六本木の'大箱'ブラッセリー「ヴァトゥ」等のフレンチやイタリアンで修行後、都内4店舗、宮古島でホテル事業を展開する「ギャマングループ」にスカウトされ、2014年「中目黒ブロックス」のマネージャー兼シェフソムリエに就任。料理の知識と接客力を活かし同店を人気店へと導く。現在は独立してワインプロデュースやフードコーディネーターとして活動中。
■オリーブと「三角関係」 「オリーブ」と聞くと「ポパイの彼女」を連想しちゃいます。 幼少期にリモコンのないガチャガチャチャンネルのブラウン管から映し出されていたのは、大好きなアメリカのアニメ「ポパイ」でした。横スクロールの多いドタバタ喜劇で、オリーブが毎週のように悪役ブルータスから助けを求め「ポパーイ!助けてー!」と高い声で叫ぶシーンは何となく皆さんもご記憶ないですか? そこにしゃがれた声が返します。「待ってろっ!オリーブ!」ポパイの声も独特です。ピンチになると缶詰のホウレン草を飲み干し、レッドブルで翼が生えたかの如く、意味不明に超人になっちゃいます。ルフィーのように手が伸びたり、スーパーマンのように空を飛んだり、はちゃめちゃな展開が面白くて憎めなくて、毎週が水戸黄門的印籠提示時代劇特有ワンパターンながらも、ノットオンデマンドな週一の再放送にも関わらず、かなりのワ クワクで見逃せないアニメだったのです。 そんなことを思い出しつつ、2021年の現在、改めて文献を調べるてみると、1974年生まれ寅年の私が見ていた当時の放映は、1980年の6月30日から同年の8月20日まで「東京12チャンネル」現在のテレビ東京で「まんがポパイ」として、平日の19:15~19:30にたった15分だけ放送されていたもののようです。私は7月生まれなので5~6歳をまたぐあたりであったわけですが、これほどに記憶が鮮明だというのは、ポパイのインパクトすごいです。 ■「POPEYE」と「Olive」と「BRUTUS」 そしてよくよく考えてみるとその後の人生においても、またまた「まんがポパイ」の3人に遭遇しています。バニーを落とすべくプレイボーイになりたい高校生は、雑誌 「POPEYE」 と 「BRUTUS」 に出逢っていました。両者ともに昭和男子のかわいいバイブルだったような。そして何と 「Olive」 という女性誌も存在していたのであります。こちらは清楚系だったみたい。何だこの三角関係は。本屋にこの3冊が並んでたところを想像すると、インターネットもスマートフォンもなかった時代の「雑誌」って、かなり面白かったんだなと。 世界的に有名な文献サイトで調べてみると 「POPEYE」 は女性誌 「anan」 の別冊紙「Men's an an POPEYE」としてスタート。そして1976年6月に漫画の主人公「ポパイ」をキャラクターにして「平凡出版」現在のマガジンハウスより「Magazine for CityBoys」というサブタイトルで創刊。ターゲットは「モテたい読者層」。月刊誌として創刊されたが、人気を博しすぐに隔週刊となる。1970年代後半のアメリカ西海岸のスタイルをいち早く日本に紹介した雑誌でもある。1980年代、DCブランドブームの牽引者となり、講談社「ホットドッグ・プレス(1979年-2004年)」や、集英社「メンズノンノ(1986年- )」とともに人気男性誌となる。懐かしすぎる。2021年現在も20代前半の男子を対象としたファッションマガジンとして情報を発信し続けているようです。すごいな 「POPEYE」 の歴史。 続けて 「BRUTUS」 は1976年の雑誌「ポパイ」創刊から4年後に創刊。「ポパイの卒業生のための雑誌を作ろう」と創刊当初のキーワードは「悦楽男」だそうです。すごいなキーワード。「ポパイ」のシティボーイを卒業しての「悦楽男」とは、確実にアップグレードです。創刊5周年を記念した特大号で特集された「アートとしてのヌード:浅井慎平、加納典明、立木義浩、荒木経惟など38人にもおよぶ有名写真家のヌード写真」は社会問題に。当時はワイドショーが賑やかでした。雑誌もテレビも花がありました。現在も発刊中です。 そして面白いのが 「OLIVE」 なんですが「ポパイ」の増刊号として1981年11月5日号から2冊を発刊されます。翌年の1982年6月3日号よりあらためて創刊号に。発売時のキャッチコピーは「Magazine for City Girls」。完全に「ポパイ」の女性版w。月2回刊。しかし前者の 「POPEYE」 と 「BRUTUS」 が現在も刊行されているのに対し、残念ながらこちらは2000年7月18日号をもって休刊し、月刊誌となりリニューアルして一時復刊するも、2003年6月18日発売の8月号をもって再び休刊したようです。1990年代以降の「ギャル文化に押されて、わかりやすくて大衆に受け入れられやすいヤンキー文化に呑み込まれてしまった」そうです。 ■幼少期に見ていた男女の三角関係?! そして3人のプロフィールを発見。実は細かい設定があったのです。 ポパイ :主人公。カリフォルニア州サンタモニカの出身で年齢34歳。水兵で普段は温厚でお人好し。子供に対する面倒見は良いが、美人には弱くだらしない一面あり。喧嘩が強く腕っ節が自慢だが、ブルートとのガチンコ殴り合いでは圧倒されることもある。いつもパイプを咥えていて、腕にはイカリのタトゥーあり。顎のしゃくれたムキムキ逆三角形の白人男性。 ブルート/ブルータス :ポパイの同僚の水兵で恋敵。カリフォルニア州ハリウッド出身、年齢は36歳。身長2メートルを越すヒゲ面の大男。ポパイ以上の腕力を持ち、強引で手加減知らずの乱暴な性格だが根は優しい。定番の悪役だが根っからの悪人ではなく、時々、ポパイと協力して自分以外の悪役に立ち向かう場面も見せるほのぼのなワルキャラ。 オリーブ・オイル :名前がそのまま食材という。ポパイの恋人。ニューヨーク州ニューヨーク出身の29歳。容姿はモデル体型のスリムだが、髪型やメイクは地味目。気は強い。ポパイがだらしない態度をとるとブルートへなびくという、こじらせ屋さん。 幼少期に見ていたアニメに男女の三角関係を刷り込まれていました。 アニメのキャラとしても、雑誌の位置付けとしても、なかなか興味深いです。何だかワインのデータのようで。産地やら、樹齢やら、品種の個性のような感じです。しかも原作は1929年という、遡ること90年も昔の話。ヴィンテージがすごいです。戦争を越え、海を越え、こんなに「ポパイ」には歴史があったんですね。そしてなんと昨年の2020年、コロナ真っ只中のテレビCMに「嵐」の大野くん演じる、かわいいポパイとアニメーションの 「オリーブ」が共演していました。AJINOMOTOさんのコマーシャルで「色んなお料理にオリーブオイルを掛けまくる」という感じでした。現代においてもポパイ&オリーブ健在です。 ■あらためて「オリーブ」とは? さあ、ここからちゃんと 「食」 のお話に。 普段何気なく使っている オリーブオイル 。 もちろんオリーブの実からできているのですが、果たしてオリーブとはどんなものなのでしょうか? いつの間にやら我が国日本にも一般的に浸透し、ちらほら実物の「オリーブの木」も見かけるほどになっています。また同名のパスタ料理店もあちこちにみられるほどに。実はドトールコーヒーさんのフランチャイズだそうです。それほどまでに「オリーブ」というイメージ自体も日本に溶け込んでいるということですね。 オリーブの木は地中海地方原産のモクセイ科の常緑高木です。その果実にはなんと20~35%の脂肪分が含まれていて、圧搾することによって良質な植物油である「オリーブオイル」が得られます。オリーブの実を搾るだけで簡単に作ることのできるオリーブオイルは、 人類が最初に手に入れたオイル だそうです。元々は中東のイラン高原、イラク、シリア、パレスチナ地方などで自生していた木が、フェニキア人によって栽培方法とともにが西へ伝えられ、その後地中海全域で作られるようになりました。ローマ帝国による膨大な消費を支えるために、ローマの属州である地域でオリーブ栽培が広く行われるようになったため発展したそうです。 そして 「オイル」 ということばの語源自体が、 オリーブを意味するアラビア語 からきているとのこと。もともとオイルといえばオリーブオイルだったのですね。 味のタイプは2種類で、辛味と苦味、また酸味などでタイプが分かれます。 スウィートタイプ は実際に甘いわけではないですが、辛味が少なくて味わいがマイルド。 バランスの取れた軽やかなオイルのタイプです。海辺のオイルはデリケートでスウィートな傾向があり、タジャスカ種という品種がスウィートなタイプに当たります。また完熟させるほどに絞ったオイルはマイルドになるそうです。 対して スパイシータイプ は辛味や苦味が強く、ハーブの香りが効いた個性の強いオイルのタイプです。一般に山岳部で生産されたオイルはスパイシーでストロングな傾向が多く、品種ではモライオーロ種がそれに当たります。早摘みであるほどスパイシーなオイルになります。 世界の オリーブ生産量 を見てみると、世界で約30カ国が主な生産地でその 98%が地中海沿岸の地域 だそうです。地中海性気候の日照量と乾燥した空気がオリーブ栽培に最適なのですね。生産量ではスペインが断トツ1位で9,819,569トン、続いてイタリアが2位が1,877,222トン、以下5位までがモロッコ、トルコ、ギリシャと続きます。スペインの生産量はなんと2位イタリアの5倍強です。突き抜けてます。 ■そして「オリーブオイル」とは? 続いて オリーブオイル はどうでしょうか? 製造方法としては専用の機械で木を揺らし、熟したオリーブを落としては収穫していきます。送風機で一緒に落ちた葉を飛ばして、残ったオリーブはトラックで施設へと運ばれます。プレスによりオリーブの実5キロから1キロのオイルが抽出されその後品質チェックを受けます。国際オリーブ協会の規則の下で訓練を受けた専門家がテイスティングを行いランクづけをおこないます。 「IOC」 国際サイオリンピック協会ならぬ 「国際オリーブオイル協会:InternationalOlive Oil Council」 が以下の基準と分類を定めています。 1.「バージンオリーブオイル:果実をそのまま搾ったもの。」 エクストラバージン・オリーブオイル 完全な食味と香りをもち、酸度0.8%以下。 バージン・オリーブオイル 完全な食味と香りをもち、酸度2%以下。 オーディナリーバージン・オリーブオイル 良好な食味と香りをもち、酸度3.3%以下。 ランパンテバージン・オリーブオイル 上記3種類に該当しなかったもので、そのままでは消費に適さないバージン・オリーブオイル。酸度3.3%以上。精製されるか特殊用途に向けられる。 2.「精製オリーブオイル:ランパンテまたは搾り滓の抽出オイルを精製したもの。このままでは食用にはしない。」 精製オリーブオイル ランパンテを精製したもの。酸度0.3%以下。 精製オリーブポマースオイル バージンオイルを搾った後の採油滓から溶剤抽出したもの。酸度0.3%以下。 3.「オリーブオイル:精製オイルにバージンオリーブオイルをブレンドしたもの。」 オリーブオイル 精製オリーブオイルとバージンオイルのブレンド。酸度1%以下。 オリーブポマースオイル 精製オリーブポマースオイルとバージンオイルのブレンド。酸度1%以下。 日本に入ってくるオイルはエクストラバージン・オリーブオイル、オリーブオイル、そしてポマースオイルがそのほとんどです。 ■世界の「オリーブオイル」事情 オリーブオイルの生産量もやはり同じくスペインが世界一でした。世界のオリーブオイルの約半分を生産しています。最大10万トンを貯蔵できる施設には1年間オリーブの実が集まらなくても、市場に供給するのに十分なほどの貯蓄があるそうです。ですがこの事実は喜ばしいことでななく、こうした余剰分があるせいで、オリーブオイルの価格は安くなり、多くの農家がオリーブの販売だけで利益を上げられなくなっているようです。小さな農家にとってはオリーブを収穫すればするほどお金を失うことになってしまい「オリーブの価格が安すぎる」とデモが起きるほどだとか。 そして生産量2位のイタリアにおいても多くの問題を抱えています。 イタリアは生産と輸出の両方で世界2位で、消費と輸入でも世界2位になっています。つまりイタリアは、内需と外需のバランスが取れておらず、スペインから大量のオリーブオイルを輸入して、イタリア産のオイルとブレンドして輸出しているのです。このようなオイルは「イタリア産のオリーブオイル」としてイタリアから各国へ輸出されます。 国内の63%の生産者は、家族経営の小さな農家か、副業として個人でオイルを生産している人々たちです。自分たちが生活できて、おいしいオイルが作れればいいと考えている人が多いようで、スペインとは逆の問題が起きていました。残りの37%しか市場競争力のある企業が存在しておらず、「本物のイタリア産オリーブオイル」の生産量をあげるには、近代的な機械化とオリーブ畑の灌漑を進め、経営管理の面でも専門家を派遣してビジネス としての生産を広げなければいけないようです。 ワインにおいて土着品種の多いイタリアは、オリーブにおいても400を超える栽培品種があるそうです。それぞれの地域の歴史と文化が色濃く残り、土地独特の産物がたくさんあります。イタリアワインで言うところのDOCやDOCG(ワインボトルのトップによくついている、紙のシールを見ると書いてある「その土地産出を証明する認定記号」)も含まれる、EU法に準拠したイタリアの原産地名称保護制度DOPを42製品で取得しているほどです。 需要に対しての生産が改善され、現地だけで消費されている美味しくて「本物のイタリア産オリーブオイル」がもっともっと世界で楽しまれたなら、世界のお料理をもっと面白い物にするはずです。 「労働」と「土地」と「資本」の三角関係は恋愛のそれ同様にバランスが難しいようです。オリーブもポパイもブルートもみんな仲良く。 三角関係ほど魅惑的な複雑味がありますが、辛味と苦味が強そうです。少し長い余韻を残して。 二人だけならスウィートなんですけどね。 一人を取り合うと上手くいかないのです。 今日は「オリーブの実」も「オリーブオイル」も使ったレシピ のご紹介。地中海沿岸特有のタプナードソースで一皿作ってまいりましょう。 三角関係にちなんで3人前を。 ■鶏胸肉のしっとりロースト タプナード添え 調理時間 30分 レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 3人分> 鶏むね肉 2枚 塩コショウ(ホワイトペッパー) 適量 EVオリーブ油 大さじ1 新玉ネギ 1個 ナス(小) 3本 プチトマト 3個 サヤインゲン 6本 ローズマリー(あれば:小) 3本 EVオリーブ油 大さじ2 塩 適量 ブラックオリーブ 50g ケイパー 20g ニンニク 1片(皮付きで6g) EVオリーブ油 大さじ2 バジル 適量 フードプロセッサー テフロンフライパン26cm シリコンスパチュラ <作り方> 1.インゲンは下茹でしておいてください。 今回は火の通りの悪いナスからオーブントースターに放り込んで調理をお任せしちゃいます。その間にお肉を焼いて、お肉を休ませている間に「タプナードソース」を作っていきます。 2.ナスはヘタを付けたまま縦に2等分に。 へタをとってしまうとちょっと見た目が情けないので。プチトマトはヘタを取ってこちらも2等分に。サラダでしたら付けたままでも良いですが、オーブン焼きにしますので焦げて硬く苦くなってしまいますので。 3.バットにオリーブオイル大さじ2を引きナスの断面にたっぷりと含ませます。 そのナスを断面を上にして並べプチトマト、茹でたインゲン、ローズマリーを乗せ、全体にお塩をふります。フライドポテトに振る程度にある程度しっかりお塩をします。220°で30分。 4.さあ鶏むね肉ですが、両端の厚みにかなりの差があります。 大抵どちらかが固くなり、またはどちらかが生焼けだったり。この構造では物理的にうまく焼くのは難しいのです。低温調理で鶏ハムにすると全体的にとても美味しくできますが、本日は薄い方の端を切り捨てます。「えっ!そんなもったいない!」なんてことはもちろん致しません。別の活用法を。肉厚の部分をローストに、薄い部分はさらに薄切りにしてチキンカツ用に使い分けたいと思います。今回はパネ(パン粉をつける)まではしませんが、2段活用のご提案です。まず均一に肉の厚さが取れるあたりでお肉を2つに切ります。 5.皮を伸ばして全体に巻きつけます。 皮目から焼いていく事でお肉に間接的にフライパンが当たることにより、ゆっくりと火入れをすることができます。 6.先のとがった比較的薄い方のお肉は、横から包丁を入れ、チキンカツ用にお好みの厚さに。 初めのお肉の大きさにもよりますが、だいたい半分の厚さを目指すとちょうどよさそうです。大判にしたければ最後まで切り離さずに少し残してあげると、広げた時に大判になります。 7.カット後の仕上がりはこんな感じでしょうか。 8.早速お肉を焼いてゆきます。両面にアセゾネ(材料に塩胡椒で下味をつけること)します。 コショウはホワイトペッパーにて。 9.中火で温めたフライパンに大さじ1のエクストラバージン・オリーブオイルを引き、フライパンのカーブを使い鶏むね肉の丸みに合わせて焼き始めます。 この状態で5分ほど焼きます。 10.お肉が焼けた後で、フライパンに残ったオイルで新玉ネギをソテーしますので、この間にスライスしておきます。 上下をカットして、新玉ネギなのでおそらく芯はないと思いますが、あるようならば取り除きます。縦に半分にカットして繊維に沿って5ミリほどのスライスに。 11.5分ほどでお肉の下半分が白く焼けてきたのが見えてきます。 ここでお肉を裏返して、再度5分焼きます。 12.この間に「タプナードソース」を作りますが、せっかくフードプロセッサーを出したのですから、あると便利な「アイユアッシェ」をついでに仕込んでみましょう。 アイユはニンニク、アッシェはみじん切りの事です。必要ない方はこの工程を飛ばしてください。 小さな蓋付きの容器があると重宝します。皮を剥いて芯を取り除いたニンニクをフードプロセッサーにかけて回します。遠心力で外側に飛んでゆくのでスパチュラで下に落としてあげます。そして再度回します。適度に粒が揃えばOKです。粒がバラバラですと火の入りにムラが出て炒めている時に焦げるものが出てきます。 13.スパチュラで丁寧にまとめスプーンで容器に移します。 ジャムやケイパーの小瓶などを洗浄して保管しておくとこんな時に便利です。サラダ油に漬けてますがそこの方までかき回してしっかりと一粒一粒にサラダ油が回るようにしてください。ニンニクは澱粉が多いのでオイルにつかない部分が酸化して青く発酵してしまうのを防ぐためです。冷蔵庫で一週間ほど持ちますので、パスタや中華炒めなどを作るときに、毎度みじん切りにする手間が省けますので料理がスピーディに仕上がります。もちろんレストランの仕込みでも用意されている品目です。丁寧に包丁で仕込むの方がベストですが量によってはフードプロセッサーは大活躍です。 14.綺麗にニンニクを取り除いたら、そのまま「タプナード」を仕込みます。 全ての材料を入れ、同じく回すだけ。個体差が大きいので2、3回スパチュラでまとめてあげてください。こちらはオリーブオイルが入っておりますので容器に移して完成です。 15.さてお肉に戻ります。焼き始めてから表裏10分焼きました。 断面には生焼けの部分はほぼ見当たらなくなっていると思います。ですが中心部はまだ生の状態です。もう一度皮目を下にして、弱火で5分焼き、バットに移してホイルをかけて5分休ませます。 16.鶏むね肉を取り出したフライパンで新玉ネギをソテーします。 お肉へのアセゾネがフライパンに残っているので、塩コショウは味見しつつ至って少量に。お好みで調節してください。生でも食べられる新玉ネギですので程よく水分が飛び、甘味が出たところで完成です。こちらも更に甘味を出したい方はもう少しソテーしてみても良いかと思います。普通の乾燥玉ネギよりも調理時間が短くても、アメ色になりますので、この時期だけの玉ネギですが、ぜひ使ってみてください。薄くスライスして水に晒し、サラダとして食べるのは定番ですが、ここだけの話、おかかと一緒に納豆に混ぜると最高です。私はひきわり派です。 17.さあ、お肉にもしっとりと程よく火が入っている頃です。 カットしてみましょう。皮を下にしてスライスしていきます。下までナイフが入ったら、パリッと焼けた皮を最後の一押しでザクっと切ってあげてください。やはり一切れごとに皮の香ばしさを楽しんで欲しいです。盛り付ける時はスライスしたお肉の下にナイフを滑らせ、お肉の上下を返します。皮目を上にしてくださいね。難しければムリせずに手で綺麗に並べたって良いのです。盛り付けにこだわってください。 18.新玉ネギのソテーを真ん中よりも少し上に敷いて、その上にオーブンから取り出したナスとトマトのローストを乗せ、手前に逆さ扇状にしっとりと焼き上がったチキンを並べます。 手前にたっぷりのタプナードソースを添えて、真ん中にバジルを一切れ。私は更にエクストラバージン・オリーブオイルを回しかけます。 ■家メシを「特別な夜の一皿」に変えるワイン よく冷えたスペイン産の赤ワイン用ブドウ品種テンプラニーリョ100%で作られた、ストロベリーやラズベリー香る、エレガントなロゼワイン「クネ ロサード」とともに。 3人で仲良く食べるもよし、2人で3人分を平らげるもよし、スパイシーでもスウィートでもそれが人生の潤滑油になれば複雑でもいいんじゃないですか。 あくまでもコミカルに喜劇チックに行きましょう。
2021年03月21日「ペアリング」「マリアージュ」 最近ではよく聞くようになりましたね。レストランではコース料理をペアリングとともに楽しめるところも増えてきました。 なんでしょう 「ペアリング」 とは? なんでしょう 「マリアージュ」 とは? ■ワインの合わせ方に「正解」はない ついつい 「肉には赤、魚には白」 みたいな既成概念的ルールに縛られて、自由に楽しめてない、なんてことはありませんか? お肉にも赤身の牛肉もあれば、白肉と呼ばれる仔牛、鶏、豚もあります。香りが個性的な羊肉や鴨肉もあります。お魚にだって和牛のようにサシが入り脂が乗りまくったものや、タンパクで歯応えのある白身魚、鉄分が美味しい赤身のお魚、そして青魚もあります。さてさて、どんなワインを選んだら正解ですか?不正解はありますか? ルールはありません。一つのセオリーにのっとれば基本はあります。しかしソムリエの趣向も味覚も様々ですし、お客様の趣向も味覚も様々です。つまり 正解はない のです。不正解があるとすれば、まあ「これは合わないよね…」はあります。 お料理を活かせず、ワインも活かせない。 これでは ソムリエの役目 は果たせていないでしょう。 そのお料理やワインをそれぞれ単品で召し上がるよりも、掛け合わせることでさらに美味しさを引き出すことが 「ペアリング」「マリアージュ」 の楽しさです。 ■「おもてなし」の要素 実は 鶏肉や豚肉にとてもよく合う白ワイン もありますし、 お魚に合う赤ワイン だってあります。また調理法や味付けによっては美味しくいただける 意外な組み合わせ もあります。 基本的には お好きなお料理にお好きなお酒 で楽しでいただくのが一番かと。 お一人でのお食事でしたら特にです。フレンチにビールでも焼酎でも構いません。 ただですね、それが 会食 となると、少しお話は変わってきます。 ビジネス的なお食事であれば、ゲストとホストの関係性が生まれ 「おもてなし」 の要素が含まれてくるからです。西欧料理などでは本国のスタイル同様に 「お食事をワインとともにお楽しみになりたい」 というお客様が多くいらっしゃるので、ご希望に沿って、ワインの選び方、グラスに注ぐまでの技術、状態の見極め、などをサポートさせて頂きます。 お相手の好きな物をご用意してさしあげれば、お喜びになられるでしょうし、会話も弾むでしょう。そうなればお互いにメリットのある時間を共有することが出来るかもしれません。つまりはお互いのビジネスに繋がりやすくなります。 ソムリエがお役に立てるとすれば、日常の役割ですが、ゲスト様が 「ワイン好き」 であったた場合など ワインのアドバイス をすることが出来ます。 お食事と共にお過ごしになるお時間全てにおいて、ホストに寄り添うこと、ゲストを喜ばせることに全力投球して差し上げることなどこちらも ソムリエゆえにできる仕事 かと思います。ワインのお話などにお付き合いすることでゲストのお話を引き出すこともできるかもしれません。お話好きな方でしたらテンションも上がり楽しく和やかな会食になるでしょう。堅苦しくなりがちなビジネス会食ですがゲスト様がお話しすることにより、 ホスト側も知らない一面などを知ることが出来るかもしれません 。 ビジネス会食においては、ホストはかなり気を使われるものです。「ゲストの機嫌を損ねないように…」という緊張感が伝わってくるテーブルも時々見受けられます。そんなテーブルを 「ほぐして差し上げること」 ができたなら、リラックスしてお料理も美味しく味わっていただけそうです。また予想外に「盛り上げてさしあげること」ができたならば、両者の深いコミュニケーションを演出でき、 その会食をより有益なものへとサポートできそうです 。 これはソムリエとしても、一人のギャルソンとしても、また大きくレストランとしても幸せなことであります。お料理だけでなく、サービスだけでなく、音楽も照明も、その空間の全てにおいて「おもてなし」をお届けできることが 飲食業の幸せ です。お店側のビジネスとして捉えてもありきたりではない 「付加価値」 をご提供できれば、その後のリピートへのメリットも大きいはずです。 ワインはその中の 「ほんの一つのアイテム」 でありソムリエはその時の 「ほんの一つの役目」 でしかありません。 ■「ソムリエ」の仕事 「ソムリエ=ワイン」ではないのですね。これはソムリエ資格試験の試験範囲である、A4サイズで厚さ5cmほどの電話帳のような教本の中にも 「お客様が楽しくお食事ができるようにサポートする仕事」 と明記されています。 