【精神科医・本田秀夫】ADHDの子の「お金の管理」どう支える?叱る前に親子で共有したい基準と記録
「おこづかいを初日に使い切る」
金銭管理の悩みも「ADHD(注意欠如多動症)あるある」の一つです。人生には日々の出費がつきまといます。欲しいものに心が動く一方で、計画的なお金の使い方を意識することも大切です。しかし、この「計画的に」という部分こそ、ADHDのお子さんにとってはとても難しいポイントなのです。
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ADHDのお子さんのなかには、月に一度のおこづかいを初日に使い切ってしまうというケースも、珍しい話ではありません。例えば、親御さんが「計画的に使ってよね」と声をかけたとしても、実行機能が弱かったり自分の行動を制御するのが難しかったりするお子さんもいるのです。
「見通しの持ち方」の発達には個人差があり、先を見据えて行動するのが苦手なお子さんもいます。
「お金を残しておいて月末に備えよう」という発想をなかなか持てず、ほかに欲しいものを見つけたとき、我慢できないのです。
計画性の弱さに、衝動性の強さが重なっている場合も多いです。
欲しいものを手に入れた瞬間には、満足感や達成感があるでしょう。そのときには、おこづかいを使い切ったことへの後悔はないかもしれません。
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しかし、月末にまた別の欲しいものを目にしたら「やっぱり欲しい!」という気持ちも出てきます。
そこで後悔して「来月は衝動買いをやめよう」と考えるお子もいますが、「やっぱりこれも買いたい」と開き直り、親に泣きついて、どうにかして買ってもらおうとするお子さんもいます。
その分かれ目は過去の親子の関係性にあります。
おこづかいを使い切って親にすがりついてきたとき、根負けしてお金を出していると、お子さんは「頼めば買ってもらえる」と学習します。その結果として「欲しいものを見つけたら、その都度交渉する」という関係性になっていく場合もあるのです。
対応のポイントは基準を示すこと
あるご家庭では、「欲しい!」というお子さんに根負けして親がお金を渡すようになり、月額のおこづかい制は崩れていましたが、ゲームの課金は管理できていました。
「オンラインゲームには絶対に課金しない」と決めていたのです。そこに対応のポイントがあります。お金の問題には基準を示すことが大切なのです。
大人が頑として「ここは譲れない」という姿勢を見せれば、お子さんはその範囲でできることを必死に考えます。
例えば「課金はできないから、無料のポイントを貯めてガチャを回そう」などと判断するようになるのです。
おこづかい制も最初に「使い切ったら終わり」と宣言して、泣いてもわめいてもお金を渡さないようにすれば、お子さんはそれを学習します。おこづかい制の約束がなし崩しになっていても、これからルールを徹底すれば、行動をあらためる可能性もあります。
ルールを守らせるのが難しければ、取り決めを変更して「欲しいものができたときに相談する」という仕組みに変えてしまうのも一つの手です。子どもと話し合って上限となる金額を設定し、「都度交渉」を制度化するのです。
お金を渡したら、本人と一緒に記録を取りましょう。その後は本人からどんなに頼まれても、上限金額以上は渡しません。
不注意の特性が強い場合、大人になっても金銭管理で困ることが多いです。小さい頃から親子で一緒に取り組んで、「お金の管理は信頼できる人に手伝ってもらう」という考え方を教えていくのもいいと思います。
もう一つよくある相談が、ごほうびとしてお金を渡すケースです。
「次のテストで何点を取ったらゲームを買ってあげる」といった約束をするのはおすすめできません。
勉強のルールとお金のルールを連動させると、お子さんが「ほかにもこれをすればお金をもらえるんじゃないか」と考えて、都度交渉が増えてしまう可能性があります。
※この記事は、本田 秀夫 (著) フクチマミ(マンガ)『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち』(バトン社)より一部抜粋・再編集しています。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。