すぐに正解を知りたがる子。自分で考える力をつけてほしいけど、どのようなアプローチが良いか教えて
自分で考える力をつけてほしくて質問形式で問いかけたりするとすぐに「わかんない、正解教えて」「早く正解教えてよ」を繰り返し、思考自体を嫌がる子がいる。
サッカーも自分で考えないと上達しないと思うけど、すぐに正解を知りたがる子へのアプローチ方法を教えて、というお父さんコーチからの相談。近年、同じような体験を持つ方もいるのでは。
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスをお送りします。
(構成・文島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
<お父さんコーチからの質問>
池上さんこんにちは。
少年団で保護者兼コーチをしています。(指導年代:U-11)少年団なので、方針としては勝利より人間として育てることを重視しており、自分たちで考えて決断できる力をつけることを大事にしています。
ただ、最近はすぐに正解を知りたがる子が結構います。
問いかける形で「どうしてだと思う?」と聞いても「わかんない、正解を教えてよ」「早く正解を教えて」をひたすら繰り返し、質問自体を嫌がります。
こちらとしても、何の情報も与えないまま質問しているわけではありませんし、サッカーでも自分で気づいて考えないと伸びていかないと思うんですよね。
少年団なので保護者の皆さんも当然つきあいがあって、学校でのお話なども聞きますが普段から正解を知りたがるようなんです。 スマートフォンやタブレット学習の影響でしょうか......。
実際「正解教えて」タイプと知的好奇心が旺盛なタイプだと、後者の方がサッカーの理解や成長が早い気がします。(小学生だから成長スピードに差があるとはいえ)
練習メニューの話ではなく、接し方のアプローチなのですが、池上さんは最近の子に教える際にどんな工夫をされているか、少しでも教えていただけませんでしょうか。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
私の指導者としての師匠でもある祖母井(秀隆)さんがドイツから戻ってきて、オランダでやっていた4対4のクアトロサッカーを教えてくれました。それをやらせると、子どもたちが団子になりました。
そこで祖母井さんは「(コーチが)何も言わなかったら、子どもたちはわからないから団子のままだ。それ以上先に進まないよ」とおっしゃいました。
つまり、本当にわからないなら教える必要がある。最近よく言われる「ティーチング」なのか、「コーチング」なのかといった言葉の遊びはしないほうがいいとは思うのですが、子どもがわからないならちゃんと教えてあげることは必要です。
方法として、最初は「右と左どっちがいいか?」と小さい選択肢を与えたほうが、子どもたちは答えやすいでしょう。
右も左も見たし、考えてやったけどうまくいかないとか、あるいは右と左ならわかるようになってきた。
それをやる前提として、「サッカーには正解がなくて、どんな方法でもよい。点が取れればいい」ということを、コーチ、子どもの両者がきちんと理解しておかなくてはいけません。
例えば、いま右に行くと、パスをつないだりして時間はかかるけど、それでもゴールできればいい。左に行くとすぐシュートが打てるかもしれないけれど、もしかしたら入らないかもしれない。したがって、どちらを選んでもいいのです。
もっと上のカテゴリーやプロになってくると「チーム戦術」という考え方が出てきます。
ただし、少年サッカーの間は、右に行くか左に行くかを自分で考えればいいのです。
見ていると「右しか行かないな」と感じられる子どもに対して、「いま左も考えてましたか?」というような問いかけです。子どもたちに対しても「これが絶対正解っていうものはサッカーにはないよ」と伝えてください。
先日、オランダで体育教師をしていらした安井隆さんと同国の教育現場を視察した方々の報告会をオンラインで少し参加しました。安井さんによると、オランダにはさまざまな種類の教育の場があるそうです。
公立学校だけではなく、シュタイナー学校があったり、アゴラ教育を施す学校があったりと非常にバラエティに富んでいます。どこを選んでもいいのですが、親の義務として子どもに必ず教育を受けさせないといけません。
そのように学ぶ場は自由ですが、小学校を卒業する前にすべての小学生に共通の学力テストがあります。全国統一の卒業試験です。それをパスしないと卒業できません。小学生に何と過酷だと思われるかもしれませんが、非常にユニークです。
よって小学校を留年する子どもがいます。でも、留年は少しは恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、オランダやいくつかの欧州の国々では「きちんとそれ相当の学力をつけてから卒業させる」という概念が社会の中で浸透しています。
そのような環境で、デ・ヨングやクライフといった天才プレーヤーが育つ。あるいは、選手全員が自由に動いて攻守を繰り広げる「トータルフットボール」と呼ばれた戦術が生み出されるのです。