アルコールを召し上がらないお客様だっていらっしゃいます。ビール党のお客様だっていらっしゃいます。「なんだ、ワインじゃないのか…」では「おもてなし」はできないのですね。もちろんワインに関して学んだ知識や感覚がありますから、ご披露できるシチュエーションがあれば楽しいのですが、ただワインが好きなだけで知識をひけらかしたいわけではないのですね。 どんな時でも一方通行ではどなたも幸せになれませんから。 「何をご提供したら喜ばれるのか?」 それは物理的なお飲み物だけではなく 「どのようにお過ごしいただくかをご提供する」 そんなお仕事なのですね。 ゲストが喜べば、ホストも喜ぶ、みんなが喜べば、レストランも喜ぶ。レストランも含めそれぞれのビジネスが成り立ちます。会食自体もお料理もワインも実はその過程であり、求める目的は「おもてなし」の先にあります。そして全ての中心は 「気持ち」 でしか作り得ないのだと思います。 これはビジネスでも、友情でも、チームでも。 恋愛でも、親子でも、家族でも。 ■ワインの開け方 今日は ワインオープナー 、いわゆる ソムリエナイフを使ったワインの抜栓(ばっせん)の仕方 をご説明します。 「プレゼントに頂いたけど…」とか「こだわって買ってみたけど…」とか、実は ソムリエナイフ持ってます 。という方もおられるのでは? 別に高価なナイフでなくても構いません。 現在お持ちの方も、これからご購入の方も、 基本的なコルク栓の開け方 をご説明して行こうと思います。 まず、スクリューがないとコルクは抜けません。 スクリューにコルクを引っ掛けてテコの原理で抜く 。要は単純にこれだけの作業です。難しく考えるのはやめましょう。 ポイントは「美しく仕上げること。」これは世の中のあれこれにおいて共通することだと思いますが、何かアクシデントがあっても 「結果オーライ」 に仕上げること、です。 ワインにおいては、 「キャップシールを綺麗に剥がす」「コルクを折らない」 この2点さえ踏まえれば美しく仕上がります。 それでは早速始めてみましょう。 1、まずナイフを起こしキャップシールを剥がします。 ボトルにくぼみがありますので、そ こにナイフを引っ掛けて時計回りに上半球を半周させます。 2、ナイフをクルッと回して刃の向きを変え、下半球を反時計回りに。 一周に刃が入ってい ればOKです。 3、次は縦にナイフを入れます。 ここが慣れないと少し難しいのですが、この動作をスムー ズにこなすことで、意外と「プロっぽさ」が出ます。 4、刃が入ったらトップの部分に並行にナイフを滑らせ、持ち上げれば簡単にキャップシールが剥がれます。 5、コルクがむき出しになりました。 ナイフを倒し先端を真ん中に押し当てます。少し力を 入れてそのままナイフを立てれば、綺麗にセンターにスクリューが刺さるはずです。 6、センターに決めることが大切で、あまりにズレてしまうとコルクが折れやすくなります。 年代物のワインでない限り、センターに刺さっていればコルクは折れません。 7、ボトルをしっかりと握りナイフを時計回りに回せばスクリューが下へと刺さってゆきます。 スクリューを少し残し、回転を止めテコの金具をボトルの口に引っ掛けます。 8、その引っ掛けたポイントに人差し指と中指を2本掛けて、薬指と小指はボトルをにぎります。 9、ナイフをゆっくり立てて行くと、簡単にコルクが上がってきます。 一度にたくさん抜こうとせずに、2~3回にわけて引き上げると力加減も掴めてくるはずです。 ヴィンテージの若いワイン、つまり現在に近いワインですとほとんどコルクが折れることはありませんが、ナイフを立てたときにかける力の向きを前に倒してしまいますと、ボトルの口が支点になり中に残ったコルクが悲鳴をあげます。 フックの稼働部を支点にして力の向きはスクリューと並行に「前ではなく、上に」です。 わかりにくければ 「スクリューを倒さずスクリューは上に」 10、最後はテコで抜き切ろうとすると、力が向こう側にスッポ抜けるので、不安定な動きになりボトルを倒してしまったりします。 ナイフがある程度上がり切り、テコを使い切ったら、親指を下に向けてナイフとコルクを一緒に握り、親指でボトルを下に押しながら、反対の手はボトルを握りつつ親指でコルクを上に押してあげます。コルク軽く回してあげれば静かにコルクが抜けるはずです。 11、そしてその手からコルクは離さず、コルクの液体側を鼻に近づけます。 反対の手で鼻の前を覆い、香りを取ります。これ上級者っぽく見えますので是非。そしてこの動作は大切なワインの状態チェックです。鼻の前を覆うのはお上品に見えるからです。特に決まりはありません。 カビ臭かったり、蒸れた匂い、異常にコルクの香りがする、そんな時はワインに問題があるかもしれません。ワインの異常のことを「ブショネ」と言います。「あぁ、このワインは残念ながらブショネですね…」的な使い方をします。ヴィンテージの若いワインにはほとんど見受けられません。 この後はグラスに注ぎ テイスティング をします。状態の確認です。一口分の少量のワインを注ぎ、 スワリング します。反時計回りに3回ほどワインを回します。手首を軸にしてグラスの一番上を回す感覚で動かすと、うまく液体がグラスの中で回転します。反時計回りで回すのは、回しすぎてワインがグラスから飛び出しても、目の前の人ではなく自分にかかるからだそうです。 その後で遠くを見ながらグラスのワインを嗅ぎ、そして口に含みます。口の中にワインを巡らせ味とワインの開き具合を確認しているフリをしてください。 ここで遠くをを見ることがポイントです。プロっぽく見えますから。私のプロフィールがまさにそれです。プロっぽく見えます。そして「うん、フルーティだね」と言えば間違いありません。だって果実酒ですから。 ■もう一つのポイント もう一つマリアージュにポイントがあるとしたら、それは 「説明」を含むトーク も大切な要素です。ワインに限ったことではありませんが、物に対する興味や価値は 「解説者」の役割 がとても大きいと思います。 これは私が 「営業マン経歴10年」 という異色の経験を持った変態ソムリエだから特にそう感じるのかもしれませんが、お勧めした物をご購入いただくには、いや、ご購入頂きたい物をおすすめするには、お伝えした事をご納得いただくこと、お伝えしている人を受け入れていただくこと、この2点に尽きると思います。 一歩通行の説明では提供側の自己満足にもなり得ます。お客様の隠れたご要望も吸い上げられず、一方的な説明では購買意欲は生まれません。それはワインにおいてのボトル選びでも、お食事のコース選びでも同じであると思います。 いかにスムーズに「じゃあ、それで!」と言っていただくか。 距離感を縮めること、信頼を得ることにプラスして、シンプルな説明でメリットと比較をお伝えし 選択肢を明確にすること で決断をしやすくなります。 熟考したい方なのか、すぐに決めたい方なのか、ホストとしてゲストをもてなしたい方なのか、色々なタイプのお客様がおられます。そしてそれに寄り添う時間の中で、全てを質問で聞き出すのではなく「お客様の隠れたご要望」をいかに お察し して差し上げられるか、ここがそのお店の 付加価値 になるのではないでしょうか。 付きすぎず、離れすぎず、入り込みすぎない程度に 「お客様のお気持ちに入ってゆくこと」 がホスピタリティなんだと思います。 私が飲食業に関わってきて、面白いな、と思うことは 「食は人を元気にさせる」という化学反応 です。もちろん栄養価の分野も然りですが、ホスピタリティの語源も、レストランの語源も、それぞれが人を癒す場所から始まっています。 「食でみんなを笑顔にしたい」 「食で人を笑顔にできる人を増やしたい」 一方通行ではない、お互いの「気持ち」を尊重すること、心で見つめ合える関係を少しでも広げらること、それが出来たならば、 幸せは膨らむ 気がします。 大切な人との気持ちは、どんなお料理だって、どんなワインだって いつだってマリアージュが可能です 。
2021年03月10日■具材を楽しむフレンチの定番サラダ ニソワーズ、ご存知ない方は是非一度召し上がっていただきたいサラダです。 私はこれがとても好きで、ソムリエ時代に 「佐藤さんニソワーズ好きだから」 と私の誕生日の賄いに、キッチンスタッフがわざわざ作ってくれたことを思い出します。それほどにニソワーズは好きなサラダなのです。 ニソワーズとは、シンプルな味付けで普通のヴィネグレットで出されることが多く、種類の多い具材を素材の味そのままに楽しめるフレンチの定番サラダです。 フランスには「サラダ・リヨネーズ」もあります。まあ、もっともっとローカルなサラダもあるでしょうが、世界中で知られているメジャーなサラダはそれ程ないかもしれません。 それぞれ土地の名前が付けられており「サラダ・ニソワーズ」は南仏プロヴァンスにあるニースのサラダ。つまりは「ニース風」。「サラダ・リヨネーズ」はブルゴーニュとアヴィニヨンのちょうど真ん中あたりオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ圏の都市リヨンのサラダです。こちらも「リヨン風」となります。 ■海と大地の恵み「サラダ・ニソワーズ」 ニースはイタリアの西端ピエモンテ州の国境まで約15km程の地中海沿岸です。その昔1388年から1860年までの約470年間、イタリアを統一していく「サルデーニャ王国」の前身「サヴォイア公国」に属していたそうで、ほぼイタリアと言っても過言ではない地域ゆえ、強くイタリア文化の影響を受けているようです。 食材に関してもイタリア共通の物が多く見られます。特に「サラダ・ニソワーズ」に関していえば 「ツナ」を使用することが特徴で、その他にはトマト、オリーブ、ニンニク、アンチョビ、ハーブ類、またインゲン、茹でたジャガイモ、ゆで卵なとが定番的 で定義的な食材です。 まさにこの時期、5月の終わりから6月の終わりまでの1か月が地中海のマグロ漁の旬にあたり、アンチョビの原材料となるカタクチイワシの旬も5月に始まるそうです。そしてワインでもプロヴァンスの地産のロゼが夏至の日に解禁になる物があるほど。初夏の海と大地の恵みを楽しむ郷土料理であるようですね。 ■玉ネギの一大産地「リヨネーズのサラダ」 一方リヨネーズはというと、こちらは「玉ネギ」の一大産地です。こちらはサラダ以外もソースやガルニチュールでも有名でとろとろになるまで炒めたオニオンが使われます。ジャガイモを合わせた代表的な家庭の味「ポム・リヨネーズ」などもその一つ。サラダでも 「オニオンリング」と「ウフ(卵)・ポシェ(湯がく)」と呼ばれる半熟卵が載っていて、ドレッシングにマスタードが使われる ことが「サラダ・リヨネーズ」の定義のようです。 どちらのサラダも地元の作り手によって様々でしょうし。料理には著作権も国境もありませんから、自由な解釈やアレンジがあるからこそ面白いのですね。 ■ロマンと卵と「シーザーサラダ」 日本では一番有名であろう「シーザーサラダ」だって「ジュリアス・シーザーが愛したサラダだ」とか「ローマのプンタレッラで作ったマンマの味がアメリカでロメインレタスに変わった」とか諸説あります。どうやら文献的に有力な起源は1920年ごろの禁酒法時代にハリウッドで働くアメリカ人が、ほど近いメキシコのティファナへ酒を求めて行き、料理人シーザー・カルディーニ氏が経営するレストラン「シーザーズ・プレイス」で即興で作ったものがそれに当たるようです。 とはいえ 2つの俗説はいずれも「そうであったら面白そう」なロマンあふれるお話 ですね。そうそう、そして面白いことに 初期のティファナのシーザーサラダにも「半熟卵」が載っていたそうな。卵は大人気 です。更にはソースにも卵黄が使われ、ビネガーとオリーブオイルなどを乳化させたドレッシングやマヨネーズ的なものが使われていたようです。 ■おうち時間の笑顔のために愛を込めて 起源を辿ればフレンチだって、イタリアのメディチ家の功績が大きいのですが、各地で発展し新大陸にまで伝わり、日本にまで届いたのはとても面白いことです。食に限らずワインに限らずお酒も含めた人々の「欲求」や「追求」は脈々と永遠に続くようです。 今こうして、世界中がコロナの時代にて生活スタイルも食文化も変化を余儀なくされています。緊急事態宣言が発令され、たくさんの問題を抱えつつ、それでも人は食べなければ生きられません。生きるための栄養だけでなく、心 あなたのお料理が、少しでも誰かの笑顔に変われば と心から思います。みんなのおうち時間が少しでも笑顔と会話のあふれる楽しい時間になりましたら、私も幸せです。 これからも感謝と愛を込めてお料理していきたいと思います。 ■日曜日の昼下がりにワインで乾杯を 今日は今まで作らなかった「サラダ」を一皿。すでに散々語った前述のツナではありませんが、 今が旬の「寒ブリ」を使って。いきなりアレンジ ですみません。 魅力的なサラダは数多ありますが 今回はやはり大好きな「ニソワーズ」で参ります。 ただし冷蔵庫にあるお野菜やスーパーに並ぶ手に入りやすい「旬」なもので作りたいと思います。ニソワーズの定義を意識しつつ再構築してゆく感覚です。そして日曜日の昼下がりに、日当たりの良い室内でゆっくりワインとともに楽しめるようなサラダになったら嬉しいです。 立春も過ぎましたし、日の入りも伸びてきました。日差しの差し込む室内は暑いくらいです。平日はお国のルールでなかなか飲みにゆけません。 日曜日はお昼から乾杯でもいいんじゃないか と。今年のお花見シーズンにはお外で楽しめることを祈りましょう。 さてさてそれではレシピです。 ■寒ブリとパクチータルタルの菜の花ニソワーズ レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 2人分> ブリ(寒ブリ:切り身) 2切れ 塩 適量 ホワイトペッパー 適量 オリーブ油(揚げ用) 適量(寒ブリが半分浸かる程度) パン粉 適量 薄力粉 適量 溶き卵 適量 プチトマト(赤) 3個 プチトマト(黄) 3個 ジャガイモ(メークイン) 1個 菜の花 4本 サヤインゲン 6本 トレビス 適量 ラディッシュ 2個 赤ピーマン 1/2個 アンチョビ 4切れ ブラックオリーブ 10個 ニンニク 1片 ゆで卵(固ゆで) 2個 パクチー(香菜) 4束 赤玉ネギ(新玉ネギでも可) 50g マヨネーズ 80g コルニッション(ピクルス) 3個 ケイパー 10g 寿司酢 20g 塩 2g <下準備その1 茹で物> 下準備のポイント・コツ ※パーツも多いので時間のかかる仕込みから始めて行きましょう。 ※サラダなので野菜が冷えている必要があります。前日などに常備菜としてまとめて仕込んでおくと数日間保つので、調理のたびに用意する必要がなくなり、準備の工程も省かれるので大変便利ですしおすすめです。 ・「ジャガイモ」は良く洗い、土を落としてから、皮付きのまま水から茹で始めましょう。 途中お鍋のお湯が蒸発して「ジャガイモ」の頭が出てしまったりするので、初めに被るより少し多めの水を入れてください。そしてお塩を小さじ1ほど入れて中火に。ボコボコ沸かさないように気をつけましょう。15分ほどで一度クシをさして硬さをチェックしてください。「ジャガイモ」を転がし反転させてさらに10分ほど煮ます。竹串か金串をさして中心部までスッと串が通ればOKです。ザルに開け風通しの良いところへ。今回はサラダなので粗熱が取れたらすぐに冷蔵庫でさましましょう。 できたら芋類は冷めにくいので前日か早い時間での仕込みをお勧めします。冬がは暖かくても美味しいのですが、夏場はやはり冷たい方がオススメです。 ・「トレビス」は一口大にちぎって浄水に晒します。 クタっと萎びたところがなくなり全体にパリッとしてきたら水から引き上げます。サラダドライヤーでしっかり水気を切ったら、底にペーパータオルを引いたタッパーで保存しましょう。 ・「パクチー」は束を解いてカットせずにそのまま浄水で戻します。 枝がピンと立ってきて水面から飛び出すようになってきたら引き上げのサインです。こちらもサラダドライヤーでしっかりと水気を切り、ひとまずはペーパータオルとタッパーで保存しましょう。他の火を使う下順備が一通り終わったところで、場所を確保し野菜のカットを始めます。 ・手鍋に多めの浄水を張り塩を「大さじ1」ほど入れて強火で沸かします。 ザルボウルを用意して色留め用の「氷水」を用意します。 茹で野菜はすぐに冷まさないと綺麗な緑色が濁って行きます。お湯に野菜を投入してからでは遅すぎるのであらかじめ用意しておきましょう。 ・「インゲン」は下の方をまとめて持ち、軽くまな板に叩きつけながら端を揃えます。 揃ったところでまとめてヘタをカットしてください。先端の細いところは残します。必ず沸騰したお湯で茹でましょう。硬さはお好みですが30秒程で茹で上がります。引き上げたらすぐに氷水で冷やします。 ・「菜の花」は花や葉の部分は火の通りが早いですが、茎は太いのですぐに火が入りません。 引き上げが早いと茎が固く残りますし、茎に合わせて茹で過ぎてしまうと花や葉は溶けてしまいます。そこで茹でる前に茎の部分に切り込みを入れておきます。こうすることで火の入りをよくし、全体に歯応えを残したベストな茹で加減を実現することができようになります。 「菜の花」は「インゲン」などに比べて質量が大きいので、たっぷりのお湯でしっかりと沸いた状態で湯がいてください。また葉が広がり、茎も太く投入直後に一瞬温度が下がります。お湯の中でも温度に差が出ますので、葉をいたわりながら菜箸などで優しく撹拌してあげてください。こちらは20秒ほどで茹で上がります。予熱も考慮に入れながら、サイズが小さければそれだけ早く氷水に引き上げましょう。 ・茹で野菜のコンロが開いたところで、また鍋に浄水を8割ほど入れ沸かします。 こちらは卵用なので塩は入れません。沸騰したらとにかく静かに「卵」を投入してください。 優しく投入しないと鍋底に卵がヒットして殻が割れてしまいます。そうなるとそこから白身が滲みますので、茹で上がりを剥いたときに筋が入ってしまったりと、キレイなむき卵にならなくなってしまいます。投入時は特に優しくしてあげてください。 <下準備その2 カット物:野菜と魚> ※茹でものが一通り終わりましたら、調理器具もそこそこ多いので一旦片付けをして、スペースを確保します。有効な空間を確保してからまな板を広げてください。ここからカットに入ります。 ・「トマト」も枝ごとしばらく水に晒しておくと瑞々しさが持続します。 カットは縦半分に。 「トマト」はヘタを外してしまうと見栄えが寂しいので、ヘタはつけたままカットします。水につけておくことで柔らかさも出ますので食べられないこともないです。 ・「ラディッシュ」も浄水に晒します。 もし表面が萎びていても硬さが戻りシャキッとします。カットは薄すぎると食感がなくなり面白くないので、2mmほどの厚さでスライスを。 ・「ニンニク」は上下を落とし皮を剥き、半分にして芯を取り除いておきます。 ・「アンチョビ」は1フィレを斜めに3等分に。 大きものは4等分にカットしておきます。盛り付け時にジャガイモの上に載せます。 ・「ジャガイモ」は15mm幅に輪切りにし、さらにそれを十字に4等分します。 ・「赤玉ネギ」をスライスして行きます。 まずヘタをペティナイフの先端でくりぬき、中に見える芯をペティを使ってほじくり出します。イメージとしては芯に刺して持ち上げる感覚です。これは普通の玉ネギでも同じ作業をします。スライスしてしまってからでは芯を取り除きにくいからです。初めに取ってしまいましょう。芯が取れたら繊維に沿ってスライスします。そしてザルボウルを用意して、浄水につけて辛味をとって行きます。 小さいザルボウルでしたら出来たら流水で、大きなザルボウルでしたら水をいっぱい溜めて、3回ほど交換してください。サラシが終わったらサラダドライヤーで水気を切り、ペーパータオルを敷いたタッパーで保存します。毎日サラダを食べるならとても重宝します。だって毎回オニスラ作れないですから。こちら鰹節と一緒に冷奴に乗せると美味しいです。 ・いよいよ「寒ブリ」です。 内臓側の膜と、その下に骨が残っていたら包丁で削ぎ落とします。また皮も下にして身との間に包丁を入れ、皮を引っ張りながら左右に揺するとキレイに皮を剥ぐことができます。続いて 「アセゾネ」をして「パネ」します 。※下記解説参照 「アセゾネ」=assaisonnerは基本的に素材に塩胡椒をすること を言います。 「パネ」=panerはパン粉をまぶすこと を言います。小麦粉、溶き卵、パン粉をつけたものを「パネ・ア・ラングレーズ」と呼びます。アセゾネは「ホワイトペッパー」にて。 <作り方> ※先に寒ブリを揚げてしまうと、タルタルソースを仕込んでいる間に、せっかく脂の乗った寒ブリが冷めて固くなってしまうのでまずは「パクチータルタル」から仕込みます。 1.「パクチー」は葉の部分を茎からちぎって、まとめておきます。 後ほど葉の部分を「マヨネーズ」と一緒にブレンダーにかけます。 茎を一緒に回すと水分が多いので水っぽいタルタルになってしまいます。この料理には葉の部分だけを使い、茎は茎でまた別の料理に使いましょう。みじん切りにして「納豆」に混ぜたり「ねぎ塩レモン」に混ぜたり、蕎麦やうどんの薬味にしても美味しいです。 2.「ゆで卵」は殻からむいてエッグスライサーにかけます。 まずは横向きにスライスして、その後で90度回転させ、縦にも刃を入れます。3mm角の状態になったと思います。こちらは最後にマヨネーズに合わせますので、器に取り分けておいてください。 3.「コルニッション」(ピクルス)はカットした卵と同じ大きさに仕上げたいです。 包丁で均等にスライスして、スライスをさらにせん切りにします。最後にサイの目にカットしてください。水気が出るようならペーパーでオフしておきます。 4.「ケイパー」も軽くカットします。 元々が小さいので約半分の大きさに。こちらも水分を含んでいますので水気をしっかりきっておいてください。 5.先ほどスライスした「赤玉ネギ」もみじん切りにして、一度ペーパーに包み、軽く絞ります。 6.それではカットした材料合わせて行きましょう。 まずはベースの「パクチーマヨネーズ」を作ります。ブレンダーを用意して、少し深めの容器に「マヨネーズ」と「パクチー」の葉を入れ、ブレンダーをかけます。あらかじめ「マヨネーズ」の計量をこの時点で使う容器で用意しておくと便利です。おそらくブレンダーを4、5回上下させる程度で滑らかに混ざり合うと思います。 7.「パクチーマヨネーズ」が仕上がったら、そこにタルタルの全ての材料を投入し、優しくそしてしっかりと混ぜ合わせます。 合わされば「パクチータルタルソース」は完成です。 <「タルタルソース」のポイント> ・材料を同じ大きさにカットする あえて大きさを変えることで、食材が余韻として口に残る順番で印象を伝えるテクニックもありますが、大きさが揃うことによって、食感にも喉越しにも統一感が出るので、全体としてまとまり完成度が上がります。つまり単体の素材ではなく「複合的な素材の融合」を感じることができるため「ソース」たる所以が醸し出されると思います。 ・「マヨネーズ」だけでは塩味が足りない そもそもソースと言うくらいなので「何かにかけて味を決めるもの」であるのですが、具材も多いのでそれ自体の味が薄くなってしまいがちです。特に塩味が薄いと料理全体がぼやけた印象になってしまいます。めりめりのある香り、メリハリのある味が「美味しい!」というインパクトを残すので、ソースの仕上げにしっかりと味見をして調整してみましょう。 ・卵は「固茹で」がベスト 黄身が半熟すぎると、味が薄くなりやすいですし、黄身の色がソースに混ざってしまいます。また固茹での方が冷ました時に卵の香りがよく出ます。プリッとした食感も得られるためにあえて今回は固茹でにして美味しいソースに仕上げます。 8.「パネした寒ブリ」をパン粉焼きにして行きます。 オリーブオイルを鍋に入れ、中火にかけます。温度が上がる前にニンニクを入れてください。高温の状態でニンニクを入れると、オリーブオイルに香りが移る前にニンニクが焦げてしまいます。あくまでゆっくり香り付けを。程よく色づいてきたら器に取り出し、軽く塩を振ってください。後で一緒にサラダに盛り付けます。このニンニクがとても美味しいんです。 9.いよいよ「ニンニク」を取り出したオリーブオイルに「パネした寒ブリ」を投入。 「オリーブオイル」は温度が上がりやすいので、弱火からスタートしてください。「寒ブリ」からシュワシュワと泡が出ていればOKです。途中で裏側の焼き色を確認しつつ、狐色が確認できたら反転です。 身の厚いところはフライパンを傾けて、オイルを寄せて浸るようにしてあげてください。火の通りが早いので「焼きすぎ注意」です。この時期の「寒ブリ」はとても脂が乗っているので、パサつくことはありませんが、やはり少しでもしっとりと仕上げたいので、外側が狐色になったところが上げ時のサインでしょうか。余熱で火が入ることを考慮してください。 10.さあ、全ての処理が終わったので、あとはキレイに盛り付けて好きな人と、好きな音楽をかけて、ワインを開けましょう。 ■冷えた辛口のプロヴァンス・ロゼを 下準備さえしておけば 「タルタルソースを和える」「寒ブリを焼く」「盛り付ける」 の 3工程 でできてしまいます。そしてパーツが多いのでIKEAの「ご機嫌タッパー」があると大変便利です。 盛り付けのポイントは「考えすぎない」「立体感を出す」「寒ブリの断面をいくつか見せる」「色を散らす」「全面を使う」 こんなところでしょうか。 季節はまだまだ初夏には早すぎますが、 日当たりの良い日曜日の室内は程よく冷えた辛口のプロヴァンス・ロゼにぴったり です。こんな時におすすめなのは 「ロムラード キュヴェ・マリー・クリスティーヌ プロヴァンス ロゼ」 。 ゆっくりとまったりと休日のお日様と大切な人との時間をお楽しみください。 チルタイムをニソワーズで…
