中学受験シーズンが終盤を迎えています。2025年の受験率は過去最高を記録。激動する社会の中で、“できるだけ良い教育や環境を与えたい!”と願う親心が反映されているように見えます。
しかし、良かれと思ってはじめた中学受験で、もしも子どもが壊れてしまったら?
非認知能力育成のパイオニアとして知られるボーク重子さんの著書
『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』では、中学受験で子どもを壊すことなく“真の勝者”となるために、子どもの非認知能力を育み、親の意識を改革するための3週間でできるワークをします。早速、ご紹介していきます。
■「合格をゴールにしない」!?
遊びたい盛りの小学生が自分を律して、ライバルと競い合いながら教科書の範囲を超えたハードな勉強を続けていくのは、並大抵のことではありません。本来であれば、伴走する親は子どもを尊重して見守らなくてはならないところ、過度に介入してしまったり、つい小言を言ってしまったり…というのは“受験生の親あるある”ではないでしょうか。

著書によると、ある調査では「親子喧嘩が増えた」「受験が子どものためになっているのか分からなくなった」など、多くの悩みがあるという結果が出ているのだそう。
▼このままでは子どもを壊してしまう?!
そんな中、周囲にアドバイスを求めると、「親の笑顔が一番」「お子さんをありのまま受け止めて共感してあげて」など分かり切った答えばかり…さらに追い討ちをかけるのが、巷にあふれる中学受験情報。ただでさえ敏感になっている中で危機感を煽るようなものも多いため、本来の目的を見失ってしまうとボークさんは危惧します。
こうして、自分の不甲斐なさに落ち込み、子どもの成績も思うように伸びず、イライラが募り、悪循環。このままでは子どもを壊してしまうのでは? という状況に陥るのです。
▼中学受験の「真の勝者」とは?
だからこそボークさんはこう言っています。
本書では「親だからこそできることにフォーカスする」ことで親子揃って真の勝者になることを提案します。
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P10より引用
つまり、塾が受験のプロとして「学力」にコミットする立場なら、親がコミットするのは「子育て」。中学受験の“真の勝者”についてボークさんはこう記しています。
「真の勝者」とは、「中学受験の後も続く長い人生を自分らしい幸せと成功に導くプロセス」を身につけた子どもと親、そして家族なのではないかと思ったのです。
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P16より引用
そのために開発したのが、非認知能力を親子で身につけられる本書の「
3週間チャレンジ」。親にとって中学受験を支える立場は未知の領域。子どもの学力を伸ばすための学習塾があるように、子どもが安心して挑める環境を作るための「親のための受験塾」が必要ではないかとボークさんは考えたのです。
中学受験における親の仕事はなんでしょう。それは塾での学びを最大化するために、また精神面・健康面で最大のケアができるように子どもが安心安全を感じる環境を家庭内に作り出すこと。
塾にできないことが家庭に求められ、家庭でできないことを塾に求める。お互いがお互いの強みを最大に発揮したら、中学受験を親子で成長と学びを得られる最高のプロセスにすることができます。それを「合格」のひとことで表すこともできれば、「不合格でも大成功の受験」ということもできます。
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P12より引用
そのためにはどんな状況にも対応できる基礎力が重要であり、その基礎力こそが「非認知能力」なのです。
■非認知能力を高めると社会的に成功する?

では、非認知能力とはどんな能力なのでしょうか? 著書によると、
点数や偏差値のように数値化されない能力で、自信・自己肯定感・自制心・主体性・柔軟性・回復力・やり抜く力・好奇心・コミュニケーション力・共感力・共働力・社会性などが含まれます。これに対してテストの点数や偏差値など数値化できて目に見える能力を「認知」と言います。
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P27-28より引用
とあります。非認知能力がここ数年重要視されているのはご存知の方も多いかもしれません。その理由として挙げられるのが、2000年にノーベル経済学賞を受賞した「ペリー就学児童プロジェクト」。子どもたちを40年に渡って追跡調査した研究で、非認知能力を高めることで、高所得を得たり、社会的に成功することに貢献していると結論づけています。
■なぜ非認知能力が中学受験に必要なの?

その非認知能力がどうして中学受験に必要なのか、ボーク重子さんは著書の中で5つの理由で示しています。
1つ目の理由としては、そもそも中学受験を乗り切るためには、
・わからない問題にぶち当たっても粘り強く、諦めない
・柔軟な思考と想像力で問題解決を図っていく
・感情と行動をコントロールしてやるべきことをやるべき時にやる自制心
・「どうせ無理」より「やってみなくちゃわからない」と挑戦する自己効力感
(以後省略)
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P38より引用
などが大切だということ。学力以外の非認知能力が欠かせないというのは、納得できる理由です。
▼支える側の親にどんなことが起きる?
一方、支える親側も非認知能力を鍛えることで、以下のような力が身につき、
・他者の評価に振り回されずに、我が子をあるがままに受け止められる
・子どもを信じられる
・子どもが失敗を恐れずに挑戦できるよう応援できる
・感情と行動をコントロールして、言ってはいけないことを言わない自制心がある
(以後省略)
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P40-41より引用
さまざまなメリットがあることが分かります。
▼学力オンリーではもはや合格できない?

注目すべきは2つ目以降。
激変する社会の影響を受けて、子どもたちに求められる能力が変化し、中学受験の問題自体も、
非認知能力が育まれていないと回答できないような問題が増えているというのです。
ボークさんが取材した大手中学受験塾「SAPIX」の広野雅明先生が出題される問題に関して、こんな例を話しています。
「2022年度の慶應義塾湘南藤沢中等部の入試で、2021年オリンピックのソフトボールの試合をテーマにした記述問題が出題されました。(中略)この時あなたが第5戦の監督だったらどう臨むのか、という設問だったのです。この問いには正解はないんですよね。(中略)
昔に比べると、細々とした知識などを覚えることはしないで済むようになり、子どもたちは書くこと考えること、などを楽しむことができ、なおかつ楽しんだことによって、合格に近づくことができる。そういう時代なのかなと思います」
出典:『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ(KADOKAWA刊)』P43-44より引用
そして、じつは学力オンリーはすでに少数派。2023年度の大学入学者の半数以上が総合型選抜入試で入学しています。
総合型選抜入試では、いわゆる尖った部分を持っている子、自己主張がきちんとできる子が求められます。それに伴い、学習塾をはじめとした教育の世界でも、認知オンリーではなく「認知+非認知能力」にシフトしているといいます。