日本人の大敵である「花粉」が、猛威を振るう季節がやってきた。換気が必要なコロナ禍のいまだからこそ、実践しておくべき対処法を専門医の解説つきで紹介ーー。「東京都の予想では、今年の花粉飛散量は昨年と比べ1.8倍。スギ花粉は2月中旬から増え始めるものですが、過敏な人は年末年始あたりから症状が出ています」こう話すのは、『子どもの花粉症・アレルギー性鼻炎を治す本』(講談社)の著書もある「ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック」の院長の永倉仁史さんだ。東京都の調査では、都民のスギ花粉症推定有病率は48.8%。もともと花粉症でない人でも、突然発症することがある。「コロナ禍のいま、たとえばのどの痛みや鼻水などの症状が出たとして、花粉症と新型コロナ感染症のどちらが原因なのか判断できず、放置してしまうといったケースもありえます」花粉症にまどわされて、コロナの症状を見過ごさないよう、今年は“例年以上の花粉症対策”が求められるのだ。医療機関では、飲み薬、点鼻薬や目薬、レーザー治療や舌下免疫療法など、複数を組み合わせることで症状改善を目指す。そして、’20年から花粉症の最重症・重症患者が投与対象となったのが、「ゾレア」という注射薬剤。もともとはぜんそく患者向けの薬剤だ。「「吸い込んだ花粉を排除しようと、体内で作られたIgE抗体が、一定数を超えることで花粉症は起きます。ゾレアには、この抗体を中和する効果があります。元の症状を100とすると、『5〜8くらいに減る』と患者さんから声が寄せられているそうです」薬剤費は、症状や投与量によって変わってくる。「当院では、1回約1万7,000円〜約2万6,000円を支払う患者さんが中心。2〜4週間に1度の投与が必要となりますので、価格面をネックに感じる人は多いかもしれません」こうした最新治療のほか、重要なのはふだんの生活での対策。とくにコロナ禍で気をつけるべきポイントは、ぜひ押さえておこう。■換気のあとは空気清浄機を「強」に「いまはどうしても換気が必要。しかし、花粉が部屋に入らないように工夫する必要があります。環境省のデータでは、窓を10センチほど開け、レースのカーテンをかけて換気をすれば、入ってくる花粉を75%カットできるといわれています」(永倉さん・以下同)また、換気後は空気清浄機を強めにかけるとよいそう。「花粉は粒子が大きいため、ウイルスに比べてフィルターにかかりやすい。乾燥すると花粉を吸い込みやすいので、加湿器の利用も心がけましょう」■室内は「1畳あたり30秒掃除機がけ」室内で花粉がたまりやすい場所は、窓際、カーテン、ソファ、カーペット、クッション、床など。「洗えるものは、こまめに洗いたいですね。そして床掃除は週に2回、1畳あたり30秒以上、掃除機をかけましょう。フローリングの場合は水拭きも効果的ですが、花粉は“水でふやけると破裂する”という特徴を持ちます。花粉が室内で飛散しないように、使った雑巾はすぐに流水で洗うこと」これから本格化する“コロナ禍の花粉シーズン”。これらの対応策を実践し、乗り越えよう。「女性自身」2021年3月2日号 掲載
2021年02月24日「東京都の予想では、今年の花粉飛散量は昨年と比べ1.8倍。スギ花粉は2月中旬から増え始めるものですが、過敏な人は年末年始あたりから症状が出ています」こう話すのは、『子どもの花粉症・アレルギー性鼻炎を治す本』(講談社)の著書もある「ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック」の院長の永倉仁史さんだ。東京都の調査では、都民のスギ花粉症推定有病率は48.8%。もともと花粉症でない人でも、突然発症することがある。「コロナ禍のいま、たとえばのどの痛みや鼻水などの症状が出たとして、花粉症と新型コロナ感染症のどちらが原因なのか判断できず、放置してしまうといったケースもありえます」花粉症にまどわされて、コロナの症状を見過ごさないよう、今年は“例年以上の花粉症対策”が求められるのだ。そこで、ふだんの生活での対策で気をつけるべきポイントを永倉さんが解説してくれた。■花粉飛散時間を知らせるアプリを利用しよう「晴天日には特に花粉が飛散しています。気温が高い日、雨上がりの翌日、乾燥して風が強い日などは外出を避けたいですね」(永倉さん・以下同)たとえば東京都の場合、一般的に12〜13時、18〜19時あたりに花粉が多く飛散するといわれている。「ただ、測定器で調べると夜中であったり、出勤時間にも多いことがわかり、パターン化が難しい。リアルタイムで飛散量を知らせてくれるアプリの利用がおすすめです」■ガーゼマスクより、花粉症用のマスクを!新型コロナ感染症予防の観点では、布マスクやウレタンマスクより、不織布マスクが有効であるといわれ続けている。では、花粉症の場合はどうか。厚労省アレルギー総合研究事業研究報告書によると、マスクなしの場合では鼻内の花粉の数が1,848だったが、ガーゼマスクをすると537、花粉症用マスクでは304まで低減できた。環境省では、マスクの下にガーゼを入れる“インナーマスク”が、花粉を99%カットすると提唱している。「また、目も花粉から守ることが重要です。通常のメガネでも花粉を半分ほどカットできるというデータがありますが、メガネ量販店などで5,000〜6,000円で販売されている『防御カバー付き』の花粉対策メガネがおすすめです」花粉を最大98%カットするという商品も販売されている。