5、6年制は9人制というように低学年の間には全員で攻めること、全員が守ることを学ぶのです。一方の日本は、サイドバックが中盤の選手にパスを出したら、それで終わりになっていないでしょうか。彼らは後方でいつもほぼ同じ位置にいます。■コントロールミスがあったからといって対面のパス交換練習に移行しないことそうではなく、パスをつないで、前に責め上がるイメージを持たなくてはいけません。どこのポジションの選手でもいいので、前方の選手に一度預けて、自分は前に出て行く。そういった動きをぜひ続けてほしいと思います。そのようなことを意識してゲームをしてください。ボールコントロール技術の未熟さが出るかもしれません。パスしてもつながらない、止められないね、となるかもしれません。でも、そこで「じゃあ、ボールを扱う技術をまずは高めよう」とキックの練習に移ってはいけません。もちろん足元の技術は重要ですが、例えばコントロールミスがあるからと2人1組でパス交換の練習をしても、それは試合では使えない技術です。試合中に選手が向き合ってパス交換をする場面はありません。ゲームの中で必要な技術を身につけるように考えてください。全員がパスをすることを考えてゲームが進むと全員がボールを触る機会が増えるのです。だから全員が上手くなることにつながります。■上手くなるための答えは選手が自分で獲得しなければならないものゲームの中で、どこに走ったらボールをもらえる?どこに出す?といったことがわかるようになるまで、ひたすらやってみましょう。それを繰り返すなかで、ボールコントロールやパスの技術も磨けます。もちろん、スキル練習も重要です。だとしても、自分のコントロールミスで「良くない位置でボールを奪われてしまった」という経験をしたほうが、足元の技術は良くなります。「あんな悔しい思いはしたくない」そんな経験が大きなモチベーションになるのですから、たくさん失敗をしたほうがいいのです。■自分のミスで「良くない位置で奪われた」経験をした方が技術が上がる答えを教えたい。いろんなことをできるようにしてあげたい。指導者はそう考えがちですが、うまくなる答えは実はありません。なおかつ、他人から与えられるものでもありません。選手が自分で獲得しなくてはならないのです。走ったけど、ボールをもらえなかった。では、次にどこに行けばいいのか。どんなタイミングで行けばいいのか。それらは、プレー中にミスをしたことから、自分でどんどん学ぶものです。「こんなことができるようになるために、この練習やるよ」とコーチが伝えたとします。すると、今の子どもたちは、その練習のテーマをわりとすぐに忘れてしまいます。考え続けることが苦手なようです。池上正さんの指導を動画で見る>>■高校生でも考えることや仲間と話し合って解決策を共有することが苦手な子が多い(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)例えば高校生のトレーニングで4対1をひとつのグループがやっていて、隣で4対1をやっているとしましょう。4対1はダイレクトでパスを5本つないだら、隣の4対1へパスをします。そんなトレーニングをします。すると、5本つないだ後に反対側にパスをするのですが、どうしても守備に渡してしまいます。何度も失敗します。「さて、どうしたらいいでしょうか?」そう問いかけても、彼らから何も答えが出てきません。なぜなら、自分たちが失敗しているときに、「次はどうしたらいいか?」を誰も考えていないからです。コーチが何か言ってくるのを待つのが習性になっているようです。もっといえば、自分ひとりで解決できなかったら、「この場面のこのミス、どう解決する?」と仲間と話し合えばよいのに、それもしません。ひとりが「俺はこうする」と言い出すことはあっても、チームで話し合って解決し、その対策を共有することができないのです。ぜひ4種の時代から、自分たちで知恵を出し合って解決したり、自分たちで考える習慣をつけてください。そうやって練習したビルドアップのほうが、必ず身につきます。試合で使えるものになるのです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年02月25日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は基礎練習の中でも苦手意識を持つ人もいるバックステップを使った「前後の動き」を克服するトレーニングをご紹介します。試合前のウォーミングアップなどで取り入れているチームも多いですが、その場でコントールするような練習がほとんど。しかし、試合中は相手選手にボールをカットされない位置で受けるため、後ろに下がって受ける動きが必要になることがあります。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、試合中動きながら相手にとられない位置でパスを受けて、味方にスムーズにパスすることができるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親がボールを持って数メートル離れて対面して立つ2.子どもは一度後ろに下がり、元の位置に戻ってくる3.戻ってくるタイミングで親が山なりのボールを投げる4.子どもは足元で受けて返す5.後ろに下がり切ったタイミングでパスを出し、子どもはそれをコントロールして返す6.できるようになったらダイレクトで返すなどレベルを上げる【トレーニングのポイント】・最初は元の位置に戻ってくるタイミングでボールを投げる(前進した状態で受ける)・インサイド、インステップ、腿など足のいろんな場所を使う・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年02月24日サッカーの技術だけでなく、人間的な成長を促すサカイクキャンプ。実際参加した子どもにどんな変化があったのか、親御さんは成長を感じているのか。気になる方、いますよね。昨年末のサカイクキャンプに参加してくれたお子さんと親御さん、それぞれの声を聞いたのでご覧ください。今回お話を聞いたのは、サカイクキャンプ2021冬in大阪」に参加してくれた、小学5年生の浅井大雅くんとご両親です。自宅のある愛知県から一人で電車と新幹線を乗り継いで会場に向かった大雅くん。キャンプを終えて帰宅した姿はひとまわり大きく「自信がついた」ように見えたとご両親は話します。大雅くんはキャンプの3日間をどのように過ごし、何を得たのでしょうか。詳しくお話を聞きました。(取材・文:小林博子)サカイクキャンプでトレーニングに励む浅井大雅くん<<ほんの3日の経験で自信がついた。自信がなかった息子がキャンプ後も自信をもって声掛けができるようになった理由■親、子ともに「成長」にフォーカスして参加を決意ご両親のサカイクキャンプへの申し込み動機は「主体的に自分で考えて行動できる大人になってほしいから」というもの。サッカーを通した心の成長を望み、我が子をキャンプに託してくれました。対して大雅くんは「サッカーが好きだから」という理由で参加を決意。大好きなサッカーでもっと活躍するために、サカイクキャンプをきっかけにもっと成長したいと思ったそうです。ご両親も大雅くんも「成長」をキーワードにしていますが、サカイクキャンプはその目的にぴったりです。サッカーの技術や知識の向上だけでなく、座学で行うセミナーやオフザピッチの過ごし方を通して心の成長も促せるカリキュラムとなっているからです。■身につけたかった「判断力」は、3日間で違いを感じるほどに大雅くんがキャンプで一番楽しかったことは「スリーゴール」(※フニーニョをサカイクキャンプでアレンジしたもの)の時間だったと言います。スリーゴールは3つのコーンをゴールに見立て、どのゴールを狙ってもいいというミニゲーム。ゴールが複数あることで向かう方向の選択肢が増えるため、状況判断力が問われます。大雅くんが今身につけたいのはまさにその判断力。サッカーでは試合のあらゆるシーンで判断をするシーンが訪れます。試合の中で瞬時に判断するためには、身体能力や技術だけでなく、自分で考える力を養うことが大切です。自分で考える力をつけることは、サカイクキャンプのコンセプトのひとつ。コーチ陣はピッチ上でもピッチ外でも、子どもたちが自分で考えるようサポートします。キャンプという寝食を共にする環境だからこそ、なにげない生活習慣でありがちな一つ一つのことに対しても、「どうしてそうしようと思ったのか?」とコーチは質問します。それに対し、子どもたちは自ら考え、自分の言葉で表現。3日間そう過ごすことで、自分で考える習慣が身についていきます。「大雅くんは、バイキング形式の食事で毎回野菜とたんぱく質をバランスよく選ぶことができていました。何を食べたらいいかをちゃんと考えられていて偉かった」と、サカイクキャンプの柏瀬コーチは教えてくれました。オフザピッチでの行動も一人一人はっきりとエピソードが語れるところに、コーチ陣の子どもたちへの向き合い方が現れていると感じませんか。■キャンプではコーチにたくさん褒めてもらえるサッカーでも、トレーニング後のなにげない行動でも「たくさん褒めてもらえた」と、大雅くんは嬉しそうに話してくれました。スリーゴールのトレーニングが楽しかった理由は大雅くん自身が活躍でき、望んでいた成長を感じられたという部分も大きかったようですが、コーチから見ても「2日目より3日目のほうが判断力が身についていた」と太鼓判。スポンジのように吸収力の高いジュニア年代だからこそ、たった数日でも目に見える成長がわかるのかもしれません。自分で考えて行動する力がつくサカイクサッカーキャンプとは>>■コーチとしての目線でも「自分で考えるサッカー」の理念に共感実は、大雅くんのお父さんは、大雅くんが所属しているクラブチームとは別のチームでサッカーコーチもしています。我が子以外の子どもたちの指導者をしているという客観的な立場からも、サカイクの理念である「自分で考えるサッカーを子どもたちに。」に共感。だからこそキャンプへの参加を大雅くんに勧めたそうです。そして、ご両親が今回のサカイクキャンプ参加で最も望んだ「自分で考え、自分で決める、主体性かつ能動的に行動できる力の成長」は、サッカーをするためだけのものではありません。「サッカー選手としてだけでなく、将来社会に出てからどんな仕事をするにしてもこの力がしっかりあるのとないのとでは大きく違いますよね」とお父さんは話します。キャンプから帰宅した大雅くんを見てご両親が思ったのは「自信がついたように見える」ということだったそう。3日間で主体性が大きく変わることは当初から期待はしていなかったとのことですが、キャンプでいつもと違う体験をたくさんして大雅くんの「僕はやれる」という気持ちがぐんと増えたことは確かな手応えになっているよう。まずは自分を信じて何事も行動できるというベースが培われたはずです。■「リーダーシップ」の本質もしっかり理解サカイクキャンプの特徴のひとつに「ライフスキル」を学ぶ時間があります。大雅くんにライフスキルのうち、どのスキルが印象的だったか聞くと「リーダーシップ」と即答してくれました。リーダーシップという言葉から、チームを率いる統率力などを想像しがちですが、ライフスキルにおけるリーダーシップは少し違う概念です。大雅くんに聞くと「リーダーシップとは、仲間と助け合うこと、相手の立場を思いやって行動すること」と回答。キャンプで学んだことをしっかり理解していました。サカイクライフスキルとは>>■初日、大雪で乗り継ぎができないアクシデントも自分で考えて乗り切った余談ですが、大雅くんはキャンプ初日、自宅最寄駅から電車と新幹線を乗り継いで、県をまたいで一人で移動しました。ところが、前日に降った大雪の影響でダイヤが大幅に乱れるというアクシデントが発生。キャンプ会場へは最寄駅からバスで移動しなくてはなりませんが、乗るはずだったバスの出発時間には間に合わず、大雅くんは困り果ててしまったそうです。ご両親に携帯電話でヘルプを求めましたが、最適な状況判断は難しかったとのこと。そこで、大雅くんはバス停付近にいる人に声をかけて目的地に行ける別のバスを聞くなど、機転を効かせました。その結果タクシーに乗って会場に向かうことに。小学生がこの判断を自分の考えでできるのは大したものです。無事会場にたどりつきスムーズにキャンプにジョインできたそうです。普段はできないピンチを乗り越えてすでに大冒険に。大雅くんのサカイクキャンプはそんな始まりでした。■なりたい自分に近づくキャンプ子どもたち一人一人がさまざまな思いを胸に参加するサカイクキャンプでは、その思いに応えるべく、コーチたちは真剣に子どもたちと向き合います。確かな「手応え」を得て、思い描いた「なりたい自分」に近づけるよう全力でサポートしてくれます。次回のキャンプでも、たくさんの成長エピソードが生まれることでしょう。自分で考えて行動する力がつくサカイクサッカーキャンプとは>>
