■自由に生きるためには必要なものがある
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――教育において、自由を与えるのがいいのはわかりますが、子どもにとっての自由とは何なのか、なかなか難しく感じてしまいます。
自由とは、なにものにも縛られないということですが、人間社会において、縛られないということはありえませんよね。法律はあるし、配慮しなければいけないことも多い。その制約の中で、どういう風に
自分の意志で歩んでいけるか。
最終的に自由は何かと言えば、「自分の意志で自分らしく自分の人生を決める」ということ。そのためにはまずは社会的制約に何があるのかを知らなければいけないし、自分自身のことを知らないといけないし、能力もある程度は必要です。
――どこまで自由にさせるか、見極めが難しいですよね。どう判断すればいいのでしょうか?
生徒たちが「挑戦したい」と言ったら、応援してあげることもあるし、長く教師をしていれば「それは無理だ」と言う時もある。
時には、失敗することがなんとなくわかっていたとしても、
頭ごなしにダメだとは言わず、失敗経験をさせてあげることもあります。
――あえて失敗から学ばせるということもあるわけですね。ただ、親が同じことをするのはなかなか難しいなぁと感じます。
じつは、私の子どもは自由の森には通わなかったんです。もちろん私自身はここの教育がいいと思っているし、来たらいいなと思ったけれど、それは彼らの自由意志で決めるべきだと思いました。
必ずしも親がいいと思っていることを子どもが選ぶわけじゃないんですよね。そのときにどう振る舞うか、親としては試されているなと思います。
子どもを所有物みたいに感じてしまっている場合、親は過干渉になるかもしれません。
でも、
子どもは自分とは違うということが腹の底からわかれば、子どもとの付き合い方はそれなりに見えてくるでしょう。
■親も自由に生きることが子どもにとって大切
――子どもが自由に生きるために、親にできることはあると思いますか?
私は子どもたちに、節目ごとに自分が何を考えているかをしっかり伝えていました。「選ぶのは君の自由だけれど、僕はこういう風に感じて見ているよ」ということを、受験前や卒業などの節目で手紙を書いて送るんです。
やはり、親は
自分の意見を子どもに伝えなきゃいけないと思います。「これは正しい」とか、「これが好き」とか。大人が思っていることを子どもに伝えることを躊躇(ちゅうちょ)していけないと思う。なぜなら、親が言わなくとも、子どもたちは
親の思いを感じ取ろうとしているから。
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――子どもが「自由」に生きていくために、親ができることはなんでしょうか。
親自身が自分らしく生きていますか? みんな与えられた枠組みの中で、どれだけ自分の思いを実現するかという目的を持って生きていますが、たとえ、それがサラリーマンだろうと公務員だろうと、どこまで自分らしくその仕事を成し遂げられるかは同じですよね。
人工知能(AI)ではなく、
自分にしかできないことにチャレンジすべきだし、さらに実践していかなければと思う。その中でどこまでできるかは、
大人自身も問われていることです。その立ち位置や、向きが子どもに影響するんじゃないかと思っています。
――親自身、子どもになってほしい姿があれば、自分がまずはそれに近づくことが大切なんですね。
私は、百の言葉よりそれが大事だと思います。とくに、一番重要な選択をしなくてはならないような場面で、どういう態度をとるかという事は、子どもにとっては
重要な授業になるんじゃないでしょうか。
親自身が自由ではないのに、子どもたちに自由を期待してはいけないと思います。
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ここまで、自由と子どもについて、鬼沢理事長に話を聞いてきました。学校教育のメソッドを家庭でも生かせそうなヒントを多く教えていただけたと思います。次回は、日本一「ふつうの家ごはん」と言われる学食について話を聞きます。
「なんでできないの!」から卒業しよう。子どもの挑戦する心を育てる、失敗への対応術