■「乳製品」と「甜茶」を試してみる手も千葉大学大学院が6,679人のアレルギー性鼻炎患者を対象とした「受療した代替医療の種類」(厚労省のHPに掲載)によると、乳製品を試したとする回答が約400、甜茶は約500もあった。「乳製品に含まれる乳酸菌は免疫バランスを整える、そして甜茶には抗アレルギー作用があるといわれています。いずれも医薬品と同等の効果があると科学的に証明されたわけではありませんから、効果がなければ、無理してまで続けることはありません」また、飲酒は血管を広げるため、鼻づまりの原因になりやすい。“家飲み”で飲酒量が増えている人は要注意だ。■鼻水を一時的に抑える「ペットボトルワキばさみ」「人間の自律神経は、交感神経が優位になると緊張状態となり、血管が収縮するため、鼻づまりが改善します。頭部から下は自律神経が交差しているので、ペットボトルやテニスボールを右のワキに挟めば、反対側の左の鼻づまりの改善が期待されます」目がかゆい場合は、こすってしまうと止まらなくなるうえ、コロナ感染リスクも高まる。そんなときは冷たいタオルを目に当てよう。「目は冷やすとかゆみが緩和されます。そのため目薬を冷蔵庫で冷やすことを勧める医師もいます」これから本格化する“コロナ禍の花粉シーズン”。これらの対応策を実践し、乗り越えよう。「女性自身」2021年3月2日号 掲載
2021年02月24日例年の1.2倍といわれる今年のスギ花粉の飛散量。くしゃみや鼻水、目のかゆみが止まらず、薬とマスクが手放せない人も多いだろう。日本では5人に1人がスギ花粉症と推定され、まさに国民病ともいえるが、じつは近年、スギ以外の花粉に苦しむ人が増えているのだという。「今年、東京都内では2月上旬からスギ花粉の飛散が本格的に始まりました。それより早い時期から鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状が続いているという人は、『ハンノキ花粉症』にも罹患している可能性があります。私のクリニックにも、このアレルギーを発症されている方が年々増えている印象です」そう話すのは、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長の永倉仁史先生。NPO花粉情報協会の理事を務め、花粉シーズン中は毎日、自身のクリニックのホームページでスギ、ヒノキの花粉飛散情報を公開している。ハンノキ花粉症とは、カバノキ科に属する植物であるハンノキの花粉に反応するアレルギー疾患。ハンノキは全国に分布し、例年、スギより少し早い1月から花粉の飛散が始まり、4月ごろまで続く。「ハンノキ花粉症がスギ花粉症と比べて厄介なのは、りんごや桃など、バラ科の果物や特定の野菜を食べると、口の粘膜やのどがかゆくなる口腔アレルギーを起こしやすいことです。花粉への反応が敏感な人は、アナフィラキシーショックを起こし、重篤な状態に陥る恐れもあります。アレルゲンである豆乳を飲んでのどがかゆくなったと訴える患者さんにアレルギー検査を受けてもらって、ハンノキ花粉症と判明するケースもあります」(永倉先生・以下同)一見、関係のなさそうな花粉症と食物アレルギーだが、どのようなつながりがあるのだろうか。「花粉に含まれるタンパク質と、食物のタンパク質の構造が似ていると、食べたときに体に花粉が侵入したと認識して、アレルギー反応を起こすのです。この口腔アレルギー症状を伴うのは、ハンノキ花粉症患者の約5割で、花粉飛散時に症状が悪化するという報告があります」唇が腫れる、せきが止まらないなどのアレルギー反応が起きるのは、食後およそ15分以内。次のアレルゲンの食物を食べるたび、口・唇・のどなど口腔粘膜のかゆみ、ピリピリ、イガイガ、腫れ、じんましん、気管支ぜんそく症状などが出るという人は、ハンノキ花粉症も疑ったほうがいいだろう。【果物】りんご、桃、いちご、さくらんぼ、びわ、梨、キウイなど。【大豆】豆乳、豆もやしなど。【野菜】にんじん、セロリ、じゃがいも、トマトなど。【ナッツ類】ヘーゼルナッツなど。また、小さな子どもの場合、口の中の不快感をうまく表現できず、大人に「好き嫌い」として片付けられてしまうことがある。食後に何か訴えるようなら、よく観察することが大切だ。「アレルゲンの食物でも、加熱や加工をするとタンパク質の構造が壊れるため、アレルギー反応が起きにくくなります。同じ大豆製品でも、豆乳で反応が出るのに、発酵させた醤油、味噌、納豆では出ないのはそのためです。炒め物などに使われる豆もやしは、加熱が十分でないまま提供されることがあるので注意が必要です。りんごならジャムに加工されていると大丈夫という人もいますが、アレルゲンに敏感な人は加熱、加工を施したものでも症状が出る場合があります」ハンノキ花粉症は、スギと同様、まだ完治のための治療法が確立されていない。現状では、アレルゲンを避けることが唯一の対策だ。「ハンノキ花粉症による口腔アレルギーは、花粉が飛散していない時期でも発症します。アレルゲンを確実に避けるためにも、おかしいと感じたら、一度アレルギー専門医がいる病院できちんと検査を受けてみてください」くしゃみ・鼻水以外にも、つらい症状が続くという人は、重篤化を防ぐためにも、まずはその原因を突き止めよう!