2022年02月22日雪国なので冬場にグラウンドが使えない。交通機関が発達してなく、子どもたちは冬場親の車で移動することも多く、運動量が減って体力面も心配。冬の間にできる室内練習で判断力や技術を磨ける練習メニューはある?とお悩みのお父さんコーチ。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、室内練習で養える判断力や技術向上のメニューをアドバイスします。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<試合になると独りよがりな子に、質問形式で問うてもすねる。勝気な子への対処法どうしたらいい?<お父さんコーチからのご質問>こんにちは。ボランティアで、以前子どもたちが所属していたチームのU-10年代の指導に携わっています。雪国で冬の間は外でトレーニングができないのですが、この時期のお勧めのメニューをお聞きしたく思います。小学校の体育館を使った室内トレーニングしかできないので、外で試合できる地域とは差がついてしまうのではと思っていたのですが、高校年代だと青森山田高校が全国屈指の強さを誇るので、雪を言い訳にもできないのかなとも感じている部分もあります。交通機関も都会ほど無く、基本的に親が車で送迎なので、他の季節程歩かないため体力面も気になります。フットサルをしたり試合の映像を使った座学などの取り組みはしているのですが、何か他にも外でプレーできない間にできる、判断力や技術も身につくようなお奨めのメニュー、遊びなどはありますでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。雪国でのトレーニングのご相談になりますが、ヨーロッパも一部を除くと、非常に寒さ厳しいところです。ドイツ、デンマーク、ベルギー、オランダ、イングランドなどなど、どこも北海道と同じくらいかそれ以上に寒いです。マイナス何十度にもなります。■海外ではそもそも週2回ぐらいしか練習をしないところが、それぞれの地域のアンダーカテゴリーは、10月の終わりくらいから外でサッカーをしてはいけないルールになっているようです。つまり、無理をしない。外でプレーさせません。そんなふうに練習日数が少ない環境ですが、どの国からも多くのプロ選手が育っています。それに小学生年代を考えると、寒い季節以外でも、そもそも週に2回くらいしかサッカーの練習をしません。このあたりを、日本の指導者はよく考えてほしいと思います。■焦る必要なし、体育館でもできる対面練習があるなんら焦ることはありません。冬でなくても、コロナウイルスの感染拡大でどの地域の方々も活動を継続するのに大変でしょう。しかし、無理にサッカーをしなくてもいい、いつもサッカーに時間を費やしているのであれば、他のことにもチャレンジできるといいね、くらいの大きな考えでいてほしいものです。加えて、ご相談者様がおっしゃっているように、体育館などでの室内練習ができます。子どもの人数にもよりますが、かなり多いのならば、ゲームをどんどんやればいいと思います。例えば小学校の体育館であれば、ひとつのコートを2面に分けて3対3ができます。2か所でやれば、一度に12人がプレーできます。3対3を4~5分ずつできれば、量的にも十分でしょう。狭い場所でも、一度に多くの人数が活動できる。ひとりでやるクローズドスキルでなはく、なるべく対面でやるオープンスキルのメニューを選びましょう。そんな方法を実践していけば、そのなかで子どもたちは技術や判断力を習得します。さまざま判断しなくてはいけない場面が、試合の中で出てくるからです。■南米やスペインなどでは小さいころフットサルを経験する選手も多い指導者のなかには「フットサルとサッカーは違う」と話す方もいらっしゃいます。しかしながら、世界的に見ても南米系の代表選手たちは小さいころからフットサルをして育ちます。欧州では、スペインも同じです。そのような選手たちの何がすごいかといえば、ボールを扱う細かい技術や、ディフェンスからプレッシャーを受けたときに狭いところから抜け出す技術が高いようです。また、攻守にわたり判断スピードも速いです。よい判断をするから、相手からのプレッシャーを受けなくてすみます。なぜなら、相手が来る前にボールを味方に渡したり、有効なスペースへドリブルで抜け出したりできるからです。判断スピードが遅くなると、相手につかまって何もできなくなります。■狭い室内を有効に使うことで、技術や判断力を養える対象は小学生ではないけれど、ママさんチームの指導で40歳以上を教えたことがあります。練習の最初にミニゲームをしたのですが、多くの方が「えーっ!」とか「やりたくないなあ」と言って嫌がりました。スポーツの醍醐味はゲームを楽しむことなのに、おかしなことです。そこで彼女たちに理由を聞いてみたらミニゲームは狭くて技術がないからすぐにボールを失うからと言うのです。それなら余計にミニゲームをやる方がいいことを説明して、トレーニングの最初はミニゲームにしたのです。すると、女性たちの技術はみるみるアップしました。ママさんたちも「最近上手く止められるようになった」「パスがちゃんといくようになった」と自分で気づくほど、上達しました。指導する私自身も、試合をすることの大切さをあらためて認識できました。したがって、ぜひ狭い室内を有効に使ってゲームをやらせましょう。技術や判断力を養えるはずです。冬に外を思い切り走れないのは残念ではありますが、そういったことをマイナスに考えずプラスに受け取ってください。そうすれば、何の問題もなく冬でも上達できます。池上正さんの指導を動画で見る>>■心肺機能や判断スピードの向上、室内練習の利点(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)また、室内練習の利点もたくさんあります。室内であれば、ボールがコートから出ても試合はほとんど止まりません。プレーがストップしないので、相当ハードだし、心肺機能が養われるはずです。狭い場所で、展開も速いので、判断スピードをあげる必要が出てきます。その利点を欧州の人は知っているのでしょう。きちんと壁に囲まれたフットサルコートを自前で持っています。しかし日本では、プロチームでもあまり持っていません。そのうえ、屋外のグラウンドでは、コートから出たボールが遠くに転がってしまいプレーが中断することがあります。しかし、体育館なら壁があるので、跳ね返ってきたボールをそのまま蹴ることもできます。そのようにとらえれば、メニューもたくさん考えられるでしょう。例えば、2対1をわざと壁寄りでやって「壁も使っていいよ」というルールにします。壁を入れるとフリーマン代わりになり、3対1のフリーマン代わりになります。フットサルは体力もつきます。5人でやるのですが、フィールドプレーヤーはどんどん交替します。一度プロの試合などを見てほしいし、体験するといいでしょう。私は大学の授業でフットサルを教えているのですが、大学の授業学生の人数が足りない時に私も参加することがあるのですが、その時にはゴレイロ(キーパー)のみ。絶対フィールドはしません。学生にはついていけないからです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年02月21日サッカーをする子どもたちの常識となりつつあるサッカーノート。お子さんはどのように書いていますか。「ページいっぱいにぎっしりと書いているから大丈夫」と安心してはいませんか。でもそれは親の自己満足かもしれません。サッカーノートは、ただ記録するだけでは上達にはつながらないからです。ただ書くだけにとどまらない仕組みが随所にあるサカイクサッカーノートを使ってサッカー上達につながる活用術を監修者の「しつもんメンタルトレーニング」藤代圭一さんに聞きました。(取材・文:小林博子)藤代さん監修!1日10分で書けるサッカーノート>>サカイクキャンプでサッカーノートを書く子たちも質問があるので初めてでも書きやすい【関連記事】サカイクサッカーノートで育まれる、"不確実な時代"に必要なスキルとは?■「今日は○○をした」など、ただの記録帳になってないかその日の試合を振り返ったとき、最初は「○○というチームと試合をして、1-0で負けた」といった、起こった事実だけを書いているとしたら、それは単なる"記録"です。読書感想文であらすじを書いて指定の原稿用紙の枚数を埋めるのと同じこと。まずはお子さんのサッカーノートがそのパターンでないかチェックしてみてください。これは、一般的な文房具店で販売されているような普通のノートを使った場合によくあることです。「サカイクサッカーノート」には、低学年のお子さんでも記録にとどまらずに書ける"しつもん"があり、その枠の中に答えを書くだけでしっかりとしたサッカーノートが完成するように工夫を凝らしています。せっかく書くならより効果的な1冊にしたいですよね。そのためにぜひ活用していただきたい自信作です。■サッカーを通じてなりたい自分を想像するしつもんがあるサカイクサッカーノートには、その日の練習や試合の反省点や改善点などを書くページがありますが、親御さんにまず活用してもらいたいのは冒頭の思いや考えを書くページです。子どもが最初に記入するのは、なりたい自分に近づくためのしつもんへの答え。・どうしてサッカーをはじめましたか・サッカーの好きなところはどんなところですか・10年後、どんな自分になっていたいですかこういった、サッカーに対する思いから始まります。大切なのは子どもが思いを自由に書くこと。親が求める答えを探すのではなく、まっさらな気持ちで書ける環境を整えてあげてください。サカイクサッカーノートを渡すときに、「何を書いてもいいんだよ」というスタンスであることを説明するといいでしょう。自由に書いてもらったサッカーに対する子どもの思いは、子どもを理解する最大のヒントになること間違いなし。ちょっとした気持ちの食い違いも発見でき、よりいっそうわかりあえるはずです。■親が期待することと、子どもがかなえたい目標が違うこともある例えば、「サッカーの好きなところ」には「友達とボールを蹴れること」と書かれているかもしれません。親御さんが「サッカーの醍醐味はシュートが入った瞬間。子どもにもその喜びを味わってほしいし、積極的に点に絡んでもらいたい」と期待していたとしても、子どもは点を決めることに対してそれほどの思いをもっていないことがわかります。そうわかれば、親御さんの期待通りの活躍ができなかったとしても、試合後に「どうしてこうしなかったんだ」と落胆せずに済みませんか。ボールを蹴ることが楽しいという純粋な気持ちを今は尊重してあげようと親御さんが思えれば、それは子どもにもちゃんと伝わります。子どもはさらに楽しくサッカーをしてくれることでしょう。コミュニケーションは、「お互いが分かり合えない事」を出発点にすると、また新たな視点で関わることができます。書かれた思いを見るときは、ぜひ興味をもって「どうしてこう書いたの?」「どうしてそう思うの?」など、さらなる質問もできれば満点です。子どもは親が自分に興味をもって接してくれることを喜び、いきいきと答えてくれるはず。その答えからは、思いもよらない子どもの本音を発見できるかもしれません。上記の「友達とボールを蹴れること」と書いた子どもの場合は、普段は塾や習い事で忙しく、お友達と放課後遊ぶ時間=サッカーなのかもしれません。もっと友達と遊びたいという本音もわかります。また、10年後の目標を「日本代表になりたい」と書いたとして、その理由をさらに質問したときに「お父さんに試合を見に来てもらいたい」と答えたとします。これは、土日も仕事で忙しくなかなか応援に足を運べない父親のお子さんの答えでした。子どもの本音は、大好きなお父さんに活躍する姿を見せたい、喜んでもらいたいということであることがわかります。■サッカー上達につながる活用術ポイントは「どうしたら?」ではなく「なぜ?」サッカーノートを書く理由について、多くのお子さんや親御さんは「サッカー上達のため」と思いがちです。どうしたら上手くなるのか、どうしたらサッカー選手になれるのかといった目標や方法論を書き記すことももちろん大切ですが、子どものサッカーノートを通して親御さんに重視してもらいたいのは、「どうしたら」より「なぜやるのか」のほうです。サッカーをする動機が「褒めてもらえるから」「勝ったらご褒美がもらえるから」などといった外発的なものだけだと、それはサッカーではない他のスポーツでも代替できることになってしまいます。それに対して、なぜサッカーが上手になりたいのかという内発的な動機がわかっていると、好きの理由が明確になり、よりサッカーに夢中な気持ちに気づくことができます。サッカーは魅力的なスポーツなので、子どもたちの心の中にもこの源泉のような思いが眠っていることが多いものです。とはいえ、その気持ちを言語化するのは子どもには難しいことです。親御さんはサッカーノートを使って子どもの答えを深堀りしながらサポートしてあげてください。言葉にすることで、子どもはその気持ちをしっかりと認識し、サッカーに取り組む姿勢が一段アップすることうけあいです。そうなると、サッカーノートは単なる「記録帳」ではなくなります。日々の練習の質も上がり、当初の目的であった「サッカー上達」にもつながります。■「サッカーノート時間」は1日10分でOK!サッカーの上達とともに、親子のコミュニケーションという側面でもメリットがあるサカイクサッカーノート。短時間で質の高い振り返りや記述ができるように"しつもん"という形式をとっているので、書く時間は1日10分でOKです。子どもが自主的に書くことができない場合は、10分間だけ隣で座って見守ってあげられるとベターです。最初は1行だけでも合格。その1行を書けたことをたっぷり褒めて、それにまつわる質問をして、親子のコミュニケーション時間を楽しみましょう。思春期になると、とくに男の子は親との会話を嫌がるようになりがちです。質問をしても何も答えてくれないなんていう時期もあるかもしれません。そうなる前のジュニア年代こそ、サカイクサッカーノートが力を発揮してくれるはず。まずは1冊、子どものことをわかるためのツールとして、そして子どもがサッカーに夢中な気持ちに気づくためのきっかけづくりとして取り入れてみてはいかがでしょうか。藤代さん監修!1日10分で書けるサッカーノート>>藤代圭一(ふじしろ・けいいち)一般社団法人スポーツリレーションシップ協会代表理事。教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力を育む『しつもんメンタルトレーニング』を考案。全国優勝チームや日本代表選手など様々なジャンルのメンタルコーチをつとめる。2016年より全国各地に協会認定インストラクターを養成。その数は350名を超える。選手に「やらせる」のではなく「やりたくなる」動機付けを得意とする。新刊に「教えない指導」(東洋館出版)がある。藤代圭一さん最新著書「教えない指導」>>
