連載記事:子ども×自由の先にあるもの
子どもに「自由」をどう教える?【子ども×自由の先にあるもの 第1回】
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「子どもを自由にのびのび育てたい」というのは、どんな親も望んでいることだと思います。でも、「勉強はしたくない」「宿題するよりゲームしたい」と子どもが言ったときに、なかなか100%自由にはさせられないものです。
そんななか、テストや成績表もなく、生徒たちの多様性を伸ばす教育を実践している学校があります。卒業生には、俳優やミュージシャンとして活躍している星野源さんや浜野謙太さんなど多くの著名人を輩出している自由の森学園。今回は、そんな自由の森学園の鬼沢理事長に、子どもを自由に育てるとはどういうことなのかについて話を聞きました。
お話をうかがったのは…
●鬼沢真之(おにざわ・まさゆき)さん1960年生まれ。1986年より自由の森学園社会科担当教師。2004年4月から、同学園高等学校校長。2013年より、同学園理事長を務める。
●自由の森学園とは
埼玉県飯能市にある私立の中高一貫校。1985年に点数序列主義に迎合しない新しい教育をめざして設立。自分の取り組みを自身で評価する「学習の記録」や、生徒たちが自ら作り上げる行事などが注目を集めている。
■「自由」は子どもたちにどんな影響を与える?
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――なぜ点数と競争にこだわらない教育をしているのでしょうか?
勉強の目的は「テストでいい点を取ること」と捉えている子どもたちが多いのではないでしょうか? 子ども自身
「これを学んで何になるの?」と疑問には思っているのだけれど、親や周りから「偏差値が大切」と言われて、テストのためだけに一生懸命やっているように感じます。
その現状に疑問を抱き、競争心を刺激する教育ではなく、子どもたちが主体的に課題に取り組み、知識を得て成長するという本来の学びを与えたいという思いから学校を設立することにしました。
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――子どもが小さいうちから自分で判断できるのでしょうか? 無制限に「自由」を与えるのも心配です。
ヨーロッパの国々ではかなり早い段階から「あなたが決めなさい。そのかわり、あなたが決めたことにはあなたが責任を持ちなさい」という教育がされています。
いつからその責任を持たせてもいいかというと、もちろん個人差もありますが、私は、日本はいつまでも子ども扱いする傾向が強いと感じています。
高校を出てから自由を得たと感じる人は多いと思いますが、はたしてそれは正しいのか。
近頃では、大学も出席をとるようになり、就職活動も早まり、子どもたちは
「自分自身が何者か」、
「何をしたいか」、
「どんな人生を歩みたいのか」真剣に考える暇もなく、そのまま大人になっている気がしますね。目隠ししている時間が長すぎると、子どもたちは本当の自分の人生を選べないのではないかと懸念しています。
■子どもたちにとって自由の弊害はないのか?
――自由の弊害はないのでしょうか? 「好きにしなさい」と言うと、学ばなくなる子も増えてしまうという懸念もありますよね。
そもそもの学ぶ目的は、
「自分の頭で自分の行く道を選択」して、「自分らしく生きていく大人になる」ことですよね。
そのために学校というのは、10代というある一定の期間に多くのいろいろな体験をさせ、自分の生きていく道を見出すサポートしていくところだと思っています。これまで35年間教育をしていますが、子どもたちがまったく学ばなくなるということはありません。
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――また、自由すぎると社会に適応できないのはないかという声もあると聞きますが、どのように感じますか?
そういう声はあるだろうなと思います。ただそういった声に疑問に思うのは、「はたして
子どもを何に適応させようとしているのだろうか」ということなんです。
極端な言い方をすれば、自分で考える必要がない社会の歯車として、子どもをに適応させたいというように思っているならば、自由は与えないほうがいいわけですよね。