子どものきき手「いつ、なぜ、どうやって決まる?」【どうして9割が右ききとなったのか? きき手の不思議 第1回】
■子どものきき手はどっち? 簡単に見極める方法
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――子どものきき手がどちらかハッキリしないと、もやもやすることもあります。きき手を見極める方法などはあったりするのでしょうか?
八田先生:きき手を見極めたいときは、片手で行う日常生活での動作について、どちらの手を使うかをたずねる質問紙法というのがあります。
――質問紙法…?
八田先生:片手動作をできるだけたくさん挙げたうえで、判別力の高い動作を再現性などをふまえたうえでふるいにかけます。さらに、統計学に基づく手続きをへて、10~20項目程度に精選して作成されたのが、質問紙法です。
――質問紙法に答えていけば、きき手がある程度は分かる…?
八田先生:そうですね。大体の傾向は知ることができます。でも片手で行う動作は、例えば近年出現したスマホでの文字打ち動作などのように時代とともに変化していくので注意が必要です。
ただし、質問紙法は大人のきき手を見極める場合に有効で、文章の理解力などを考えると、幼児や年少の児童には不向きでしょう。
――なるほど…。では、わが子のきき手を見極めるにはどうすればいいのでしょうか?
八田先生:先ほどもいいましたように、きき手が分かるまでにはある程度の時間がかかります。質問紙検査よりも簡単な動作を行わせることで判定するのが良いでしょう。
――具体的にどんな方法になりますか?
八田先生:身体の正面、右側、左側にオモチャなどを置いて、どちらの手で取り上げるかを観察することです。オモチャの位置に関係なく、距離が近い・遠いに関係なく、手を正面でクロスしてでもオモチャを取り上げる場合は、その手をきき手とみなして良いでしょう。
――なるほど…! それは分かりやすいですね。何度か位置を変えてオモチャを置いてみる。どちらの手で取ろうとするかで、その時点でのきき手が分かるんですね。
■きき手を決めるのは遺伝子? 大人になってもきき手が変わらない理由
――先生、大人になってから自然にきき手が変わることってありますか?
八田先生: 気づかないうちに自然にきき手が変わることはないでしょうね。
――大きくなってからきき手を変えるのは相当難しい…ということですか?
八田先生:そうですね、難しいです。その理由として、きき手は遺伝子情報による脳の働きで、手指の運動をコントロールしているからです。つまり一定の年齢になると遺伝によって左右どちらからの手を偏って使用する傾向が生まれる、ということです。
――持って生まれた遺伝子情報にそって、きき手が決まる…。
八田先生:そうです。きき手の変更は絶対不可能ではありませんが、あらわれてきた遺伝子情報に逆らうことになりますよね。だから、自然に変わるのは無理なんですね。
――自然にさからって変えようとするのは、大変なんですね。
八田先生:そうですね。運動行為は自動性が強いのが特徴です。だから一旦できた左右手の運動プログラムは、意識しなくても自動的に発動します。
そのため、消したり変えたりするのは簡単ではありません。もし変えようとするなら、かなり意図的な訓練作業が必要になると思います。
子どものきき手は遺伝情報にともない、自然に決まること。きき手がしっかりとあらわれるまでには数年の月日が必要なことが分かりました。
まだまだ知りたいきき手のこと。次回は「左ききは右ききになおすべき!?」というテーマでお話をうかがいたいと思います。
参考図書:
『左対右きき手大研究』(化学同人)
著 八田武志
「なぜ右ききが多いの?」「きき手はどうやって決めるの?」「スポーツ選手は左ききが有利?」などなど。世の中の「きき手」にまつわる素朴な疑問やうわさについて、研究例を基に紹介。きき手の不思議を探求する一冊。
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