2022年02月18日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は苦手意識を持っている選手も多いバウンドしたボールを上手く扱えるようになる、楽しみながらできるトレーニングをご紹介します。試合中浮き球が飛んできた時に、地面に落下して跳ねあがってくるボールが怖かったり、空間把握能力が低く落下地点に入れなかったりで苦手意識を持つ人も少なくないもの。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、バウンドしたボールの苦手克服をして、自分の思った所にコントロールすることができるようになります。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親がボールを持ち、数メートル離れて対面して立つ2.落下地点を予測しながら動き、手でボールを手でキャッチ3.慣れたら弱くバウンドしたボールを腿など足でコントロール4.身長より高くバウンドしたボールの落下地点に入り、腿など足でコントロール【トレーニングのポイント】・最初は落下地点の予測を優先・ボールの落下地点を予測するためにしっかりボールを見る・コントロールの際に勢いをつけると次の動きまで時間がかかるので、しっかり足元に収める・次にプレーしやすい場所を意識してボールをコントロールする・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年02月17日フィジカルはないが足元の技術を買われ全国レベルのジュニアユースに昇格できたけど、一度もAチームにあがれない。自分自身もサッカーをしているので苦しんでいる息子の努力はわかるが、なんて声をかければいいかわからない。中学生に過保護かもしれないけど、最善の対応を教えて、と苦悩するお父さんからのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、親、子それぞれのためにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<自分は下手だからと卑屈になってモチベが落ちないか心配です問題<サッカーパパからのご相談>中学2年生の父です。サイトに「ジュニアサッカー」とあったので、ジュニアユースも対象かと思ったのですが、主に中学にあがる前の保護者が対象のようですね。中学生にもなって親が出てくるなんて過保護だと思われるかもしれませんが、相談させていただけますでしょうか。息子は全国に行くレベルのクラブのジュニアユースに在籍しています。小学生から所属しており、「速い」「高い」といったフィジカルを全く持ち合わせていませんが足元の技術を買われ、ジュニアユースに昇格しました。現在中学2年ですが、Bチームで一度もAに上げてもらえません。私自身もサッカーを未だにしている為、息子が日々努力しているのはわかります。そういった息子に日々どういう言葉をかけたら良いか悩んでいます。息子が小学生の頃は、サッカーに対してはかなり厳しく言って来ました。しかし、中学生になりBチームで苦しんでいる息子に対して本当に最善の言葉がみつかりませんし、とても苦しいです。何か参考になる対応を教えていただけませんでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。お父さんの苦悩が伝わってきて、読んでいるこちらも苦しくなるようなご相談です。小学生までは厳しく言ってきた、と書かれているので、今まではお父さんは息子さんのサッカーに介入されてきたのですね。■親の言うことに耳を貸さない時期。見守りに徹してでも、もう中学2年生で親の言うことには耳を貸さない思春期です。お子さんのサッカーにタッチするのは難しいでしょう。「何か参考になる対応を」と書かれています。お父さんの私への要求はもしかしたら、息子さんを励ます金言などでしょうか。もしそうであればがっかりさせてしまうかもしれません。結論から申し上げると、見守りに徹することです。■友達との揉め事を見てたのに何も言わなかった父のエピソード高校女子サッカーの強豪・京都精華学園高校で監督を務めていらっしゃる越智健一郎先生のお父様とのお話を紹介します。お父様はすでにになり指導の一線からは退かれましたが、男子の高校サッカーで強豪チームを育て上げた方です。つまり、親子二代教員であり、男女の違いはありますが全国大会上位へ駒を進めるチームの監督というわけです。越智先生がサッカー少年だった頃。近くの空き地で、毎日のように友達と延々と一対一に明け暮れていました。サッカーが楽しくて夢中になっていました。しかし、子どもなのでちょっとしたいざこざや、いさかいがあります。ある日、ちょっとしたことで揉めてしまい、友達が被っていたニット帽をむんずとつかんで、地面に叩きつけてしまいます。バシッと投げつけた瞬間、越智少年が見たのは、金網の向こうに自転車にまたがったお父様の姿でした。一部始終を見届けていたのは明らかです。それなのに、何も言わずじっと見つめていました。動揺して先生が目をそらすと、次に見やった時はもうお父様はもうそこにいませんでした。ニット帽を投げつけたところを見られ家に帰りづらくなったけれど、あまり遅くなれば逆に叱られる。観念して帰宅したそうです。「ただいま」家に戻った息子の顔を見ても、お父様は何も言いません。家族の食卓が始まり何事もなかったように一日が終わりました。(お父さん、絶対、金網の向こうで見てたよな)でも、結局翌日になっても何も言われませんでした。■保護者は子どもが自発的に動いていくための介助者的役割越智少年は、何も言わないお父様の態度があったからこそ、自分の行いを振り返ります。こうして、善悪や人としてどうあるべきかを学ぶのです。そして、そのときのことをこう振り返ります。「教師は怒ること、教えることが仕事じゃない。子どもが自分で感じて、理解して、成長していくために、自発的に動いていくための介助者的役割なのかなって、何十年も経って思い知らされます」A先生は教師の矜持としてこの出来事をとらえていますが、これは教師のみならず保護者にも通じるもの。子どもが主体的に自分の課題や問題に立ち向かえるよう、介助する。それこそが親の役割なのだと思います。コーチや子どもに寄り添う大人のマインドセット(心構えみたいなもの)は、昭和の時代まではスパルタ的に強く引っ張っていく、リードしてくようなイメージでした。先日亡くなった石原慎太郎氏が1969年代に『スパルタ教育』という本を著しているほどです。この本を家の本棚から見つけ、ああ、父親がすごく叩き始めたのはこの本の影響なんだと理解した記憶があります。■中学時代、親に「こうすべきだ」と言われ素直にありがとうと思えたかご相談者のお父さんも、もしかしたら親御さんからそのような教育を受けてきたのではないでしょうか。しかし、時代は大きく変わりました。現在は「サーバントリーダーシップ」といって、大人は子ども(生徒や選手)にサーバント(使用人)のように彼らが「こうしたいんだけど、どうかな?」と言ってきたときに大きな力になる。それが目の前の子を大きく成長させるカギだと言われています。皆さん「何を言えばいいですか?」「どうふるまえば?」と言葉を知りたがります。でも、それぞれご自身の中学時代を振り返ってください。親や教師から、ああしろ、こうすべきだ、おまえはここを直せと言われましたよね。その時に、そうだね、そうします。大人の皆さん、本当にありがとう!なんて思ったことがありますか?少なくとも私はありません。ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、自分の言葉で子どもが変わるなんて思わないほうがいいでしょう。たかだか数十年長く生きてきたからといって、私たち大人にそんな力はありません。しかも、私たちが子どもだったころとは全く違う世の中を彼らは生きているのです。■本来なら小学生年代でも親は出ない方がいい(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)お父さんは「中学生にもなって親が出てくるなんて過保護」と書かれていますが、本来なら小学生から親は出ないほうがいいと私は思っています。また、息子さんは一生懸命自分の境遇と向き合っているようです。あっぱれではないですか。したがって、お父さんはまず、彼の努力を認め褒めましょう。「おまえ、Bにいてもこんなに努力してすごいね」「お父さんならとっくにあきらめてるよ。続けてるだけですごい」そんなふうに、へーっと感心していればいい。「やったことは無駄にならないよ」などと間違っても言わないでください。彼の苦しみは、彼しかわかりません。もうすぐ中学3年生。今が、お父さんの子離れの交差点です。立ち止まらず、おろおろせず、前を進んでください。その姿に、息子さんは必ず勇気をもらうはずです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年02月15日サカイクがお届けする『親子で遊びながらうまくなる!サッカー3分間トレーニング』。今回は苦手意識を持っている選手も多い「胸」でのコントロール、いわゆる「胸トラップ」を身につける楽しみながらできるトレーニングをご紹介します。試合中浮き球が飛んできた時に胸でボールを受けてコントロールすることがあります。しかし、痛かったり、怖かったりして最初は苦手意識を持つ人も多いもの。 今回は、広いスペースがなくても親子で遊びながら、胸トラップができるようになる方法を紹介。このトレーニングは遊びを通して楽しみながら行うことで、胸でのコントロールに自然と慣れて、胸トラップの苦手克服をすることができます。親は難しい動きはありません。【やり方】1.親がボールを持ち、数メートル離れて対面して立つ2.最初は手でボールを手でキャッチ3.肘を張るように手を横にして、より胸に近い位置でキャッチ4.優しく山なりに投げたボールを片方の胸に当てて落とす5.胸に当てて落とす動きに慣れてきたら、少しずつ距離を離してみる【トレーニングのポイント】・子どもの胸に向かって優しい山なりのボールを投げる・相手を交わしやすいよう、動きの幅を大きく取る・最終的に、前方向に運び出すプレーなので、ゴールは少し前に設置・プレッシャーをかけに来た親を交わすイメージで行う・力まずリラックスして行う・慌てずゆっくり、慣れてきたらリズム良く行う・失敗しても気にせず、親子で楽しみながら行う次回もサッカー初心者のお悩みに応えるトレーニングをお届けしますのでお楽しみに!お父さんコーチに役立つ練習メニューを公開中>>