2019年03月22日くしゃみ・鼻水でツラ~い日々が続くうえに、最近では果物を食べるとなんだかのどが腫れたり、イガイガしたり……。そんなダブルパンチの苦しみ、スギではない花粉の仕業かも――。例年の1.2倍といわれる今年のスギ花粉の飛散量。くしゃみや鼻水、目のかゆみが止まらず、薬とマスクが手放せない人も多いだろう。日本では5人に1人がスギ花粉症と推定され、まさに国民病ともいえるが、じつは近年、スギ以外の花粉に苦しむ人が増えているのだという。「今年、東京都内では2月上旬からスギ花粉の飛散が本格的に始まりました。それより早い時期から鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状が続いているという人は、『ハンノキ花粉症』にも罹患している可能性があります。私のクリニックにも、このアレルギーを発症されている方が年々増えている印象です」そう話すのは、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長の永倉仁史先生。NPO花粉情報協会の理事を務め、花粉シーズン中は毎日、自身のクリニックのホームページでスギ、ヒノキの花粉飛散情報を公開している。ハンノキ花粉症とは、カバノキ科に属する植物であるハンノキの花粉に反応するアレルギー疾患。ハンノキは全国に分布し、例年、スギより少し早い1月から花粉の飛散が始まり、4月ごろまで続く。「ハンノキ花粉症がスギ花粉症と比べて厄介なのは、りんごや桃など、バラ科の果物や特定の野菜を食べると、口の粘膜やのどがかゆくなる口腔アレルギーを起こしやすいことです。花粉への反応が敏感な人は、アナフィラキシーショックを起こし、重篤な状態に陥る恐れもあります。アレルゲンである豆乳を飲んでのどがかゆくなったと訴える患者さんにアレルギー検査を受けてもらって、ハンノキ花粉症と判明するケースもあります」(永倉先生・以下同)一見、関係のなさそうな花粉症と食物アレルギーだが、どのようなつながりがあるのだろうか。「花粉に含まれるタンパク質と、食物のタンパク質の構造が似ていると、食べたときに体に花粉が侵入したと認識して、アレルギー反応を起こすのです。この口腔アレルギー症状を伴うのは、ハンノキ花粉症患者の約5割で、花粉飛散時に症状が悪化するという報告があります」兵庫県神戸市の六甲山麓には、過去にハンノキ属のオオバヤシャブシが多く植林されており、周辺ではハンノキ花粉症に悩む人が多いという。最近では住宅街に植えられることが多く、自宅周辺にオオバヤシャブシが見られるという場合は要注意だ。「ある論文では、スギ花粉症患者の20%がハンノキ花粉にもアレルギー反応を起こすと報告されています。スギとハンノキは花粉の飛散時期が重なっているうえ、くしゃみや鼻水といった症状に関しては同様です。そのため、スギ花粉のアレルギーだけを調べて、ハンノキ花粉症を見過ごしているケースも多いと考えられます」アレルギー反応が起きるのは、食後およそ15分以内。ハンノキ花粉症の人が気をつけたい主なアレルゲンは次のとおり。【果物】りんご、桃、いちご、さくらんぼ、びわ、梨、キウイなど。【大豆】豆乳、豆もやしなど。【野菜】にんじん、セロリ、じゃがいも、トマトなど。【ナッツ類】ヘーゼルナッツなど。これらの食物を食べるたび、次のような症状が出るという人はハンノキ花粉症に要注意!□りんごを食べたら、のどがピリピリした。□桃を食べたら、唇が腫れた。□さくらんぼを食べたら、口の粘膜がかゆくなった。□もやし入り焼きそばを食べたら、口の中にイガイガした不快感を感じた。□豆乳を飲んだら、せきが出てのどが腫れた。小さな子どもの場合、口の中の不快感をうまく表現できず、大人に「好き嫌い」として片付けられてしまうことがある。食後に何か訴えるようなら、よく観察することが大切だ。
2019年03月22日