加えて、教員を養成する大学も4年間のうち、授業時間の4割が実習に充てられます。日本だと1か月ほどで教育実習が終わるので、大きく異なります。しかも、教員採用試験がありません。卒業して教員資格を取れば、どこかの学校の教員になれます。そのように、オランダはさまざまな面で教育そのものを非常に重んじる社会が形成されています。
オランダでも、サッカーの指導者はじゃあどういきますか?どこから行ってもいいよと、選択する自由を与えつつ、わからないことは丁寧に教えることが求められます。そういうことを指導者や大人がしっかりと理解しています。
一方で「最近の子に教える際にはどんな工夫をしているか」との質問があります。
私が子どもにサッカーを教え始めた40年ほど前も、言われたことをやるという子は多かったです。ただし「そうじゃなくて、こんなふうに考えてごらんよ」とこちらで選択肢を広げてあげると、かなり柔軟に動けるようになりました。
そんなことがだんだんと難しくなっているのは確かかもしれません。
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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
例えば、言ってもやらなくなってきたり、あるいは人の話をあまり聞かなくなってきています。その背景には少子化や社会の変化がありますが、大人が評価しやすいように指導をするようになってきたこともひとつの弊害でしょう。
以前私が行った小学校の先生に「試合をしていると子どもたちは勝手に上手くなりますよ」と答えると、「それで上手くなったかどうかの評価はどう見ればいいんですか?」という質問を受けました。
先生方が求める評価は、ジグザグドリブル10メートルを何秒で行けるかとか、リフティングを何回できるかといった、目に見えるわかりやすいものでした。
最近必要性が説かれるようになった「非認知能力」ではなく、テストの点数のような認知能力にどうしても注目してしまうようです。
だから今そういう非認知能力がクローズアップされ始めている。そんなことを勉強しつつ、アプローチの方法を自分のなかで増やしてください。
池上正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
サッカーも自分で考えないと上達しないと思うけど、すぐに正解を知りたがる子へのアプローチ方法を教えて、というお父さんコーチからの相談。近年、同じような体験を持つ方もいるのでは。
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんがアドバイスをお送りします。
(構成・文島沢優子)
<お父さんコーチからの質問>
池上さんこんにちは。
少年団で保護者兼コーチをしています。(指導年代:U-11)少年団なので、方針としては勝利より人間として育てることを重視しており、自分たちで考えて決断できる力をつけることを大事にしています。
ただ、最近はすぐに正解を知りたがる子が結構います。
問いかける形で「どうしてだと思う?」と聞いても「わかんない、正解を教えてよ」「早く正解を教えて」をひたすら繰り返し、質問自体を嫌がります。
こちらとしても、何の情報も与えないまま質問しているわけではありませんし、サッカーでも自分で気づいて考えないと伸びていかないと思うんですよね。
少年団なので保護者の皆さんも当然つきあいがあって、学校でのお話なども聞きますが普段から正解を知りたがるようなんです。 スマートフォンやタブレット学習の影響でしょうか......。
実際「正解教えて」タイプと知的好奇心が旺盛なタイプだと、後者の方がサッカーの理解や成長が早い気がします。(小学生だから成長スピードに差があるとはいえ)
練習メニューの話ではなく、接し方のアプローチなのですが、池上さんは最近の子に教える際にどんな工夫をされているか、少しでも教えていただけませんでしょうか。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
私の指導者としての師匠でもある祖母井(秀隆)さんがドイツから戻ってきて、オランダでやっていた4対4のクアトロサッカーを教えてくれました。それをやらせると、子どもたちが団子になりました。
そこで祖母井さんは「(コーチが)何も言わなかったら、子どもたちはわからないから団子のままだ。それ以上先に進まないよ」とおっしゃいました。
■分からないことはちゃんと教えてあげることが大事
つまり、本当にわからないなら教える必要がある。最近よく言われる「ティーチング」なのか、「コーチング」なのかといった言葉の遊びはしないほうがいいとは思うのですが、子どもがわからないならちゃんと教えてあげることは必要です。
方法として、最初は「右と左どっちがいいか?」と小さい選択肢を与えたほうが、子どもたちは答えやすいでしょう。