2022年02月15日「JFAグラスルーツ宣言」に賛同するチームを認定し、つながりを作ることで、グラスルーツの環境改善を目指すJFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度。引退なし、補欠ゼロ、障がい者サッカー、女子サッカー、施設の確保、社会課題への取り組み、という6つのテーマに、それぞれ賛同するチームが認可を受けています。今回グラスルーツ推進グループの松田薫二さんと荒谷潤さんがお話を聞いたのは、千葉県浦安市に拠点を置くフットサルチーム・バルドラール浦安デフィオの監督兼選手として活動する泉洋史さん。後編では今まで誰もやっていない取り組みを行なっている泉さんの原動力や、今後の展望などを伺いました。(取材・文・インタビュー写真:松尾祐希写真提供:バルドラール浦安)試合中のベンチの様子(提供:バルドラール浦安)<<前編:チャレンジしたくてもできない状況があった。障がいのある子どもたちを主体にチャレンジフットサルに取り組むバルドラール浦安デフィオ<グラスルーツ推進6つのテーマ>■デフサッカーの日本代表や、熱意を持った人が集まった松田:どのような形でメンバーを集めて行ったのでしょうか?泉:最初はデフサッカーの協会でも取り上げていただき、バルドラール浦安に下部組織ができたことを報じてもらいました。ほとんどは健常者のチームで継続的に戦ったことがないメンバーでしたが、元々個人で健常者のチームに入ってもうまくいかずに続かない選手もかなりいたんです。そうした過去の経験も含め、デフを主体としたチームで健常者のリーグ戦に出場することは難しいと思われていましたが、実際にデフサッカーの日本代表クラスの人たちが加入の意思を示してくれましたし、挑戦したいという想いを持った人が集まってくれました。■どんな障がいがあってもフットサルを楽しんでもらいたいのに、閉鎖的だった松田:そこから他の障がいの人が入ってきたと思うのですが、どういう経緯で加入に至ったのでしょうか?泉:僕は浦安の特別支援学級で働いていたのですが、そこでサッカーがやりたくても部活に入れないという例を見聞きしていたんです。特に自閉症や知的障がいの方が多かったので、そこからもう1つの取り組みであるチャレンジフットサルを2015年頃に立ち上げたんです。当時デフィオは聞こえる人と聞こえない人の限定チームみたいになっていて、違和感を覚えていたんです。元々どんな障がいがあってもフットサルを楽しんでもらいたい考えがあり、いろんな人を取り込もうとしているのに、デフィオは閉鎖的な感じになっていたので変えたかったのです。そうした想いを抱いている時に、1人の知的障がいの方が練習参加したいと言ってくれたんです。彼は現在も在籍しているのですが、一緒にやっていく中でコミュニケーションを密にしたり、シンプルに伝え合えば、どんな障がいがあっても一緒にプレーできると実感できたんです。それがきっかけになって、デフだけではなく、いろんな障がいのメンバーがよりチャレンジできる場として、デフィオを捉えられるようになりました。■障がいの有無や重さに関係なくは入れるチームになっていった松田:そこから知的障がいの人たちが増えたのでしょうか?泉:すぐには増えませんでしたが、いろんな障がいの人が集まるチームにしたいという想いは持ち続けていました。その状況から裾野が広がるきっかけになったのが、特別支援学校のサッカー部と繋がったことです。市川大野の特別支援学校と接点ができ、サッカー部の子を対象にフットサルクリニックを実施したんです。そこで練習に行かせてもらい、卒業後にチャレンジできる場があることを伝え、そこから何人かデフィオに入ってきてくれました。知的障がいのメンバーが増えていき、より一層インクルーシブなチームになり、だんだん浸透して、認知されるだけではなく、障がいの有無や重さに関係なく入れるチームになっていきました。■特別支援学校に通う生徒にとって卒業後の受け皿でいたい松田:特別支援学校に通う生徒にとって、卒業後の受け皿にもなっているんですね。泉:そうでありたいですね。デフのメンバーは自分たちでつながって、各地にチームを作れるのですが、知的障がいのメンバーはそれが難しい側面があります。特別支援学校の障がい種別の割合では、知的障がい者を対象とする学校が7割〜8割になっていると思います。知的な障がいはありながらも、身体は健康でエネルギーに溢れる若者にスポーツに取り組む場は必要だと考えているので、僕たちは受け皿になりたい。最初はチャレンジフットサルから入り、もっとやりたいとなればデフィオに入ってもらうのが理想です。なので、そういうピラミッドは作りたいですね。松田:精神障がいの方も加入されていますが、どういう経緯で入ってこられたのでしょうか?泉:チームの存在が認識されたことで、聴覚障がいの方と知的障がいの方の交流試合が行われるようになったんです。横のつながりができたことで誘う機会が増え、知ってもらう契機になりました。千葉県3部リーグで戦っていることや、メンバーがデフサッカーのW杯に出場している経歴も含め、ちょっとずつ関心を高めることができた結果だと思います。■これまでに誰もやってない取り組みを行う原動力松田:今まで誰もやっていない取り組みを行なっている泉さんの原動力を教えて下さい。泉:自分はトップリーグでプレーしたかったという想いを持ちながら、夢を叶えられませんでした。ただ、自分の中では本気のチャレンジが自分なりにできたと思っているんです。目標には届かなかったですけど、その時に特別支援学校の教員をやるという夢もあり、その二つの本気の想いがあって新たなチャレンジに繋がる原動力になったと感じています。やりたい事を本気でチャレンジしたからこその経験が、自分だからできる楽しさや、新しいチャレンジをして新しい人と出会う楽しみになりました。自分の想いを形にできた時の喜びもモチベーションになっています。■自分と特徴が違う人に対して最初から違和感を持っていなかった松田:障がいのある人にいきなり向き合うことはそう簡単ではないと思いますが、向き合う上で影響を与えた出会いなどはあったのでしょうか?泉:自分の祖父が車椅子を使って生活をしていたからなのかもしれません。徐々に神経が麻痺する病気を患っていて、体が動かなくなる姿を見てきました。母がそれを介護していたんですが、祖父の繋がりで子どもの頃に失語症の人たちのコミュニティーで遊ぶ機会があったんです。なので、自分と特徴が違う人に対して最初からそんなに違和感は持っていませんでした。教員の勉強をする中でも自分の行動が誰かのためになるという喜びを学んだのですが、人生の中で実際に感じてきたからこそ、今の選択をしているのだと思います。■最初はインサイドキックもできず「辞めたい」と言っていたメンバーが......松田:デフィオやチャレンジフットサルを通じて、一番嬉しかった経験談を教えて下さい。泉:一番は市川大野の特別支援学校のサッカー部から上がってきたメンバーの成長ですね。彼らは知的障がい者なのですが、最初はインサイドキックができない状況で入ってきて、「辞めたい」「辛い」と言いながらも、なんとか続けてくれました。どんなメンバーでも良さがあります。「それぞれが特徴を生かして、チームの勝利に挑戦する」という言い方をよくするのですが、そのメンバーが得点を取って3部リーグの試合に勝つことができました。その時が一番嬉しかったですね。今思い出しても泣きそうになるんですけど、本当に嬉しくて、彼が頑張ったこともそうなのですが、周りのメンバーも認めてくれたんです。できることを信じてくれて、仲間も生かしてくれた。それで得点が取れて勝てた。なので、障がいの有無に関わらず、お互いの良さを高めていけると感じました。それを感じた瞬間が一番嬉しかったですね。松田:できないことにフォーカスするのではなく、できることにフォーカスしてお互いが理解して戦う。そこは障がい者サッカーにあって、健常者が忘れているところなのかもしれませんね。泉:多様性を強みにまで昇華させられれば、デフィオの価値が上がるというか、存在意義がもっと出てくるはずです。アプローチの方法を示し、違いを受け入れて戦うことができる点を証明したい。そこまで魅力を高められれば良いですね。■多様性を活かし勝利を追求していくバルドラール浦安デフィオの監督兼選手として活動する泉洋史さんチームの活動や今後の展望を語ってくれました(C)松尾祐希松田:今抱えている課題や将来に向けての目標はありますか?泉:デフィオは勝利を目指すという目標に関して言えば、3部でなんとかやっている段階です。まだまだ多様性を強さに発展させられてはいないんです。障がいのあるメンバーがゴールを決めた。数試合勝利できた。などはありますが、県リーグ3部の中で継続的に勝利し、2部への昇格争いはできていません。多様性を強さに変えていければ、一般のチームに対しても魅力溢れるチーム作りのロールモデルになっていけると考えています。現在はなかなか勝てていませんが、、ブレずに多様なメンバーと共に勝利を目指していきます。
2022年02月14日「大人になってから学ぶサッカーの本質とは」を運営し、育成年代のサッカーの本質を伝える活動をしているKEI IMAIさんに、子どものサッカーを「習い事」と捉えることについて聞きました。子どもにサッカーをやらせたい親御さんはたくさんいます。親同士で、「習い事なにやってるんですか?」という会話になると、「水泳と、英語とサッカーと...」このように返すお母さんさんお父さんは結構いると思います。でも、長くサッカーをしてきた身として、サッカーを指導してきた身としてもお伝えしたいのは、サッカーを習い事と思わないでほしいということです。今回は、子どもにサッカーをさせたい、サッカーを楽しんでほしいと思っている親御さんが心得ていてほしいことをお伝えします。(構成・文:KEI IMAI)【関連リンク】子どもが心からサッカーを楽しむために大切にしてほしい親の心得「サカイク10か条」■どうして「習い事」と捉えない方がいいのかどうして「習い事」と思わないでほしいのかというと、サッカーを教わる、教えてもらうという受け身の姿勢が、サッカーというスポーツの本質から遠ざけてしまうからです。サッカーは教わるものではありません。楽しい、プレーしたい、もっと上手くなりたいという気持ちを育み、子ども自らの主体性を引き出すことが我々大人の役目です。子どもは、何のためにサッカーをするのでしょうか。サッカーを楽しむためです。そしてサッカーを通じて仲間と繋がり、成長します。■上手くするために育むべきものは好奇心と主体性では、どうしたら成長できるのかというと、自分がやりたいと思って決めたことで、これまで出来なかったことができるようになること、そうなるまでに楽しくも苦しみが伴うことを知ることです。勝つことの喜びを、負けることの悔しさを知ることです。これらをサッカーで経験し、もっと上手くなりたい、もっと成長したいと子どもたち自身が思えることがとても大切なことです。ですから、サッカーを習い事としてやらせないでほしいんです。強制しないでほしいのです。サッカーを上手くさせたいという気持ちはコーチたちも同様です。だからこそ、育むべきは子どもの好奇心であり主体性です。サッカーって面白い、楽しい!と思わせて、「上手くなりたい」という気持ちを育み、上手くなるための環境をつくるのがサッカークラブの役目です。「上手くなりたい」という気持ちは、強制によって育まれるものではありません。サッカーという真剣な遊びの中で育まれていきます。サッカーの本質は遊びです。サッカーがしたいと思わないと、当然サッカーは上手くなりません。サッカーをしなきゃいけない......、と思いながらプレーしたところで上手くなりません。■夢中でサッカーをしている子どもが上手くなる元陸上選手の為末大さんは著書『生き抜くチカラ: ボクがキミに伝えたい50のことば』の中で「努力は夢中には勝てない」という言葉を残しました。私自身の子供の頃をふり返ってみると、夢中でプレーした積み重ねが成長に繋がっていたことがわかります。楽天大学の学長である仲山進也さんと元東京ヴェルディで活躍された菊原志郎さんの共著『サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 才能が開花する環境のつくり方』にはこう書いてありました。ーー夢中で試行錯誤ができる子とできない子の違いって、何でしょう?主体性ですかね。こういう練習は、子ども同士でやるのが一番楽しいんですよね。大人がいると、どうしても大人の視線やミスを気にして伸び伸び練習できないですから。JFAアカデミーのときは、「今日は、コーチは何も言わないよ。失敗してもいいから自分たちで考えて、仲間と力を合わせていろいろやってごらん」という「ノーコーチングデー」を設定してました。出典:サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 才能が開花する環境のつくり方より夢中でサッカーができる、試行錯誤できる環境が一番成長に繋がります。どんなに最先端の練習メニューも、夢中でプレーする子どもたちの前では無力です。夢中になる仕掛けが上手い大人が子どもを成長させます。魔法の練習メニューは存在しませんが、魔法のコーチングは存在するということです。子どもたちの気持ちをノセる指導者の元で子どもたちは伸びていきます。■サッカーを強制し、プレーを矯正するチームは少なくない長くジュニアサッカーを見てきましたが、未だに子どもたちにサッカーを強制し、プレーを矯正してしまうチームが少なくありません。ジュニアユース、ユースに上がり競技志向になっていけば多少そのようなアプローチがあるのも理解できます。しかしサッカーを始めたばかりの子どもに強制や矯正することは不要だと思います。チームを見極めるためには、練習だけではなく、ぜひ試合も観てほしいです。試合中、コーチがどんな声掛けをしているか、どんな振る舞いをしているか見てください。偉そうにふんぞり返って、子どもたちにコーチングとは程遠い怒号が聞こえてきたら要注意かもしれません。もちろん時には厳しさも大事です。でも、試合での指導者の態度は見極める上で参考になると思います。■信じて任せること、先回りして教えてしまうことで失ってしまうものチームに子どもを預けたら、親御さんは余計な口を出さないことです。子どもに「もっと練習しなきゃ」とか「なんでシュートしないんだ」など、余計な口を出して気持ちを壊さないようにすることが大事です。成長が早い子も遅い子もいます。周りができることができなくても焦らずに、見守ることが重要です。また、よく見かけるのが答えを先回りして教えてしまうことです。先回りして教えてしまうと、教わる側が自分で発見する喜び、成長する喜びを失ってしまいます。成長のタイミングも成長の仕方も人はそれぞれ異なります。だからこそ難しく、面白いんです。教えるのが上手い人は、決して教えすぎません。その子が自ら考え、自分でその技術を獲得するための余白をちゃんと残します。先回りして教えてしまうことで失ってしまうことを理解しなければいけません。子どもがサッカーを楽しくプレーするために、サッカーを習い事にせず、好奇心と主体性を育み、夢中になれるように、信じて任るようにしていただけたら良いなと思います。★この記事はサカイク10か条の項目第1、2、3、5項に該当しますKEI IMAI桐蔭横浜大学サッカー部時代に風間八宏氏にサッカーの本質を学んだ後、育成年代(主にジュニア)の指導に5年ほど携わる。その後半年間、中南米をサッカーしながら旅をし帰国。ブログ「大人になってから学ぶサッカーの本質とは」を運営し、サッカー育成年代の取材、指導者や現役選手にインタビューをしサッカーの本質を伝える活動をしている。筆者Facebookアカウント>>筆者Twitterアカウント>>
