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大阪市にある、ごく普通の公立小学校である大空小学校は、
不登校児が0人。それは、それぞれの子に、それぞれの居場所があるから。
ドキュメンタリー映画
『みんなの学校』は、大空小学校の日常を丹念に描いて大ヒットし、商業映画館での上映は終わったものの、2016年度の自主上映会は全国で800回以上におよび今年も昨年以上の勢いで広がっています。
映画で輪の中心にいるのは、初代校長を務めた
木村泰子先生。自分が受けてきた教育をベースにした「学校観」に引きずられ、子どもを「良い子」「悪い子」の枠にはめがちなママたちと、これからの子育てに必要な「生き抜く力」についての勉強会が開催されました。
※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。
木村 泰子先生プロフィール
大阪市出身。
大阪市立大空小学校初代校長として、「みんながつくるみんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめながら、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画
『みんなの学校』が話題に。2015年に退職後、現在は、全国各地で講演活動を行っている。
木村先生については、
「『みんなの学校』流 親子関係のつくり方」「ママのプロになる!」もぜひご覧ください。
■多様な国際社会で、「なりたい自分」になるには?
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木村先生(以下、木村):
最初に、「大空式」の自己紹介からお話しましょう。大空小学校(以下、大空小)では、「自己紹介をする」という人との関わりの中で、4つの力を高めることを意識しています。
<大空小で大切にしてきた4つの力>
・「人を大切にする力」
・「自分の考えを持つ力」
・「自分を表現する力」
・「チャレンジする力」
この4つの力があれば、子どもたちは、これからの多様な国際社会で「
なりたい自分になっていけるよ」と、大空小の子どもの周りにいる大人は考えました。
■人と違うから「自分の考え」になる
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木村:1つ目の
「人を大切にする力」が、簡単なようで難しいのは、なんとなくおわかりかと思います。
2つ目の
「自分の考えを持つ力」。みなさんは、自分の考えを持っていますか? 「夫が、言うから」「ママ友が、言うから」「会社の上司が、言うから」と、
流されてしまう自分が、いらっしゃるのではないでしょうか?
隣や上を見ないで、「まず自分で考えてみよう」という習慣を、大空小の子どもたちはいつも心がけています。この「自分の考え」というのは、
人と違ってあたり前。だからこそ、「自分の考え」なんです。ひとりの子が自分の考えを持ったら、その自分の考えは、「間違いなんてないよ」というまわりの空気が必要です。
■自分を表現できなければ置いていかれる
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木村:3つ目は、
「自分を表現する力」。
いくら人を大切にして、自分の考えを持っていても、これからの時代は、自分を表現しなかったら、置いていかれてしまうことでしょう。「これはイヤだよ」「こうしたいよ」「こう考えているよ」ということを、自然に言えること、これも大切にしたい力です。
もちろん、表現の仕方は、いろいろあります。たとえば、緘黙(かんもく)症(※)で、自分から言葉を発したことがない子。そういう子は自分なりの表現方法、文に書いたり、顔で表現をしたりができますから、まわりはその子を見ていれば、表現を受け取ることができます。
※緘黙(かんもく)症:発声器官の器質的障害がなく、言語の習得に問題がないのに、特定の場面でずっと声が出ない状態のこと。たとえば家では普通に話ができるのに、学校や幼稚園に行くと一日中声が出ない状態が何ヶ月、何年間も続く症状
4つ目は、
「チャレンジをする力」。
「こういうことを、やってみたい」「こういうことを、やろう」とチャレンジする気持ちは、「未来を作っていく」と思うんです。