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妊娠中期はおなかがふっくらとしてきて、「おなかが張る」状況もわかりやすくなります。
ママはおなかが張ると不安になるかもしれませんが、その原因と対処法は複数存在します。そこで今回は、おなかが張るさまざまな原因とその対処法を詳しく紹介していきます。
【監修】
成城松村クリニック院長 松村圭子先生
婦人科専門医。1995年広島大学医学部卒業、同年広島大学付属病院産婦人科学教室入局。2010年、成城松村クリニックを開院。女性の「体の健康」「心の健康」のために、一般の婦人科診療だけではなく女性のあらゆる面をトータルにケア。講演、執筆、TV出演など幅広く活動。
著書に、『女30代からのなんだかわからない体の不調を治す本』(東京書店)、『医者が教える女性のための最強の食事術』(青春出版社)など多数。
■妊娠中期におなかが張る10の原因
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そもそもおなかが張るってどういうこと?
妊娠中は体の変化が著しいです。おなかの赤ちゃんはどんどん成長していて、ママのおなかもどんどん大きくなっていきます。そこに「黄体ホルモン」という「妊娠の成立や継続に深く関わるホルモン」が加わり、いくつもの症状が出てくるのです。
「おなかが張る」症状はそのなかのひとつです。赤ちゃんの成長とともにママの子宮も大きくなっていきます。子宮は「平滑筋」という筋肉でできていて、袋のような形をしています。この子宮の平滑筋が収縮すると、ママは「おなかが張った」と感じるようになるのです。
妊娠中に分泌される黄体ホルモンは、おなかの張りが起こらないように作用するのですが、子宮以外の部分にも関わってしまうため、体のあちこちでマイナートラブルが起こってしまうのです。
ここからは、妊娠中期に起こりがちな「おなかの張る原因」に焦点をあて、詳しくみていきましょう。
参考サイト:日本看護協会「妊娠」
妊娠中期におなかが張る原因1: ガスがたまっている
おなかの張りでまず考えられることは「おなかにガスがたまっている」ということ。これは妊娠中期に限らず起こることでもあります。
ただ、妊娠中のおなかのガスがたまる原因として、妊娠中に分泌される黄体ホルモンが関係します。黄体ホルモンは消化管のぜん動運動の低下を招き、腸管からのガス排出がスムーズにいかなくなり、おなかにガスがたまっていくのです。
消化管の機能は個人差がありますが、たまったガスは物理的に排出しなくてはなりません。そこでおすすめなのが「ガス抜きのポーズ」です。
「ガス抜きのポーズ」のやり方
1.まず仰向けに寝て、両足をそろえて伸ばします。
2.次に、息を吸いながらで片方の足を曲げてひざを抱えます。
3.息をはきながら、曲げた足を胸に引き寄せて、呼吸5回する間キープします。
4.反対の足も同様に行います。
これはおなかの張りやガス抜きに効果的なので、毎日の生活に取り入れてみては? ただし、おなかが出て難しい場合は、できる範囲で調整しましょう。
妊娠中期におなかが張る原因2: 便秘
妊娠すると、おなかの胎盤から多くの黄体ホルモンが分泌され、消化管のぜん動運動が低下します。すると水分吸収が多くなり、便が硬くなってしまう
「弛緩(しかん)性便秘」になりやすいのです。
また、妊娠中期になると子宮が大きくなってきたことによって、外側から腸が圧迫されるため便秘を起こします。これは妊婦の約50%が訴えている症状でもあります。
予防や治療方法としては、以下の方法があります。
・朝の便意を我慢しない
・朝食は欠かさずに食べる
・早起きを心がけ、時間の余裕をもつ
・食物繊維をしっかりとる
・仕事中でも便意があったらトイレに行く
参考サイト:
東彼杵郡医師会「おなかが張る(腹部膨満感)」
徳島県医師会「妊娠と便秘症」
妊娠中期におなかが張る原因3: 動きすぎた
妊娠中のママが家事や仕事などで動きすぎても、おなかの張る原因になります。とくにつわりが治まったあとは、「ようやく不快な気持ち悪さから解放された」ということで、家事や仕事をまとめてこなしたくなるのもわかります。
ただ、やはり過度な動きすぎには注意が必要です。自律神経やホルモンバランスの関係で、1日に何回か子宮収縮を繰り返すのは普通にあることです。
しかし、疲れているとそれ以上の「さらなるおなかの張り」を引き起こしてしまいます。張ったと思ったら、一度休憩をとりましょう。横になれる状況ならば横になって、しばらく安静にすることが大切です。
妊娠中期におなかが張る原因4: 激しい胎動
妊娠中期では赤ちゃんも少しずつ大きくなり、「胎動」を感じるママも多くなってきます。胎動とはおなかの中の赤ちゃんが動いて、赤ちゃんの体がママの子宮の壁に当たって、動きを感じる現象です。
