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夜尿症と発達障害の深い関係。宿泊行事前に多い駆け込み受診、子どもの「自尊心」の守り方は?【夜尿症セミナーレポ後編】

LITALICO発達ナビ

夜尿症と発達障害(神経発達症)の密接な関係


呉先生によると、発達障害(神経発達症)のある子どもは、排尿・排便のトラブルを抱える頻度が高いことが分かっています。例えば、ADHD(注意欠如多動症)の子どもの約20%に夜尿症がみられ、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもに ASD(自閉スペクトラム症)の子どもには約16~75%の割合で、約16~37%の割合で昼間尿失禁が認められています。

その原因は単なる行動面の問題だけでなく、大脳皮質の前頭葉の未熟性といった中枢神経系の問題や、併存しやすい睡眠障害など、複合的な要因が絡み合っていると考えられています。発達特性がある子どもは、「寝る前に水分を控える」「決まった時間に薬を飲む」といった治療のベースとなる行動を習慣化することが難しく、夜尿症が治りにくい傾向があるといいます。

夜尿症治療の本当の目的は「自尊心・自信の保持」


治りにくいのであれば、そもそも治療する意味はないのでしょうか? 呉先生は「治りにくくても、治療する意味はある」と強調します。 夜尿症治療の本質的な目的は、単に「おねしょをなくす」という結果だけではありません。おねしょによる心理社会的な障壁を取り除き、治療に取り組む過程を通じて子どもの「自尊心が保持され、成長が後押しされること」こそが重要なのです。
「夜尿症が治ったかどうか」という結果ではなく、まずは「治療のための構造(行動)を確立すること」自体を目標に据えることで、治りにくいケースでも治療に取り組む大きな意義が生まれます。


「褒める」ポジティブサイクル


親子の具体的な関わり方として、呉先生は子どもの行動を「してほしい行動」「してほしくない行動」「危険・許しがたい行動」の3つに分けることを提案しています。

夜尿症の治療においては、「自分から薬を飲んだ」「寝る前の水分摂取を控えた」といった『してほしい行動』にのみフォーカスし、その瞬間に肯定的注目を与えて褒め(認め)ます。 一方で、おねしょの結果(濡れてしまったこと)については、叱るための材料にはしません。夜尿の結果の責任は「医者」が引き受け、治ったという結果は褒める対象ではなく「一緒に喜ぶ対象」であると捉えます。
結果ではなく行動に目を向けることで、親子を悪循環から救い、ポジティブな好循環を作り出すことができるのです。

順天堂大学医学部附属浦安病院小児科 呉宗憲先生からのメッセージ


今回のセミナー登壇にあたり、呉先生から発達ナビの読者の皆さまへメッセージをいただきました。

「夜尿症自体を、本当に治したくない子は多分いないと思います。ただ、治したいと言ってしまうと、自分がダメだと認めるような感覚になり、言いにくいのだと僕は考えています。
そういった中で、ご家庭で『実は治したいんだ』という潜在的な気持ちを拾い上げてあげることが大切です。宿泊行事などの手前で駆け込み的に受診されることが多いですが、『治せるかもしれない』という情報を知っていただき、もう少し手前で受診できるとより良いと思っています」

お子さんの夜尿症でお悩みの保護者を対象とした、オンライン市民公開講座「おねしょ、いつまで待つ?〜受診前に知っておきたいこと〜」が2026年5月17日(日)に開催されます。本講座では、受診したときの相談方法や一度様子見と言われた場合の対処方法について、専門家が詳しく解説します。また、「おねしょ卒業!プロジェクト」公式ウェブサイトでは、事前に状態を確認できる「夜尿症セルフチェック」も公開されています。
ひとりで抱え込まず、こうしたツールや講座を上手に使って、親子で安心できる方法を一緒に探してみませんか。

※クリックすると外部サイト「おねしょ卒業!プロジェクトオンライン市民公開講座」へ遷移します。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。


神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。


ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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