ASD・感覚過敏の息子の「飛行機が怖い」「行きたくない」不安を否定しない!わが家流「焦らない」旅計画術
タイミングが大事……息子へのアプローチ
長男けんとは、3歳のときにASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けました。現在、小学5年生で、特別支援学級の情緒クラスに在籍しています。構音障害があり、好きなものに一直線、マイペースな男の子です。
旅行が大好きなわが家は、長期休みになると家族でいろいろな場所へ出かけます。これまでは車で移動することが多かったのですが、昨年の春に転勤で引っ越したことをきっかけに旅のスタイルが少し変わりました。
夏休みの計画を早めに立てようと思っていたのですが、けんとが飛行機を怖がっていたので、どうしようか悩みました。転勤のときも飛行機は使わず、新幹線と特急を乗り継いで、海を越えて、何時間もかけて移動したほどなのです。
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見どころがたくさんありそうなので近隣旅行もいいなと思っていたのですが、久しぶりに私の地元の東京へ帰りたいという気持ちもありました。
そこで「夏休み、飛行機で東京に行きたいな」と、何気なくけんとに話をしてみました。すると、けんとの反応はあまり乗り気ではない様子。「今はまだ飛行機に乗るタイミングではないな」と感じた私は、すぐに話題を変えました。そして帰省ではなく近隣旅行に行くことも考えながら、けんとが自然に「東京に行きたい!」と思える日を待つことに。
そしてついに、その瞬間がやってきました。
好きなものには一直線!だからこその提案
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けんとに大事な話をするのは「心が落ち着いているとき」そして「好きなものの話をしているなどの機嫌がいいとき」が一番のタイミングだと感じています。
けんとは関東の電車が大好き。ある日、関東の路線の「〇〇線に乗りたいな」とけんとが話し始めたとき、私は「今だ!」と思いました。
そこで、夏休みに東京へ行くとしたら、こういう計画はどう?と、紙に新幹線と飛行機の移動時間を書きながら説明しました。「飛行機で東京へ行くと、移動時間が新幹線よりも短いから、○○線にも乗れるし、△駅にも行けるね!」と、楽しいイメージが膨らむように話を広げていきました。
さらに、「東京のママの実家で流しそうめんもしたいなー♪」と、けんとの大好きな流しそうめんの話題もプラス。すると、けんとは目を輝かせながら「飛行機で行って、〇〇線に乗って、△駅に行って、流しそうめんもやりたい!」と行く気満々になったのです。
その後も、東京でやりたいことや行きたい場所のことをたくさん話し、けんとの心が前のめりになるようなワクワクする提案をどんどんしていき、「行きたい!」という気持ちをさらに膨らませていきました。
感覚過敏な息子が少しでも安心できるように
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けんとにとっての「行きたい場所」が増えていったものの、肝心の飛行機への不安がまったくなくなったわけではありません。しかも、今後乗れるか、乗れないかは、初めの1回目がとても重要です。けんとは昔から、大きな低い音を怖がることが多かったため、飛行機のエンジン音を怖がるのではないかと心配しました。
そこで、ノイズキャンセリング機能つきのヘッドフォンを購入。「飛行機に乗っている間は、これをつけて大好きな携帯型ゲーム機でたくさん遊んでいいからね♪」と伝えました。
子どもたちの視力が落ちていることもあり、普段ゲームは1日15分~30分程度というのがわが家のルールです。でも、飛行機に乗っている間だけは特別に‟時間無制限″にしました。少しでも「音が怖い」という気持ちを和らげ、楽しく安心して過ごしてほしかったからです。
さらに、飛行機に乗っている時間が「楽しい時間」にできるよう、いつもより特別な大好きなお菓子やジュースも持参しました。「飛行機=楽しい思い出」と感じてもらえるよう意識して準備をしました。
こうして迎えた、わが家にとって初めての飛行機旅。
けんとは怖がることなく無事に飛行機に乗り、大好きな電車の旅や流しそうめんを思いきり楽しむことができました。
「行ってもいいよ」は大いなる第一歩
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次の旅先の候補として、わが家では沖縄県の話題が出ています。生き物や恐竜が大好きな次男ゆうきには、行きたい施設がいくつかあるようです。そこで、けんとにも「沖縄に行きたい?」と聞いてみると、「ボクは行きたくありません」との返事。理由を聞くと、怖いと感じる施設が1つあるようで、沖縄そのものがイヤなわけではありませんでした。
そこで「その施設には行かずに、けんととママは沖縄県のモノレールに乗りに行くのも楽しそうだね。別行動でもいいんだよ」と提案してみました。その提案から数か月。
けんとが最近になって自分から「沖縄に行ってもいいよ」とポツリと話してくれるようになりました。
わが家では、このように子どもがあまり乗り気ではない場所に行きたいと思うときは、時間をかけて、たまに話題には出しつつ「様子を探る」というのを繰り返しています。そして、好きな食べ物や乗り物、「行ってみたい!」と思える話題が出たタイミングで提案。「タイミングを見計らうこと」「好きなものの話を重ねながら、行きたい気持ちを育てること」が、わが家流の旅の計画術なのかもしれません。
「今は行きたくない」けれど気持ちは変化していくこともあるので、「怖い」が「楽しそう♪」に変わる日をのんびりと待ちながら、これからも家族で旅を楽しんでいきたいです。
執筆/ゆきみ
けんとくんが安心して飛行機に乗れるよう、ゆきみさんが丁寧に準備を重ねられていた様子がとても印象的でした。発達障害の特性があるお子さんの中には、初めての場所や経験に強い不安を感じることがあります。そのような時には、「何のために行くのか」「どんな楽しいことが待っているのか」といった見通しを分かりやすく伝えることや、お子さんが安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
今回、飛行機で行くことで大好きな電車の旅や流しそうめんが楽しめることを具体的に伝えられたことで、「飛行機に乗ってみようかな」という前向きな気持ちにつながったのではないでしょうか。また、ノイズキャンセリング機能つきヘッドフォンやゲーム、お気に入りのお菓子など、不安を和らげる工夫も素晴らしいと感じました。初めての体験が「怖かった」ではなく「楽しかった」という思い出になることは、その後の自信にもつながります。けんとくんにとって飛行機が楽しい経験になったことに温かい気持ちになりました。これから夏の旅行を計画しているご家庭にとっても、参考になるコラムをありがとうございました。(監修:小児科医藤井明子先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。。
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