【発達障害×熱中症】喉の渇きに気づけない、猛暑で長袖…感覚の偏りやこだわりから子どもを守るには?【小児科医アドバイスも】
喉の渇きに気づけない、猛暑で長袖……発達ナビに寄せられた「夏の4大お悩み」
発達障害のあるお子さんの場合、本人の特性が影響して「水分補給」や「衣服の調節」が難しくなることがあります。発達ナビに寄せられた、夏のリアルなお悩みを4つのリスクとしてまとめました。
気温が急上昇する真夏日であっても、本人の中に「喉が渇いた」という体感(内受容感覚)が起きず、自発的な水分補給ができないケースです。熱中症の危険を知識として理解していても、自身の身体のサインに気づけないため、周囲が声をかけないと汗だくのまま過ごしてしまうという声が寄せられています。
「水を嫌って、水分補給はジュースやスープのみ。健康のために水だけに制限しようとしたら、夜まで一滴も飲まず脱水症状や熱中症になってしまった」という、こだわりとリスクの間で葛藤する声もあります。また、「このタイミング、このボトルでしか飲まない」といったルーティンへのこだわりが影響するケースもあります。
「アレがしたい、コレが欲しい」という意思表示は激しい一方、「お腹が痛い」「だるい」といった体調不良のサインを周囲に伝えない(気づけない)ケースです。
背景に自身の体調変化への鈍麻さが隠れている場合があり、保護者が気づいたときには点滴が必要なレベルまで悪化していたという事例も寄せられています。
感覚の感じ方のばらつきや、特定の衣服への安心感から、「真夏でも長袖やお気に入りの服しか着たがらない」という事例です。季節外れの服装による「うつ熱(体内に熱がこもること)」のリスクと、本人のこだわりやパニックとのバランスに頭を悩ませる保護者の方が多いようです。
なぜ一般的な対策が通用しないの?小児科医・藤井明子先生に聞く
こうしたリスクに対し、子どもたちの発達と健康に詳しい「どんぐり発達クリニック」院長の藤井明子先生に、特性を踏まえた背景についてお話を伺いました。
「発達障害のあるお子さんでは、一般的な熱中症対策だけでは十分でないことがあると感じます。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のお子さんの中には、『暑い』『のどが渇いた』『疲れた』といった身体からのサインに気づきにくい場合があります。
また、水筒の水の味や温度にこだわりがあったり、帽子や冷却グッズを嫌がったりする感覚特性から、周囲が勧める対策を受け入れにくいこともあります。さらに、好きな遊びや活動に集中(過集中)すると、水分補給や休憩を後回しにしてしまうことも少なくありません。
加えて、発達障害のお子さんでは自律神経機能の違いが指摘されており、体温調節や暑さへの適応に影響している可能性も報告されています。
そのため、『のどが渇いたら飲もう』ではなく、大人が時間を決めて水分補給を促したり、休憩のタイミングを具体的に示したりする工夫が大切です」
本人の「大丈夫」に頼らない!家庭でできる3つの「安心な仕組み」
藤井先生によると、熱中症対策において最も重要なのは、本人の自己申告(「大丈夫」「喉は渇いていない」など)だけに頼らず、大人が「仕組み」として先回りすることだと言います。家庭で取り入れられる具体的なサポートアイデアをご紹介します。
「1時間ごとにタイマーを鳴らす」「ボトルに目盛りをつけて視覚的に量を伝える」「学校に行っている間に水筒の水をここまで飲み切る」など、水分補給のタイミングや量をルール化して促します。
どうしても水を嫌がる場合は、かき氷(シロップなし)やゼリーなど、本人が受け入れやすい形態で水分をとれるよう工夫することも有効です。
長袖への強いこだわりがある場合は、無理に半袖にさせようとするとパニックに繋がることも。本人が納得する肌触りの「接触冷感素材」や「通気性の高いメッシュ素材」の長袖を一緒に選ぶなど、安心感と暑さ対策を両立させましょう。
また、クローゼットにはあらかじめ「その季節に合った服(夏服)」だけを入れておき、子どもが迷ったり執着したりしないよう、大人が選択肢をはじめから調整しておく工夫も効果的です。
自分で体調の変化を伝えられない、あるいは気づけないお子さんの場合は、大人が客観的な指標でチェックしてあげましょう。
- おでこや背中の汗の量
- 顔の赤み
- 排尿の回数や色
特性への理解を深め、すべての子どもが安心できる夏へ
暑さに鈍感な特性や、体温調節の難しさ、衣服へのこだわりを周囲が正しく理解し、責めることなく「安全な仕組み」を作ってあげること。それが、子どもたちの命と健康を守ることに繋がります。一般的な対策だけでは見落とされがちな「特性による熱中症リスク」について、まずは身近な大人が理解を深め、それぞれのご家庭に合った「無理のない対策」を見つけるヒントにしてみてはいかがでしょうか。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。