2022年02月10日上手な子は上の学年の試合に同行させてもらえるけど、息子は留守番組。ほんの2~3人留守番させるなら連れてってくれてもいいのに。本人も「自分は下手で出たら負けちゃうから当然だけど、ちょっと悔しい」と。子どもが卑屈になったらどうするの!?「お前は下手だから試合に出れない」と友達に言われたら?どうモチベーションをあげればいい?と悩むお母さんからのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<月謝を払っているのにスクールコーチが何も教えてくれません問題<サッカーママからのご相談>10歳の子どもがサッカーの少年団に入っています。上手な同級生は上の学年に同行し試合に出してもらってますが、息子は留守番組です。同行している子はパパコーチの子で、少年団以外にもサッカーを習っているので上手なのは当然なのですが、わずか二人くらいを留守番組にしたりするなら、連れて行ってくれてもいいのでは......と思います。息子は「自分は下手なんだし、出たら負けちゃうんだから上手な子が行くのは当然。でもちょっと悔しいかな」と言っています。練習は楽しんで行ってますが、親の私がどんなモチベーションでいたらよいのか、モヤモヤしています。上手な子だけが選ばれる、自分は下手だから、と息子の気持ちがどんどん卑屈になったらどうしようとか、友達から「お前は下手だから試合にでれないって言われたらどうしよう」とか私が悩んでしまってます。子どものモチベーションを下げさせないためにどんな心でいればいいのか、どんな風に声をかければいいのか、などアドバイスをいただければと思います。<島沢さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。短いご相談文の中から推察してお答えするので、若干ずれがあるかもしれません。そこは最初に断っておきますね。そのうえで、結論から申し上げます。このケース、一番の処方箋はお母さんが息子さんのサッカーから距離を置くことです。■問題は子どものモチベーションでなく、自分のモチベーションが下がっていることでは息子さんは「自分は下手なんだし、出たら負けちゃうんだから上手な子が行くのは当然。でもちょっと悔しいかな」と言いつつも、練習は楽しんで通っていると書かれています。「親の私がどんなモチベーションでいたらよいのかモヤモヤする」とありますね。そこを考えると、実は息子さんではなく、お母さんの問題のような気がします。「子どものモチベーションを下げさせないためには?」との相談のようでありながら、実は子どものサッカーに対するご自分のモチベーションが下がっている。それが不安で仕方ないのではありませんか。■子どもは楽しく練習しているのに、起きてもいないことで親が不安になっている状況ご相談文の冒頭で、留守番組の二人だけが置いて行かれることに対し、不満を述べられています。面白くない気持ちはよくわかります。私も息子が小学3年のとき、上の学年に呼ばれて遠征に行ったら1試合も出られず戻ってきたことがあります。試合中に先輩のプレーを見ずに砂に絵を描いていたから「もう出さない」とコーチに言われたそうです。ですが、息子は自分の学年ではないし、大して気にしてもいませんでした。ただ単に「一日中ベンチにいて面白くなかった。自分の学年の練習に行きたかった」と言っただけでした。まあ、そうだろうなと私も思いました。上の学年は人数も多く、下の学年が出て、その学年の子どもは少ししか出られないことが問題になっていました。息子さんは自分の学年の活動があるのだからそれでOKな気がします。だから本人も楽しく練習しているのでしょう。それなのに、お母さんは、彼の気持ちが卑屈になったらどうしようとか、友達から「下手だから試合にでれないって言われたらどうしよう」と、まだ起きてもいないことを心配しています。もしかしたら、他のこともあいまって、お母さん自身の不安感情が高まっているのかもしれません。少し気分を静めて、パートナーと話し合ってみるなどして、ご自分の気持ちの揺れと向き合ってみてはいかがでしょうか。■親に信用されてないと感じると子どもは落ち込むもし本気で息子さんの精神状態が心配でたまらないのならば、もう少し自分の子どもに自信を持ちませんか?この連載でも以前に申し上げましたが、親が「転ばぬ先の杖」を立てようとすると子どもを不安にします。自分は楽しいと言ってるのに、卑屈になったらどうしようとお母さんが心配していることを感じた子どもは、自分が信用されていないことに落ち込みます。つまり「最も近くにいる母親にこんなに心配されてしまうダメな僕」と思ってしまいます。試合に出られない彼の悔しさに「残念だったね。悔しいね。一緒に連れて行ってくれればいいのにね」と共感することは重要です。ただし、子どもの気持ちに親が同化してはいけません。そこでは「いいじゃん。学年の試合があるしね。また頑張ればいいよ。楽しくサッカーできればいいね」と寄り添ってあげてください。しかも冒頭で伝えたように、息子さんは楽しんで通っています。そこを認めてあげましょう。■「試合に出さないなら辞めさせます」親が立腹して子どもの意思を無視するケースも(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)以前、都内で少年サッカーのコーチをしている方が、こんな事例を教えてくれました。4年生が大会に出たら、相手が強くて、二人だけ試合に出せなかったそうです。すると、その日当番だったその子のお母さんが「試合に出ないのなら当番なんかしないほうがよかった。もうやめさせます」と言ってきたそうです。コーチは陳謝し、その子にも「今度はチャンスがあるから」と説得したら、子どものほうはうなずいたそうです。入ってまだ数か月でしたが、サッカーを好きになっていました。ところが、お母さんは聞き入れません。「みんな出られると言われたから入れたのに」と言って、息子さんの手を引っ張って帰ってしまいました。「子どものほうはやめたくなかったと思う。歯を食いしばって泣くのを我慢していました。でも、母親にやめたくないと言えないわけです」歯を食いしばっているのを、お母さんは「ほら、この子もこんなに悔しがっている」と言ったそうです。親が子どもをコントロールできると考えないほうがいいです。声掛けとか、何か話をしてやる気が出るものではありません。日ごろから、できるだけ子どもの選択を尊重して任せましょう。「ま、いっか。サッカーをするのは私じゃない。この子なんだし」そのようにぜひ割り切ってください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2022年02月09日「JFAグラスルーツ宣言」に賛同するチームを認定し、つながりを作ることで、グラスルーツの環境改善を目指すJFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度。引退なし、補欠ゼロ、障がい者サッカー、女子サッカー、施設の確保、社会課題への取り組み、という6つのテーマに、それぞれ賛同するチームが認可を受けています。今回グラスルーツ推進グループの松田薫二さんと荒谷潤さんがお話を聞いたのは、千葉県浦安市に拠点を置くフットサルチームバルドラール浦安デフィオの監督兼選手として活動する泉洋史さん。グラスルーツ推進パートナーとしてどんな活動をしているか伺いました。(取材・文:松尾祐希写真提供:バルドラール浦安)チャレンジフットサルでの集合写真(提供:バルドラール浦安)<グラスルーツ推進6つのテーマ>■障がいのある子たちを主体としたチャレンジフットサルなどの活動も松田:バルドラール浦安の下部組織としてデフィオは活動されていますが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか。泉:私たちはインクルーシブのチームとして活動しています。2014年に立ち上がったチームで、今は聴覚障がい者、知的障がい者、精神障がい者、視覚障がい者、健常者が在籍しています。その中で私たちのチームは主に2つの活動を行っています。1つ目は健常者のリーグにチャレンジする競技活動。2つ目は障がいのある子どもたちを主体としフットサル教室を主催する社会貢献活動です。私たちは競技と社会貢献の両方をやっていきたいと考えています。■チャレンジしたくてもできない状況があった2014年のチーム立ち上げ当初(提供:バルドラール浦安)松田:なぜデフィオやチャレンジフットサルの取り組みをされようと思われたんですか?泉:障がいのある方がチャレンジしたくてもできない状況があると知ったからです。聴覚障がいの方がプレーするデフサッカーの存在を知り、一般的な健常者のチームではなかなか馴染めないという声や、健常者のリーグにエントリーしたくても耳が聞こえない理由で受理されない事例があったみたいなんです。そうした現状を変えたいという気持ちでチームを立ち上げました。また、元々自分はバルドラール浦安のセカンドチームでトップ昇格を目指してプレーしつつ、特別支援学校の教員免許を取るために学校へ通っていたんです。そこで耳が聞こえない友人ができ、それがきっかけで聴覚障がい者のフットサルがあるというのを知りました。バルドラール浦安でトップチームを目指してやっていく夢を追いながら、仕事では特別支援学校の教員になりたい。自分が持っている二つの夢が合わさった世界があるかもしれないと気が付き、そこから関心を持つようになったんです。いろんなイベントに足を運び、チャレンジがしたくてもできない人がいることを知りました。今後の活動目標として、障がいがある人と健常者が一緒にプレーできる場をもっと作りたいと思うきっかけになりました。■聞こえる人、聞こえない人をセパレートしたら意味がないと思った松田:その中でバルドラールの下部組織としてチームを作られたのはどういう経緯だったのでしょうか?泉:実はバルドラールでチームを作ろうとは思っておらず、イベントで知り合った方々と一緒に、チームを作ろうという構想を立てていました。ただ、タイミング的にはFリーグでの挑戦を終えてからと思っていました。しかし、引退を決めた時にトップチームのコーチ就任を打診され、チームを立ち上げるのであれば、このコーチの経験が活きると思ったので、1年間やらせてもらいました。そこで経験を積んだので、いよいよチームを立ち上げようとなった時にその想いをクラブの方に伝えたら、浦安で立ち上げないかと言ってもらったんです。松田:バルドラールのどなたと話されたのですか?泉:バルドラールで当時監督をやっていた岡山さんと話していく中で、今経験していることを活かし、障がい者スポーツとフットサルが連携できるチームを作りたいと相談しました。そこで賛同を得て、最初は東京などで立ち上げる話をしていたんです。そこから塩谷社長とお話する機会がありました。自分としては障がいのある方がチャレンジできる場を作りたかったし、クラブとしてもFリーグのクラブとして社会貢献を行うメリットがあると考えていました。素人みたいなプレゼンだったかもしれませんが、社長に伝えたらやってみるかといってもらえました。ただ、チームを立ち上げていく中で、自分としてはデフメンバー主体としつつ、いろんな人が関われる場にしたいという想いがあったんです。もちろん、デフの人だけにしても良かったのですが、セパレートしたら意味がないと思っていました。ただ、聞こえる人はあくまでサポートとしての位置付けで、デフの人が主体になるチーム。そこからさらに高みを目指せるチームをイメージして作りました。■「健常者と戦う所に価値を求めている」正直な気持ちが受け入れられた松田:現在、デフィオは健常者とともに千葉県リーグの3部に所属しています。参加するための過程はかなり大変だったのでは?泉:そうですね。