2021年02月21日朝食の定番、卵がけゴハン。TKG。ちょっとお醤油を垂らしたらしみじみ美味しい。トーストに目玉焼きも最高です。これラピュタ飯。 ゆで卵には温卵も半熟もハードボイルドもあります。焼きではスクランブルエッグに、だし巻き卵に金糸卵だって。親子丼があれば、オムライスだってある。卵さん偉大!ラーメン屋でだって味玉追加しちゃいます。蕎麦にうどんにハンバーガー「月見」って呼び名が詩的です。 イタリアンならカルボナーラも卵なきゃできません。そもそも手打ちのパスタには、セモリナ粉と卵黄使います。茶碗蒸しだって卵だし、お寿司屋さんで「玉」がデザートに出るところも。 レシピ制作:佐藤 尊紀 ■地球上4大プロテインのひとつ フライだって衣をつけるときに卵が必要ですし、そうそう、マヨネーズは卵がなければつくれません。コンソメもワインも卵白によって清透(澄ませる)しますし、パテドカンパーニュにも卵が入っているんですね。 ギャマングループでお馴染みの「トリュフのふわふわスフレオムレツ」も卵白をしっかりメレンゲしてこそのお料理でした。 そしてスーパーでもご覧の通り、 常温での保存が可能 です。殻に入っているというそのデザインは非常に機能的です。レシピで卵白と卵黄を分ける際には 器具 にもなるし、その殻は パッケージ の役目を果たします。 持ち運びにも便利 です。 さらに栄養学的にも エッグプロテインは「地球上の4大プロテイン」のひとつ でもある。 ・コンビニ版ビルダー飯トップ3 卵って登場率も機能性もハンパないです!あっ、すき焼きでも卵必要だった!という事は牛丼もだ!お好み焼きやたこ焼きにも入ってる?そして感心ポイントに 「安さ」 があります。大体10個入りが100円~150円では?1つが約10円~15円です。そう考えるとコンビニの「ゆで卵」って実は高いですね。 これは全く料理には関係ありませんが、15年ほど前に筋トレにハマっておりまして、ボディービルの大会に1度出たことがありました。組んでいたトレーナーが大のボディービルマニアで、筋肉質だった私はまんまと調教されてしまいました。 その時分は営業マンで、商談先のあちこちで食事を取らなければなりません。減量も含め身体作りの為には「高タンパク低カロリー」が必須条件です。サプリメントは常に携帯していましたが、当時紙主体であった営業資料と一緒に、「ビルダー飯」を持ち運ぶことは難しく、大変お世話になったのがコンビニでした。 「ゆで卵」「バナナ」「ハム」 はどこのコンビニでも手に入る 高タンパク低カロリーな「コンビニ版ビルダー飯トップ3」 なのですね。パンプアップして若干パツパツ気味のスーツ姿で、このトップ3を「豆乳で流し込む」という姿は、なかなかの変態筋肉サラリーマンでした。 最低限のエネルギーは「バナナ」で。卵同様手を汚さずに食べられて持ち運びにも便利です。「ハム」は少々塩分が高めですが一応「肉」を食べてる感覚。成分表示をよく見ると 乳タンパクの一つ「カゼインプロテイン」 が入っていたりします。ちょっと感動。 そして我らが エッグプロテイン「ゆで卵」 様。持ち運べる高タンパク質です。黄身はカロリーとコレステロールが気になりますが 「テストステロン」には脂質も必要 です。みなさん「ゆでたまご先生」ってご存知ですか?「キン肉マン」の作者です!こんなところにも卵は登場しているのです(笑 相当な脱線ですが。 「ゆで卵」がいかに栄養学的にも素晴らしい か伝わったのではないでしょうか。ぐいっと戻します。 ・溶けるデザートで不意打ちバレンタイン さてさて。デザートの世界ではどうでしょう?実は 卵の消費量が一番多い のがこの世界。卵が無ければスポンジケーキもシュークリームもつくれません。テリーヌショコラにもチーズケーキにもティラミスにだって入ってます。クレームブリュレには信じられないくらの卵黄が。カスタードは卵とバニラのソースです。他にも上げたらキリが無いでしょう。 そして気づけば バレンタイン はすぐそこ。 コロナな現代のお家時間を活かして、たまにはお菓子作り なんてしてみませんか?今年は2人でお部屋でゆっくりまったりステイホームなんていかがでしょう? 溶けてしまう「持ち運びNG」なレストランデザートで、デリケートな愛を、不意打ちのカフェタイムに。 ディナーのデザートに。 リキュールの効いたチョコレートで大人なひとの心も優しく溶かしてください。 ■「ライチ風味のムースオショコラ」と「アマレット香るテリーヌショコラ」 ・ワインに代わりリキュールの登場! 活躍頻度の高いスーパースター食材「卵」、今回はデザートを作っていこうと思います。以前よりワインを使ったレシピを多数ご紹介してきましたが、今回はワインに代わって リキュール の登場です。 「アマレット」を使ったほろ苦く大人なテリーヌショコラ と、 「ディタ」を使ったキュートなムースオショコラ の2つ。 私が「ブラッセリー・ヴァトゥ」のデザート場でたくさん作ったレシピを「ブロックス」時代にも更にアレンジを加え、デザート作りを楽しんでいました。今回はそのレシピをお家サイズにしてつくって参りましょう。 今回は道具が多いので「そんなのねーよ!」って怒られてしまうかもですが、この際なので高いものでなくて全然良いので少し揃えてみたください。 まず初めに デザート作りで「失敗しない為のポイント」 を一つ。それは 「計量」 です。これが基本中の基本です。レシピ通りにしっかり計量しないと、微量の変化で違う物が出来てしまいます。またデザート作りは「よーいドン」で作り始めたらノンストップの待ったなし。準備が非常に大切です。 チョコレートを溶かしたり、卵白や生クリームを泡立てるので、途中で止まってしまうと、チョコレートが固まってしまったり、シャンティやメレンゲが落ちて(空気が抜けて萎んでしまう事)しまったり。お料理のように 「焼きながら…」とか「沸くまで…」とか「煮込んでる間に…」という事が出来ないのがデザート作り なんですね。ですから「ブラッセリー・ヴァトゥ」時代も仕込みに追われつつ、デザート系の仕込みをするわけなので「仕掛けるタイミング」が気になって仕方ありませんでした。シフォンをオーブンに入れなきゃなんだけど、シェフが煮込みを仕込んでる。あぁオーブン取られそう…とか。 また基本のレシピや工程をしっかり覚えておけば、後々アレンジもしやすくなります。慣れてきたら「私はもう少し甘くない方がいいなあ」とか「もう少し硬い方がいいなあ」と 基本のレシピを元にして自分好みに微調整が出来る様になる わけです。 これ仕事も恋愛も一緒かも。 「まずは基本を身に付ける」 これはデザート作りに限らず何事においても大切なことですね。工程が頭に入ってきて、順番の意味が分かってくると楽しいものです。あらゆる素材を、それぞれに変化させて、最後に一つにまとめ上げる。頭の中で段取りを見極めつつゴールまで走る。理想の完成形をイメージして。 あ、デザート作りと恋愛でもう一つ大切なポイントがありました。 ・失敗が大事なのは恋愛と同じ 「失敗すること」経験て大事です。。。やり直せる物もあれば、やり直しが効かない事もありますが。 大人のデザートと人生は、まあまあビターです。 ■ライチ風味のムースオショコラ <材料> ビターチョコレート(ベルジアン・ダーク72%) 150g 無塩バター 40g 卵黄 2個分 砂糖 30g 卵白 2個分 砂糖 30g 生クリーム 200g リキュール(ディタ) 40g ミントの葉 適量 粉糖 適量 <道具> 湯煎用の鍋(ボウルが上に乗るもの) ボウル 4個(およそのサイズ、21cm・24cm・26cm・29cm) 泡立て器 2本(あれば3本) テリーヌ型 1台(容器はあるもので良いです) シリコンのヘラ 1本 <下準備> ・湯煎用のお鍋にボウルの底が水面に当たるくらいの水を入れ沸かしておく。 ・全ての材料を計量する。 ・冷蔵庫に完成品をしまうスペースを作る。 卵の分け方は容器を二つ用意して、半分に割ったらまず初めに「卵白」を容器に落とします。余計な動きをせずに少し傾けてあげることで「自重」で卵白が流れ落ちるはずです。そのあとで2つの殻に卵黄をキャッチボールさせ、卵黄にまとわりついた卵白を落とします。ある程度卵黄だけになったらこちらも容器へ。 ここが少し難しいかも。殻の角に「卵黄」を引っ掛けてしまい 「半白に卵黄を垂らさないように」 しましょう。「卵黄」に多少の「卵白」が入っても状態に問題ありませんが、 「卵白」に「卵黄」が入ってしまうと「メレンゲ」ができません。 水分などもまた然り。垂らしてしまったらまずは焦らずにスプーンで「卵黄」を取り除いてください。動画などを検索して「動作のイメージ」を掴んで作業してみてください。 <作り方> 1.「チョコレート」と「バター」を湯煎で溶かします。 時間のかかることから先に進めると進行がスムースになりますね。 2.「生クリーム」で「シャンティ」を作ります。 フランス語でホイップクリームのこと。正式には「クレームドシャンティー」です。 レストランのデザート場だと「シャンティーを立てる」というように使います。ツノが立つ程度にしっかりとホイップしてください。 シャンティーの「正しい作り方」は大小のボウルを用意して下に氷を敷き「氷ボウル」なるものを作って生クリームを冷やしながら泡立てます。こうすることで滑らかなキメの細かいシャンティーができます。 ライチ風味のリキュール「ディタ」を合わせます。少々多めの分量です。大人なので。 3.「卵黄」を「ブランシール」していきます。 製菓用語で「ブランシール=blanchir」ですが、スペルの中に「blanc=ブラン(白)」が入っていますね。 「白くなるまで混ぜ合わせること」 を言います。 卵黄は離水しやすいので 「ブランシール」する直前に「砂糖」を加えます。 早目に「砂糖」を加えて放っておくと「砂糖」が「卵黄」の水分を吸ってしまい、表面の膜が固く残ってしまいます。「砂糖」は直前にあわせましょう。 ボウルを斜めにして底の部分のカーブを使い、泡立て器を左右に動かすとあまり疲れずに進められます。疲れたら反対の手に持ち替えて同じ動作を。早く動かせば早く混ざりますが、 焦らずにゆっくりと。 分かりやすいように半分だけ「ブランシール」してみました。 要は「砂糖を加えた卵黄のホイップ」 ですね。 全体がしっかり白くなってもったりして来たらボウルの底を「泡立て器」で掻いてみてください。このように 泡立て器で掻いた「筋」が残るくらいの硬さ になれば完成です。 この状態を「リュバン状」と言います。 「Ruban」=フランス語で「リボン」のことですね。デザート作り、特に卵黄を扱うときによく出てくる言葉です。 4.卵白に砂糖をあわせ「メレンゲ」を作って行きます。 ボウルを傾けて片側に寄せてから攪拌してゆくと、散らばった卵白がまた下に集まりますので早く出来上がります。左右に一定の軌道で動かしてください。腕が疲れたら反対の手に持ち替えて。 ツノが立つくらいまでしっかりメレンゲします。ここは一番大変なところかも。ちょっと腕が痛くなりますね。お疲れ様です。 5.チョコレートがしっかり溶けたことを確認し、「ブランシールした卵黄」に合わせます。 まずは湯煎したボウルの水気チェック。 水分をしっかり拭き取ります。 ボウルがかなり熱いので ミットを使い 火傷には気をつけてくださいね。 ボウルの「ヘリ」の折り返しの下の部分にも蒸気が回り水分が溜まるので傾けて取り除きましょう。水分が混ざると状態が大きく変化します。場合によっては取り返しのつかないミスにつながります。湯煎をしたら必ず水気のチェックを。 色が均一になるまでしっかりと混ぜます。 6.生クリームを合わせます。 底や側面にチョコレートが残りやすいです。最後に容器に流した時にマーブルにならないようによく混ぜましょう。ヘラでボウルの地肌が見えるくらいに、外側から内側に掻いていきます。 7.最後にメレンゲを投入し、ボウルの外側からなるべく泡を潰さないように、切るように混ぜ合わせます。 泡をなるべく潰さないように優しく混ぜましょう。 8.混ざったら容器に流して完成です。 ラップをせずに冷蔵庫へ。 ■アマレット香るテリーヌドショコラ <材料> ビターチョコレート(ベルジアン・ダーク72%) 250g 無塩バター 125g 卵黄 3個分 砂糖 20g 卵白 3個分 砂糖 20g クルミ 35g スライスアーモンド 35g 砂糖(キャラメリゼ用) 50g アマレット 40g シナモンパウダー 適量 <道具> 湯煎用の鍋(ボウルが上に乗るもの) テフロンフライパン 1枚 ボウル 3個(およそのサイズ、21cm・24cm・26cm) 泡立て器 2本 テリーヌ型(2重にしたラップを敷く) 1台 バット(クッキングシートを敷く) 1枚 シリコンのヘラ 1本 <下準備> ・全ての材料を計量する。 卵はムースと同様に。頑張って! ・湯煎用のお湯を沸かす。 ・「冷凍庫」に完成品をしまうスペースを作る。 ・テリーヌ型にラップを敷く。 テリーヌ型の倍の長さのラップを2枚重ねて全面をプレスし貼り合わせます。 そのラップをテリーヌ型の中央に乗せ、軽く谷折りにしながら底面に貼り付けます。なるべく空気が入らないように。そして幅の長い側面も貼り付けてラップを外側に返します。幅の長い側面を先に決めてしまうと作業が楽です。 まずは側面を気にせず、底面をピッタリ貼ることだけに集中すると、スムーズかと思います。一度「そこに落とす」イメージで。 次は幅の狭い側面です。平な面から貼り付けていきコーナーからたるみを逃すようにするとうまくいくと思います。 反対側も同じように処理し、ラップを外側に返したら準備完了です。 <作り方> 1.チョコレートとバターを湯煎で溶かします。 分量的に少々時間がかかるので一番初めに仕掛けましょう。そして隣で「クルミ」を「キャラメリゼ」していきます。分量の砂糖をテフロンフライパンに乗せ中火にします。徐々に溶けていきほんのり茶色になってきます。 透明な部分があるうちはまだです。 2.だんだん焦げて行き、煙が出始め香ばしい香りがしてきたらクルミを投入しましょう。 クルミがキャラメルと混ざり合ったらアーモンドも投入し混ぜ合わせます。 3.アーモンドが混ざりあったらオーブン用シートを敷いたバットに広げます。 キャラメルを広げることであとで砕きやすくなります。粗熱が取れたら 「冷凍庫」へ。 時々チョコレートをかき混ぜてあげてください。より早く溶けます。 4.「卵黄」を「ブランシール」。※上記工程3参照 5.「卵白をメレンゲ」に。※上記工程4参照 6.「チョコレート」と「バター」が溶けたことを確認し、ボウルの水気を拭いておきます。 7.「メレンゲ」に「ブランシールした卵黄」と「アマレット」を入れよく混ぜます。 8.「チョコレート」を合わせよく混ぜます。 キャラメリゼした「クルミとアーモンド」を冷凍庫から出しておきます。 やはりここでもチョコレートが下に沈澱します。ヘラでボウルの地肌を滑らせ、最後にマーブルに成らないようによく混ぜましょう。 9.「クルミとアーモンド」を砕いて入れます。 キャラメルが硬いので楽に砕ける程度で構いません。コストを気にしなければ「ピスタチオ」や「レーズン」を入れても美味しいです。 10.合わせた物をラップを貼り付けたテリーヌ型に流します。 流したては表面がモコモコしていますが、両端を持って下に軽く叩きつけてあげると、余計な空気も抜けて表面が調います。 上にはラップをせずに冷凍庫へ。 11.冷やし固めて、さあいよいよ型から抜いて味見してみましょう。 巻きつけたラップを広げ表面を覆います。型を上下ひっくり返し、底面を上にします。 型を上下ひっくり返し、底面を上にします。 ガスバーナーがあれば一周炙ってください。ステンレスのキッチンに直置きで炙ると、キッチン台が異常に熱くなっていたりしますので気を付けて。ガスバーナーがなければしばらく置いておくか、お湯で濡らして軽く絞ったタオルをあてても良いでしょう。要は外側を少し温めて、ちょっとだけ溶かしてあげるとすぐに型から抜けます。 お疲れ様でした!ご褒美コーヒーをいれてお味見をしてください。ちょっと腕が痛いですよね?それは愛情をたっぷり注いだ証です。 盛り付けは自由です。苺やベリーを添えてもチャーミングです。シンプルにミントだけでもオトナな雰囲気になります。 ゆっくりと溶けてゆくカカオに、うっとりリキュールを感じます。 ラッピングできない溶けてしまうデザート はお外には持ち出せません。 暖かいお部屋の中で疲れた腕を優しくゆっくり揉みほぐしてもらってください。 Happy Valentine.
2021年02月06日僕たちはどこから来てどこへ向かうのか。 何を食べて、何を思うのか。 誰といて、何をするのか。 15年前の当時、約1ヶ月ほど一緒に働いた間に激しく意気投合し、強烈に影響を受けた藤井将之シェフ。パリ帰りでたくさんの面白い話と、こっそり密輸してきたバスクのチョリソーを小出しにしてくる、ずんぐりむっくりの髭面で、八重歯がチャーミングな天才料理人。この日も深夜にワインを飲みながら料理の話は続いた。 「たかちゃん(私の事)、もともとフランスには今のようなおしゃれなフレンチなんて無かったんだよ。そもそもが領地を奪い合う野蛮な国で、食事だってローストがほとんど。それも一度にテーブルに出され、食事だって手掴みで食べていたんだ。それでね…」 ■フレンチへの牽引者 ・34歳で料理の世界に飛び込むまで 21歳で美術学校を出てから、外国車の内装皮革のレストレーションやカラーコーディネートの職人を5年ほど勤める。イタリア好きの社長の元、ワンオフのアーティスティックな仕事は集中力と専門技術を要し、常に作品であり物を作る悦びは心の底から「これが天職だ!」と感じさせてくれた。 幼少から工作が好きで、サランラップの芯やダンボールに萌えているような子供だったから60年代~80年代の歴史ある車から内装パーツをバラシてはレザーを剥がし、型を取り、時には復元させ、時には色を変え、また車に戻す。それはまさに当時の職人とのモノを通したコミュニケーションであり、毎日が学びと感動と鳥肌の連続であった。 ・絵の具まみれの学生時代とイタリアブーム スパゲッティはパスタと呼ばれ、イタリアワインが身近に買えるようになる。深夜にはセリエAが生中継され、中田英寿がゴールを決める。職場のガレージに行けばフェラーリやベンツが並んでいるわけだから刺激的だ。すっかりイタリアに惚れてしまった。文化の全てに華やかなアートが溢れているのだ。ミッソーニのシートが載ったランチア・インテグラーレを思わず所有してしまったほどに。ファッションも料理も最高だ。 私にとっては、工作も、レザー加工も、料理も何かを作り出すことこそが、同じ喜びを味わえる一つの方法で無心になれ、時間を忘れ、無条件に楽しいひと時を生み出してくれる。 ・自動車業界に押し寄せた波 そして「ステーションワゴン」の一大ブームがやって来た。多くの自動車雑誌はこぞってブームをもてはやしメーカーも流行路線のモデルチェンジに大忙し。改造パーツが飛ぶように売れ、エクステリアだけでなくインテリアもその渦に巻き込まれて行く。 そこで「シートキット」なるものが流通し始めた。車から外したシートをただ脱がせては、中国製の縫製の歪んだシートカバーを着せて行く作業。そこには偉大な職人達とのコミュニケーションはなく、早さだけが正義であり、とにかく数を求められる仕事になってしまったのだ。 なんとまあ「早い」「安い」「うまい」は飲食店に限った事ではないようだ。「生産性」と「低コスト」に「ニーズ」が加われば、商売の方程式は解けてゆく。儲けがそこにあれば経営者は背に腹はかえられない。 ・お前なんかイタリアにでも行ってしまえ 作る悦びを感じられず、息が詰まって行く。何かが違う。結局、お世話になったその社長とは決別してしまう。悔しくて、泣けてしょうがなかった。 しばらく何もやる気が起きなかった。 ブラブラしていると友人たちから喝をいただく。お前なんか金を貯めてイタリアでもどこでも行ってしまえと。俺たちには継がなきゃいけない親の会社がある。「そこまで好きになれるものに出会えたお前が羨ましい」と言われた。自分の人生を無駄にするなと本気で怒られた。それで目が覚めた。 だが次に就いたのが営業職だった。給料が高く、お金を貯めて本気でイタリアでに行こうと思ったのだ。テレアポで固定給なしの完全フルコミッション。上司に可愛がられ徹底的に「お客様の立場で物事を考える」を叩き込まれる。これは前職のブロックス時代にマネージャーとして大いに役に立った。売る物が変わっても売れるのが本当の営業だと教えられた。 半年くらいで部下が付き課長になった。本社が大阪にあったその会社は翌年東京に支店を作ると言う。すごいタイミングで上司が居なくなり、支店長になってしまう。ガムシャラに支店を守った。いつしかイタリアの夢は消えていた。 物を売る仕事に情熱を傾けて来たものの、再び物を作る悦びを味わいたくなった。 ・そして34歳で料理を選んだ。 「たかちゃん、それでね、どこからフレンチが発展したかと言うとね、実はイタリアなんだよ。メディチ家のカトリーヌがフランスのアンリ2世のところに嫁ぐことになり、イタリアンの料理人を引き連れてフランスにやって来たんだ。その時に料理と一緒に、白い皿もフォークもテーブルマナーも待ち込まれたんだよ。フレンチの起源はイタリアンなんだよ」 その夜の話は衝撃だった。また「此処に戻って来られた」と思った。モノづくりの快感の毎日に戻れる気がしたのだ。個人的なルネッサンスに思わず涙が溢れてしまった。 ■藤井将之シェフとの出会い 藤井シェフは、元「ヴァトゥ」のシェフであり、伝説の店「オーバカナル1号店」の出身だ。現在は恵比寿「オー・ギャマン・ド・トキオ」にて総帥木下シェフに代わり腕を奮っている。また、今や名物となった中目黒「ブロックス」の「フォアグラバーガー」を生み出したのもこの人だ。料理への飽くなき探究心を奇想天外なアイデアで表現するその発想には誰もついて行けない。ほんのり話が噛み合わないところも天才ぶりを醸し出している。 ひと月ほどで別れの時は来てしまった。マニアックで濃密で、心躍る料理の話を肴に、ワインを飲んだあの頃が懐かしい。 その後、藤井シェフは恵比寿の「ギャマン」に。私は藤井シェフの口利きで「ヴァトゥ」に行き、5年後再び「ギャマン」に誘われる。もしも出会っていなかったなら、今もこうして料理の世界に携わっていなかったと確信している。もちろんフレンチにも飛び込んでいなかっただろう。 「たかちゃん、イタリアンが好きなら、料理が好きなら、一度はフレンチやるべきだよ。フレンチ本当に楽しいから」 ■フランス帰りの欧風カレー この流れでなんの料理を作るか少し悩んだ。何だかちゃんとしたフレンチを作るべきなのか、否か、と迷ったわけだ。そしてふと、過去に調べたことを思い出す。 それは「欧風カレー」 。 私もしばらくは「ヨーロッパ風カレー」のことだと思っていたのだがインドカレーに相対する「ヨーロッパのそれ」ではなかったのである。なんなのか「欧風カレー」。実はビックリ、 日本発祥のカレー なのである。大きな「へーっ」があちこちから聞こえる。 そうなのだ。カレーは奥が深いのである。 そもそもインドカレーという概念すらおかしいのだ。全ての料理にスパイスが使われており、いわゆる「カレー」を作っている意識は一切ないのである。 ターバンを巻いてヒゲの生えたインド人は、「イメージ戦略」の賜物である。まんまと嵌められているのだ。もはやその方がカレーが美味しそうに見えてしまうから不思議だ。さもすると、笛の音とともにツボからヘビが出てくる所を想像してしまうのは、私だけであろうか? あぁ、「ターバンと壺とヘビ」で無性にカレーが食べたくなって来てしまった…。 ・デミグラスとチャツネをカレーに加えて考案された「欧風カレー」 話を戻す。「欧風カレー」であった過去にふと思い立ち、徹底的にカレーを調べたことがあった。これはマジで奥が深い。 本日は、まあまあズラズラと、というかダラダラと前述に自己紹介コラムを書いてしまったので「カレーの深掘り」はまた次回にするが、インドとイギリスと日本における「歴史的な外交と栄養学的な面を持った経済的な話」が詰まっているのである。あぁー語りたい。 とはいえ至極真面目に 「フレンチへの牽引者」 を辿って今回思い出したことは、東京神田の老舗カレー店「ボンディ」の創業者、村田紘一氏。絵画と彫刻の勉強の為にフランスに渡り、現地のレストランでのアルバイトと共に4年間を過ごし、帰国後に絵でも彫刻でもなく「料理」を始めたところにいたく共感した。そして「ボンディ」が通っていた芸術学校への通学路にあったことも感慨深い。村田さんを通して分かったのが、おそらく 「フォン・ド・ヴォー」をベースに取ったであろうデミグラスをチャツネと共にカレーに加えて考案したのが「欧風カレー」である こと。 これが今回の最大のポイントであるのであります。 ■市販ルーを使いつつ、フレンチっぽく。 「フォン・ド・ヴォー」とはそもそも「仔牛の骨」から取った出汁なのでありますがそんな物を一般家庭で手に入れてオーブンでローストして作れるわけもなくどうしたものかと考えを巡らせますが「ルー」は使うに越したことはなくその中でも経験上で厳選した「ルー」をご推薦しました。 「フォン」いわゆる出汁に関しては今回「コンソメ」を取る部位である「スネ肉」を使い豊富なコラーゲンと共に「旨味」も引き出しつつ、出汁としてしっかりと香味野菜も使うことで、主婦の皆様には怒られてしまいそうな工程を交えつつ、フレンチっぽいことが出来たらと思う所存でございます。 母親は料理好きの書道家であり、おやつも手作りするような人で、包丁も火も「怪我をして怖さを覚えなさい」との教育でした。父親はエンジニアで、壊れた家具や家電をサクッとバラしてはサクッと直してしまう人であり土曜日の料理人です。焼きそばとラーメン率高し。 父も幼少からカッターナイフを握らせてくれて、持ち方も怪我をしない切り方も教わって来ました。そんな環境で育って来たわけですから、我が人生には多大な影響を与えてくれます。 初めて1人で料理をしたのは小学4年でした。 