連載記事:榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議
ハイハイ「いつから? しない、遅いはどうして?」手足の発育が心配【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第5回】
■指しゃぶり、こぶししゃぶりをするのはなぜ?
――先生、手足のバタバタと同じように不思議なのが指しゃぶりや、グーにした自分の手を口の中に入れようとする「こぶししゃぶり」といわれるものです。これはなぜするのでしょうか?
榊原先生:ひとつに、赤ちゃんは口まわりがいちばん発達していることが関係しています。1歳くらいまでは目にしたものを自分で口に持っていき、確かめようとします。
もうひとつは、人の体の中で「指先」や「舌」などが敏感な部分だからです。発達している口まわり、そして感覚のするどい舌で何かを確認しようとするわけですね。
何も持っていない状態で、赤ちゃんが確認できるものといったら、何だと思いますか?
――…自分の手、ですか?
榊原先生:そうです。何も与えなければ、自分の手しかありませんよね。足もありますが、体勢的に口に含むのは難しいでしょう。
手を口に入れるのは、手しか口に入れるものがないからなんです。
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――…なるほど。
榊原先生:手を口に持っていくことで、口は手を感じますし、手は口を感じますよね。感覚のするどい手と口がお互いの感覚を楽しむことができる。赤ちゃんは口と手の感覚を楽しみながら、探索しているのだと思います。
こぶしごと口に入れてしまうのは、まだ手と指を別々に動かすのが難しいからです。赤ちゃんは最初、手をにぎった状態で生まれますし、パーだと大きくて口に入りませんよね。
たまたまグーにした状態のときに手が口の中に入り、それがこぶししゃぶりと呼ばれているのかもしれませんね。
うちの孫は手を開いているときに口に入れて、指先が鼻の穴に入ってしまうこともありますよ。
――そうなんですね(笑)。面白いお話をたくさんありがとうございました!
今回は、子どもの手足にまつわる不思議について、お話をうかがいました。赤ちゃんは必ずハイハイするものと思っていましたが、いきなり歩き出す子も一定数おり、必ずしも通る道ではないことを知りました。
また、赤ちゃんの不思議行動は、自分の体を知るための探索行動であることも興味深く感じました。そうと分かると、手足をバタバタしたり、こぶししゃぶりをしている我が子を見る目が変わりますよね。「あ、試しているな~」とママも楽しい気持ちになるでしょう。
次回も子どもの体の不思議についてお話をうかがいます。
お楽しみに!
参考図書:
『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)
榊原洋一著
子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。