妊娠5~6カ月ころには胎動がわかり、妊娠週数が進むにつれてだんだん力強くなっていきます。赤ちゃんは20~40分の周期で寝たり起きたりを繰り返しているため、同じ周期で動いたり、大人しくなったりします。ときには激しい胎動によって子宮収縮が起こり、おなかが張ってくることもあります。
妊娠中期におなかが張る原因5: 疲れがたまっている
疲れがたまっているときは、おなかも張りやすくなっています。妊娠中は何でも無理は禁物です。疲れたら早めに休憩をとりましょう。
毎日の睡眠も大切なので、十分寝るように心がけてください。心も体も休息をすることでリラックスして、おなかの張りもおさまってくるでしょう。
妊娠中期におなかが張る原因6: 性行為後
妊娠初期はつわりがあって性欲が減退していることがあります。つわりが落ち着いてくる妊娠中期では性欲が戻ってくる人もいるでしょう。経過が順調な場合は性行為も問題ありません。
ただし、無理な体勢やおなかに負担のかかるような姿勢はさけていきます。また、妊娠中の女性は、通常時にくらべ性器が充血しているため、激しいことはやめて、静かに行うことが好ましいです。感染予防のためにコンドームは装着しておきましょう。
注意したいのは性行為前後のおなかの張りです。行為中からおなかが張ることがありますが、そのときは行為を中断して安静にします。一過性のものであれば問題ありません。胸への刺激も子宮収縮の原因となるため、無理に行うことはさけましょう。
行為後の張りが気になる場合には、しばらく横になって安静にして様子をみておきましょう。
妊娠中期におなかが張る原因7:おなかを締め付ける服や下着
おなかの張る原因で、服や下着の締め付けすぎがあります。妊娠5カ月をすぎたころに犬の日の「安産祈願」で「帯祝い」をする風習がありますが、これも少々気を付けなければなりません。
というのも、おなかが重くなってきて、おなかを安定させるために腹帯やベルトを使用する方が多くなってきます。使うのは良いのですが、使用方法がまちがっていたり、しっかり支えようときつく装着してしまったりすると、逆効果になる可能性もあります。
使用方法が適切でないと、締め付けすぎて、逆におなかの張りを招いてしまうことがあるので、注意しましょう。
妊娠中期におなかが張る原因8:冷え
夏に起こりやすいのが、冷房による体の冷えです。暑い時期におなかが大きいと生活しにくいうえ、疲れやすくなり、何かと大変です。
職場でも冷房が効いた部屋にいることが多いかもしれませんが、体を冷やしてしまうとおなかの張りを招きやすくなります。さらにはおなかを壊す原因にもなり、体調を崩しやすくしてしまうので、妊婦はとくに要注意です。
体が冷えてしまいそうな場合は、カーディガンを1枚はおったり、ブランケットをひざにかけたりなど、対策をしておきましょう。
また、冬の寒い時期の冷えなら、暖房を入れたり、靴下を重ね履きしたりなど体が冷えないように温める工夫をしましょう。
妊娠中期におなかが張る原因9:前駆陣痛
「前駆陣痛」とは、妊娠中期から後期に起こる、おなかの一部に出てくる陣痛のような痛みです。痛みは出産ほど強くはないものの、子宮が収縮することで起こり、おなかも張ってきてしまいます。しかし、これは多くの人が妊娠中の経過でたどる反応なので、過度の心配は不要です。
前駆陣痛は起こるタイミングも不規則で、原因も明らかではないものがあります。しかし主に、「妊婦が活動的に動いたとき」「尿を我慢していたとき」「性行為後」「脱水傾向のとき」に生じやすいと言われています。
これらの状況は赤ちゃんにストレスがかかりやすいため、赤ちゃんの血流を保つために前駆陣痛が起こり、子宮が収縮したりゆるむなどして血液を調整している状態です。
前駆陣痛が起こってしまったときは、リラックスして安静にすること、水分補給を十分にすること、などで対処しましょう。
妊娠中期におなかが張る原因10:ストレス
「ストレスは万病のもと」といいますが、おなかの張りに対してもストレスをためるのは良くありません。ストレスはホルモンバランスや自律神経を乱す原因となるからです。ホルモンバランスや自律神経を乱してしまうと、子宮が収縮し、おなかが張りやすくなります。
とくに妊婦はおなかが大きくなるにつれて、体が動きにくくなり、ストレスを感じやすいです。さらに揺れ動く体調の変化や今後の出産育児に対する不安など、精神面でもストレスがたまりやすいです。
上手にストレスを発散できるように、おいしいものを食べたり、休日に友人と出かけたりなど、工夫をしてリフレッシュすることをおすすめします。
マタニティーライフを自分なりに楽しく過ごせると、おなかの張る回数も減ってくるでしょう。