右も左も見たし、考えてやったけどうまくいかないとか、あるいは右と左ならわかるようになってきた。
そうしたら次は「後ろも見た?」と選択肢を増やしてあげる。そのことでプレーの幅は広がるでしょう。
それをやる前提として、「サッカーには正解がなくて、どんな方法でもよい。点が取れればいい」ということを、コーチ、子どもの両者がきちんと理解しておかなくてはいけません。
例えば、いま右に行くと、パスをつないだりして時間はかかるけど、それでもゴールできればいい。左に行くとすぐシュートが打てるかもしれないけれど、もしかしたら入らないかもしれない。したがって、どちらを選んでもいいのです。
もっと上のカテゴリーやプロになってくると「チーム戦術」という考え方が出てきます。
例えば「できるだけ早く攻撃しよう」というチームの考え方があれば、右の遠回りは考えずに左に行こうとなります。
ただし、少年サッカーの間は、右に行くか左に行くかを自分で考えればいいのです。
見ていると「右しか行かないな」と感じられる子どもに対して、「いま左も考えてましたか?」というような問いかけです。子どもたちに対しても「これが絶対正解っていうものはサッカーにはないよ」と伝えてください。
■オランダの例:選択の自由も与えつつ、分からないことは丁寧に教える
先日、オランダで体育教師をしていらした安井隆さんと同国の教育現場を視察した方々の報告会をオンラインで少し参加しました。安井さんによると、オランダにはさまざまな種類の教育の場があるそうです。
公立学校だけではなく、シュタイナー学校があったり、アゴラ教育を施す学校があったりと非常にバラエティに富んでいます。どこを選んでもいいのですが、親の義務として子どもに必ず教育を受けさせないといけません。
そのように学ぶ場は自由ですが、小学校を卒業する前にすべての小学生に共通の学力テストがあります。全国統一の卒業試験です。それをパスしないと卒業できません。小学生に何と過酷だと思われるかもしれませんが、非常にユニークです。
よって小学校を留年する子どもがいます。でも、留年は少しは恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、オランダやいくつかの欧州の国々では「きちんとそれ相当の学力をつけてから卒業させる」という概念が社会の中で浸透しています。
そのような環境で、デ・ヨングやクライフといった天才プレーヤーが育つ。あるいは、選手全員が自由に動いて攻守を繰り広げる「トータルフットボール」と呼ばれた戦術が生み出されるのです。
加えて、教員を養成する大学も4年間のうち、授業時間の4割が実習に充てられます。日本だと1か月ほどで教育実習が終わるので、大きく異なります。しかも、教員採用試験がありません。卒業して教員資格を取れば、どこかの学校の教員になれます。そのように、オランダはさまざまな面で教育そのものを非常に重んじる社会が形成されています。
オランダでも、サッカーの指導者はじゃあどういきますか?どこから行ってもいいよと、選択する自由を与えつつ、わからないことは丁寧に教えることが求められます。そういうことを指導者や大人がしっかりと理解しています。
■すぐに正解を知りたがる子が結構いる、子どもが変わってきている側面も
一方で「最近の子に教える際にはどんな工夫をしているか」との質問があります。
最近はすぐに正解を知りたがる子が結構います。子ども少しが変わってきたぞという感覚をこの人はお持ちなのかもしれません。
私が子どもにサッカーを教え始めた40年ほど前も、言われたことをやるという子は多かったです。ただし「そうじゃなくて、こんなふうに考えてごらんよ」とこちらで選択肢を広げてあげると、かなり柔軟に動けるようになりました。
そんなことがだんだんと難しくなっているのは確かかもしれません。
[[pagebreak]]
■大人たちは数値化しやすい認知能力に注目してしまいがちだからこそ、必要な事
例えば、言ってもやらなくなってきたり、あるいは人の話をあまり聞かなくなってきています。その背景には少子化や社会の変化がありますが、大人が評価しやすいように指導をするようになってきたこともひとつの弊害でしょう。
以前私が行った小学校の先生に「試合をしていると子どもたちは勝手に上手くなりますよ」と答えると、「それで上手くなったかどうかの評価はどう見ればいいんですか?」という質問を受けました。
先生方が求める評価は、ジグザグドリブル10メートルを何秒で行けるかとか、リフティングを何回できるかといった、目に見えるわかりやすいものでした。
最近必要性が説かれるようになった「非認知能力」ではなく、テストの点数のような認知能力にどうしても注目してしまうようです。
だから今そういう非認知能力がクローズアップされ始めている。そんなことを勉強しつつ、アプローチの方法を自分のなかで増やしてください。
池上正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
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