その時より究極のテーマはいつもカレーで常に進化を繰り返しておりますが、現時点での 「変態ソムリエ佐藤のカレー」 としてご理解頂けましたら幸いでございます。 今後も精進し進化をして参ります。 ■フランス帰りの欧風カレー レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 4皿分> カレールー「ハウス ザ・カリー」中辛(こちらはお好みで) 1箱 デミグラス「SB ディナー・ビーフシチュー」 約半量(こちらもお好みで) 牛スネ肉 650g 塩 適量 黒コショウ 適量 サラダ油 大さじ1 ニンジン 1本 セロリ 1本 ローリエ 2枚 タイム 3本 パセリ(茎) 3本 ネギ(青い部分) 3本分 ホワイトペッパー(ホール:あれば) 3粒 ニンニク 1片 ショウガ 1片 玉ネギ(小) 4個 バター 25g 塩 少々 水 約200ml 水 850ml 赤ワイン(バートン・ヴィンヤーズ2019 メタル ザ・ブラック シラーズ) 300ml 水煮トマト(缶) 1缶 ケチャップ 30g ソース 30g ハウス リンゴとハチミツペースト 1袋(40g) ハウス マンゴーチャツネ(ペースト) 1袋(40g) ハウス ブイヨンペースト 1袋(30g) トリュフ油(白) 小さじ1 ジャガイモ(小:下茹でしたもの) 1個 芽キャベツ 1個 赤パプリカ 少々 カボチャ(スライス) 2枚 レンコン(スライス) 2枚 バター 30g 塩コショウ 適量 紫キャベツ 1/4個 塩 適量 フランボワーズビネガー(または赤ワインビネガー) 適量 ご飯(炊きたて) 4皿分 <下準備> ・牛スネ肉は一口大より少し大きいサイズに切ります。 煮込み料理の基本としてお肉が縮みますので大きめに。特に今回はスネ肉ということもあり、コラーゲン質が溶け出して縮みやすいので大きめに切りましょう。お肉が大きい方が見た目も盛れます。特に今回は本来固いスネ肉を短時間で柔らかくしてくれる「圧力鍋」を使いますのでトロトロに仕上がります。ナイフもいらないほどに超絶柔らかくほぐれます。焼いてそのまま食べるわけではないので特に常温に戻す必要もありません。そしてスジを美味しく食べたいわけですから特に掃除も必要なし。水気をペーパータオルでしっかり取り除いておきます。 ・本日の主役「玉ネギ」はペティナイフの先で根の部分をくりぬきます。 そして包丁の先で芯の部分をえぐり出します。芯の部分は成分が強いので玉ネギにしろニンニクにしろ、香りが強く雑味になりやすいです。また胸焼けの原因にもなるそうなので丁寧に取り除きましょう。この段階で処理しておくと、半分に切ってから包丁を入れるよりも少しだけ手間が省けるのと、根っこと一緒にV字に刃を入れるよりも玉ネギがバラけにくい利点があります。みじん切りにする際に根を残すとき以外はこの方法がおすすめです。皮を剥き後の玉ネギが丸ごと使えるようになります。今回は縦半分にカットしたらひたすら薄くスライスしてください。 小さい玉ネギにした理由は、女性の力でも小さめの包丁でも切りやすいからです。4個はなかなかボリュームあります。涙が止まりませんよw。今回の主役は「飴色玉ネギ」です!頑張って! ・セロリとニンジンは煮込み用の香味野菜としての活躍です。 ニンジンは皮を剥いて頭を落とし、ボディの真ん中あたりまで十字に切り込みを入れます。こうする事で出汁が出やすくなります。セロリは鍋に入るほどの長さにカット。ブーケガルニも纏めておくとお料理しやすいですよ。今回は煮込んだ後でお肉を取り出し、フォンを一度濾しますのでペーパータオルで巻いたり糸で縛ったりしなくても良いです。縛ればそれだけ取り出しやすいですが時間短縮にて。 フレンチでは 「玉ネギ・ニンジン・セロリ」の3つを「ミルポワ=mirepoix」 と言って煮込みには欠かせない定番のお野菜になります。ちなみに基本は「玉ネギ:ニンジン:セロリ=3:2:1」が黄金比です。イタリアンでも「ソフリット=soffritto」というものがあり、この3つをみじん切りにして水分が飛ぶまでよく炒めたものがあります。こちらも見込み料理に使うもので香りとコクを引き出します。厳密に言うとイタリアでのソフリットは地域によって様々でフランスでの「ミルポワ」ほどシンプルではないかもしれません。またスペインやプエルトリコでも「ソフリト」なる物がありニンニクと玉ネギにトマトや唐辛子が入ったものでそれ自体が煮込み料理としてテーブルに乗るものも有るようです。いずれにしても香味野菜は大活躍ですね。 ・ニンニクとショウガは皮を剥いて「アッシェ(みじん切り)」に。ニンニクは芯を取り除きます。 ・ワインやお水なども、キッチンにスペースがあり大きめの計量カップやボウルなどがあれば、あらかじめ計量しておくことをオススメします。火を使った調理中に計量しなくても済みますのでスムーズです。ケチャップやソースもしかり。今回は工程をお見せするためにペースト3種の写真もお載せしますが、ケチャップ等と一緒にまとめておくと便利です。いちいちパッケージを開けることになりますので。 ・トッピングの野菜は基本的に有るものでも構いません。用意するとすれば「色味」に着目すると盛り付けが楽しめます。赤パプリカは味的にも色的にもオススメ。カボチャもオレンジが綺麗ですしカレーとの相性も良いです。意外と「映える」のがレンコンです。あの穴の開いたデザインは特徴的です。蓮根のきんぴらにしようと買ってきた物が冷蔵庫にあれば端を少々頂いちゃうか、またはその逆で。今回は使いませんでしたがお茄子さんも最高ですね。ジャガイモであれば事前に下茹でしておきましょう。いきなり生からソテーだと時間がかかります。何度か下茹でレシピを過去に載せてありますのでご確認くださいね。芽キャベツは生でOKです。すぐに火が入ります。 <作り方> 1.<紫キャベツのマリネ>を作る。 紫キャベツのマリネを仕込んで行きます。まず注意しなければいけないのは白い洋服。一瞬で色移りします。お着替えしてから仕込みましょう。作り方は超簡単。千切りにしてビネガーを和えるだけ。それではまずは千切りにして多めの塩を揉み込みます。15分ほど放置すると水分が出て来ます。ここで浄水を使って塩抜きします。浸かる程度にお水を張って軽く揉んでください。そしてちょこっとお味見を。ビネガーを加えると塩味が弱く感じますので「ちょっと効いてるかなぁ」くらいで良いでしょう。好みの塩加減で水を切り、しっかりと絞ります。色移りしますので布ではなく手絞りで良いでしょう。しっかり絞れたらビネガーを適量まぶしてよく混ぜます。味見をしながらお好みに。 2.<欧風カレー>を作る。 まずは牛スネ肉から。ステーキで食べる程度にしっかりと「アセゾネ」(塩コショウ)してください。 そして中火で温めたフライパンに大さじ1のサラダ油を入れ、フライパンを軽く回して馴染ませます。油の乗ってないフライパンにタンパク質が当たるとくっ付きます。くっ付くとそこから焦げます。焦げると苦味が出ます。ですからフライパンをよく温めて油をよく馴染ませること、当たり前ですけれどすごく大切なこと。上手にお肉を焼くポイントです。お肉を乗せるときに熱した油が跳ねないように気をつけてくださいね。スタートからテンション下がりませんように。意外と跳ねますのでご注意です。 お肉を乗せたらしばらく動かさずに放っておきます。フライパンを揺すってみて、全てのお肉が鍋肌から離れているようでしたら順番に返して行きましょう。 これくらいの量ですと返しているうちにトングが熱くなってきますので、ここで一度弱火に下げます。お肉の片面が焼ける頃にはフライパンは結構温度が上がっているのです。返したらなるべく全面をコンガリ狐色に焼きましょう。程よく焼けましたら圧力鍋の中に移して行きます。 3.「ミルポワ」も「ブーケガルニ」も投入します。 4.お肉を焼いて旨味の残っているフライパンに、赤ワインを入れ「デグラッセ」 します。※デグラッセ=鍋底に付いた焦げ・旨味を水、ワイン、ブイヨンなどで煮溶かすこと。 木ベラで底を掻きながら旨味をこそぎ取り、液体が2/3程になったら鍋に移します。この時に茶漉しを使って焦げなどは取り除きましょう。 後ほども液体を濾しますが、もしここで焦げが入るとスープに焦げ臭が残ります。面倒ですが丁寧に愛情のひと工夫を。分量のお水もフライパンに入れもう一度丁寧に鍋肌を洗いながら圧力鍋に移してください。トマトも入れて中火で沸かして行きます。 5.今回はフライパンを一度洗います。 ここから長期戦に入るからです。弱火でよく水分を飛ばしたフライパンに、飴色玉ネギ用のバターを落とします。そして「アッシェ」したニンニクとショウガを投入。そのまま弱火でじっくり炒めてください。 ニンニクがほんのり色づいてきたらスライスした玉ネギを全量放り込みます。 そして塩を少々ふります。浸透圧を利用して水分を外に出しやすくするのです。全体に塩とバターを回してあげてください。 さあ、覚悟はいいですか?ここからトータル40分の勝負です! ルーを使ったり、ペーストを使ったりしますが今回は 覚悟を決めて「オニオンと対峙」 してください。食べた時にわかります。最高のコクと香りが待ってます! この工程、誰かのために作っているのなら、 めっちゃ「愛情」を炒めている ようなものです。その人を思い浮かべながら、じっくり気持ちを込めて炒めましょう。 初めのうちは頻繁にかき混ぜなくても心配入りません。しばらくは酵素の力を引き出しながら、しんなりしてくるのを待ちます。次第に鍋底が水分で満たされて行きます。ここでもまだまだ大丈夫。時折かき混ぜながら水分を均一にしてください。一部が焦げるのを防ぐのと、玉ネギから均一に水分を出して行きます。フライパンを火にかけてからここまでで10分です。 6.隣の鍋が沸き始めたら注意が必要です。 ボコボコ沸かし切ってしまってアクが沈んでしまったら元も子もありません。沸き立つ前に弱火にしましょう。 大きなアクを取りつつ、小さなアクを丁寧に取って行きます。 一度沸き切ったところでケチャップとソース、そして「ペースト類の諸々」を加え、蓋をして圧力をかけて行きましょう。 ここで忘れてはならないのが 「ハウス ザ・カリー」には「ブイヨンペースト」が入っている ということ。通常は煮込みが完了した所で一度火を止めてルーを投入しますので、そこで初めて箱を開けることになるでしょう。がしかし素晴らしいことに「ハウス ザ・カリー」には「ブイヨンペースト」がついているのです。恐らく購入時に「少々高いな…」と思われたはず。ここにコストがかけられています。 今回は「リンゴとはハチミツ」に「マンゴーチャツネ」 を加えて、奥行きのあるフルーティな香りと甘みをプラスしますが、更に「追い鰹」ならぬ 「追いブイヨン」を投入 します。もちろん十分に美味しいのです。「ハウス ザ・カリー」だけでも十二分に美味しいのです。これはこのルーを使って頂ければ驚くほどに実感できるはずです。 あれこれルーを使ったあげく行き着いたのはここでした。 スパイシーなカレーにはなりません。限って「欧風カレー」向きなのです。煮込みの時に入れるこの「ブイヨンペースト」の効果は絶大です。贅沢なこのもう一つの「追いブイヨン」をお許しください。 もう一度湧いてきたら圧力鍋の蓋を閉めます。蒸気を満ちて圧力がかかったら、弱火にして30分です。恐らく飴色玉ネギと一緒くらいに仕上がるはずです。 7.さて「飴色玉ネギ」に戻ります。 ここから30分ほどです。かき混ぜているうちに、鍋底の水分が半量ほどになってきます。ここからは目が離せません。玉ネギから水分が出切ってしまうと一気に蒸発スピードが上がります。この蒸発とともに辛味成分も蒸発します。そしてショ糖の成分がさらに甘味を持つブドウ糖と果糖に分解されますので、玉ネギの甘さを最大限に引き出すことができるのです。 水分が完全に飛ぶと、鍋底に残った「糖質」が焦げ始めキャラメル化してきます。ここでお水を用意しつつ、勇気を持って中火にしてください。そしてかき混ぜ続けます。鍋肌が焦げてきたら大さじ2程の「水」を加え、焦げを「玉ネギ」に移して行きます。徐々に色づいてゆくのが分かるはずです。プリンのキャラメルやクレームブリュレの表面と同じで、「糖質を焦がす」ことにより香ばしい香りとコクが出てきます。ポイントは「シンプルに混ぜ続ける」こと。「焦げをコントロール」している作業なので、手が止まるとただの苦い焦げ付きになってしまうのです。 「キャラメリゼ…キャラメリゼ…」と唱えながら混ぜ続けてください。 何とも言えない香りが漂い、「玉ネギ」がどんどんペースト状になって行きます。 トータルで6~7回でしょうか。加えた水を蒸発させて行けばおのずと完成します。最後の水分を飛ばしたら火を止めます。 8.圧力鍋は30分たったら火を止め、圧力(蒸気)が抜けるのを待ちます。 蒸気弁が下がったら蓋を開け、大きめのザルボウルと「味噌汁用の濾しアミ」を使って、スープを「パッセ(=passer)」して行きます。フレンチでは「濾し器を使ってフォンや煮汁など液体を濾す作業」をそう呼びます。まず初めにザルボウルに鍋の中身を静かに空けます。お肉がトロトロになっていますので崩れないように優しく空けます。 バットを2枚用意して、それぞれに「お肉」と「ニンジン・セロリ・トマト」を捕獲します。 お肉を崩さないように気をつけます。トングやスプーンを上手く使ってください。次にザルの具材をお玉を使って絞ります。 仕上げ用の手鍋などを用意し、目の細かい「味噌濾し」を使ってさらに綺麗な「フォン」にします。ここまで来たら完成は間近です。 飴色玉ネギをフォンに加え、かき混ぜたら「ハウス ザ・カリー」と「SB ディナー・ビーフシチュー」を投入し弱火でゆっくり溶かしてください。 ルーが溶け切ったらお肉も投入します。 隣のコンロで適度なサイズのフライパンを用意し、お好みの野菜をバターソテーします。「欧風カレー」はひと煮立ちしたら小さじ1の「白トリュフオイル」を入れて完成です。 お皿にライスを盛り付け「欧風カレー」をかけます。はじめに液体をかけてからその後でお肉を盛り付けると、高さも出て「盛り映え」します。ライスの方にはソテーした野菜と紫キャベツのマリネを添えてください。出来たらグリーンが欲しいので、「イタパセ」や「バジル」または「セルフィーユ」を飾ります。カレーが右か左か、論争は解決しません。ライスが奥です。 ■家メシを「特別な夜の一皿」に変える1本 「バートン・ヴィンヤーズ2019 メタル ザ・ブラック シラーズ」 ボルドータイプのグラスにベリーと黒胡椒が香る「バートン・ヴィンヤーズ2019 メタル ザ・ブラック シラーズ」を注ぎ、スパイスとのマリアージュを。
2021年01月21日■「ブルギニヨンバター」と「エスカルゴ」 ブルギニヨンバターってご存知ですか? またの名を 「エスカルゴバター」 と言います。 ひと昔まえまでエスカルゴなんてビストロに行かないと食べられなかったのですが、最近では「サイゼリヤ」さんにもオンメニューしているのですね。カタツムリ料理がこんなにも一般化されているとは驚きです。流石「サイゼリヤ」さん。 エスカルゴ自体には特徴的な味はないのですが、正にその味を決めているのがあの緑色のバター 「ブルギニヨンバター」 なのです。パンにつけて食べると止まりません。たっぷりのパセリとニンニクが効いています。さらにはアーモンドなどナッツ類を使ったレシピも多いのでオーブンで焼き上げたり加熱することで、なんとも香しく、食欲をそそる香りが立ち昇ります。多くの方がどうやらこの香りを嗅ぐとエスカルゴを連想されるようです。 「カタツムリのバター焼き」なのですが、日本ではデンデンムシの歌が浮かぶくらいで、食用のイメージはないですよね。梅雨の時期に出てくるカタツムリが想像されると思いますが、本場のフランスでもカタツムリならなんでも食べるわけではないようです。ちゃんと 食用の「エスカルゴ」 がいるのですね。せっかくなのでちょこっと調べてみました。なかなか面白い情報が出てきたので簡単にまとめてみます。 エスカルゴまとめ 1.エスカルゴの歴史 実はかなり歴史ある食材でした。古代ローマ帝国時代から食べられていたそうで、飼育場でカタツムリを太らせてから食べるようにしていたとか。流石グルメなローマ人。さらには広く東へ中国でも漢方薬として存在していました。意外と栄養価が高い食材です。フランス発祥とばかり思っていました。 2.エスカルゴの種類 一般に食用とされるエスカルゴは大きく分けて4種類ありました。学術的には「らせん」を意味する「Helix=ヘリックス(エリックス)」が頭につけられます。この中でも本物のエスカルゴであり最高級なのがポマティア=ブルゴーニュ種だそうです。日本名はリンゴマイマイ。 ・ヘリックス・ポマティア(エスカルゴ・ド・ブルゴーニュ:40~55mm) ・ヘリックス・アスペルサ(エスカルゴ・プチ・グリ:28~35mm) ・ヘリックス・アスペルサ・マキシマ(エスカルゴ・グロ・グリ:40~45mm) ・ヘリックス・ルクラム(エスカルゴ・トルコ:35~40mm) 3.野生種と養殖の成功 昔は葡萄畑で天然のエスカルゴが取れたがようですが、今はブルゴーニュ種は絶滅寸前で、フランス国家保護指定動物になっているそうです。本国フランスでは7月に狩猟解禁になるそうですが、もっぱら養殖物が主流のだとか。大半が「プチ・グリ」や「グロ・グリ」種だそうです。両種が6ヶ月で成熟するのに対し「ブルゴーニュ」種は成熟に2年かかります。それでは高級品になるわけです。 しかも最高級品種ブルゴーニュの養殖に世界で初めて成功したのは、なんと日本でありました。鉄工所の社長さんが入れ込んだ研究により、成し遂げられたそうです。(株)三重エスカルゴ開発研究所さんが運営する「エスカルゴ牧場」と言うところで昭和62年から研究されていました。調べてみるもんですね。色々と勉強になります。 4.流通と処理法 日本では国内産以外ですと缶詰の輸入品がほとんど。大抵がプティ・グリ種。そしてアシャティーヌ種と呼ばれるアフリカマイマイも多いようですが、こちらはそもそもがエスカルゴではないそうです。なるほど。ブルゴーニュ種食べたこと無さそうだな。 処理法として、野生種に限っては腸内に有毒植物などが残っている可能性もあるため、10日前後絶食させるそうです。腸内の残留物を完全に排出させてから、セラーなど低温状態のところで仮死状態にしてから茹でて殻から外します。 ここからは私も処理経験あります。ヒョロっと飛び出した消化管を取り除いて、クールブイヨン(香味野菜とブーケガルニとスパイスを白ワインと水で煮込んだもので、臭み消しに使われます)で下茹でします。その後しっかりと水気を切り、氷でよく冷やし、消毒した殻に戻して「エスカルゴバター」を詰めて完成。オーダーが入ったらオーブンへ。 流通として最後にもう一点。エスカルゴの王様ブルゴーニュ種の白い卵は、なんと「ホワイトキャビア」としてチョウザメのキャビアと同じくらい高級品なのだとか。手間のかかる無菌養殖の上に成熟期間も2年と長く、その上に卵を採取してしまうわけですから、そりゃ生存率は下がります。コストが掛かってますね。 5.生態 雌雄同体であります。一体がメスであり、オスでもある。ただし単独で受精するわけではなく交尾して繁殖します。そして越冬、いわゆる冬眠します。普段は粘膜質の体に石灰質の物質を分泌して体表を固く覆うそうです。そしてこの冬眠直前がいちばん栄養を蓄えた時期であり、いちばん美味しい時期なのだとか。なるほど。 そしてなんと貝類でした! と言うことで、今回は 「エスカルゴバター」 を使ってお料理します。パセリ連投ですが、残ってしまいがちなパセリの大量消費術として 「ペルシヤード」 に続く第2弾。古巣の ブラッスリー「ヴァトゥ」のレシピ を家庭の分量にしてご紹介したいと思います。 ■佐藤の古巣「ブラッセリー・ヴァトゥ」のレシピ 無塩バター 2ポンド(900g) ニンニク 60g エシャロット 60g 塩 24g パセリのみじん切り 200g アーモンド 適量 レモン汁 適量 ペルノー 適量 ※ペルノーとは? ゴッホがこよなく愛した「アブサン」を1797年にペルノ氏が創製したが1915年にフランスで製造禁止になり、アブサン代替品として、第一次大戦後に発売したのがこのペルノ。アニスを主体として15種のハーブも配合。19世紀のハード・ドリンカーたちに愛された「アブサン」の後継者として世に送り出されたのが「ペルノー」です。 ■ソムリエ佐藤のご家庭版改良レシピ 有塩バター 200g ニンニク 13g レッドオニオン 35g 塩 1g パセリのみじん切り 25g アーモンド 6g レモン汁 大さじ1 スターアニス(八角) 2g(1かけ) ■古き良き思い出… ヴァトゥ に入って2週間ほどの頃、現場の料理長Yシェフよりももっと偉い、グループの総料理長の Eシェフ がやって来ました。初代料理長です。威圧感がすごい。目がぎょろぎょろしています。私を紹介してくれた恵比寿ギャマンの藤井シェフの先輩にあたる人で入社時に面接してくださいました。この日は「どうだ、頑張ってるか?」と私の様子をわざわざ見に来てくれたようです。 少々お酒がお好きな方でして、いつもよりちょっぴりテンションが高かったのを覚えています。この日も忙しくてなかなか仕込みが進みません。ランチが終わればすぐにディナーが始まります。 いつでも食事の取れるのがブラッスリーの定義 。これはいつもの流れ。 Eシェフが来たのはディナーのオーダーをこなしつつ、一段落し、なんとか仕込みに手をつけられた、そんな時間帯でした。覚えたての エスカルゴバター を仕込んでいると、Eシェフが覗き込みます。 「お、ちゃんとペルノー入れてるか?」 と。「はいレシピ通りにやっています!」と私。 「ところでギリシャにもペルノーに似た酒があるのを知ってるか?」 とEシェフ。「いえ知りません」と私。何となく嫌な流れ…。 持ってきました。 アルコール38度。 きた。 「ちょっと 味見 してみるか?」とEシェフ。 「はい…」と私。 ショットグラスくらいだろうと完全に油断していました。Eシェフはおもむろに手を伸ばし一つの容器を手に取ります。 「深型バットの0号」 です。その横には小さなプリンカップもあるのにです。 Eシェフ、完全に悪い顔になっています。目が楽しそうです。 ドボドボと「ウーゾ」が注がれて行きます。 プリンカップ1杯分の量はすでに遥か彼方です。「ウーゾ」は止まりません。通称 「弁当箱」 と呼ばれる深バット0号はまあまあ入ります。マックス650mlです。「ウーゾ」は1瓶700mlです。Eシェフは目だけでなく、もはや隠さず顔が笑ってます。歯が見えてます。 弁当箱に約7、8分目。 私の顔は完全にひきつりました。「多いな…」「相当に多いな…」 「ほれ」とEシェフ。 「ありがとう御座います…」と私。 手に取り容器の中身を見つめます。「多いな…」 そして一気に飲み干しました。 さて、「ウーゾ」とは、フランスには 「ペルノー」 がありますが、同じアニスのお酒でギリシャには 「ウーゾ」 という名のお酒があるのです。あれから決して忘れることはありません。 エスカルゴバター を作るたびに思い出していました。いまだにバーでペルノーを見るたびに思い出します。今なら完全にパワハラ100点満点です。時効ですけど。 「エスカルゴ」は輸入食材屋さんや通販でも手に入ります ので、ご興味のある方は是非お試しください。私も機会を作り 三重県にヘリックス・ポマティアを食べにいきたい と思っています。今回は 同じ貝類で手に入りやすい食材 に変えて調理して行きましょう。 こちらも今が旬の 「牡蠣」 と 「ホタテ」 を。野菜は 肉厚の「シイタケ」 とバターとの相性が良い 「ジャガイモ」 を使います。 ■牡蠣とホタテのブルギニヨンバター 調理時間 30分 1人分 723Kcal レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 2人分> 生カキ 6粒 ホワイトペッパー 適量 ホタテ(ベビー:ボイル) 6個 ジャガイモ(メークイン:大) 1個 シイタケ(生) 3個 シュレッドチーズ 適量(※写真には写っていません) EVオリーブ油 大さじ2 バター(有塩) 200g ニンニク(みじん切りにする) 13g 赤玉ネギ(みじん切りにする) 35g 塩 1g パセリ(みじん切りにする) 25g アーモンド 6g レモン汁 大さじ1 スターアニス(八角) 2g(1片) <下準備> ・「ジャガイモ」を水から茹でます。 初めは中火で沸騰したら弱火に落としコトコト茹でましょう。途中で竹串などを刺して「スッ」と真ん中まで刺さったら湯切りして皮を剥きます。水からトータルで20分くらいでしょうか。前もって「茹でジャガ」を仕込んでおくと時短になります。茹でている間にその他の仕込みを進められるので、 ジャガイモは1番先に下準備をするのがお勧め です。 ・「シイタケ」は石づきを落とし、さらに足は根本からカットしてください。 今回は傘の部分を使いますので、この美味しそうなお御足は他で使うとします。理由は「カキ」や「ホタテ」よりも食感が残るので、主役の貝類の存在を残したいからです。刻んでチャーハンに入れるもよし、スンドゥブチゲに入れてもよし、シンプルに味噌汁でもよし。結構良いお出汁が出ます。 ・「カキ」は500mlに10gの比率の塩水に浸し、ひだの間など優しくもみ洗いし汚れを落とします。 あまり水が汚れるようでしたら、同じ作業を繰り返します。カキがピカピカになりプリプリになってきます。ペーパータオルでよく水気を切ってください。程よく水気が切れたら軽くホワイトペッパーを振ります。塩水で洗ったことにより軽く下味が付いたのと、「ブルギニヨンバター」にしっかり塩味がありますのでここでお塩はふりません。 ・「ベビーホタテ」は貝ひも下に黒い汚れが付いています。 どうやら排泄物らし。ボイルホタテなので指でつまむと簡単に取れます。貝ひもが嫌いな方は取り除いても構いません。ただしホタテは貝柱ももちろん美味しいですが、この貝ひもに食感と旨味がありますので是非ご一緒に。 <作り方> 1. 「ジャガイモ」は縦に半分に切ります。 「オリーブ油」を引いたフライパンを中火にし断面から焼いて行きます。きつね色にこんがり色づいたら反対側も焼きましょう。片側は半円形なのでフライパンを少し傾けてフライパンの側面の立ち上がりを使うと良い色に焼きやすいです。 全体がほどよく焼けたらバットに取り出し、平らな面に「シュレッドチーズ」を乗せて160°のオーブントースターで5分焼きます。 2. 「ジャガイモ」を取り出したフライパンに大さじ1のオリーブ油を足して、火の入りの遅い「カキ」から焼いて行きましょう。「カキ」がコロっと膨らんできたら「ベビーホタテ」と「シイタケ」も投入します。「シイタケ」に火が入れば完成です。 3. <ブルギニヨンバター>は火を入れすぎるとせっかくのパセリの色と香りが飛んでしまいます。ミルクパンやソースパンでゆっくり溶かすのがベストですが、無ければ耐熱容器に入れて電子レンジへ。溶かしたバターと材料をフードプロセッサーに入れ、パセリの緑が全体にゆきわたるまで回し、保存容器に移します。 4. オーブントースターからチーズが焼けた「ジャガイモ」を取り出しお皿の真ん中に一文字に。その上に「カキ」と「ホタテ」を乗せてください。ほどよく前後にこぼれた具材が 「映え」 を演出してくれます。お皿の前を決めたらそれぞれの具材が見えるように盛り付けましょう。スプーンで<ブルギニヨンバター>を回しかけて完成です。 5. ワインの注がれたテーブルに運んで、アツアツのうちに。 500mlのウーゾを一気に飲みした私のその後は… 奥の個室で静かにメニューを考案中のYシェフを見つけ「ヨッちゃん、ヨッちゃん、こんなところで何してるの?」と仕事の邪魔をしていたそうな。 今ではペルノーのソーダ割りを好んで飲みますがストレートの一気飲みは危険です。あんな無茶は生涯に一度ですけれど。レストランのキッチンって怖いね(笑) ■家メシを「特別な夜の一皿」に変える1本 ブルギニヨンバター には ブルゴーニュのワイン で。 牡蠣は肉類と同じく グリコーゲンが豊富 なので温かいお料理にした場合は 爽やかな赤 でも良いかと思います。 鉄分の少ないピノ・ノワールなどでしたら魚介類とも比較的に合わせやすいです。 ただ 今回はバターが主役。相性の良いシャルドネ にて。 ほんのり樽の効いたシャルドネは乳製品との相性抜群 です。 お料理とワインと会話のマリアージュ。今夜もお楽しみくださいね。 飲み過ぎ注意です(笑)
