コミックエッセイ:こうして赤子を授かった~中村こてつ不妊治療体験記~
不妊治療中の心理カウンセリング「子どもが欲しい」と強く思えない理由がわかった【こうして赤子を授かった~中村こてつ不妊治療体験記~ 第43話】
3回目の受精卵移植失敗後、心理カウンセリングを受けたこてつさん。深い自己分析をすることで、治療に対する意識にも新たな発見があったようです。不妊治療を2005~8年に受けた中村こてつさんの体験談。
心理カウンセリングで見えてきた「自分の本音」
前回のカウンセリングの続きです。
姉弟間の関係で、両親から「必要とされていない感」をずっと感じていた私…。
高校での部活の話もしました。
私はキャプテンでしたが、監督は厳しく、何かあると「お前にその資格はない!」とすぐにキャプテンを交代させられました。しかも私は上手いほうではなく、キャプテンなのに補欠というポジション。
プレイが上手くないうえに、部員を力強く引っ張ることもできず、「監督は別の人に本当はキャプテンになってほしいんだろうな…」と、劣等感と自分が必要とされていない感を強く感じていました。
実際、両親や監督がそんな風に思っていたわけではないのかもしれません。でも、私の受け取り方はそうであったことは事実。ずっと自分を必要としてくれる人、愛情に飢えていたのかもしれません。
そんな中、オットに出会いました。
年が一回りも離れたオットに対して、私はとても安心感を持ちました。自分に自信がないから、同年代と付き合うことはありませんでした。「若い」分、捨てられないはずという歪んだ考えがあったのです。
愛情に飢えていた分、オットと出会ったことで今までの人生を『生き直して』いるのかもしれませんね、と心理士さんが言いました。
だから、すごく2人の生活が幸せで、満足している。そんな中に、「赤ちゃん」という存在がやってきたら? オットはその子をとても愛するだろう。
そしたら私は? 私の幸せな生活が壊れてしまう? せっかく私を必要としてくれる人が現れたのに…。
…心理士さんは教えてくれました。妊娠することで喜びや希望を得る反面、失うものもある、と。それは、2人の楽しい生活だったり、経済的な余裕であったり、好きに人生を謳歌できる自由であったり。
それを「喪失」と言うのだそう。
「喪失」という言葉は「毎周期、妊娠できなかったときに感じる気持ち」としても以前学んでいました。でも、妊娠した場合も、喪失を感じるとは…。
だから私は妊娠できたとき、激しく動揺し、怖かったのかもしれません。だから私は子どもを強く求めないのかもしれません。
心理士さんから言わせれば、私が生まれて育ってきた環境を考えると、そういった思考になることは当たり前のことであるとのこと。妊娠して流産して、気付くことができたことは、かえって良かったのかもしれないと。
ずっと、嫌われないように、丸く収まるように、気付かないうちに自分を犠牲にしてきたことも多かったのでは?
あなたは他人にはOKを出すけど、自分自身にはOKを出さない人。他人にNOを出すことに罪悪感を感じる人なのでは? と聞かれました。
本当にその通りです。
だからイヤなことがあっても「でも、これがあるからいいか~」と、別の良い面でカバーしてイヤなことを放置してしまう。
イヤなことはイヤだなと感じることも必要。「○○がイヤだ~っ!」と思っていいんですよ、そこに罪悪感を感じる必要はないんですよ、と心理士さんは続けます。