子どものきき手「いつ、なぜ、どうやって決まる?」【どうして9割が右ききとなったのか? きき手の不思議 第1回】
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お絵描きをしたり、お箸を使ってごはんを食べたり…。器用に指先を使うようになると、わが子が右ききなのか、左ききなのかが分かってくるようになりますよね。
けれど、なかには「左も右もどっちも使っている…」「左ききみたいだけど、なおしたほうがいいの…?」という不安や疑問がわいてくる人もいるようです。
そこで今回は『左対右きき手大研究』(化学同人)の著者である八田武志先生、に子どものきき手にまつわる疑問についてうかがってきました。
お話をうかがったのは…
関西福祉科学大学学長 八田武志先生
専門分野は、脳と行動とのしくみ解明を目指す神経心理学。特に左ききの脳のしくみ、左右脳の働きの違い、中高年者の加齢による脳の働きの様子を調べ、脳機能低下を予防する研究をおこなっている。
■「右ききか、左ききか」きき手は何歳ごろに決まる?
――わが子がスプーンやフォークを使ってごはんを食べはじめたとき「この子のきき手はどっちかな?」と気になったことがありました。そもそも左きき、右ききというのは、いつ頃から分かるものですか?
八田武志先生(以下、八田先生):親が子どものきき手に関心を持ちはじめるのは、2歳ごろからが多いでしょうか。
でも2歳だと、きき手はまだ確かではないんですね。
――何歳くらいから分かってくるんですか?
八田先生:そうですね。アメリカの著名な発達心理学者の研究によると、0~1歳ではまだ左手、右手のどちらを多く使うなどの偏りは見られません。
2~3歳になると偏りは多少あるけれども、どちらの手も使っている状態になります。そして4~6歳になるともっぱら片方の手を使うようになり、7~14歳で安定して一方の手を使うという結果が出ているそうです。
――長い…! きき手が決定するまでには、思ったより時間がかかるんですね…!
八田先生:人が手を自由に動かし、細かい運動ができるようになるには生まれてから5年以上の年月が必要になります。きき手が分かるのは自由に手先を動かせるようになってから…の話なんですね。
――なるほど! きき手の判明は身体の発達とも関係しているんですね。
■「9割が右きき、1割が左きき」その意味は?
――先生、世間では圧倒的に右ききの人が多いですよね。右ききの私は、左ききの人に出会うと昔からなぜか「かっこいい…!」と思ってしまうのですが(笑)。右ききの人が多いことに理由はあるのでしょうか?
八田先生:研究によれば、きき手の決め方や文化差による違いを考慮しても、全世界で右ききではない成人は10%程度といわれ、90%は右ききといわれています。
――左ききの人は10人中、1人…! やっぱり少ないですね…。
八田先生:「なぜ右ききが多いのか?」という疑問は多くの人が持っているかもしれません。でもこの問いに対する明確な答えは「今のところない」といえるでしょうね。
――右ききが多いのはなぜなのか。はっきりとした理由は解明されていないということでしょうか?
八田先生:そうです。
考えられる説はいくつかあるのですが…。現時点で私がお答えするとすれば「右ききが生存に適していたため」でしょうね。
――右ききが生存に適している…?
八田先生:人は生まれてから死ぬまでの発達過程で、環境と相互に関わり合いながら遺伝子情報があらわれます。
手の運動は、脳の運動野がコントロールしています。手指の運動に関しては、右ききの人は左脳の運動野、左ききの人は右脳の運動野の働きが優れるようになるんです。
人類の祖先には、このような左右脳の差を持たないケースも存在していた可能性はありますが、右ききの遺伝子情報を持つ方が、なんらかの理由で生存に適していた、と考えられるのではないでしょうか。
――右ききが生存に適しているのなら、どうして全員が右ききではないのでしょうか?
八田先生:左ききの人がいなくならないのは、左ききの人も人類にとって重要な役割を担っているからでしょう。
右ききが生存に適している理由、左ききが担っている重要な役割は、残念ながらはっきりとした答えはまだない状態です。
でも、全員が右ききにならず、1割の左ききが存在しているのは事実ですよね。この事実が何を示すのか? これからの研究で明らかにされていくかもしれませんね。
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