2020年12月20日「焼き加減はいかがなさいますか?」 キュイソン(火の入れ具合)の話。 フレンチではお肉の焼き方でも呼び名が違います。英語圏では 「レア」 「ミディアム」 「ウェルダン」 となりますが、 フレンチでは 「bleu(ブル) 超レア」 「saignant(セニャン)レア」 「à point(ア・ポワン)ミディアム」 「bien cuit(ビアン・キュイ)ウェルダン」 と言います。 「saignant(セニャン)レア」はフランス語で「血液」を意味するsang(サン)の語源から来ています。「血の滴る」的な表現のようです。まさに レア の状態ですね。 「bleu(ブル)超レア」はフランス語の「青」の意味ですが、よく見ると英語の「blue」とはスペルが違います。とても似ているので間違えがちです。今日の話には全く関係ありませんが、前職のギャマングループが宮古島に「Grand Bleu Gamin(グラン・ブルー・ギャマン)」というラグジュアリーなプライベートヴィラを昨年に立ち上げましたので検索してみてください。完成前に何度か現地に行きましたが、とても素敵なロケーションです。都内の本店フレンチ「Au Gamin de Tokio(オー・ギャマン・ド・トキオ)」が宮古島で味わえる、とても贅沢な空間です。 「よく出来ました!」に喜ばないワケ さてさて、話を戻すと「bleu(ブル)」はなんの意味でしょうか。その状態の時に青く見えるとか見えないとか。そんな光景は見たことはありませんが。語源をたどると「雷」という意味があるそうで、一瞬で外側だけをカリッと焼き、中は生の状態で仕上げる、その焼き方がそう呼ばれたとか、呼ばれないとか。またまた料理における「定義の沼」ですね。正解のないロマンです。 私はsaignant(セニャン)くらいが好きなのですが、改めて文字を見ると表現として面白いのは英語でもフランス語でも「堅焼き」の表現です。英語であれば「well-done」なのですが「well-良く」と「do」の過去分詞系「done-完了」で表現されています。口語としては「ウェルダン!」って「よく出来ました!」的な褒め言葉でもありますが、こと、料理に関しては実はあまり褒められないのです。「行き過ぎた」や「焼きすぎ」的な表現として捉えられています。 フランス語では「bien-cuit(ビアン・キュイ)」となりますが、こちらも「bien」は「良く」で「cuit」は「焼けた」のこと。やはり「よく焼き」「焼きすぎ」的な表現でしょうか。そしてフレンチでもコックさんはあまり喜ばないケースが多いのです。なぜ喜ばないのか? 肉汁を肉の繊維の中に閉じ込める コックさんはそのお肉を「一番美味しく食べられる状態」に焼きたいのです。表面を香ばしく焼き、 しっかりと休ませ、内部で暴れ回っている肉汁を、もう一度お肉の繊維の中に閉じ込めたい のです。余すことなく肉汁を旨味に変え、みずみずしくジューシーな状態を味わってもらいたい。素材のポテンシャルを引き出す使命があるのです。 「ビアンキュイ」は調理時間が長いため脂質が完全に溶け落ちてしまいます。中心部の温度が65°以上になると血液中のタンパク質が凝固してしまい赤身もなくなります。もはや肉汁を感じることはありません。食感はパサつき旨味も弱くなります。 ですから、キッチンで見習中も練習で 1.お肉を焼きます。2.寝かします。3.切ります。4.そしてシェフのチェックが入ります。 その時点で赤身がなくなり中まで焼き過ぎてしまっていると「入っちゃてんじゃねーか!」と怒られるわけです。逆にここで肉汁を「ドバッ!」と出してしまったり、生焼けの断面を晒すことになると「寝かしが足りん!」とか「若いだろ!」と言われちゃいます。 ジュスト・キュイ!が最高の言葉 焼き過ぎはパサパサで旨味を変質させてしまい、若過ぎは生焼けでグニャグニャと噛みづらい。いずれも美味しくありません。若ければ「レア」ってわけではないところが面白いところなんですが、初めのうちは切らなきゃわからないので難しいところなのです。慣れてくると軽く押した時の弾力でわかるようになってくるのですが。 他には仔羊や鴨などに対して「saignant(セニャン)からà point(アポワン)」の帯域の火入れを「rose(ロゼ)」という表現を使ったりもします。しっとりとピンク色のセクシーな焼き加減。見た目も口当たりも色っぽいのです。火入れはいずれもこの辺がベストだなと思います。肉汁と繊維を存分に楽しめる「火入れ=cuit(キュイ)」 短縮系は「cuit(キュイ)」ですが、原型は「cuisson(キュイソン)」です。 そして「juste cuit!(ジュスト・キュイ)」という表現があります。 これはまさに「ジャストな火加減」を指し、申し分ない状態。この仕事は料理人にとって最高の使命であり、その言葉は最高の褒め言葉です。普段は厳しい料理長に言われたり、食通のお客様から言われたり。ちょっとドヤ顔でにやけてしまいます。最高に嬉しい瞬間。 さてさて「焼き加減はいかがなさいますか?」 今日は前回のコラムでご紹介した 「ペルシヤード」 を使ってお肉の香草パン粉焼を作ってみたいと思います。 ここまで散々焼き方をご紹介しておいて「なんだよ!ビーフステーキじゃないのかよ?!」ってお声もあちらこちらから聞こえてきますが、ステーキは焼くだけなので「これはこんな火入れです」などと切り口を見せまくっても説明的でなんですし、頭から尻尾までキュイソンの話では、書く方も読む方もきっと飽きてしまいますから。ステーキはまたいずれ「ガルニチュール編」や「盛り付けのポイント編」「ソース編」などでバチッと焼いて、サクッと切って断面を晒して行きたいと思います。 それと前回のペルシヤードがハンドブレンダーで「回しただけ」ですので、こちらもそのままでは「おい!回しただけかよ!」となってしまいますので、お料理に使っていかないとですしね。 豚ヒレ肉で「超簡単で見栄えのする料理」 今日はひとまず「豚ヒレ肉」を香草パン粉焼きに。レストランでよく見かける「仔羊肉の香草パン粉焼」も定番で美味しいのですが、仔羊はお肉に独特の香りがあるので好き嫌いもありそうですし、今回は割と価格も抑えめでスーパーでも手に入りやすい「豚ヒレ肉」を使います。 ご家庭では「ヒレカツ」や「ポークピカタ」などで使用するイメージはありますが、それ以外にはあまり使わないのではないでしょうか。下焼きして、香草パン粉を乗せて、オーブンで焼くだけの「超簡単で見栄えのする」お料理なので、 あなたの【簡単リッチ飯】にオンリスト していただければ、 新たな武器をゲット となるわけです。 付け合わせは、第一回で作りました 「ガルニチュール・ブルギニヨン」 にジャガイモをカリッと焼いたものを組み合わせてボリュームを出しました。ソースは香草パン粉焼きに定番の「ソース・ムータルド」を、と思いましたが古典フレンチのマスタードソースなので、そのまま作るとお子様にはちょっとパンチが強そうです。馴染みやすい 「ハニーマスタードソース」 にアレンジして合わせます。 それでは早速作っていきましょう。 ■豚ヒレの香草パン粉焼き ハニーマスタードソース 調理時間 35分(下準備15分、調理20分) レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 2人分> 豚ヒレ肉 250g 塩コショウ 適量 ディジョンマスタード 適量 ペルシヤード(香草パン粉) 適量 サラダ油 大さじ1 ジャガイモ(小) 4個 塩(ジャガイモをゆでる用) 水1Lに対して10g 玉ネギ(小:外側) 2/3個 マッシュルーム(大小合わせて) 8個 ベーコン(ブロック) 100g バター(有塩) 25g 塩コショウ 適量 ニンニク(みじん切り) 少々 ハチミツ 30g ディジョンマスタード 25g 白ワイン(または料理酒) 50g 水 50g 固形スープの素(コンソメ) 1個 バター(有塩) 25g (※)ペルシヤードの作り方はこちら↓をご参照ください。 【下準備】ガルニチュール・ブルギニヨン(付け合せ)とジャガイモ ・まずは小ジャガイモから。 茹でている間にその他の材料を仕込みましょう。「ご機嫌タッパー」に下茹でしたものがあると便利ですよ。その際はどの食材から仕込んでもよろしいかと思います。 新たに仕込む際は、皮付きのまま土を洗い落とし多めの水で茹で上げます。塩をしますがパスタの茹で湯くらいの濃度にします。お水1Lに対してお塩10gを。10分から15分ほどで茹で上がると思います。竹串を刺してみてスッと通ると中心まで茹で上がっています。 皮付きのまま茹でるメリットを過去の記事 「ブランダード風マカロニグラタン」 で解説していますので詳しくはそちらをご覧くださいね。 茹で上がったら少し冷めるのを待ち皮を剥きます。表面の水分が蒸発したくらいが目安です。茹でた直後は熱すぎて危険なのと、乾いた皮の方がパリッとして少し剥き易くなります。とはいえかなり熱いので火傷にはご注意くださいね。剥けた芋を半分にカットします。 ・玉ネギ。 いつもの佐藤の処理法と使用法です。今回も火の入り方、食感、見栄え、を考慮して、ソテーには外側を使います。変態ソムリエの玉ネギ処理法。中心部を除くと使用料は約2/3程でしょうか。片方を5等分くらいの「くし切り」にします。 ・続いてマッシュルーム。 大小様々ですが計8個ほど。石付きや土を取り除き、小さいものは1/2に大きなものは1/4にしてください。 ・ブロックベーコン を1cmの厚さでスライスすると1枚が約25gほどです。それを4枚ご用意ください。水分があると油が跳ねますのでペーパータオルなどで水気を切りましょう。そしてそれぞれを1cmの厚さのバトン状にカットします。1枚を4等分くらいのイメージでしょうか。 【下準備】豚ヒレの香草パン粉焼き ・豚ヒレ肉 はスライスではなく、なるべく一本物で太い物を選びましょう。さらに全体の太さが均一な状態が好ましいです。たとえばヒレカツにするのであれば、細かくポーションして軽く叩いてしまうので、多少は端が細くてもそれほど問題ないのですが、焼きの場合は太さの違いがキュイソンに影響します。一部がビアンキュイで一部がロゼ、とういうことになりかねません。それでは美味しいお肉の焼き方としてはイマイチです。 なるべく均一で太いものを選んでください。 「ジュスト・キュイ」への道ポイントその1 です。 焼き始める30分から1時間前には冷蔵庫から出し、常温に戻しておきましょう。 夏なら30分、冬なら1時間というところでしょうか。お肉の中心部まで常温に戻してあげることで「ジュスト・キュイ」が可能になります。綺麗な赤身を残せます。これ結構大事な ポイントその2 です。 ヒレ肉に関していえば、これは牛でも豚でも同じなのですが片方が太くて、片方が細くなっています。因みに牛ではそのヒレ肉を5分割して前から2番目の部位を「シャトーブリアン」と呼び、一体の牛肉の中で最良の部位としています。赤身でありながら程よく刺しが入り、さっぱりとしていてとにかく柔らかいお肉です。きっと皆さん大好きですよね?もちろん少量の希少部位なので良いお値段がするのですが。フランス語では「フィレ」、英語圏では「テンダーロイン」と言います。ステーキ屋さんで聞いたことがあるかもしれませんね。実は太い方が頭側で細い方がしっぽ側です。前から 「テート/シャトーブリアン/フィレ/トゥルヌド/フィレミニョン」 となります。骨盤の内側にある部位で一番運動しない筋肉なので赤身なのに柔らかいのですね。あぁシャトーブリアン食べたい…。 【作り方】ハニーマスタードソース 全ての材料を小鍋に入れ、撹拌しながら中火程度で一煮立ちさせます。コンソメとディジョンマスタードが溶けて混ざり合ったらひとまずOK。他の調理が完了し、盛り付けの直前にもう一度温め直して 「ブールモンテ」 したら完成です。 「ブールモンテ」とは? 「monter(モンテ)」とはフランス語で「乳化」のこと。ブール(beurre)はバターのこと。 すなわち バターで乳化させること をいいます。バターの油分とソースの水分が乳化し、バター内のカゼインタンパク質が熱で固まり濃度を出します。冷たいバターの方がゆっくり乳化しますので直前に冷蔵庫から出して。滑らかさと艶を出す効果もあります。またバターや生クリームなどは直前に合わせた方が柔らかいミルクの香りを豊かに感じられますので、このタイミングは美味しさのポイントです。 【作り方】豚ヒレの香草パン粉焼き 1. さあ、お肉を焼いていきますよ!フライパンを中火に掛けます。フライパンが温まるまでにお肉に下味をつけていきます。まずお肉の水分をしっかりと拭き取りましょう。常温に戻すために冷蔵庫から出したお肉は、温度差により汗をかいたり肉汁が出たりしています。「ドリップ」と呼ばれるこの肉汁は「アセゾネ」(塩コショウ)した下味をお肉に染み込ませるバリアになってしまったり、焼いた時に生臭さを残してしまったり、焼き油を跳ねさせたり、とマイナス要素が多いです。 ペーパータオルなどでしっかり水分を拭き取り、「気持ち多めにアセゾネ」(塩コショウで下味) してください。 2. フライパンからほのかに煙が出ていたら準備完了。サラダ油を引きます。少し多いかな?というくらいのオイルがベストです。常温に戻したとはいえ、お肉はフライパンの温度を下げてしまいます。その時に多めの油があるからこそ、お肉を乗せた瞬間の温度を下げることなく焼き上げることができるのです。 多めの油 は ポイントその3 です。 3. 油を引いたフライパンにお肉をそっと乗せます。油が多めなのでくれぐれも跳ねないようにそっとです。早速お肉の焼けるいい音が聞こえてきます。じっと動かさずに1分待ちます。おそらく香ばしい香りが立ち始めたことでしょう。1分後に反転させてください。どうですか?ほどよくキツネ色になっているでしょうか?裏面も1分焼いてください。 4. 両面焼いたところでお肉が丸く円柱状に膨らんできましたか?焼き目のついていない箇所を下にして満遍なく焼き色をつけましょう。全面がこんがり焼けたところで「リソレ」(肉の表面に焼き色を付けること)完了です。 アセゾネで使ったバットに戻します。 5. ここで「ペルシヤード」(香草パン粉)の接着剤としてディジョンマスタードを塗ります。 まんべんなく塗ります。 そして「ペルシヤード」(香草パン粉)をまぶして160°のオーブンへ。 ここまでが約5分。ここから10分で完成です。 その間に「ガルニチュール」を作りましょう。 【作り方】ガルニチュール・ブルギニヨンとジャガイモ 1. お肉を焼いたフライパンをそのまま使います。鍋底の旨味は生かし、洗い物は減らします。お肉がオーブンに入っている10分間で仕上げます。まずベーコンを弱火でじっくり炒めて脂を出して行きます。 2. このベーコンの脂で玉ネギをほぐしながらソテーします。 3. 玉ネギがしんなりして透き通ってきたらマッシュルーム投入。最後に残った旨味たっぷりの脂をもれなく吸わせます。 4. ひとまずここまでで「ガルニチュール・ブルギニヨン」完成です。ジャガイモをソテーした後でもう一度フライパンで混ぜますので、マッシュルームに火が入っていないくらいで良いでしょう。材料を乗せていたバットにあげてください。 この辺りで約10分経ったでしょうか。 オーブントースターの扉を開けてペルシヤードの焼き加減を観察しつつ、庫内の熱を一旦放出させほんのり暖かい環境を作ります。ここから 大切な「お寝かしタイム」 です。お肉は取り出さずもう一度扉を閉めて休ませます。 肉汁を寝かしお肉に閉じ込めます。 大切な ポイントその4 です。 5. 同じフライパンにバターを落とし、ジャガイモの断面を下にして並べます。 バターが溶けて泡立ってきたら、フライパンをゆすり満遍なくバターを回します。焼くこと1分。裏返してみてコンガリ色づいていたら反対の面も1分ほど焼いてください。 6. ジャガイモが焼けたところで、ブルギニヨン投入。 ほどよく絡めたら、ニンニクのみじん切りをほんの少し加えて全体に馴染ませ完成。 そろそろお肉が焼き上がるので盛り付けて行きましょう。 7. ガルニチュールは高く盛り付けます。 続いて「モンテ」したソースをお皿全体に引きます。お肉を取り出し4等分にカットします。さあ、劇的な瞬間です!キュイソンはどうでしょう?しっとりとロゼに仕上がっていますか?セクシーな断面を手前にしてガルニチュールの上に盛り付けて完成です。 本日はブルゴーニュのピノ・ノワールとともにあなたのお料理がその人の心を上手に焦がしますように。 ■「食べる」ということ。 六本木のヴァトゥ時代に、時々ビアンキュイのオーダーが入るとシェフがよく舌打ちをしていました。「アセゾネしてフライヤーに入れちまえっ!」的な。まあどんな焼き方でも心を込めて美味しく焼かなければいけないのですが。「堅焼きなら焼き切ればいいのだろ!」という意味なのでしょう。僕らにはそんな態度を示しつつ、でもやっぱりシェフの手元はbleuでもbien-cuitでも丁寧に焼いていました。僕らはその姿勢を見習ってきた。 豚を食べない人、動物性のものは食べない人、宗教や人種、年齢によっても、また主義においても、食に対する考え方や好みは人それぞれです。アレルギーだってある。 「食べる」とは栄養を取るためだけの行為ではなくレストランとは食事をするためだけの場所ではない。 どちらも心を満たす行為であり場所なのだと思う。キッチンからの景色も、ホールからの景色もそれを教えてくれた。 ブロックス時代には本当に多くの妊婦さんにお会いした。大抵の妊婦さんは「ナマモノとお肉もよく焼いてください」とご相談を受ける。赤いのは心配だと。 その時に決まってお話していたことは「お肉の火入れですが、赤いけれど生ではなく、しっかりと火入れして休ませてあります。せっかくのお食事です。硬いお肉ではなく、安全で最高の焼き加減で召し上がりませんか?」と。 レストランでのひと時も ご家庭でのひと時も 心のキュイソンがジュストであります様に。 ■家メシを「特別な夜の一皿」に変える1本 2018年 ドメーヌ オドゥール=コカール ブルゴーニュ コート・ドール ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーに挟まれる小さな村「モレ・サン・ドニ」の葡萄100%で造られるワインです。グラン・クリュ(特級畑)とプルミエ・クリュ(一級畑)が小さな栽培面積の中に所狭しと存在しています。その中でグランクリュ「クロ・ド・ラ・ロッシュ」の真向かいにドメーヌを構える生産者が「オドゥール=コカール」です。近年高騰しているブルゴーニュのピノ・ノワールのなかで この味わいでこの価格というのは大変驚き です。 正にそのテイストは「ジュヴレ・シャンベルタンの力強さ」と「シャンボール・ミュジニーのエレガンス」を兼ね備えているという表現そのままに、しっかりとした味わいを感じられます。低価格帯ですとどうしても酸っぱい印象のものが多いブルゴーニュの赤ですが、このワインはスミレのような優しさとイチゴのようなフルーティさを振り撒きながら、程よいタンニンがしっかりと1本の骨格を見せてくれます。牛肉ほどは力強くない豚ヒレ肉の肉汁とも、香草パン粉の爽やかなハーブ感ともとてもよく合うでしょう。 またソースに使用した 「ディジョン・マスタード」 は、このモレ・サン・ドニの畑からジュヴレ・シャンベルタンの畑を挟んだほんのわずか先にあるディジョン市の名産品です。地域のものには地域のワインがよく合います。なかなかジュヴレ・シャンベルタンを普段飲みはできませんが、月に一度、ちょっと贅沢して4000円前後で楽しめる最高のブルゴーニュを今回はご紹介させて頂きました。 大きめのブルゴーニュグラスでお楽しみ頂けたらと思います。 どっしり系ではない柔らかい ブルゴーニュのピノ・ノワール が優しい夜を包んでくれます。
2020年12月05日皆様こんにちは!ソムリエ佐藤尊紀です。 レストランのアイデアと一工夫を使って「お家ゴハン」をもっと楽しくしたい。いつでも手に入る食材と、ちょっとだけリッチなワイン。食べたあの人の感動も、作る私の喜びも今夜のテーブルが愛情いっぱいの笑顔であふれますように。 道を歩いてるとどこかから良い香りが…「あぁ、パンの焼ける美味しそうな匂いがする…」と思いつつ角を曲がったらパン屋さんがあった。これ買ってしまうパターンですね。夕方の住宅街に優しく漂うカレーの香り。「どこかで今夜はカレーなのだな。」と思いつつ最近ご無沙汰な母親のカレーが食べたくなったり。「なめらかプリン」なんて言葉だけで舌の上をすべり落ちるバニラビーンズたっぷりのカスタードを想像したら居ても立ってもいられなくなってしまう。 皆様そんな経験はありませんか? 「映え」の日常化 今や 「映え」 という言葉も、もはや当たり前になってきてコロナといえども料理の写真がSNSに上がらなかった日はない時代。高画質で高性能なスマホを誰しもが持っていて「シズル感」や「映え」が日常化されています。 「視覚から美味しそうが伝わる」からこそ見る側も気になって「そこどこ?」だったり「それなに?」につながって宣伝だったり、見栄だったり、記録だったり、色んな要素はあるけれど、視覚効果は誰もが直感的にインパクトを感じるのですね。 「最近なんだか盛り付けすごくない?」は作り出せる! 家庭においても「美味しそうに見せること」いわゆる「映え」って大事なのではと思うわけです。 料理が運ばれてきて、一番最初に伝わる情報も「画像」なのではないかと。「最近なんだか盛り付けすごくない?」は作り出せるのです。 その一皿が視覚に入った時、その目は瞬時に美味しそうを捉えていて続けざまに良い香りが鼻へ届き、胃袋が刺激される。と同時に副交感神経は口内に唾液を溢れさせその手はもはやナイフとフォークを握りしめている。手から伝わる食材の硬さやなめらかさに口は待ちきれなさを隠しきれず気付かぬうちに半開きの状態だ。目はずっと料理を追い続けている。 運ばれた一口を堪能する。 ここまでの情報がすべて間違いでないことを確認しつつ歯応えが振動となり音は耳と頭蓋骨を刺激する。咀嚼を繰り返すたびにその味は感動に変わり悶絶により目はつぶられている。喉もその感動を待ちわびていて少しずつ現実に戻った意識が飲み込みたくない葛藤を胃袋へと押し込む。ゆっくりと目を開きながら肺からはため息が漏れ心臓はほんの少し脈をあげる。 「そんなこと、そうそうあるかいな!」なんですけれどね。 ため息が最大のコメント 感覚的な「美味しいの方程式」は、こんな感じかと。瞬間的にこういうことが脳内を駆け巡っているのではと思うのです。言葉はきっとその後我に返った時の意識が言わせているはずで本当に美味しい時には言葉にする必要はない気がします。 レストランではお客様のため息が最大のコメントであり、目をつぶって静かにうなずいているお客様を見ると心から嬉しくなります。レストランとして最高の瞬間。 「旨そうじゃん!」につながる「パセリ」の視覚効果と使い切り方 あれあれ、話がだいぶ脱線しましたが、今日は「パセリ」の話。 ちょこっと振りかかっている「パセリ」の視覚効果 はほんのりオシャレ感を演出し「旨そうじゃん!」につながると思うのです。できたらお家ゴハンでも振りかけて欲しい。例えばパスタでもステーキでも意外と雰囲気出るんですよね。 でもでも、レシピサイトで「ただただパセリを振ってください」では怒られちゃいますので、実はみんなが感じている 「パセリって残っちゃうのよねぇ」 にお答えして 「パセリの下処理」 と 「パセリを使い切るレシピ」 をご紹介したいと思います。まずは下処理から。 ■シャキシャキ感が違う!レストラン式「パセリの下処理」 ポイントは 「洗う」「戻す」 です。葉物のお野菜は一応洗浄して出荷されますが、ひだの間などに意外とホコリが付いています。時には虫がついていることも。ですから当たり前ですが 洗い直します 。 と同時に収穫されてから時間も経っており、水分が抜けてしんなりしています。サラダ用の生食お野菜もですが、炒め物に使うホウレン草や小松菜、モヤシなどもしばらく冷水に漬けてあげるとシャキシャキ感が全然違います。 お家にあるボールでも構いませんし、前回ご紹介した 「ご機嫌タッパー」 の深型大を使うと調理スペースもすっきりと使えますので、改めてオススメです。 レストランでは右のようなステンレスの「角ポット」なるものを使います。 私も以前自宅用に購入しましたが、今ではこの 「IKEAのタッパー」 が重宝しています。 何しろ保存にも下処理にも確約して、重ねて収納できますから。茎を上にして出来たら「浄水」を。 葉が水分を吸って膨らんできますので、お水は多めに張ってください。 15分ほどで戻りますので、その間に諸々の計量をしちゃってくださいね。戻ったかどうかは触るとわかります。初めは柔らかくしんなりしていたお野菜がパリッと硬く生き生きしているはずです。 次に 水切りと保存 です。指先を使って葉の根本でちぎり、茎と葉をわけて行きます。 ちぎった葉のほうは「サラダドライヤー」にどんどん入れてゆきます。 ちぎり終わったら茎はペーパータオルで包んでからラップをかけ保存します。「ブーケガルニ」として煮込みに使いましょう。 カレーを作る時にローリエとこの茎だけでも一味変わります。 葉の部分はよく水気を切ってから 「ご機嫌タッパー」 の深型小に。こちらも 下に「ペーパータオル」を敷いてください。 ペーパーがしっかり水分を吸収してくれるので腐りにくく、また適度な保湿もしてくれるので鮮度が長持ちします。他のお野菜でも是非。 レストランと家庭の違いはこの辺の保存方法かと思います。 「整理のつけやすい容器とペーパー」これポイントです。 それではレシピに移ります。 お料理に振りかける用に少量をみじん切りにした後、残ってしまいがちな量を、完全に使い切る分量にまとめてみました。 ■パセリを使い切る【persillade-ペルシヤード】の作り方 レシピ制作:佐藤 尊紀 Persil-ペルスィ(ペルシ) はフランス語で パセリ のこと。 刻んだパセリ と ニンニクのみじん切り を パン粉 と 混ぜ合わせたもの で、肉や魚にまぶし「香草パン粉焼き」として使います。よく見かけるのは仔羊の骨付きロース肉で調理されたものでしょうか。 魚介との相性も良い ので、サーモンや青魚、牡蠣など貝類にまぶして焼いても、爽やかなパセリの香りが 生臭さをさっぱり させてくれます。グラタンやドリアにまぶしてアレンジしても良いかと思います。色々と試してみてください。 <材料 作りやすい量> パセリ(葉の部分) 30g ニンニク 9g パン粉 40g EVオリーブ油 40g <作り方> 1. 下処理をしたパセリ、その他を計量して、フードプロセッサーに掛ける。 計量もほぼ1分、ミキシングもほぼ1分であっという間に完成です。 コツ・ポイント 包丁でみじん切りにしても良いですが、1束をひたすらみじん切りにするのは結構たいへん。包丁もまな板も要りませんので大きな洗い物もなく大変楽です。最近はこのスティックタイプの「ハンドブレンダー」がコンパクトで大好き。付属のパーツで超絶なめらかなポタージュも作れますので、かなりオススメです。 プロのレシピもお家ゴハンのアクセントですが道具も揃えてゆきますとグンと調理の幅が広がります。 「そんなの持ってないわよ!」と賛否両論ありそうですが今回はあえてそこに触れて行こうかと。 家庭料理に驚くほどの変化が出ます ので。 ちょっと良いワインほどのお値段で手に入るので今まで気になっていた方もそうでない方も是非ご検討、活用してみてくださいね。
