連載記事:AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方
子どもの「考える力」を見逃さない方法【AI時代を生き抜く「自信が持てる子」の育て方 第2回】
「子どもたちが、もっとできると確信しているからこそ、厳しいことをいう」と沼田先生(撮影:中村 年孝)
子どもたちがやる気を引き出すためには、
「仕掛けて、仕掛けて、さらに仕掛ける」と語るのは、現役の小学校の先生ながら、児童の自主性・自立性を引き出す斬新でユニークな授業が新聞やTVでも取り上げられて話題となっている
沼田晶弘先生。
沼田先生は、「これからの子どもたちに求められる能力は、
『考えを言葉にする力』」といいます。ではどうやって子どもたちに考え、学び、自分の意見が言えるようなきっかけを作れるのでしょうか。
■学ぶ楽しさを知るために必要な3つのこと
沼田先生の教室の風景。「NGワード」(うれしい、たのしい、またやりたい、おいしい)とは感想文、日記を書くときに使ってはいけない言葉。この言葉をNGとすると、子どもたちの語彙力はとてもアップすると沼田先生はいいます。
沼田先生は、「子どもは勉強をしないといけないことはわかっている。
いかに、楽しく学べるかが重要」と話します。そのための勉強を楽しくする方法とは? 親にもできるアプローチ法を教えてもらいました。
まずは、第1回
「子どもの“やる気”を引き出す親、子どもの心を動かせない親」について触れます。
親としては、「やる気にさせることを見つけることこそ大変なんだ」と思うかもしれません。でも、意外と発想の転換をするだけで、変わることもあると沼田先生は言います。
「本来学ぶことは楽しいはず。知識が増え、考えが深まって、できないことができることに変わっていく。でもそれを教えてくれる大人がいない。にも拘らず『これをやりなさい』『あれもやりなさい』と言われ、子どもたちにとって勉強は
『やらされるもの』になりがちです」。
そこで、沼田先生が学ぶ楽しさを知ってもらうために必要な3つのものを教えてもらいました。
「一つめは、「課題」。
「やってみよう」と提案するとき、必ず「これから何をやるのか」「どうやるのか」をわかりやすく説明します。
二つめは、「制限」。
「課題」を出すとき、同時に何らかの「制限」をつけるのです。できることが限られると、子どもたちは許された範囲でできる最大限のことは何か、どうすればそれをやれるのかと、ワクワクしながら考えはじめるからです。
三つめは、「報酬」。
「課題」を達成したあかつきに、子どもたちが手にすることのできる成果やご褒美について、最初にきちんと提示してあげます。
出典:『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(沼田晶弘(著)/あさ出版)
沼田先生のクラスではこの「課題」「制限」「報酬」をうまく利用したテストがあります。先の回でも触れた「U2(ユーツー)」。これはUnder 2minutes、つまり制限時間が2分で行う「81ます計算」のことです。
この計算テストを行う際に、沼田先生は音楽をかけます。
沼田先生とっては、音も子どもたちをやる気にさせる小道具のひとつで、
「音」を流すことで子どもたちの気持ちをワクワクさせます。
「テスト開始のときも、まずファンファーレが鳴り響く。次にクイーンの『ウィ・ウィル・ロック・ユー』(We Will Rock You)がかかって、これが準備時間。そしてテストがはじまると、F1のテーマソングでおなじみのT-SQUAREの『TRUTH』がかかる。すると、みんなもう一生懸命、集中してテストに挑みます」
2分という「制限」があるので、みんなそれを切りたくなる。すると自然と練習にも熱が入るそうです。さらにこのテストで2分を切った子にはシールという「報酬」が与えられます。
「1日5枚練習してきたり、休み時間にU2をしたりする子もいる。
あるお母さんから『家から帰ってきたら、一目散でU2をやっている』」と連絡が入ったことがありました(笑)。1枚に81問あるわけですから、5枚といえば400問を超える。それは早くなりますよね。記録があがれば誰もがうれしい。だから、みんな知らず知らずのうちに集中して打ち込む。そして、気づけば学力もあがっているというわけです」