連載記事:榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議
ハイハイ「いつから? しない、遅いはどうして?」手足の発育が心配【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第5回】
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寝返りがうてるようになった、お座りできるようになった…。子どもの成長は本当に早いですよね。どんどん動きが活発になる赤ちゃんを見ていると「がんばれ、がんばれ!」と心からエールを送りたくなります。
でも、その成長の途中で「ちょっと心配」と思ってしまうこともあるかもしれません。
例えば、ハイハイ。「ハイハイが遅くて心配…」「ハイハイをほとんどせずに立ち始めたけど、大丈夫かな?」といったお悩みを持つお母さんは多いようです。
今回は、榊原先生にハイハイを含めた「子どもの手足」にまつわる不思議について教えていただきました。
お話をうかがったのは…
医師・お茶の水女子大学名誉教授
榊原洋一先生
お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。
■子どもの成長に「ハイハイ」は必要?
――先生。今回は子どもの手足についていろいろ教えてください! 成長の過程としてハイハイから二足歩行へ…といわれていますが、「なかなかハイハイがはじまらない」と心配になってしまうお母さんも多いようです。
榊原洋一先生(以下、榊原先生):ハイハイは必ずするもの、と思っているお母さんは多いかもしれませんね。
でも赤ちゃんの中にはハイハイせずに歩き出す子もいるんですよ。
――えっ…。いきなり歩きはじめる子がいるんですか?
榊原先生:います。全体の3%くらいの赤ちゃんは、おしりでずり歩きして移動し、そのまま歩きはじめるようになる子がいます。
――そうなんですか…! ハイハイは「歩くための準備期間」のようにとらえていたのですが、違うのでしょうか?
榊原先生:「ハイハイができる」というのは腕と手足が交互に動かせる。首が座り、前方を向いていられる。奥行きを理解できる。これらができている、という証拠なんです。
ハイハイは赤ちゃんの運動として、とても良いものだと思います。でも「歩きはじめるために必ず必要か」といわれると、そういうわけではないんです。
――「ハイハイをしはじめる時期はこのくらい」というのがあって、その時期になかなかハイハイがはじまらないと「何か体に問題があるのでは?」と不安に思うお母さんも多いと思うのですが。
榊原先生:ハイハイしないからといって運動発達に問題がある、という事実はありません。先ほどの、おしりでずり歩きしているうちに歩きはじめるお子さんがいるように、ハイハイしなくても正常に運動機能は発達していくんです。
――つまりハイハイの時期が遅いとか、ハイハイしないことで悩みすぎることはない…?
榊原先生:医者目線でいうと、脳の発達やほかの病気に関係していることも一部あるので「絶対に問題ない」とはいえないものの、ハイハイしなくても歩きはじめる場合があるのは本当ですよ。