自分は前例を調べ、どこで断られたとか、どこでうまくいかなかった理由を聞いていたので、申請が通らない可能性があると思っていました。ですが、エントリーをして代表者会議があった時に、「実は僕たちは耳が聞こえないメンバーが大半で、コミュニケーションの部分で工夫が必要なチームです。健常者と一緒に戦うところに価値を求めているのでお願いします」という気持ちを話させてもらったところ、拍手をもらったんです。自分としては「なにそのチーム?」って思われると考えていたのですが、後から考えれば、バルドラール浦安の中にチームを作らせてもらったことも大きかったと感じます。皆さんが全く知らないチームではないので、スムーズにエントリーできたのかもしれません。■聞こえないことでの工夫を、「こうすればできるんだ」というチャレンジとして見せたい松田:実際に健常者の人たちと同じリーグを戦ってみての難しさはありましたか?泉:リーグに加盟した当初、ホイッスルが聞こえづらいのに一緒にできるの?という疑問を持たれていたんです。他のチームの方などはあまり言葉にされていませんが、実際にはあったと思うんです。でも、デフのメンバーはプレーを見て判断できますし、聞こえていなくても周りがサポートをしてきました。聞こえていなければ、ベンチから身振り手振りでサインを送ったり、手話も使って伝えたんです。一見大変に見えるところをデフィオなりに工夫してきました。やっぱり、健常者と同じステージで戦うことに価値がある。一般の人にこうすればできるんだとか、こんなチャレンジがあるんだと思ってもらいたいんです。僕自身も最初はこのチャレンジを躊躇していましたが、自分たちを見て新しいことを始めるきっかけにしてくれたら嬉しいですね。なので、リーグ戦を戦う上で色んな壁に当たりましたが、常にポジティブに考えて難しいことも工夫して乗り越えようという想いで取り組んでいます。■試合で笛を吹く際は、サポートできる体制をとっている松田:例えば、リーグ戦ではチームから第1審判以外のレフリーを出す必要があります。そこはどのようにされていたんですか?泉:デフィオのメンバーも審判の資格を取りに行きました。知り合いを通じて、講習会に手話通訳の方に来てもらい、補助することで審判資格を取得してもらいました。実際に試合で笛を吹く際は、自分も近くにいて、何かあったらサポートする体制を取っていました。3部の場合は第2審判と第3審判とタイムキーパーを努めますが、フットサルは第1審判と第2審判でジャッジをするので役割は大きいです。難しい部分もありますが、一緒の条件でオフィシャル業務も行っています。
2022年02月08日「IMGアカデミーでは文武両道が当たり前という考えがあり、通っている生徒のことをStudent Athleteと呼んでいます。アスリートだけでもなく、生徒だけでもないですよ、と。」50カ国以上から1200人が集まり、スポーツのスキルだけでなく社会を構成する1人の人間としての教育に取り組むアメリカのIMGアカデミー。前編ではベースとなる教育プログラムで教えられる内容について紹介しました。後編である本稿では、実際に留学した学生の変化などを紹介。この組織で得られる経験や価値について、前編に引き続きIMGアカデミーの長期留学アドバイザー・藤村有沙さんにお話を聞きます。(取材・文:竹中玲央奈)(写真はサッカー少年のイメージ)サカイクキャンプで導入しているライフスキルの詳細はこちら>><<前編:人間形成が競技者としての成長を促す。IMGアカデミーが示す"ライフスキル"の重要性■学業に厳しいのは"生徒の可能性を広げる"ためIMGアカデミーでは学校での授業の出席状況や成績が、スポーツ活動にも影響を及ぼします。前編でも紹介したように、授業の無断欠席は現場のコーチにも話が通じ「『あなたは今日学校に来なかったので、トレーニングはでられませんよ』と通達される生徒もいる」(藤村さん)とのこと。しかし、授業に"出ている"だけ良いということではありません。「試験で平均以上を取れないと、スポーツでの活動に参加できなくなります。期間は次に平均以上の点数を取るまで。IMGアカデミーでは『勉強をして当たり前』という考えがあります。なぜかと言うと、全ての生徒の可能性を広げるためです。40年間、この姿勢で取り組んでいるんです」■授業に遅刻しても先生に注意されることはない一方、興味深いのが授業に出ることを"強制"することがないという点です。「例えば、寝坊をして授業に間に合わなくても先生から連絡がくることはありません。全ては自分の責任です。日本のように親や先生にリマインドされることはないんです。『休めばスポーツが出来なくなって、授業の成績も悪くなる。それはあなたが選んだことで、あなたの責任だからね』と。そういうスタンスでもあります」■進路相談や目標から逆算した取り組みの提示などサポートが充実「1200名の生徒に対して、生徒をあらゆる面からサポートするスタッフが900名ほど在籍しています。まず生徒それぞれにアドバイザーがついており、競技における技術での成長を教えてくれる人がいれば、進路についての相談にのってくれる担当もいます。例えば学校生活の中で、もともと目指していたプロアスリートになるのが難しいとわかったり、違う進路に向かいたいと思ったときにどうすべきか。また、大学でスポーツを続けるにあたってレベル的にどこがたりないか。そして、その目標から逆算した取り組みややるべきことを提示することも特徴です」■海外で教育を受けることで育つ自主性と多様性「1年過ごして返ってくるだけでだいぶ姿が変わってきます。留学前には感じられなかった自信に満ち溢れた姿で帰ってくるんです。それは、本人が口に出さなくても見るだけで変化がわかるほどです」藤村さんは多くの留学生の出国前と帰国後の姿を見ていますが、その中でも変化は明確にあると言います。「キャンパスには先生方が常にいて、相談できるリソースはかなりあるんです。その中でどう使うか。日本人の子は引っ込み思案ですが、『わからないなら助けを求めていい』と教える環境がありますし、自律性も求められるんです。保護者の方もその部分や思考力、考え方の面が変わったと言いますね。」バスケ留学をしたある日本人の生徒は当初、英語でのコミュニケーションに苦しみ現地の仲間にからかわれることもあったそうです。しかし「確かに自分は英語はうまくないかもしれないけど、日本語と英語の2つを喋ることができる。母国語の英語だけを話している他の生徒より難しいことにチャレンジしているんだ」と考え、競技中や学校生活での自己主張・表現にはずみがついたとのこと。■社会で生きる力を学べるプログラムもこれだけにとどまらず、幅広い国籍やバックボーンの仲間と触れることで感性や考え方が育まれるそうです。「アメリカの軍隊に参加して実際に行われているトレーニングを体験したり、メキシコ山奥の村に行き、生徒でグループを組んで家造りをするワークショップなどもライフスキルのプログラムには組まれています。競技以外でもグループで同じことに取り組み、学ぶことも重要視しています。コミュニティでどう過ごしどう学ぶか。スポーツ以外でどう自分が活躍できるか、適応できるか、というところを学び試す場所もあるんです。一流のアスリートになるためではなく、社会で生きるための力を学べるプログラムとも言えます」■"競技外の人間形成"が長期にわたり信頼される理由サッカーだけでなく、野球やバスケ、テニスなどで上の世界を目指している多国籍の仲間がいて、彼ら彼女らを始め多くの人から様々な考え方を学べるIMGアカデミーは、いち教育機関として大きな魅力があります。最先端のシステムや理論で競技力向上に励むことができるのはもちろんですが、それに並列して重要視されている "競技外の人間形成" のプログラムが、長期間に渡って信頼され地位を築いている要因と言えるでしょう。いつか日本からもサッカーの分野でIMGアカデミーを経由し、競技でも人間性でも手本となるアスリートが出てくることを期待しましょう。お話を聞かせてくれたIMGアカデミーの藤村有沙さん(後ろの写真はアメリカのIMGアカデミーの施設)
2022年02月07日これまで関東・関西で4回に渡って開催し、好評を得ているのが、小学校高学年向けに行うサカイク主催の「GKスペシャルキャンプ」です。日本代表のシュミット・ダニエル選手、大迫敬介選手ら多くのJリーガーを指導してきた澤村公康コーチの指導を2泊3日で学べるのが、キャンプの特徴で、未来の守護神たちが確かな成長を遂げてきました。今回は、愛知県に住む矢野匠海くんが感じたGKキャンプに3度参加し、感じた変化を聞きました。(取材・文:森田将義)【春休み開催】元JクラブGKコーチが指導「GKスペシャルキャンプ」>><<過去の参加者たちの声、GK指導を受けたシュミット・ダニエル選手のコメントなど■「もっと上手くなりたい」から参加を決意保育園の頃に友だちから誘われてサッカーを始めた匠海くんは小学生になり、サッカースクールとフットサルでプレー。2年生になるとそれだけでは物足りず、近所のサッカーチームでもプレーを始めました。3年生に上がったタイミングで、「仲間と仲良くプレーするのが楽しかった」とGKへの転向を志願しましたが、ミニゴールでプレーしていた低学年とは違い、ゴールのサイズが大きくなったため、始めた当初は思うようにシュートを止められなかったと振り返ります。最初は同学年のライバルがスタメンを掴んでいましたが、幼少期に磨いた足元の技術を期待され、5年生になったタイミングでスタメンを獲得。「もっと上手くなりたい」と考えていたタイミングで、お父さんから教えて貰ったのが、サカイクGKキャンプでした。■しっかりキャッチするための具体的なコツを学べた初参加となった2020年の夏のGKキャンプは、匠海くんにとって刺激的な3日間になりました。日々の練習はライバルとの2人でチームのGKコーチから教わったメニューに取り組むのが基本的な流れ。ですが、GKキャンプでは澤村コーチらがGK指導のプロが自らシュートを打ち、アドバイスを貰えます。また、シュートを止める度に誉めるなど、選手のやる気を引き出す指導も一流。「単純なトレーニングですが、単純さの中に駆け引きがあった。『こうすれば、もっと良くなるよ』といったアドバイスも貰えるので、凄く勉強になりました。ただキャッチ出来れば良いのではなく、しっかりキャッチするための具体的なコツを学べました」。■「声の質」などコーチングの細部まで教わった「元々セービングが得意ではなかったけど、ボールを止める喜びを学べたし、1個のボールに集中できるようになった。自分の中で変化を見つけられたのでもっと行ったら、もっと成長出来ると思った」。そう振り返る匠海くんが、2度目のGKキャンプに参加したのは、2020年の冬。緊張で他の参加者に話しかけられなかった1回目とは違い、自ら積極的に話しかけ、県外の選手と仲良くなれたそうです。心にも余裕が生まれ、コーチが言ってくれる言葉も頭に残るようになりました。元々、匠海くんは声の大きさには自信があるため、コーチングを武器にしたいと考えていましたが、なかなか機会がなく、YouTubeで勉強するしかありませんでしたが、澤村コーチに「声の質」などコーチングの細部まで教わる事が出来ました。また、自身がプレーしていない際も、小学6年生のキャッチングの丁寧さや、コーチングの声や質を見て盗み、成長のヒントを掴みました。■一番変化したのはメンタル面、試合中下を向かないようになった6年生になった昨夏には、3回目のGKキャンプに参加。「最高学年なので、年下の子も多い。恥ずかしいプレー、イージーなミスはしないように気持ちでプレーしました」と振り返る匠海くんは、GKキャンプの特徴である普段家ではしない洗濯だけでなく、ミーティングやサッカーノートへの記入も前向きに取り組みました。3回のGKキャンプによって感じる一番の変化はメンタル面。他の選手と比べ小柄な匠海くんは、高い位置へのシュートを苦手としており、失点が続くと気落ちしがちでした。GKキャンプでも複数失点し、試合後に落ち込んでいると澤村コーチにメンタル面の重要性を教えて貰ったのが、印象に残っていると言います。「試合中に下を向いていたら、プレーに集中できない。チームが悪くなるので、試合中は下を向かないようになった」。■親が感じた息子の変化「責任感を持ってGKをやれるようになった」「苦手な所は気持ちでカバーするしかない。届かない球にあと少しで届くというのはよくあるので、止められるという気持ちがあれば変わってくる」と考えられるようになったのもGKキャンプによる変化です。お父さんは「参加してから、責任感を持ってGKをやれるようになった。今までは控えめだったけど、GKというポジションは自分が前に出て、しっかり先頭に立って統率していかければいけないシーンもある。そうしたシーンで責任を持ってプレーできるようになった」と成長を話します。■自信を無くしている子が「もう一度頑張ってみよう」と思えるキャンプ「どれだけ技術があっても、勇気がなければボールは獲れない。GKは非常にメンタルが大事なポジションで、澤村さんは特にGKのメンタルを凄く強化してくれるコーチだと感じています」と話すお父さんはお互いに高め合えればと考え、過去3回のGKキャンプいずれも、知り合いのGK友だちを誘っています。「澤村コーチは凄く盛り上げるのが上手なので、GKをもうやりたくないと自信を無くしている子が、もう一度頑張ってみようと思うには非常に良いキャンプだと思いました。気持ちが落ちている子こそ積極的に参加してもらいたい」(お父さん)。「技術面だけでなく、心から高まっていくキャンプでメンタル的に凄く刺激がある。良いライバルや仲間がいると競い合えるので仲間で行くのが良いと思います」(匠海くん)。■上手くなりたい、自分を変えたいGKの参加を待っていますそう声を揃えるGKキャンプは2022年3月31日(木)から4月2日(土)に千葉県のアルビンスポーツパークで開催予定です。上手くなりたい、自分を変えたいと思っている小学生はぜひ、参加してみてください。【春休み開催】元JクラブGKコーチが指導「GKスペシャルキャンプ」>>