2020年11月15日皆様こんにちは!ソムリエ佐藤尊紀です。 誰もが食べてる、作ってる、いつでも手に入る食材とリーズナブルでみんなに喜ばれるワイン。今日のあの人の感動も、そして私の満足も今夜のテーブルで「無条件の喜び」を分かち合えたら。 愛情たっぷりのお料理には手間も時間もかかりますよね。もちろんそれが 「愛の隠し味」 になるので手は抜けない訳ですが。 ただ、毎回すべてを1から10までやるとなるとやっぱり大変です。 早朝のお弁当作りから始まり、朝食の準備へ、もちろん自分の身支度だってあります。起きない誰かを起こさなくっちゃいけない人もいるでしょう。そういう人は大体起きない人。朝はホントに大忙し。 毎日のお夕飯と、休日には昼食も作るかもしれません。いくらお料理好きでも、楽しい調理だけじゃない。洗い物や後片付けだってあります。毎日の献立を考えるのも大変…。これはもう レシピサイト大活躍 です! 何度も時計を見ながらやっと仕事を終わらせ、お家の誰かを想いつつ「お腹を空かせてるよなぁ」と急いで帰ります。これは愛です。でも帰宅した途端に「お帰りなさい!」より先に 「お腹すいた!」 と言われてしまうとちょっぴり寂しくなっちゃいます。 でもね「お腹すいた人」大好きなんです。 その言葉にも、その響きにも、極端に反応してしまう。自分の 「存在意義」と「闘争心」 がフツフツ俄然ヤル気が出ちゃいます。これはもう 「お料理好きの宿命」なのです。「お腹すいた人、超大好き!」 ということで 「どうにか早く食べさせたい!」 って時に、食材の下処理から始めていたら大変な訳です。でもわかってます、わかってますよ。お料理好きのあなたが、いとも簡単に準備出来てしまうのはわかってます。 でもその時に「仕込み」が有るか無いかで違うんです。 途中で「まだー?」って言われたくないんです。 二人の特別な夜の一皿も、みんなでワイワイパーティーの時も、いつもの家族のご飯でも、 「仕込み」はお料理上手さんを証明する大切な段取り なのです。 これはレストランでも同じなんです。お客様がご来店後の営業中「あれがない!これがない!」なんてことになったら、そりゃお料理は出ませんよね。それは誰もが見たくない光景です。恐怖でしかない。そうならない様に、いつでも 満席の営業に備え、各ポジションがしっかりと準備をする 事でスマートにお料理が出来上がります。 お客様に最大限のオモテナシが出来る様に、キッチンに限らずホールもあれこれ準備をし、皆で情報を共有し 「喜ばせる為の工夫」 をみんなで考えます。皆で同じ方向を向く。大切なのはその 「想い」と「準備」 です。 フレンチでは 「mis en place=ミ・ザン・プラス」 って言います。何となくカッコいい響き。 「準備、段取り、構築」 という意味です。ホールのテーブルセッティングもそう呼ばれます。日本語の「仕込み」ってちょっとお硬くて義務的仕事感が満載。漢字パワーかw。 さあ、今日はそんな「仕込み」についてです。 それでは早速「便利な道具」とともに進めて行きましょう!ポイントは 「我が家にあった仕込み」 です。 お料理を作る理由はきっと人それぞれですよね。家族構成も違えば、好きなお料理のジャンルだって違います。 記念日ディナーなのか?大人数でのパーティーなのか?規模もシチュエーションも様々で す。だから上手に見極めて、「仕込み過ぎない」こと。料理の基本は「食材を大事にする」ですから「材料をダメにしてしまった」は本末転倒です。 スピードアップをして 「新たな感動」と「私的時間に余裕を作る」ことが目的です 。その為のアイデアとそれを実現させる為の段取り。そしてその為の「道具」なのです。 「美味しかった!」の満足感は、味だけでは作れません。 「提供スピード」も大切なポイント。「えっ!?もうできちゃったの!?」が感動を生みます。 お腹が空いているとイライラモードになりがち。そんな時に思いがけないスピードで「できたよー!」なんて声がかかったら?「えっ?!もう出来たの、早くない?!」と思いつつ、心もお腹も喜ぶはず。「おかえりー」も言えないくらいにお腹を空かせた人は、きっと笑顔です。何よりもモリモリ食べてくれたら、料理人の疲れも吹き飛びますよね。 「食べてくれる人が居る幸せ!」 さあここからは 【IKEAとタッパーと私】 で進めて参ります。 「ご機嫌タッパー」を使いこなして驚きのスピードアップを! あっと言う間に「お料理完成」で好感度も上げちゃいます! 参考価格:IKEA公式サイトネット価格 ¥699(IKEA店頭価格も同じ)※2020年10月現在 【スペック】 電子レンジ対応(耐熱温度100℃)冷凍庫でも使用できます。食器洗い乾燥機対応。 【セット内容】 小さい正方形(9×9×4cm、150ml、4個) 小さい長方形(12×8×4cm、150ml、3個) 中型正方形(12×12×4cm、300ml、2個) 大型正方形(14×14×6cm、600ml、2個) 深型小(12×12×14cm、1L、2個) 深型大(14×14×16cm、1.6L、2個) 長方形特大(23×16×8cm、1.8L、2個) 我が家こちら 3セット あります。 冷蔵庫の中がめちゃめちゃ片付きます。 電子レンジ で使いまくってますがほぼ問題ありません。何よりこの商品が ロングラン 。 他のメーカーや、100円ショップでも良いものありますが、モデルチェンジや販売終了で、家庭や店舗の在庫タッパーがサイズ、デザイン、共にバラバラになります。重ならない、まとまらない、見た目も悪い。 でもこのIKEAの 「ご機嫌タッパー」 はいつ行っても、いつも売っていて、いつものアイテムで安心です。1セットじゃ足りず、絶対にリピートしちゃいます。 めちゃめちゃオススメ! 小さい正方形(9×9×4cm、150ml、4個) 我が家では 「米専用」 に使用しています。炊き上がりのお米をすぐにパッキングして、 冷まさずに冷凍庫へ 。水分が蒸発する前に冷凍することで、 温めた時に瑞々しいご飯 になります。できたら炊飯は 土鍋 にて。炊き込みご飯も時々やります。 大きめのザルボウルにスケールで計量します。計量カップはアバウトで誤差が出ますので。今回は 500gを炊飯 。 お水もしっかり計量 します。 1.1倍 を計量。炊き上げる土鍋かジャーの内釜を乗せ 550gのお水 を。 次に お米を研ぎます 。 あくまで「洗う」ではなく 「研ぎ」 ます。ザルにこすらせる様にして研ぎます。日本酒の精米歩合と同じく、 研ぐことで炊き上がりの「香り」が変わってきます 。そして パンチングのザルがオススメ 。目が荒くよく研げることと、穴から割れたお米が抜け落ちるので 炊き上がりに粒が揃いやすい です。 そして出来たら 冷蔵庫にて最低30分の給水 を。 冷たい状態から炊くことでゆっくり火が入り、ふっくら炊ける のだとか。そしてやはり「土鍋」がオススメ。同じお米でも炊き上がりが劇的に違います!香り高く、ピンと立ち上がったお米が、何よりも甘い。 ホントに甘い 。 炊き方は簡単。30分給水したお米を中火強にかけます。土鍋の底辺を炙る程度です。側面まで火が覆ってしまうと強過ぎです。約5分ほどで沸いてきます。 蓋の穴から蒸気が真っ直ぐ出てきたら3分弱火 に。その後 火を止め10分蒸らして完成 。 トータル15分~20分 で美味しく炊き上がります。こんなに早くて美味しいなんて ホントに土鍋最高 ですよ。 さて 「パッキング」 。 お米は「かき混ぜずに」タッパーへ 。お米の「おネバ」ごと保存します。そして温かいまま冷凍庫へ。急速冷凍室があればそちらがベストです。アルミのバットに乗せますとより早く凍ります。近くに溶けそうなものがない様にご配慮くださいね。 小さい長方形(12×8×4cm、150ml、3個) こちらをお米に使わない理由は、レンジで チンした時に正方形の方が早く均等に温められる からです。こちらは万能な小分け物として非常に便利です。「タラコ」や「昆布」、「紅生姜」など市販のパックから移し替えておくだけで使うたびに一々ラップを外したり掛けたりせずに済みますので、手間が省けます。パセリのみじん切り、ディル、タイムなどの 少量のハーブの保存にもちょうど良いサイズ です。 中型正方形(12×12×4cm、300ml、2個) ずばり 「大葉」にジャストサイズ です。大抵のスーパーでは自分で袋をもぎり、一束二束を購入するスタイルかと。 つぶさず長期保存する方法 は 「濡らしたペーパータオルとケース」 です。私はそこに 「ミョウガ」 も入れちゃってます。適度な水分でしばらく瑞々しさが保てますのでオススメ。そして最近は 「ショウガ」 と 「ニンニク」 もこちらでした。 また初回にレシピをご紹介した 「ブフ・ブルギニヨン」 や 「クリームシチュー」 などの ソース類 を、味噌濾しなどで 具材を濾し、一枚ラップを敷いたこちらのタッパーに入れて冷凍保存 しておきますと、 オムライスやフライ物のソース としてケチャップ以外のバリエーションに使えたりしますので役立ちます。 大型正方形(14×14×6cm、600ml、2個) こちらは 通年的高使用頻度なのが「カレー」 です。 ダントツにカレー です。 解凍して2人分の量にちょうど良いから がその理由。要は 「お米にかける系」にちょうど良いサイズ です。 「ボロネーゼ」 などにも向いています。 たくさん作って微妙に余る煮込み系にベスト かと。保存の際は必ず ラップを敷いて ください。冷めて蒸気が抜けたら蓋につかない様に、 食材の上部も覆います 。カレーなどは匂いが移りやすいのと温めた時に着色してしまいます。こちら経験談。 また野菜室に 「小松菜の茎」 と 「プチトマト&バジル」「玉ネギの中心部」 がいました。 「小松菜」と「ホウレン草」は、いつも茎と葉を分けて泥抜き しています。 「ホウレン草」 はおひたしやソテーなど、 全部一緒に調理しても良い のですが、 小松菜 は食感の差が大きいので 使い分けて います。中華系の炒め物を作る時などに 茎の部分を入れると、しっかり炒めてもシャキシャキ感が残る のでかなりオススメ。 逆に 葉の部分は炒め物には向きません ので、ソテーやシチュー、トマト煮込みなどに 香りと色合いのアクセント に使っています。実は 根っこの部分も半割りにして泥抜きし、味噌汁などに使います 。葉野菜の独特の香りが強く出てとても美味しいです。掃除の手間はかかりますが、 「なるべく捨てない」 方法を。 「玉ネギの中心部」は変態ソムリエ 佐藤の変態処理法 です。前回の 「白トリュフ親子丼」 でもご紹介しましたが、 くし切り部分は以下に記入の深型大にどっさり 。そして 芯の部分はこちらにまとめて います。 すり下ろして「唐揚げ」 に漬け込んだり、 みじん切り に使ったり、繊維が細かく柔らかいので オニスラにも 使います。 外側と違ってバラけにくい ので、「串カツ」や「ポトフ」にも向いています。私、このサイズで使いたい時があるんです。 深型小(12×12×14cm、1L、2個) 現在の我が家にて使用状況を調査してみたところ、 「冷凍ボイルあさり」 と 「とろけるチース」 が 冷凍庫 にて保存されておりました。 とろけるチーズ はしばらく使わないで冷蔵庫に眠らせておくと、 すぐにカビが生えます 。冷凍庫がオススメです。 冷蔵庫 には脂を掃除した 「鶏モモ肉」 と 「ゆで卵」 が、 野菜室 で 「アーリーレッド(赤玉葱)のオニスラ」 が入っております。 ゆで卵は沸騰したお湯に7分 、その後に 氷水で冷やします 。大体まとめて 10個 で仕込みます。そのまま食べてよし、 「おでん」 や 「味玉」 にしてもよし、 サラダ にも使えます。焼いたベーコンの上に半割りにして乗せ、 白トリュフオイル と粉チーズ、たっぷりのブラックペッパーを掛けたら簡単ワインのおつまみ 「ビスマルク風」 にもなっちゃいます。刻んでマヨネーズと混ぜれば 「卵サンド」 に、または 「タルタルソース」 にも。ゆで卵はあると超便利。 オニスラ は用意しておくと 「カルパッチョ」 や 「鰹のタタキ」 、実は 納豆にも合います し 「タルタルソース」 にも刻んですぐに使えます。 アーリーレッド を使う理由は 辛味が少なく、少しの水さらしや塩もみですぐに甘くなる 為です。少し厚切りでシャキシャキ食感が残せるので大好きです。あと 「ピザトースト」 にも使っていますね。 深型大(14×14×16cm、1.6L、2個) 玉ネギの外側 、くし切り状態をたっぷり保存しています。 「野菜炒め」 にも 「カレー」 にも、 「牛丼」 にも、 切ってあればすぐにそのまま使えます 。野菜を切らずに作れる「野菜炒め」はめちゃめちゃ スピーディー に完成しますよ! あとは1.6Lと容量があるので「おでん」や「豚汁」など 汁物の作り置き や、 「茹でたジャガイモ」 を大量に保存しておくことで、煮込みの最後にポトンと落とせたり、「ジャーマンポテト」にしたりと、付け合わせに 立体感 と 食べ応え を与えてくれます。毎回茹でていたら大変ですから。 長方形特大(23×16×8cm、1.8L、2個) 最後の特大タッパー。これは 「サラダ系葉物」がベスト です。根っこごと冷水で戻した パクチー を保存したり、 サニーレタス と トレヴィス を一口大にちぎり戻した物、または 玉レタス を1/4にカットし、冷たいお水に15分ほど浸けて、サラダドライヤーでしっかり水を切り保存するなど。 わりとかさばり、でもふんわり保存したい物 。そんな物に向くかもしてません。仕込んでおけばさっと サラダ が出来ちゃいます。 例えば、 お皿に1/4のままの玉レタスを乗せ、好きなドレッシングをかけます 。脂の多い生ハムを乗せたらパプリカパウダーにパセリのみじん切りをたっぷりと。ナイフとフォークで簡単サラダを刻みながら 白ワイン と一緒に。とかですね。 ※食材の鮮度維持と長期保存のポイント。キノコ類以外のお野菜は冷たいお水に浸けることで、何でもシャキッとピンピンしてきます。炒め物に使う物でもしっかりと戻すことで美味しさは増します。もしも、しんなりしたお野菜に出会ったら、しばらく冷たいお水につけてあげてください。小さなハーブでも、大きな葉野菜でもきっと蘇ります。それは見た目も味も。 そして惜しまずにペーパータオルを活用してください。これはしっかりと水切りするためと、その後に保湿をするためです。そしてタッパーで蓋が閉まって見えにくい分、アイテムが増えてきたらどの食材が弱り出してきたか、愛を持って見つけてあげてください。食材は植物でも動物でも大切な命です。その命を無駄にしない様にちゃんと食べてあげましょう。 愛する人へのお料理は、もちろんレシピも大事。だって「美味しいよ」って言いてもらいたいから。でも 食材を愛してあげる事、そしてタイミングよく出す事 、これも 「美味しい」を増幅させる要素 なんです。もしもお家で、生き生きした食材が、コースの様なタイミングで美味しくなって出てきたら、 思いがけない感動 が待っているかも。 食べられるって幸せ。食べてくれるって本当に幸せ。料理好きで良かった。 今夜もあなたのお料理で素敵な夜になります様に… ■家メシを「特別な夜の一皿」に変えるワイン IKEAでは昔ワインを売っていた。ソムリエ試験を受ける頃だったので、どこに行っても目に入るワインが気になってしまい、手に取ってはエチケット(ラベル)を眺め回す。そしてインプットした学習の記憶を確認する。 「ピクプール・ド・ピネ」 を見つけたのはちょうどそんな頃だった。前職の「中目黒ブロックス」でも、たまたまオンリストしていたこともあり、かなり ローカル品種 で珍しいワインであったが、知っている事が嬉しかった。頭の中で地図が広がったのだ。 フランスの地中海、プロヴァンスからローヌ川を挟んだ先にセートという港がある。その港を背にしてトー湖という湖が広がる。そのほとりにあるのが ピネ という土地だ。 トー湖は牡蠣の産地で有名 だ。フランスで牡蠣といえば「シャブリ」が有名なのだが、この土地の人々は 地産のワイン を合わせる。これはペアリングでも1つの理論で地産地消はマリアージュさせやすい。同じ気候風土の中で育つわけだからうなづけるわけだ。 ところで、なぜ 「牡蠣にはシャブリ」 なのかといえばブルゴーニュ最北端シャブリ地区は土壌の下層に「キンメリジャン」というジュラ紀の貝類の地層が存在する。あまり水分を与えずに栽培する葡萄という植物は、水分を欲しがりその根は地中深くに伸びて行く。そして地中の水分と共に土壌のミネラル分を吸収する。つまりはそれが土地の香りとなり、味になるのだ。 ワインとは品種と気候と土壌の組み合わせが、その年に限って生み出す、稀有な飲み物なのである。もちろん醸造家の役割は大きいのだが。 さて、 ピクプール・ド・ピネ は地中海性気候の粘土石灰質土壌で育つわけだが、正確には 「ピクプール・ノワール」 と 「ピクプール・ブラン」 という2種類の葡萄が存在する。少量だが ノワール種から作られるロゼ も有るようだが私は口にしたことがない。ほとんどが 白ワイン としての生産なのである。 語源をたどると 「ピクプール」 とは「オクシタン語(=プロヴァンス語)」で「唇を刺すもの」を意味する言葉だとか。この品種特有のするどい酸が特徴的でそうよばれている。 科学的な根拠で見てみると、生牡蠣が持っている旨味成分「グリコーゲン」と相性ピッタリなのが、ワインやレモンが持っている旨味成分で、冷たいと旨味を感じる「冷旨系有機酸」である。レモンでは「クエン酸」、ワインでは「リンゴ酸」と「酒石酸」のそれにあたる。生牡蠣が持ち合わせていない、この成分が鍵となりマリアージュを作り出す。 この地でも複数の生産者がいるが、精力的にドメーヌの指揮をマルク・カブロルは、元会計士という異色の経歴の持ち主だ。若いころから自由になる時間の大半をブドウ畑で過ごしてきた。そんな彼が織りなす、計算し尽くされたピクプールをこの冬の牡蠣と共にお楽しみ頂けたらと思う。
2020年11月05日皆様こんにちは。ソムリエ佐藤尊紀です。 誰もが食べてる、作ってる、いつでも手に入る食材とリーズナブルでみんなに喜ばれるワイン。今日のあの人の感動も、そして私の満足も今夜のテーブルで「無条件の喜び」を分かち合えたら。 今日もそんな一皿を、みなさまとご一緒に。 「愛」の隠し味 とちょこっとひと工夫でいつものお料理をアップデート。今夜のテーブルも、ワイングラスと音楽とあなたのお料理で素敵な夜になりますように。 今回のテーマは… 皆さんが実は意外と気になっているであろう「アレ」について。そう、それは、 飲食店の「まかない」 何なんでしょうこの響き。漢字で「賄い」だとピンと来ないです。もはや音のイメージが強い。皆さんはきっと 「スタッフめし」 的なイメージなのでしょうか? 「いつもどんなまかないを食べているんですか?」 「きっと美味しい物を食べているんでしょ?」なんてよく聞かれます。 さてさて飲食店の「まかない」。どんな物を食べているのでしょうか? 英語圏では「Staff Meals」と呼びます。まさに「スタッフめし」ですね。 面白いのはフレンチやイタリアン。 ここでは「食べる」を意味する「Manger (マンジェ) 仏」や「Mangia (マンジャ) 伊」 なんて呼ばれています。まかないの時間が近づいて来ると 「ねぇ今日のマンジェなに?」 みたいな会話が聞こえて来るんですね。 大抵の飲食店では「まかない」がその日に一度の「メシ」。みんな動き回ってお腹はペコペコです。だから「まかない」はとても気になります。 コックは決まったレシピで料理を作り、お客様を喜ばせます。その料理をより楽しんで頂くべくホールスタッフはお客様に寄り添い、雰囲気を感じ取り、飲み物のお手伝いもする。 そんな「表舞台」を支えているのが、実は「裏舞台のまかない」なのです。そして大抵は 若手がアピールのチャンスを与えられます。 若手は誰よりも遅く帰り、誰よりも早く来ます。先輩が来れば、たくさんの仕事を頼まれるでしょう。それは辛い時もありますが、「任されている」証拠です。例えば、お客様に提供する食材を触らせてもらえる。これは「信頼」そのものです。 でも少しでも先輩が来る前に自分自身の仕事を片付けなければ、仕込みに穴が開きます。そのまま営業が始まってしまたら、オーダーに穴が開きます。お客様にご迷惑がかかってしまってはいけません。 なんと過酷な現場なのでしょうか。 そんな若手が作る「スタッフめし」が、「まかない」です。 とてつもなく大切な「メシ」 まかないにはレシピなんてありません。お金をいただくオーダーでもありません。だから、あれこれ食材を選べる訳でもなく、お店としてはお客様に出したくない、最高の瞬間を逃してしまった食材を使い、工夫して美味しく料理するのが「まかない」です。 センスも技術も問われます。 味もボリュームも期待されます。心も胃袋も満たされないとみんな元気に働けません。 「まかない」とはスタッフのモチベーションに関わる、 とてつもなく大切な「メシ」 なのです。 先輩の口に入る、ましてや料理長の口にも入る、同期も目を光らせている。認められないと自分も元気に働けません。 ああ「まかない」とは、なんと言う恐ろしい食べ物なのでしょうか。(笑) でも「旨いなっ!」と言って欲しくて一生懸命に考えるし、作れちゃうんですよね、お料理って。「食べる」とは生きる者にとって、食べる方にも、作る方にもなんと大きな役割を持っている行為なんでしょうか。 こんな忙しい日に、手の込んだまかないなんて作るんじゃない! 昔、六本木の120席ある「大箱」のブラッスリー(ランチとディナーの間にアイドルタイムがなく、一日中いつでも食事ができる、言わばフレンチの食堂的な存在。ビールサーバーがあることも定義の1つらしい)でコックをしていました。その日は夜から特別ディナーコースのフェアが始まる初日、とにかく忙しい日でした。まかない当番は僕。もちろん朝早く行き、通常の仕込みを片付け、ランチ前にまかないの準備も万全。あとは仕掛けるだけ。キッチンもホールも、ランチから忙しい日だったから「旨いメシ」でみんなを元気にしたい。夜は間違いなく戦場だからです。 いつも休憩前の30分で仕上げる「まかない」きっちり時間通りに出したのに、 なぜか料理長はご機嫌ナナメ。 おいおい、なんだよこの空気…。