2022年02月04日2022年1月4日、大阪のJグリーン堺で東口順昭選手のGKクリニック「MASAAKI HIGASHIGUCHI GOALKEEPER CLINIC」が開催されました。クリニックは2部構成で実施。1部は小学生、2部は中学生のカテゴリーで行われました。東口選手の他に、ガンバ大阪のGK加藤大智選手とMF奥野耕平選手、関西でGKスクールを主催する安部航平コーチも参加。選手と子どもたちが一緒になってトレーニングをし、間近でアドバイスを受けるなど、貴重な時間を過ごしました。ここでは、参加者の感想をお届けします。(取材・文:鈴木智之)<<関連記事:現役Jリーガー・ガンバ大坂GK東口順昭選手がクリニックで子どもたちに語ったこと■GKの基礎を上手くしたいタムラ セイジュくん小学5年生(GKを始めたきっかけは)幼稚園のときに、お兄ちゃんがGKをしていて、おもしろそうだったので始めました。好きなGKはドンナルンマです。体が大きくて反応が速く、キャッチも上手いからです。(GKクリニックに参加した理由は)基礎を上手くしたいのと、東口選手に会えるからです。実際に会ってみて、迫力がありました。コーチングの声が大きくて、「左を切れ」とか、具体的に言っていたのが勉強になりました。(東口選手へ)今日はたくさんのことを教えてくれて、ありがとうございました。明日からの練習に生かして、プロ選手になれるようにがんばります。練習でキャッチをしたとき、東口選手に「ナイスキーパー!」と言われてうれしかったです。■自分に足りないところが分かったマツカ ショウイチくん小学6年生GKは小学1年生のときに始めました。それまではフィールドプレーヤーだったのですが、あるとき「GKやりたい人?」と聞かれて、手を挙げてやってみたら、結構止めることができたので、コーチに「GKやってみない?」と言われたのがきっかけです。GKは楽しいです。ナイスセーブをしたり、PKで自分が止めて試合に勝つとうれしいです。好きなGKは東口選手とキム・ジンヒョン選手。東口選手はコーチングが具体的でわかりやすくて、言葉でしっかり伝えているところがいいなと思います。ガンバの試合もよく見に行っていて、スタジアムでは東口選手に注目して見ています。(GKクリニックに参加した理由は)プロ選手が意識していることを教えてもらって、自分のプレーに生かしたかったからです。参加してみて、自分に足りないところ、例えばコーチングだったら、もう少しわかりやすくできるなとわかりました。東口選手は身長が大きいし、もし自分がシュートを打つ立場だったら、威圧感があるので、なかなかシュートを打てないと思いました。練習中は優しくて、明るく声をかけてくれたのでうれしかったです。(東口選手へ)忙しい中、このような機会を作ってくれて、ありがとうございます。東口選手に「ナイスキーパー!」と言ってもらえたことで、またサッカーがやりたいと思いました。褒められてうれしかったので、自分のチームの選手が良いプレーをしたときに「ナイスディフェンス!」と、すぐに声をかけたいと思います。■キャッチしてボールがこぼれても、すぐに捕ればいいという助言をもらったノボリオ アヤノさん小学5年生GKは小学4年生から始めました。最初はチームの中で交代でGKをしていたのですが、やってみたら楽しかったので、続けています。やっぱり、シュートを止めたときがうれしいです。(参加した理由は)ガンバ大阪と東口選手が好きだからです。東口選手はギリギリのボールを止めるプレーがすごいと思います。間近で見て、上手くて迫力がありました。練習は一つひとつの説明がわかりやすくて、楽しかったです。(印象に残ったことは)最初のトレーニングで東口選手とペアを組めたことです。あとは、体の後ろでボールをキャッチすると、こぼしたらゴールに入ってしまう。それよりも前でキャッチして、こぼれたとしても、すぐに捕ればいいと言われたのが参考になりました。GKをこれからも続けて、あこがれの東口選手のように、どんなボールでも止められるGKになりたいです。(東口選手へ)今回は教えてくださって、ありがとうございました。前にボールを弾くことを意識して、これからのプレーに生かしていきたいです。ここからは、中学生の部に参加した子どもたちの感想を紹介します。■今後の参考になる「コーチング」のアドバイスがあったクラモト ダイキくん中学3年生GKを始めたのは、中学1年生のとき。東口選手にあこがれて始めました。スマホのカバーも東口選手のグッズです。東口選手は一つひとつのプレーがカッコいいです。なかでも、ハイボールの捕り方がきれいだと感じたので、近づけるように真似をしています。(参加したきっかけは)東口選手のLINEライブを見たからです。参加して、楽しかったです。トレーニングでは、細かいところまで教えてもらえたので勉強になりました。コーチングに関して、「わかりやすく、はっきり伝える」と言っていたのが印象に残っています。(東口選手へ)今回、教えてもらったことを参考に、これからがんばっていきます。■どこに気を付けてプレーするか、を学べたアベ コタロウくん中学3年生GKを始めたのは、小学5年生です。もともとフィールドプレーヤーだったのですが、足をケガしたことがきっかけで、GKをすることにしました。好きな選手は東口選手です。土壇場のプレーがすごいと思います。今日、実際に会ってみたら優しい雰囲気でした。1対1の場面で止めたときに、褒めてもらえたのがうれしかったです。練習でやった最終ラインの裏へのボールや、前後の動きなど、どこに気をつけてプレーするかを、質疑応答で教えてもらえたので参考になりました。(東口選手へ)普段スタジアムなど、遠くから見ている選手に教えてもらえてうれしかったし、楽しかったです。ありがとうございました。■プロは雲の上の存在だけど、分かりやすい指導で楽しい時間を過ごせたシミズ ハヤトくん中学2年生GKは小学4年生からやっています。シュートを止めたときに達成感があります。東口選手はGKとしての技術だけでなく、倒れてもプレーを続けるガッツもすごいと思います。近くで見て、大きくて速いなと思いました。声が大きくて、わかりやすく教えてくれて、接しやすかったです。(参加した理由は)東口選手に教えてもらえるので参加しました。セービングで斜め前に跳ぶと教えてもらったことは、意識してやっていきたいです。東口選手のプレーを見て、この位置に足を踏み込んでいるんだなとわかったので、プレーの参考にしたいです。(東口選手へ)プロ選手は雲の上の存在なので、緊張するかなと思ったのですが、わかりやすく、楽しく練習ができて良かったです。学んだことを生かして、もっと上手くなりたいです。多くの参加者が「東口選手に会う前は緊張していたけど、会ってみると優しかった」「ナイスキーパーと褒められて、うれしかった」と話していました。あこがれの選手のプレーを間近で見て、アドバイスをもらい、大きな刺激を受けたようです。この経験をこれからのプレーに生かして、がんばっていってほしいものです。東口選手の最新情報などは東口選手公式Instagramでチェックしよう>>イベントの様子はONE CLIP株式会社 公式Instagramでも配信中>>
2022年02月02日先日開催されたU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。優勝したセンアーノ神戸ジュニアは「止める・蹴る」の技術レベルの高さが注目されました。大木宏之監督の育成は、低学年から自分たちで決めさせるなど、主体性を育てる点に特徴があります。最近では練習試合を減らし、紅白戦を増やしているというやや意外な話も。今大会だけではなく、中学以降も大事になるサッカーのベース、必要なスキルなど育成年代で大事なことなどを伺いました。(取材・文:貞永晃二、写真:浅尾心佑、吉田孝光)優勝したセンアーノ神戸ジュニア(写真:吉田孝光)■11人制は1人当たりのスペースが大きい今大会は、グループリーグからR16まで無失点で4連勝、準々決勝では0-0と苦しみましたがPK戦で勝ち上がりました。最終日第一試合となった準決勝で今大会初失点を喫し一旦は0-2とリードされたが粘り強く戦い同点として再びPK勝ちで決勝進出。決勝では持ち前の攻撃力を爆発させる大勝で見事優勝を果たしました。R16勝利後インタビュー――今大会にはどういう思いで臨まれましたか?大木宏之監督(以下、大木)ジュニアユース年代の11人制は、ジュニアの8人制とは大きく違う点がいっぱいあります。特に1人当たりのスペースが大きいため、しっかり技術を発揮したサッカーを目指してやってきました。対戦する相手もいいチーム、いい選手ばかりなので、練習の成果をしっかり発揮できるように意識しました。――試合前に選手に向けて選手たちに3つのことをお話しされていましたが?大木自分たちのサッカーは、中盤に落ちて、受けて、出し入れしながら前進するサッカー。前を向くということを意識しよう、と言いました。僅差になるのが分かっていたので、シュートチャンスを逃さずにやろう。ゲームの流れの中で最後はお互いのいい声、仲間を信じてポジティブに声を掛けてサッカーしよう。という3つのことを話してゲームに臨みました。――クラブの育成として主体性を大事にされていると聞きますが、できていましたか?大木そうですね。今大会の試合途中も、フリーキックを誰が蹴るか、ゴールキックを誰が蹴るかとか、常に選手が自分たちで決めていました。今日選手を一人入れ替えたんですが、それも選手と相談して決めました。■「笑顔でいい声かけをして、仲間のいいプレーを盛り上げよう」と言ったセンアーノ神戸の大木監督は、試合前選手たちに「仲間のいいプレーを盛り上げよう」と声をかけたそう(写真:吉田孝光)優勝後インタビュー――優勝おめでとうございます。準決勝、決勝の感想をお願いします。大木ありがとうございます。準決勝の相手YF NARATESOROさんとはよく練習試合をしていて、個人個人は知っているんですが、11人制では見ていないので前半バタついちゃった所がありました。何とかPKで勝ち上がれたのは幸運でしたね。決勝のトリプレッタさんは準決勝を見たところ、早いし大きいし力強いなと。ウチの前線の選手は大きくないので相手と同じことをやっても難しいと思い、決勝は自分たちの良さをしっかりと出したサッカーを徹底しようと言いました。――準決勝では後半の序盤で0-2とリードされましたが?大木この子たちにとって勝負のかかった大きな大会でのゲームはこれが最後だと思っていたので、「今日一日みんな笑顔でいい声かけをして、仲間のいいプレーをどんどん盛り上げていこう、勝っても負けてもそういう試合をしよう」と言い続けていました。それを準決勝も決勝も子どもたちに意識させて。勝ち負けは後からついてくる、と。続けていたら結果勝てるかもしれないよと。戦術的には、ウチは狭い距離感でずっとトレーニングを積んでいるので、そういうボールの動かし方を徹底して、相手のFWが一枚だったから、ウチは2枚にしてボールを保持してやるようにということは言いましたね。■止める、蹴るは中学以降でも大事な要素――センアーノの選手たちは「止める・蹴る」が実にしっかりしていますね。大木ありがとうございます。「止める・蹴る」は大事にしたいと思っています。中学、高校でもサッカーを続ける中で、絶対に大事になってくる要素なので。私たちは、自分たちでボールを持って主導権をもってやる方が絶対に上手くなると思って続けてきたので、それを徹底して今日もやりました。――ゴールがなかなか取れない試合が続きましたが、決勝では大量得点でした。その理由は?大木ふっ切れたのかも知れないですね。昨日は1点しかとってないですから。あと、今日戦術を変えたんです。後ろのところを1枚多くしてちゃんとボール保持して方向を変えてからやろうと。昨日は数的同数の状態でやっていたんですが、そうするとプレッシャーを掛けられちゃってどうしても逃げたり、後手になったので、そこを思い切って変えたのが功を奏したのかなと思います。――距離感も連係もよかったですね。大木試合前のウォーミングアップでも狭いコートでのゲームを最近ずっとやっているので、そういったことを11人制になってもしっかりできるようにということで、いい距離感でボールを動かして、最後前を向けたら突破のパス、ドリブルをやろうと。■練習でやってきたことをブレずにできたのは成長――選手たちが大人になる頃、未来のサッカーがどんなものか分かりませんが、「止める・蹴る」は絶対必要でしょうね。