時間どおりに出してるだろ…。 嫌なムードが漂う。 この日のまかないは忘れもしない。「冷やし蕎麦」だった。レンコン、ゴボウ、白髪ネギの素揚げに、鶏天。大葉と生姜とミョウガに、万能ネギ。茹で揚げの蕎麦を氷水でキッチリ締めてフリット乗っけて、どっさりの薬味と冷たい出汁をかけるだけ。ザクッとした食感と、鼻腔から抜ける薬味の香り。ちょっと甘めの、鰹の効いた出汁がランチの疲れを癒すはず…だったのだ。 「何が気に食わないんだ?イチャモンつけたいだけなのか?どうするオレ…」 心の中で繰り返す。 ピリピリした料理長は言った。「こんな忙しい日に、手の込んだまかないなんて作るんじゃない」と。 盛って出すだけの「親子丼で十分」 だと。 「まかない」での「親子丼」。忙しい見習いコックが、仕込みに追われ、アイデアも浮かばず苦し紛れに作るメシ。確かにそんな時もある。だから新人の頃は、みんな 「逃げ」の親子丼 と呼んでいた。 それから幾度もまかないを作ったけれど、敢えて「余裕がある日」に親子丼を作った。いうなれば「攻め」の親子丼。「もっと忙しい日に作れよ」ってその度に仲間には言われたけれど。 「親子丼」の何が悪い? だって料理長が 「お前の親子丼が食べたい」 って言うんだもん。結局、そのレストランではメインストーブまで任され、メニュー考案までさせてもらった。 「親子丼事件」いい思い出だ。 当時の僕は毎日10kgの魚をおろし、3日に一度、サニーレタス7束、グリーンカール7束、水菜3束、ベビーリーフ3パック、トレビス1個をサラダ用にもどして、週に4台キッシュ、週に2回8kgのミートソースを作る。(これで一回ギックリ腰をやり救急車で運ばれました。その時の料理長は優しかった。一緒に病院まで来てくれました。)2週に一度、4台のテリーヌショコラと4台のパテ・ド・カンパーニュを仕込み、その他に、ガトーフロマージュやら、クレームブリュレやら、タルトポワールやらも作る。ランチ営業をしながら仕込みをし、アイドルタイムなく、ディナーが始まる。本当にノンストップで目が回るほど忙しい。 「まかない」は1週間に二度まわって来て、それでも「まかない」は楽しかった。 予想もしない食材と、予想もしないヒラメキ と、そして みんなからの「旨いな」 と。 ■白トリュフ香る'攻め'の親子丼 調理時間 35分(下準備20分、調理盛り付け15分) 1人分 735Kcal レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 お上品な2人分> 鶏もも肉 1枚(180g) シシトウ 6本 白ネギ 40g(約15cm) シイタケ 1個 タマネギ(中) 1/3個 ゴボウ 40g(約15cm) 卵(M) 3個 サラダ油 大さじ1 しょうゆ 20g 酒 20g みりん 20g ハチミツ 10g 顆粒だしの素 1g ご飯(炊きたて) 1合分 ミョウガ 1個 トリュフ油(白) 小さじ2 海苔(おにぎり海苔) 2枚 ※今回のテフロンフライパンは28cmの深いタイプ。「鶏モモ」は焼く時にどうしても脂が跳ねるので、できれば深型を。道具としては有れば「小さめのバット」が2枚、調味料用と卵用の容器が4つ。そろえると便利ですがありものでも十分です。器は小どんぶりです。ワインと一緒に楽しんでもらいたいので、具材多めでお米は少なめにしました。〆にしたらちょっとな時もちょうど良いかもです。しっかり召し上がりたい時はお米を増やしてくださね。 <下準備> ・ 「シシトウ」。 まな板に転がし「包丁の先」で1ヶ所ずつ刺していく。おわり。 まな板の汚れない順から進めていきましょう。仕込みのはかどりが違います。 ・ 「白ネギ」。 幅2cm間隔でななめ切り。おわり。 ・ 「ミョウガ」。 縦に半分に。下を三角に切り落とす。ここは刻んで納豆や味噌汁に。残った大きい方は外側から手でめくりバラします。大きいものは縦半分ほどにカット。 ・ 「シイタケ」。 石付きを切り落とす。足が長ければ適当なところで切り落とす。スライスせずに8等分に。 ・ 「タマネギ」。 ちょっと特殊。半割りのものを頭とお尻を切りはなし、皮を剥く。ここまで普通。次に「包丁の先」で外側から3枚を残し、真ん中の芯のあたりをくり抜く。今回は外側だけを使います。真ん中で縦半分に切り、それぞれを縦4等分に細いくし切りに。 こうする理由は他の具材と大きさを揃えて(1)加熱時間を合わせる(2)食感を合わせる(3)盛り付けの見栄えをよくする(4)真ん中を他の料理で都合よく使える、など。芯を残したままで、くし切りやスライスにすると、真ん中の一番小さな部分が「小さなカケラ」になるから。それは加熱時に先に焦げていくし、煮込み時に先に溶けていきます。自分でもちょっと変わってると思いますが試してみて下さい。いずれ「仕込みシリーズ」で詳しく! 内側は繊維が柔らかいので(1)「オニスラ」に使う(2)すりおろして使う(3)みじん切りに使う(4)味噌汁に使う(5)いくつか集めてそのままのサイズでカレーやシチューに使う(6)工夫して上手に使う、と使い方盛りだくさん!アイデア次第です。 ・ 「ゴボウ」。 縦に半分に切り、さらに縦半分に。4本を90°回転させそれぞれを4等分に。小さな器で水に浸しアク抜きします。5分ほどで一度お水を変えて下さい。 炒める時にはねるので水気はペーパータオルなどでよく拭き取りましょう。 ・ お次は「卵」。 「全卵」が2個分入る大きめの容器を1つ、「黄身」が1つ入る容器を2つ用意する。 大きい容器に「全卵」を1個割り入れる。小さい容器にそれぞれ「卵黄のみ」を1個ずつ入れ、大きい容器に2個分の「卵白」を加え (=全卵1個+卵白2個) フォークで7割程ほぐす。 完全に混ぜてしまうと、卵白独特のトロっとした食感がなくなり、ボソっとしてしまいます。まろやかな口当たりが欲しいので。苦手な方はよく混ぜちゃってください。これはお好みです。 ・ 「調味料」を器に計量する。 僕はなるべく 「スケール」 を使います。洗い物も出ませんし正確に計れます。デザートやパンを作る時には無いと出来ないので、どこかのタイミングで用意しても良さそうです。お持ちでない方はご検討あれ。メルカリでもよく出てますね。 ・ 最後に「鶏もも肉」。 けっこう特殊。変態ソムリエ、佐藤のやり方。まずは全体を触り、軟骨が付いていないか確かめる。あれば包丁でそぎ切りし取り除く。ここまでは普通。次に「ある物」を探します。全体を触っていると1つ 「分離しそうで、でもくっついているパーツ」 があるはずです。どちら側とは言いづらく、モモ肉には当然左右がありますので、皆様が手に入れたモモ肉が、どちらのご出身で、またどちらの脚かは分からないのであります。見つかりましたか? 「モモ肉のおつまみ君」 何のためにこんなことをしているのかと言いますと、鶏もも肉1枚に必ずある「脂スポット」を探して欲しいからなのです。鶏もも肉は意外と脂が多い。しかも牛や豚に比べてコレステロール値が高く、できれば取り除いて欲しい。地鶏は運動量が多いので不要な脂も少なく、香りも良いのですが、通常の鶏もも肉は集団飼育なために運動量が極端に少ない。不健康な脂であり香りも良くない。唐揚げや煮物、ソテー、カレーにシチューにと、リーズナブルで大活躍の鶏もも肉なので 「脂スポット」 を覚えて、いつもの「鶏料理」をより美味しく健康に食べてくださいね。 ・「おつまみ君」を見つけたら、包丁と反対の手で優しくつまみ上げてください。強く引っ張って外れてしまうと元も子もないのであくまで優しく。彼はガイドです。 今から「脂スポットツアー」に出かけます。 ・まずすぐ横に、「白いスジ」が縦に1本あります。周りに油もついているので取り除きましょう。スジと肉の間に「包丁の先」を入れ隙間をつくります。「おつまみ君」から手を離しその隙間に指を入れスジを真上に引っ張ります。するとほとんど肉から引き剥がせると思います。 それでも肉にしがみ付いている往生際の悪いスジは「包丁の先」で懲らしめると簡単に引き剥がせると思います。 ・おつまみ君の上部と左部の皮のあたりから、いけない脂がはみ出しています。皮を広げてカット。 ・次は少し厄介です。おつまみ君の反対サイドに、肉に身を隠した「恥ずかしがり屋な脂ちゃん」がいます。容赦無く肉をめくって曝け出してください。ここはまさに「スポット」的に溝に潜り込んでいます。上手に取り除くポイントは、肉を指で軽く引っ張りながら、その反対方向に向かって包丁の先で、肉から脂身を「押し出す&かき出す」的なイメージで。慣れないと少し手間取りますが、これでぐーんとカロリーが下がります。 包丁の角度を45°ほどに寝かせて、肉とスジ&脂身の境目を先端でこそぐと割と簡単に取れます。 そして実はもう1ヶ所…今まで誰にも気づかれず、ずっとそこに存在していた、おぞましく、悪い脂が隠れています。 肉をしずかに、縦に裏返してみてください。 一面に鶏皮が広がります。 場所はちょうど「恥ずかしがり屋な脂ちゃん」の裏側の辺り。 何だかドキドキしますね。鳥肌が立ちます。 恐る恐る鶏皮をめくると…「うわっ!」 何とそこには、居るではありませんか。 ビッシリと肉にしがみ付いた「奇妙な脂」が… ※少々おふざけが過ぎましたが、 今回の下準備のポイントは「健康的な鶏もも肉の処理」 でした。全部で5箇所。上手に取れましたか?少々厄介ですが、「鶏もも肉」は使用頻度も高いと思うので、少し意識してみてくださいね。健康と包丁の先にはくれぐれも気をつけて!下準備20分。 <作り方> 1. フライパンに「サラダ油」大さじ1を入れ中火で温める。なるべく常温に戻した 「鶏もも肉」 を、皮を下にして焼く。下味はしない。はじめにお肉の真ん中から外側に向かってフライパンに押し付けてあげると、皮が均一に広がりパリッっと焼ける。 「玉ネギ」も「ゴボウ」も投入 。火の入りにくい食材から焼いていく。ここから 3分ほど焼く ので、時々「玉ネギ」と「ゴボウ」を混ぜながら、この間に 「おにぎり海苔」 を炙る。 隣のコンロを弱火にして 「海苔」 をサッとくぐらす。両面くぐらす。ポイントは海苔の片側をつまんで、火に 「往復ビンタ」 をする。反対側に持ちかえて、こちらも「往復ビンタ」をかます。片側2往復。海苔はすっかりパリパリになり、香りが立つ。 2. 「鶏モモ肉」の皮が少し色づき脂が出て来る。「ゴボウ」の角も色づいてきたら、「白ネギ」と「シシトウ」、「シイタケ」も投入。 ここから2分ほど焼く。 3. 野菜も程よく焦げ目がつき始めます。硬いお野菜にも火が入った頃です。鶏もも肉は、下処理をしたけれど残っていた脂も染み出して、皮目はパリッパリに焼けている頃。 裏返してお肉側を2分ほど焼きます。 ときどき「鶏もも肉」をトングで抑え、フライパンをぐるっと一周させてあげると、滲み出た鶏脂が野菜達によくまわり、よい焼け具合に。コクも増します。 4. 肉の焼け加減をのぞき、表面が焼き固まっていたら、皮目を下にして一度まな板に取り出す。火傷に注意しながら肉を十字に切り、一片をさらに十字に4等分に切る。 切ってみると中まで火が入っていません。この時点で火が入っていると、煮込んだ時に硬くなってしまいます。そしてお肉が当然熱いので、くれぐれも火傷にご注意を。お料理は怪我をするとめっちゃテンションが下がるので、安全にマックス楽しんで欲しいです。「安全第一」 5. 切った「鶏もも肉」をフライパンに戻し、野菜達と全体に混ぜ合わせる。混ざったら、あらかじめ合わせておいた 「調味料」を入れる。 6. すぐに煮立ち始めるので、 「弱火」にしてそこから「約1分」ほど煮込む 。そして「シシトウ」を取り出す。 「シシトウ」はソテーだけで十分火が入っています。軽く調味料が絡んだあたりで引き上げないと、色が悪くなり、食感も失われてしまいます。緑は盛り付けを「映え」させる大切なアイテムであり、非常に食欲を駆り立ててくれます。加熱による色の変化にご注意を。 7. 「シシトウ」を取り出してから 弱火で1分 ほど、時々全体を混ぜ合わせながら「鶏もも肉」に火が入ったら火を止め、大きな容器に入った 「卵+卵白」 をフライパンの外側から回し入れ、外から中心へと優しく混ぜ合わせ、半熟の状態に。かき混ぜる回数で卵が固まっていきますので、お好みの固さにしてください。 8. 小さめのどんぶりに炊きあがったご飯を盛り付けます。中心はやや高く。お野菜を高く立体感を出しながら盛り、上にお肉を。三方向に「シシトウ」を乗せ、「ミョウガ」と「もみ海苔」を散らします。ミョウガのヘタが少し器から飛び出していると「映え」るかも。 9. そして 本日も登場!「白トリュフオイル」 キャップを開けた途端、豊潤な香りが漂います。「卵黄の器」に小さじ1杯入れてください。お好きな方はもう少し。 かなりリッチに傾きます。 どんぶりと一緒に食卓へ出し、食べる直前に丼の中央へ流し入れます。最後にお好みで七味をふりかけます。 ■食べ、愛し、歌い、消化する。この4つの行為が人生という喜劇オペラなのだ かの有名な、美食家でありイタリアの作曲家である、 ロッシーニ 氏。 44歳で作曲活動から引退し料理の世界へ没頭します。 美食の追求やレストランの経営など 「食べる」 に人生を捧げました。 そして 「マンジャ」 にこんな言葉を残しています。 “Mangiare e amare, cantare e digerire sono i quattro atti di quell'opera comica che è la vita.” 「マンジャーレ・アマーレ・カンターレ・ディジェリーレ、ソノイ・クアトロ・アッティディ・クエロッペラ・コーミカ・ケーラヴィータ」 “Eating, loving, singing and digesting are the four acts of the comic opera known as life.” 「食べ、愛し、歌い、消化する。この4つの行為が人生という喜劇オペラなのだ」と。 まず食べること。 そこから愛が生まれ歌になり、また腹が減る。そしてまた食べる。人は食べずに生きていけないのですね。そしてとてもドラマチックでエキサイティングです。 「食」には喜怒哀楽が似合います。 「まかない」はとても楽しいご飯。もしかしたら「究極の料理」かもしれない。 レシピのないその日の食材で ちゃんとそこには「愛の隠し味」 が入っている。 お客様への思いがそう言わせた料理長の気持ちも、悔しかったその時の僕も、今日の若手の「まかない」もとても美味しい。食材が良いとか悪いではなく、誰かのことを想って作ってくれたその味が。 いつだってあなたのお料理で、大切な人の「胃袋も、ハートも」鷲づかみにして欲しい。 今夜も思いを込めた一皿と、ワインで素敵な夜になりますように… ※ハチミツは 1 歳未満の乳児には与えないでください。乳児ボツリヌス症にかかる場合があります。
2020年10月08日皆様こんにちは!ソムリエ佐藤尊紀です。 誰もが食べてる、作ってる、いつでも手に入る食材とリーズナブルでみんなに喜ばれるワイン。今日のあの人の感動も、そして私の満足も今夜のテーブルで「無条件の喜び」を分かち合えたら。 今日もそんな一皿を、みなさまとご一緒に。 「愛」 の隠し味と一工夫でいつものお料理をアップデート。 今夜のテーブルも、ワイングラスと音楽とあなたのお料理で素敵な夜になりますように。 前回、前々回とブルゴーニュから南のプロヴァンスに移動しました。ワインは全くのニューワールド、アメリカ産でしたが…。今回はさらに南下して地中海を渡ります。 ワインはホロ苦くさわやかな 「グリッロ」 を。お料理は甘酸っぱくてミステリアスな 「カポナータ」 を。 今夜はイタリアの最南端シチリアへ。 往々にして勃発する抗争劇 「ラタトゥイユ V.S. カポナータ」 に視点を当てて進めて行こうと思います。 「カポナータは野菜のトマト煮込みだっけ?」 「ラタトゥイユと同じでしょ?」 「地域によって呼び方がちがうだけ?」 「揚げると炒めるの違いじゃなかったっけ?」 などなど、実は意外とわかっていそうでちゃんとわかっていなかったこの2つ。 今回、改めてあれこれ調べてみると、色々な意見に遭遇しましたが、まあ、結論は出ず。だからいつでも抗争で論争なんですけど。 ラタトュイユ は味付けも塩コショウとシンプルに完成されていて、 カポナータ はシチリア内でもかなり地域性がありました。 さてさてその起源とは?またまた パレルモ風 とは何なのか?お料理を進めながらちょこっと触れてみましょう。 ■パレルモ風カポナータ 調理時間 35分 1人分 403Kcal レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料> 前菜として4人分 ゆでタコ足(刺身用) 200g ニンニク(大) 1片 唐辛子(大) 1本 玉ネギ(中) 2/3個 セロリ(小) 2本(約100g) ズッキーニ 1本 赤パプリカ 1個(約100g) 黄パプリカ 1個(約100g) ナス(小) 4本(約320g) グリーンオリーブ 15個 ブラックオリーブ 15個 ケイパー 30g ケイパー(漬け汁) 大さじ1 レーズン 50g 白ワイン(フェウド・アランチョ・グリッロ) 50ml アンチョビ(フィレ) 6本 水煮トマト(ホール:缶) 1缶 寿司酢 100g 塩 少々 ホワイトペッパー 少々 オレガノ 少々 オリーブ油 大さじ4 イタリアンパセリ 少々 ユズ皮(乾燥パック等) 少々 EVオリーブ油 少々 <下準備> ・パレルモ風のキモである「タコ」は「足先が映える」ので大事な足先は少し長めにカット。それ以外は足の付け根に切り込みを入れ、2cm角に切ります。 ・ニンニクは上下を落として皮をむき、縦に半分に。芯は残すと焦げやすいので取り除きましょう。そして断面を下にし、包丁の背で平らにつぶします。 ニンニクは潰すことで香りが出やすくなります。オリーブ油に香りを移すことでその後にソテーしたものに風味が増します。 ・玉ネギは芯を取り、頭を落として皮をむきます。縦に半分にカットし、外側3枚ほどと内側とをバラします。半割りのままカットすると、大きさに差ができてしまい、ソテーした時に細かい物から焦げていきます。また煮込などでは細かいものが溶けてしまいソースが濁ります。今回は玉ネギの外側だけを使ってサイズを整えます。 具材は極力ですが大きさを揃えることで食感や口当たりが整います。味だけでなくここも美味しさにつながるポイントです。野菜炒めなどでは特に大きな差が出ますので、食材カットの大きさにこだわってみてください。完成時、盛り付け時の見栄えも変わります。 ・セロリは両側のエッジと真ん中あたりの筋をピーラーでむき、幅2cmほどで斜めにカット。この斜めカットが盛り付け時に立体感を作りやすく、見た目も美味しそうになります。 ・ズッキーニは頭とヘタを取り、縦に4等分に。種が多いようなら包丁を寝かして削ぎ落として下さい。種の部分は煮崩れしますし、水が出るので。面取り的な効果もあります。大きさによりますが2cmほどに切りそろえると1本を8等分くらいでしょうか。 ・パプリカは溝に沿って4等分に。ワタを取り除いたらそれぞれを縦2等分に切り、90°回転させて8等分に。硬さはほぼ同じなので色は分けても分けなくてもOKです。 パプリカもピーマンも、溝の内側にそってワタが付いています。そこを上手く4つにカットすることにより、タネやワタの処理が格段に楽に、そして綺麗に処理できます。 ・ナスは乱切りにすると加熱時に溶けて煮崩れしますので、皮を残して2cm幅の輪切りに。皮が身をしっかり囲ってくれるので、ナスの最大の楽しみ「トロッと感」を満喫できます。実は カポナータは「ナスが主役らしい」 。 ナスはとにかく「ヘタに付いているトゲ」に注意。結構細くて手に刺さったまま残ると、テンション下がります。真ん中辺りを摘んでトゲのある頭を切り落とし、クルッと180°回転。今度はお尻の先をカット。すべてカットしたらボウルに入れて、つかる程度のお水に。小さじ1程度の塩(分量外)を入れ上にペーパータオルをかぶせます。塩水に浸すことによりアクが抜け、加熱前の変色を防ぎ、また過熱後の発色をよくします。10分程したらバットでペーパータオルで挟み、しっかりと水気を取りましょう。 ・オリーブは特に色分けしなくても構いません。すみません、ただの「計量映え」でした。自己満足。でもお料理に自己満大事かと。 ・ケイパーお好きな方は増量してください。私は大好きなのでいつもたくさん入れちゃいます。器に測ったらそこに漬け汁も一緒に。 漬け汁は塩味のあるビネガーです。ケイパーの香りもついていますので調味料としても優秀です。僕は「ケッパービネガー」と呼んでいて、パスタの味付けなどでも使用しています。酸味と塩味を補ってくれるので、使わない手はないかと。 ・レーズンと白ワインをあわせておく。 レーズン を使うのは ラタトゥイユとの1番大きい違い です。更にはカポナータの中でも シチリア特有 かも。 白ワインも同じ器に計量することで、程よくふやかすことができます。一石二鳥。 ・アンチョビフィレは混ぜればすぐに溶けるのでカット不要。今回は料理のコクと全体の塩味のはアンチョビでコントロールします。 ・水煮トマトは、ザルとボウルを重ねた「ザルボウル」に空けたら、ホールのトマトを一つずつ手に取り、簡単にほぐしつつ、固いヘタや芯、そしてタネを取り除く。でもタネ取りは大変なので無視してもOK。気になり出すとキリが無いので… ホールトマト缶はまず先にラベルを剥がす。職場としてのキッチンでちゃんと分別しないと、先輩にめっちゃ怒られます。現代人のマナーとしても大切。蓋を開けてからだと中身をたらしたり、手が汚れたり不都合が多いので、先に剥がしましょう。そして蓋は取り切らず最後は残して下さい。意地になって取ろうとすると、確実にトマトがはねます。服、その他が汚れます。これはかなりテンション下がるポイント。回避すべし。 ・寿司酢は個別に容器へ計量しても良し、トマトの器に合わせて計量しても良し。入れるタイミングが同じです。すみません、これも「計量映え」で自己満でした。 ・オリーブ油はソテー用です。その都度で計量してもそれほど手こずらないと思います。事前に大さじ1と大さじ3に分けるなら、もちろん楽は楽。 ・盛り付け用のイタパセは乾燥してしまいますし、香りも飛んでしまうので、カットはカポナータ完成後でも良し。ユズ皮はフレッシュだと尚良しですが乾燥物が扱いやすいです。スーパーのスパイスコーナーによくあります。 ※計量は細かい容器でも良いですし、大きなバットやお皿でも良いですが、食材に触れる前にある程度の数を用意しておくと、いちいち手を洗ったり拭いたり、そういう手間が省けます。段取りが良いか悪いかが、意外とお料理上手のポイントだと思います。味はレシピで決まるけど、段取りを身につけるのは知識とセンスなので。料理が楽チンなる方法を身につけるのもコツ。 ※今回のお鍋は、どちらも28cmの物を使用しました。 ※ここまでの下準備で約20分です。 ※本当は「松の実」も入れたかったけど、スーパーに無かったので今回は割愛。入れれば更にコクがでるのですが… <作り方> 1. 煮込用の深鍋にオリーブ油大さじ1、唐辛子とニンニクを入れ中火に。隣のテフロンフライパンには残りのオリーブ油大さじ3とズッキーニを入れ中火に。ニンニクがこんがり色付いたら玉ネギとセロリを投入。そしてお塩をひとつまみ。玉ネギの水分を出し甘みを引き出します。隣のズッキーニは皮を上にして内側をこんがり焼いて下さい。この「こんがり」が甘みとコクを引き出します。 ニンニクの色付けはお鍋の下に小さいフライパンなどを挟み、できたら斜めにしてオイルを集めると色付きやすく、オイルに香りも移りやすいです。でもとても不安定なので無理しない程度に。 2. 玉ネギをかき回しつつバラけたらパプリカ投入。かき混ぜながら、隣のズッキーニが程よく色付いているはずなので、トングで裏返し皮目も焼きます。オイルがだいぶ温まって来ているので1分ほどで、すぐに皮目も焼けてくると思います。フライパンを反時計回りに揺すって、ズッキーニ達をくるくる回せたら火加減も均等になります。 因みにワイングラスをくるくる回すことを「スワリング」と言います。基本は右利きなら反時計回りに。もし回しすぎてワインが外に飛び出しても、目の前の人ではなく自分にかかる仕組みです。まわす回数も基本は優しく3回くらいに。少し空気に触れさせる為です。ここで一度鼻を近づけ香りをチェックします。このワインは痛んでいないか?この品種の独特の香りか?この産地の特徴的な香りか?開けたてなら香りが閉じていますので、個性が開いていなければ、もう一度スワリングを…。という感じです。実は私のプロフィール写真はその瞬間でした。 3. ズッキーニをお鍋に移します。フライパンの方は多めのオイルで揚げ焼きにしていますので、トングで一つ一つ取り上げるよりも、アク取りでまとめて引き揚げた方が安全で早いです。 普段から揚げ物率が高ければ、かなり重宝しますのでお持ちでなければ是非。メーカーにこだわらなければホームセンターや100円ショップにもあるかと思います。 4. 空になったフライパンは引き続き中火で、よく水気を切ったナスを投入。断面がフライパンに接するようにトングで整えて下さい。 カポナータはナスの色付きがポイント です。 古くは1790年ごろに文献が残って位いるそうですが、元々はスペインのメインディッシュとしての魚料理だったとか…。でも当時は魚が高級品であり庶民はナスを魚に見立てて調理していたそうです。その名残を残したままシチリアに渡ります。シチリア島の右端のパレルモではタコを入れたり、他の地ではエビが入ったり、またまたナポリではパンが入ったり、と地域性があるようです。 5. と言うことで、おナスちゃんはじっくり5分ほどかけてしっかりと焦げ目をつけてあげましょう。その間に隣のお鍋ではお野菜達に程よく火が入っている頃です。タコ、オリーブの実、ケイパー、アンチョビ、オレガノ、そして白ワインで戻したレーズンもまとめて投入。オレガノはお好みです。 塩とハーブは最後にナスもトマトも入ったところで最終調整しますので、ここでは決めきらなくても良いです。私はハーブが好きなのでメリハリが付くように多めに入れます。 6. お鍋を方を混ぜつつ、フライパンもチェック。ナスが両面とも良い色になっていませんか?程よく焼けたら一度ペーパータオルの上に取り出してしっかり油を切ります。そして両面に塩を振って下さい。 感覚としてはフライドポテトの塩加減くらいでしょうか。そのままナスを食べたとして、美味しく感じられる程度のお塩加減です。 7. お鍋の方は全体が馴染んで来ましたか?アンチョビも溶けていることと思います。ここでトマトジュースと寿司酢を入れます。本来はワインビネガーと砂糖を入れるレシピが多いようですが、ここはアレンジで。シチリア産の白ワインとレーズンを多めに使ってなるべく自然な甘みと酸味を目指します。 カポナータ と ラタトゥイユ の もう一つの大きな違いは「甘酸っぱさ」 だそうです。南仏の ラタトゥイユ がシンプルに塩コショウで味付けをするのに対し、元々がスペイン発祥でアンダルシアの港町マラガの酒精強化ワイン(マラガ酒=甘いワイン)を使った カポナータ はその独特の 「甘酸っぱさ」 が特徴のようです。 8. 木ベラで鍋底をかき回し、水分が1/3くらいになってきたら完成も間近。しっかり煮詰める事でトマトと寿司酢の酸が甘味に変わります。最後に残ったナスとトマトの果肉を入れましょう。もしここで湯気がたくさん立ち登って、蒸発が早そうなら、少し火加減が強いのかもしれません。一度弱火にして下さい。ナスを崩さないように優しく混ぜたら、味見をしましょう。お好みで塩コショウをして味を整えて下さい。 とにかく予想以上に熱いので味見は本当に本当に気をつけてくださいね。ナスがトロトロで激熱危険地帯なのです。お好みでオレガノも追加して香りをおぎないましょう。煮物は一度冷ますと味が馴染むので、翌日が一番の食べごろです。 9. ここまでで、お鍋を火にかけてから15分くらいでしょうか、おそらく左右を交互に忙しかったと思います。お疲れ様でした。リズミカルに楽しんで頂けてたら嬉しいです!盛り付けはクルッと巻いた「タコの足先」と「2色のオリーブ」そしてゴロっと「大きいナス」を口のあまり大きくない器に高く盛り付けて下さい。細かすぎないイタパセを無造作にふって、エクストラバージンとユズ皮をアクセントに。柑橘の香りが、料理とワインの相性を引き立てます。 ■「甘酸っぱい記憶」は大切な思い出 シチリアといえば、かの有名な「ゴットファーザー」の舞台。マフィアの抗争が劇的な音楽とともにドラマチックに展開します。仁義なき戦いです。今回は南仏の 「ラタトゥイユ」 と南伊の 「カポナータ」 の抗争が見え隠れしました。この料理に限りませんが、料理の定義はよく議題に上がります。どのレシピが正しいのか?この料理の発祥はどこなのか?誰が最初に作ったのか? しかしそんなことはどうでも良いのです。料理はヒラメキであり、食べさせたい誰かがいて、その人を思いながら、心を込めて作る、そんな最高に楽しい「表現の一つ」なのだから。料理もワインも、恋愛も、人生も、その人にしかない、その土地にしかない、その時々の、それぞれの個性があるから魅力的なんだと思う。あのワインを飲んで思い出すことも、この料理を食べて思い出すことも、思い出したく無いことも。 「甘酸っぱい記憶」は大切な思い出。 でも今夜は目の前にいる人と、無条件の喜びを分かち合えたら、抗争なんて起きやしない。 少しホロ苦いグラスの「グリッロ」がより目の前の甘味を引き立たせてくれる。 今夜の料理とワインが、素敵な記憶の一枚になりますように…