大木そうですね。今川崎フロンターレさんがすごく個々の選手も伸びているし、評価されて代表にも行っています。このさきどんなスタイルが流行るかはわかりませんが、フロンターレさんの方向性がベースになるのかなと。日本人はどうしてもフィジカルで海外の選手に勝てるわけがないので。そういった技術や判断の部分は大事にしていきたいなと思います。小学生年代で体の大きな子であっても、中学・高校へ行って彼らがどうなるかの方が大事なので。――今大会を通じて選手の成長を感じた点は?大木11人制で勝負がかかる緊迫感のあるゲームをするにつれて、自分らがこれまでの練習でやってきたことが通用するんだというのを実感できたんじゃないでしょうか。特に準決勝の後半から自信をもってやれるようになって、決勝も途中ちょっとバタついたところもありましたが、それ以外はブレずにやれたので、そこは成長かなと思っています。――昨年の大会の経験者がいたのは強みでしたか?大木昨年大会の経験者が5人いまして、それも大きかったかもしれません。でも、いいチームがいっぱい出ていたので、まさか優勝できるとは思っていませんでしたね、目指してはいましたが。PKでの勝ち上がりが2つあるのでね(笑)。■「自分たちの試合」を見てサッカーの理解を深めるようにしている――センアーノでは幼少期から自分たちで戦い方を決めたりしていると聞きます。選手を見ていてサッカーの理解の部分が優れていると感じるんですが、映像等の情報の伝え方などは?大木海外の映像とかはYouTubeなどの動画を見ている子も多いので、あえて見せたりはしないですが、"サッカー脳"的に言うと、自分たちの試合映像を見て良かった点、改善したらよくなるなと思う点をサッカーノートに書かせるようにしています。自分たちの映像を見ることで、試合の振り返りができるので、それに僕がコメントを加えたりはしています。あと、小さい頃からできる限り自分たちでポジションを決めたりもさせています。最近はトレーニングマッチをできるだけ減らして、紅白戦を極力入れるようにしています。トレマだとフリーズできないですが、紅白戦だとフリーズして見れるので、自分で考えることができるんです。あまり止めると子どもらは嫌がるので、そこのさじ加減は指導者の腕の見せ所になるんですが(笑)。ゲームをやって改善点を考えるわけですが、試合展開が進むと指導者も流してしまう。今日ここは教えたいな、伝えたいなというところは絞って、小3くらいからは紅白戦でフリーズさせて、子どもらにどうだと問いかけて、考えさせて、それを他の子も聞いていますからね。そういう取り組みは最近2年くらいやっています。試合中の一場面をメモしても、試合後には子どもらはもう忘れてしまってますから。フリーズで難しいのは、プレーを止めすぎると子どもらは面白くないところです。「なんで止めるの?」と言われますからね。止めるタイミングもチャンスの場面だと、「えっ?」ってなりますし。できるだけ流れを止めないようにしながらやるので難しい。指導者も力をつけないといけませんので、常に学び続けています。■低学年から自分たちでポジションや戦い方を決める――低学年から自分たちでポジションとか戦い方を決める方法が、チームの強さにつながっているのかなと感じますが、その方法の良さは?大木試合中声で指図しても届かないので、自分らで判断してプレーできるのがいいですし、中学・高校になればサッカー脳が高くないと、やっぱり通用しないと思うのでね。指導者が変われば考え方も違いますが、サッカーの原理・原則は変わらないので、そこはキッチリ押さえさせて、その中で何を選ぶかを子どもたちに考える習慣をつけさせています。――低学年だと難しいんじゃないか、教えた方がいいんじゃないかという意見には?大木いきなり何もない状態から「やってごらん」というやり方はしません。戦い方はこういうのもあるよ、違うのもあるよと伝えていきながら、じゃあ今日はみんなでやってみようかと。そんな風に前提を提示してから子どもたちに決めさせ、そのやり取りを「今、何を話してるんだろう」と僕らがのぞき見している感じです。特に低学年だと子どもたちは勝ちたいので、上手い子が真ん中やったり、前線やったりして、GKは誰もやりたがらない。そういうこともあるんですが、そうなったら、「それでいいの?みんなが出てみんなプレーして勝った方が楽しいんじゃないかな?」と声をかけたりします。――MVPに選ばれた片山君の良さは?大木彼は幼稚園からウチでやっている選手です。憧れの選手にマラドーナを挙げていましたが、小柄なのを自覚しているので、俊敏性を活かしてドリブラーになりたいんだと思います。そこは彼の良さだと思っていますが、彼にはアタッキングサードで前を向いたら色んなことを自分でやっていいからと言っています。ゴール前でキレのあるドリブルのできる選手になってほしいなと思います。シュートをもっと決めてくれると、更にいい選手になるのは間違いないです。MVPを獲得した背番号10・主将の片山祥汰くんにも話を聞きました。■間で出し入れして、相手が食いついたところで裏に入れるのを意識していた小柄ながらも当たり負けせずドリブルでボールを運ぶ技術が高く、決勝では2点を決めた片山祥汰くん(写真:吉田孝光)――優勝おめでとうございます。大会通じて何点取りましたか?片山ありがとうございます。今日は2点、全部で7点か8点くらいだと思います。いちおうチーム得点王です。――朝の準決勝と午後の決勝で違いました?片山会場の雰囲気とか相手の気持ちとかが全然違いました。――準決勝の相手YF NARATESOROとは同点でしたね(PK決着でセンアーノが勝ち上がり)片山0-2になったときも自分たちのサッカーができれば逆転できるという思いで、みんながチーム一丸となってやれて同点に追いつけたと思うし、だから勝てたと思うので良かったです。――対戦相手と比べても小柄な選手が多いと思うんですが?片山自分たちはみんな身体が小さいので、つないでやろうと言っています。空中戦では負けてしまうのでフィジカルコンタクトにならないように、ワンタッチ、ツータッチでプレーしてたくさん点がとれました。――どういうふうに戦おうという狙いでしたか?片山間で受けたり、そこで出し入れして相手が食いついたところで裏に入れるとか、そういう意図をもってやっていました。――どのくらいできましたか?片山90点くらいです。――去年の大会にも出場していましたが、去年と今年の違いは?片山11人制をいろんな相手とやらせてもらったりして、その中での戦術とかを頭に取り入れていくのを結構早くからやっていたから勝てたと思います。他の選手たちにも3日目の試合終了後にインタビューしたのでお送りします。■選手たちのあこがれの選手、クラブOB香川選手の名前は......選手たち左から片山祥汰くん、津田颯太くん、濱吉一太朗くん、國吉晴向くん、久保祐貴くん(写真:浅尾心佑)――試合(対戦相手:バディサッカークラブ)の感想と、憧れの選手を教えてください背番号10片山祥汰(進路:セレッソ大阪西U-15)最初はちょっと押したり押されたりの厳しい展開だったけど、後半うまくボールを中盤で奪ってカウンターでいい感じでタテに運んで点を取ったので、よかったです。1点取ってから結構ラクになりました。憧れの選手はディエゴ・マラドーナ(元ナポリ等、元アルゼンチン代表)です。身長が小さくても負けずにドリブルで相手を翻弄するところがかっこいいから、自分も身長が大きくないのでプレーの参考になります。背番号3津田颯太(進路:セレッソ大阪西U-15)みんなよりいっぱい声を出して、みんなで楽しく試合ができるようにこれからも頑張りたいです。憧れの選手はセンターバックのファンダイク(リヴァプール)です。背番号11濱吉一太朗(進路:ヴィッセル神戸U-15)始めの方は相手に押されることが多かったけど、後半自分らが1点を決めてそのあと最後まで集中して守り切れて勝てたのは良かったです。憧れの選手はアレクサンダー・アーノルド(リヴァプール)です。背番号8國吉晴向(進路:セレッソ大阪西U-15)試合前に自分たちのサッカーで翻弄しようということで、入りは押されることが多かったけど、途中から自分たちのサッカーができて勝ててよかったです。憧れの選手はグティ(元レアルマドリード)です。YouTubeなどの動画で存在を知りました。背番号7久保祐貴(進路:ベガルタ仙台ジュニアユース)立ち上がりから球際で相手に激しく行って、点を取ってからも緩むことなくできたので良かったです。憧れの選手はモハメド・サラー(リヴァプール)です。U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジは、11人制での試合になります。8人制から11人制への移行期で、幅やスペースの使い方などを課題に挙げるチームがたくさんあります。この大会のために準備してきたとはおっしゃっていましたが、センアーノ神戸ジュニアが見せたボールスキルや戦い方は、大いに参考になるものだと思います。準決勝から決勝までの試合が動画で20見れますので、ぜひご覧になってみてください。ワールドチャレンジ2021結果はこちら>試合動画のアーカイブ(フルマッチ)はこちら>>
2022年02月01日去る12月25日に「監督が怒らない大会」が横須賀市の横須賀アリーナ(体育館)で開催され、元バレーボール選手の益子直美さんと、元Jリーガーで現在は横浜F・マリノスのアンバサダーやサッカー解説者としても活動していつ波戸康弘さんがゲストとして参加しました。この大会は、体罰などが問題化している昨今のスポーツ指導において、勝利することだけにとらわれず、まずはスポーツを楽しみ、できなかったことができるようになったり、褒められたりすることで自己肯定感を養っていけるようなワクワクできるスポーツ環境や地域のスポーツ振興の推進を図るという意図で開催されました。参加チームは、この大会の理念に賛同してくれた横須賀市内で活動するサッカーチーム8チーム(2、3年生)で、監督・コーチたちは選手待機エリアから「いいよ、いいよ」「前線からプレスに行こう」「(失点を)気にしない、気持ち切り替えよう」などのポジティブな言葉で鼓舞する姿が見られました。大会を主催した、スポーツ界の持続可能な発展を目指すSPORTS SUPPORTERS NETWORK(SSN)代表の岩橋さんは、以前から益子直美さんが行っている「監督(指導者)が怒ってはいけない大会」に共感していて、自分たちがサッカーでイベントを開催する際に益子直美さんをお迎えして、「怒鳴らないで選手の自主性に任せる指導」の理念をサッカー大会を通して選手、指導者へ伝えたいと思っていたそうです。大会のあとは波戸康弘さんによるサッカークリニックと、益子直美さんによる指導者、保護者向けセミナーを同時開催。サッカークリニックでは、「視野の広さを確保してドリブルをする」をテーマに、ボールを置く位置や体の向きなどを波戸さんが説明しました。お手本を見た後実践した子どもたちは「確かに~。(前が)よく見えるようになった」など、喜びの声を上げていました。会議室で行われた益子直美さんのセミナーには指導者と保護者の方々が参加しました。益子さんは、学生時代に暴力暴言指導を受け、引退するまでバレーが楽しくなかったというご自身の経験や、「教えられる」指導を受けてきたので実業団に入ってから自分で考えてプレーすることができなかった経験から、子どもたちが自ら楽しんで挑戦しながら伸びてほしいという思いを持ち、現在は「監督が怒らない大会」を開催しています。セミナーでは、益子さんが学生時代や全日本の合宿で理不尽に叩かれた写真や映像が流されると、参加者たちからは「ひどい......」との声が漏れました。「このような指導を受けて、やる気が出ると思いますか」と質問すると、全員が「出るわけない」と回答。そういったエピソードを見ながら、参加者のみなさんは、自分で考えて楽しんでプレーするためには、チャレンジを誉めること、ポジティブな声掛けが大事だということを、改めて実感されたようでした。また、理不尽に殴られ怒られる指導を受け「バレーを楽しいと思えなかった」という益子さんを救ってくれたのは、お母さんだったというお話も。チームのエースで、国の代表にも選ばれるほどの実力があるわが子にはどうしても期待してしまう親御さんもいると思いますが、辞めたいと考えていた時、益子さんのお母さんは「そんな指導を受けるバレーなんてやめてしまいなさい」とおっしゃったのだそうです。その言葉に救われ一時はバレーから離れた益子さんでしたが、お母さんのその言葉があったから、バレーを再開することを決断できたのだそう。「その時母が『続けなさい』と言っていたら、私は母に対して心を閉ざしていたと思いますし、バレーも続かなかったと思います」と親がわが子を理解し、いい関係性があったからこそ、と語る益子さんの言葉に、参加した保護者のかたは大きくうなずいていました。セミナー終了後は、益子さんに個別で質問する指導者や親御さんもいて、子どものスポーツに関わる大人としてどうあればいいかを改めて意識する貴重な機会となったようでした。このような考えや活動が今後もサッカー界で広がっていくことを期待したいものです。
2022年02月01日