2020年10月03日皆様こんにちは!ソムリエの佐藤尊紀です。 季節合わせて、またシュチュエーションに合わせて誰にでも分かりやすく、みんなに喜ばれるワインとそんなワインにぴったりなお料理を一緒に作って行きましょう! 今回も「市販のルー」を使って、誰もが食べてる、作ってるいつでも手に入る食材と、いつものお料理をワンランクアップしていきます。 作った本人もビックリ?!、家族の反応にもビックリ?! そんな感動をお届けできたらと思います。 お家ゴハンもつづくと「何か新しいお料理を」と悩んじゃいますよね。毎日のごはん。 さてさて今回も作り慣れた定番お料理マカロニグラタンですが、ちょっとフレンチビストロっぽくアレンジして「ブランダード風」に。 はてはて 「ブランダード」 とは? フランスの南、ラングドック地方の郷土料理で本来は乾燥した「塩ダラ」を使用します。 塩ダラを水で戻して塩抜きしニンニクと一緒に牛乳でコトコト煮込んだら茹でてつぶしたジャガイモと和えて、ペースト状に薄いバケットに塗って食べる、 もう絶対的に白ワインにもぴったりな そんな フレンチビストロの定番 お料理です。 「タラ」は日本のスーパーでもよく見かけるお魚ですね。 ムニエルにしたり、フライにしたり、湯豆腐に入れたり、と本来は「魚」に「雪」と書くほどに冬のお魚なのですが今は年間を通して手に入りやすい定番のお魚です。 仕込んでおけば冷蔵庫から出して、オーブンに入れるだけなのでみんなでワイワイなパーティーにもぴったりです。 オーブンで焼き上げている間に、サラダやオードブルを作れちゃうので 「段取り上手さん」 に成れてしまいます。 そんな、簡単リッチ飯な 「ブランダード風マカロニグラタン」 大切な人達に新たな感動と興奮をお届けすべく今日も 精一杯の愛を込めてワインにピッタリな一皿 を作ってまいりましょう! ■ブランダード風マカロニグラタン 調理時間 1時間 1皿分 679Kcal レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 6皿分> 本日のルウ「ハウス 北海道グラタン ベシャメルソース仕立て」 1箱 タラ(皮なし:塩なし) 330g タイム 3本 ニンニク(大) 1片 バター(有塩) 10g オリーブ油 大さじ2 玉ネギ(大) 1個 ジャガイモ(小) 9個(またはメークイン(小)3個) マカロニ(ルウと一緒に入っているもの) 1箱分 塩 少々 ホワイトペッパー 少々 白ワイン(コロンビアクレスト ・グランドエステーツ・シャルドネ) 100ml 牛乳 300ml 生クリーム 100ml 水 200ml トリュフ油(白) 大さじ1 鶏ガラスープの素(顆粒) 10g シュレッダーチーズ たっぷり パン粉 少々 大きめの耐熱皿と盛り付け用のお好きなお皿 または1人用のグラタン皿 パセリ 少々 黒コショウ 少々 <下準備> ※ジャガイモを茹でながら、その他の下準備を進めると調理までスムーズです。 ・ジャガイモは皮付きのまま軽く洗って、小鍋に入れ、十分につかるほどのお水を。小さじ1杯のお塩(分量外)を入れ強火に。5分ほどで沸騰してきたら弱火にして、そこから更に15分でザルにあげます。すこし冷めたら皮をむいて1cmほどのスライスに。 実は熱いうちが、皮がむきやすい。でも超熱い。ギリギリ持てる程度の温度で頑張ってむきましょう。 ・ タラはペーパータオルなどで水気を拭き取り、皮付きなら包丁で削ぎ落とします。骨があれば骨抜きで抜き取ります。もし骨抜きがなければ、骨の両側を包丁で切り離し、骨の部分だけを取り除きます。その後、身の部分カットは2cmほどの大きさに。 ・ 玉ネギは、皮をむいたら、縦に半割りにして芯を取り、縦に5mmほどのスライスに。 ・ ニンニクは上下を落として、縦に半割りにし、芯を取ってからみじん切りに。半割りの断面を下にして一度薄くスライスしてから平にならし、せん切りに。せん切りを90度回転させみじん切りに。 ニンニクはフランス語でアイユ、みじん切りはアッシェ。ニンニクのみじん切り=アイユアッシェ。またまた関係はない、本日のテーブルトークですが。 ・バットにタラとお野菜を分け、タラは アセゾネ (前回も出てきましたね。お肉やお魚に下味として塩コショウをすること。白身魚にはできればホワイトペッパーを)をしておく。目安としてはそのままソテーして食べれる程度の味付けに。 <作り方> 1. 玉ネギを炒めます。大きめの深いフライパンだと、仕上げまで一つのお鍋で完結するのでオススメです。テフロンなおよし。そこにオリーブ油大さじ1を引き、中火で温めます。透き通ったらバットにあけてください。ここまで約5分。 2. 同じフライパンにオリーブ油大さじ1を入れ中火に。お魚をタイムと一緒に焼いていきます。時々返しながら表面に焼き目がつくまでゆっくり焼きましょう。こんがりキツネ色になったところで、お魚をフライパンの片側に寄せ、バターとニンニクを投入。ニンニクがほんのり色づき、素敵な香りが立ちのぼってきたら、お魚と静かに混ぜ合わせて白ワインを。 お魚は水分量が多いので、アセゾネしてからちょっと時間が経ち過ぎてしまうと水分が出ます。油が跳ねるので水気があればペーパータオルなどでよく拭き取って下さい。火傷などをしてしまってはお料理もお食事も楽しめなくなってしまいますから。本来のブランダードでは焼かずに煮込む作り方もありますが、今回は臭みを取るためと、香ばしさを引き出すために少し焦げ目を付けましょう。 3. ワインが全体にまわり、1分ほどで一煮立ちすればアルコールが飛びます。そこでお水と牛乳を入れます。牛乳は吹きこぼれやすいので気をつけてくださいね。 続けて鶏ガラスープの素、玉ネギ、マカロニ、ジャガイモも投入。跳ねないように気をつけてくださいね。 固形物の投入が済んだら、粉末のルウと生クリームを。 そして、本日も登場!劇的ビフォア・アフター!「白トリュフオイル」も入れちゃってください! 4. 全てがおさまったお鍋を、木ベラでゆっくりかき混ぜます。お魚はくずれても良いです。全てが一つに成るように、 美味しくなあれ と「かき混ぜます」。 「ブランダード」 の言葉の意味は 「かき混ぜた物」 だそうです。全てを一つに、美味しくなあれ。 5. お魚を焼き始めてからグラタン皿まで15分程が目安です。お好きなサイズのグラタン皿に移します。すぐに召し上がるのでしたら、たっぷりのシュレッダーチーズと、その上にパン粉をお好みで。パン粉はチーズの油を吸ってカリッと仕上がるので意外とあっさり召し上がれます。オーブントースターが実は手軽で簡単。200℃~250℃の温度で5分、反転して5分が目安。愛おしくチーズが焦げるのを、胸を焦がして見守ってください。チーズ大好き。 すぐに焼かないのでしたら、表面に落としラップをして、乾燥から守りつつ出来たら下に網などを敷き放熱しつつ、お片付けを始めましょう。またお弁当用の可愛いカップなど御座いましたら、 こっそり 3つほど取り分けて冷凍庫に。お弁当に詰める際に電子レンジでチンして下さい。 6. オーブンでチーズが溶けたなら、手前と奥、右と左の温度差を確認し、反転すると均一な焼き加減になります。トータル10分ほど。すこし焦げてるくらいが美味しいですよ。焼き上がりの5分前を予測しつつガルニチュールを仕掛けます。 ■ガルニチュール(付け合わせ) <材料 6皿分> ホウレン草 1束 オリーブ油 大さじ1 <下準備> ・ホウレン草は根の部分を切り落とす。ボールを2つ用意し、葉の付け根から茎を手でちぎり、それぞれのボールに分けて水に浸け、泥をよく落とす。そしてきれいな水にしばらく浸けてよく水を吸わせる。10分ほどさらしたらサラダドライヤーなどで水切りする。 キャベツやホウレン草、小松菜などの葉物は、加熱する物でも水にさらすことにより、より歯応えが増します。 <作り方> 1、フライパンを強火で温め、オリーブ油を入れ、茎の部分からソテーする。しんなりとした所で葉の部分をソテーする。お味が物足りない様でしたらお好みで、あくまで少量の塩味を。 この度は白身魚の香りも強く、生クリームも白トリュフオイルも使用した濃厚なおソースにて。ホウレン草はシンプルにオリーブ油のみでソテーし、濃厚なおソースと交わるホウレン草の香りとお味をお楽しみください。 ■盛り付けの「映え」ポイント ・電子レンジで少し温めたお皿の前方に、フライ返しやサーバースプーンなど面積の広い物でブランダードマカロニグラタンをすくい上げ盛り付ける。 ・「映え」のポイントは 焼き目をなるべく崩さず に盛り、手前に少々のマカロニやジャガイモを 覗かせる 。 ・正直、魚は分かりづらいので 潔く諦める 。 ・奥にホウレン草を高く盛り、左下より右上に向かってブラックペッパーを大胆に振りかける。お皿のリム(縁の部分)にのるほどに 大胆に 振りかける。その上から少量のパセリを 無造作 に振る。 南フランスの地中海沿岸でも、スペイン寄りのエリアにある、ラングドック地方の郷土料理 「ブランダード」 。しかし語源を調べてみると、同じ地中海沿岸でも真逆のイタリア寄りのプロヴァンス地方の言葉だとか。その意味は 「かき混ぜたもの」 だそう。 その主役である 「塩ダラ」 は古くから北部の海で獲れるお魚 「鱈」 を保存するために塩漬けし、乾燥させた物が流通し今では地中海沿岸で広く親しまれている食材だとか。 調べてみると、実は日本でも江戸時代に 「塩ダラ」 が存在していたらしく口が大きいので、そこからエラと内臓を取り出し、お腹を裂かずに塩漬けにしていた。 そのために「切腹を避けた縁起物」としてお正月に重宝されたそうな。 また、お腹いっぱい食べることの表現で 「たらふく」 とは 「鱈腹」 と書きその語源になったとか。 ホントかウソか 。 ワインも食材も、世界中には面白い独自性や、共通性が見つかったりする。 地方のいろんな逸話に出会えたり、それもこれもお料理の楽しみの一つかなと思う。 調理法も、逸話も、人生も「どれが正しいか」よりもこんなwithコロナな現代を、少しだけ 「いかに楽しむか」 に注目できたらテーブルもちょっぴり明るくなって、お家ゴハンの素敵な隠し味が増えるかもしれない。 冷蔵庫で程よく冷やしたシャルドネを、口の広いワイングラスに注ぐ。 BGMと共に、グラスのワインとお互いの視線を「かき混ぜる」 ブランダードと共に、素敵な夜が、混ざり合いますように…
2020年09月13日皆様こんにちは!ソムリエの佐藤尊紀です。 季節に合わせて、またシチュエーションに合わせて誰にでも分かりやすく、みんなに喜ばれるワインとそんなワインにぴったりなお料理を一緒に作って行きましょう! 今回は「市販のルー」を使って、誰もが食べてる、作ってる、いつでも手に入る食材といつものお料理をワンランクアップしていきます。 作った本人もビックリ?!、家族の反応にもビックリ?! そんな感動をお届けできたらと思います。 ただしほんのちょっとだけ「アレ」を使います。 誰もが聞いたことがあるはずです。 それは… 「白トリュフオイル」 「えっー!トリュフ!?」 「高い!高い!」 「そんなの家庭で使えないよー!」 「無理!無理!」 そんな皆さんのお声が聞こえてきます。 レストランでも使っている「コレ」を使うと、あっと言う間に劇的にお料理が変わるんです。そして実は、お値段はそんなにしないのですね。しかも香りが強いので使用量は その都度「数滴」でいい んです。数滴での香りの満足感によりコスパが高いです。活用法は今後またご紹介していきます! お家ご飯が増えたwithコロナの時代。 ネタ切れの解消にも、おもてなしの一皿にも、 簡単に作れる「リッチ飯」 として是非取り入れてみてください。 少しだけトリュフについて触れてみますと… トリュフはキノコの一種で天然物しか存在しません。超高級な白トリュフと、高級な黒トリュフがあります。(厳密にはハニートリュフなどのレアアイテムもありますが) なぜ白トリュフが超がつくほど高級なのかと言うと、収穫時期が極端に短く、北半球だと11月から約1ヶ月間となり、香りが特に強く、結果として希少価値が高くなってしまうからなのです。年によっては100グラムで何十万円になることも… そして黒トリュフはと言うと、実は年間を通して流通しています。 春トリュフ、夏トリュフ、秋トリュフ、そして真冬の正真正銘の黒トリュフ。同じ黒トリュフでも、本当に色が黒く、香りが強いのは1月から3月までの短期間で、この時期に一番値段が上がります。 真っ黒だったトリュフが4月には内側だけ硬く白くなり、夏から秋に向けて徐々にベージュからブラウンになっていきます。そして冬にかけ黒へと成長してゆく。 そんな「香り」の食材がトリュフです。 さて、今回は「市販のルー」を使って 「ブフ・ブルギニヨン」 なる物を作って行きましょう。 「ブフ」は牛肉のこと、「ブルギニヨン」はブルゴーニュ風のと言う意味の、それぞれフランス語です。呼び方は違えど、 つまりはいつもの「ビーフシチュー」 ですがフレンチ風に、ちょっとオシャレに美味しくしていきたいと思います。 二人の記念日に、または家族の記念日にいつもよりちょっとだけ気合を入れて、たっぷりの愛情と、ワインとトリュフオイルを煮込んでみましょう。 そんな 特別な夜の「ブフ・ブルギニヨン」 、そして、簡単なのにたちまち「フレンチ」な一皿になる 万能付け合わせ「ガルニチュール」 を作っていきましょう。 ■ブフ・ブルギニヨン(材料/下準備) 調理時間 1時間30分 1皿分 645Kcal レシピ制作:佐藤 尊紀 <材料 4皿分> 本日のルー(SB フォン・ド・ボー ディナービーフシチュー) 1箱 牛肉 350g 塩 適量 ホワイトペッパー 適量 赤ワイン(カーニヴォ・カリフォルニア・カベルネ・ソーヴィニヨン) 200ml 玉ネギ(中) 1/2個 マッシュルーム 1パック(大小合わせて7~8個) ニンジン 1本 水 700ml ローリエ 2枚 固形スープの素(コンソメ) 1個 ケチャップ 大さじ2 ソース 大さじ1 ハチミツ 大さじ1 バター 15g トリュフ油(白) 大さじ1 生クリーム 小さじ1 パセリ(あれば) 適量 <下準備> ・「牛肉」は一口大より少し大きめにカット。大きいと盛り付けが「映える」のと柔らかく煮込むので大きい方が理想的です。脂身は中火でゆっくり脂を出して、焼き油として使うことにより香りやコクが増します。 ・「玉ネギ」は、皮をむき、タテに半割りにしてからくし切りに。 ・「マッシュルーム」は土をキッチンペーパーなどで優しくはらい、石付きがあれば切り落とします。大きいものは4等分に、小さい物は2等分にカットします。 ・「ニンジン」は皮をむき、頭の方に十字に切り込みを。今回は普段との差を付けたいので具材としては使いません。香味野菜なのでお出汁として活躍してもらいます。 ・バットに牛肉と香味野菜を分けて、牛肉に塩とホワイトペッパーを。塩コショウでの下味付けを 「アセゾネ」 と言います。 スパイシーにしたくないので今回はホワイトペッパーを使います。 ■ガルニチュール・ブルギニヨン(付け合わせ)(材料/下準備) <材料> ベーコン(ブロック) 100g 玉ネギ(中) 1/2個 マッシュルーム 1パック(大小合わせて7~8個) <下準備> ・「ブロックベーコン」を1cmの厚さにスライスします。この1枚が約25gほどです。更にそれを1cm幅の棒状に切ります。 ・「玉ネギ」と「マッシュルーム」は煮込み用と同じ切り方です。 ガルニチュールとは付け合わせのこと。今回の 「ガルニチュール・ブルギニヨン」 は色々と使いまわせる 万能な付け合わせ なので、定番の付け合わせにレパートリーしてみてください。たくさん作り置きして冷蔵庫で5日ほど持ちます。ハンバーグに合わせたり、グラタンに入れたり、オムレツに入れても良いですし、ピザの具材にも。茹でたジャガイモと一緒にソテーすれば「ジャーマンポテト」にもなります。コンソメで煮込んでオニオンスープにも使えるなど、まさに 万能 です。 ■作り方 1、中火のフライパンに分量外のサラダ油と牛脂を入れ、 しっかり脂が出たところで、強火に 。少し煙が出てきたところで「牛肉」を投入。水気があると油が跳ねるのでキッチンペーパーなどで拭き取り、しっかりと焦げ目を付けて焼きましょう。これを 「リソレ」 と言います。煮込み料理はカレーでもなんでも、肉でも魚でもホワイト系の煮込みの時以外は 「しっかりと焼き目をつける」 こと。これがコクを出す煮込み料理のポイントです。 少々キッチンが汚れますが大切な 「愛の隠し味」 と割り切ってください。 2、「牛肉」が焼けたら順に鍋に移します。結構フライパンが熱くなっているはずなので、一度弱火にしましょう。 お鍋は4皿分のルーなのであまり大きくなくても大丈夫。「小さめで深い鍋」が適しています。 3、同じフライパンで「ガルニチュール」を作っていきます。弱火のままで「ベーコン」を投入し、ゆっくり脂を出します。脂が出てきたら」玉ネギ」を入れ、ほぐれてきたところで「マッシュルーム」を。マッシュルームはフランス語で 「シャンピニヨン・ド・パリ」 と言います。全く関係ありませんが、なんかオシャレです。食卓での会話にでも使ってください。 味付けはフライパンにお肉の塩コショウが残っていますし、ベーコンも塩気が強いので、軽く塩コショウ程度に。最後にシチューに盛り付けます。 4、「玉ネギ」が透き通ったら形の残った状態で「ガルニチュール・ブルギニヨン」完成。余熱で火が入るのと、盛り付け時に温め直すので、なるべく形は残してください。バットに移して、密閉しない程度「ふわっとラップ」をかけましょう。むれないように蒸気を逃してあげます。 5、今回はまだフライパンは洗いません。最後に<煮込み用>の「玉ネギ」と「マッシュルーム」を炒めましょう。もし脂が足りなければサラダ油を足してください。煮込む時にアクと一緒に取り除くので、この時点でオイルが多くても問題ありません。先に「玉ネギ」をソテーし、ほぐれて来たところで「マッシュルーム」を。玉ネギが少し透き通る程度でOKです。これをすでに肉が入っている鍋に移してください。 6、空のフライパンをたっぷりの「赤ワイン」で洗います。軽く沸かしながら木ベラで底に残った「旨味」をこそげ落とします。この動作を 「デグラッセ」 といいます。職場としてのキッチンでこれをしないと、先輩にめちゃくちゃ怒られます。要はこのような 「美味しさを追求した動作」がフレンチ なのですね。 7、こそげ落としたら、鍋に移しますが、おコゲが入らないように茶こしや油こしで濾しながら移してください。そしてやっとフライパンの役目が終了です。ありがとうフライパン!お疲れ様でした。 ここまででおおよそ20分程でしょうか。 8、ここから煮込み料理の主役お鍋のお仕事です。材料が4皿分と少量なので、意外と煮詰まりやすいです。お水とニンジンを入れて、 深さの8割ほどにおさまる、小さめで深いお鍋 がベストです。火加減は 強火 で沸かして行きます。 今回はしっかりとコクを出したかったのと、グラスで楽しむ時に、ソースに負けない、はっきりとした飲み応えれが欲しかったので、リーズナブルでも濃厚なカリフォルニアの赤ワインを選んでみました。ですから軽やかなワインよりもアクが多く出るかも。 9、 5分を過ぎると沸き始めます。 丁寧にアクを取って行きましょう。ポイントは 完全に沸騰させない こと。ボコボコ沸かしてしまうとアクが散り、また沈んでしまいます。アクはスープを濁らせますし、雑味にもなります。 ちなみにアク取りのことを 「エキュメ」 と言いますが、これもきちんとやらないと先輩にきっちり怒られる工程です。「デグラッセ」と「エキュメ」大事です。ここまでで お水を入れてから約10分 ほどです。 10、 <煮込みの調味料> を入れて、ここからコトコト 50分弱火 で煮込んでください。このポコポコとあぶくが出るくらいの火加減を 「ミジョテ」 と言いいます。最近はスーパーのスパイスコーナーにも「ブーケガルニ」なるものが少量で売っていますので、更にこだわりたい方はお使いになってみてください。中身はハーブとスパイスです。ローリエ、セロリの葉、タイム、ホワイトペッパーの粒が一般的。これらがお家にあるのでしたら、キッチンペーパーに巻いて凧糸で縛ってもよし、お茶パックに入れてもよし、煮込んだ後に 取り出しやすくする ことがポイントです。 11、 弱火で煮込むこと50分 。ローリエと人参を取り出します。この後でルーを入れますが、是非ここでスープを味見してください。この時点ですでに、お肉のコク、野菜の甘味、ワインの酸味、が素晴らしく合わさっているはずです。やさしい洋風のおダシ感に溢れています。丁寧に愛情を込め、頑張っている 自分のテンションが上がります 。 12、「ルー」と「バター」を入れ、ゆっくり 溶かすこと約5分 。この時に早く溶かそうと、かき混ぜ過ぎるとお肉が崩れます。お肉を崩さないように 「優しく攪拌」 が基本です。 13、ルーが溶けてから 5分ほど弱火で煮込みます 。とろみが出てきたら完成も間近。ここで最後の味見を。もし濃いなと感じたら お水で調整してください 。そして白トリュフオイルを投入する前の最後の味見です。味を記憶に残しつつ、 「白トリュフオイル」を投入 。テーブルでその劇的な変化をお楽しみください。そしてきっと大切な人のお口に入るのが、とても待ち遠しくなります。 14、盛り付けは、より感動を引き出すべく 「映え」 を意識しながら盛り付けてください。ポイントは なるべく高く盛り付ける こと。真ん中にお肉をほどよく積み上げ、その後でスープを注ぐと上手くいくと思います。電子レンジで温めたガルニチュールを周りに盛り付けて 「ブフ・ブルギニヨン」完成! 「生クリーム」を少しかけたり、「パセリ」があればなお「映え」ます。 赤ワインは 冷蔵庫の野菜室で冷やす と、程よくワインセラーの温度に近づきます。リーズナブルでも濃厚な 「カーニヴォ・カリフォルニア・カベルネ・ソーヴィニヨン」 を大きめのグラスに注ぎ、 できたらBGMなんかも流しつつ乾杯を。 大切な人との食卓をムードたっぷりにお楽しみくださいませ。 どうか今夜が素敵な夜になりますように…。 ■家メシを「特別な夜の一皿」に変えるアイテム 「白トリュフオイル」は、家メシを劇的に変える必勝アイテム。ちょっぴり思い切りが要るかもしれませんが、その変化はまさにプライスレス!後悔はさせません!白トリュフオイルを活かすお料理は今後またご紹介していきます。 ※ハチミツは 1 歳未満の乳児には与えないでください。乳児ボツリヌス症にかかる場合があります。
2020年09月05日