年度途中の転校で支援が途切れる?特別支援学級の手続きが間に合わず小5息子が勉強に苦戦、不登校に…【読者体験談】
せめて卒業まで。願いは届かず、年度途中の転校へ
お子さんのプロフィール
- 年齢:12歳
- 診断名:なし/ADHD(注意欠如多動症)のグレーゾーン
- エピソード当時の年齢:11歳(小学5年生)
小学5年生の息子は、環境の変化がとても苦手なタイプです。ですが、小学校では理解のある先生や友だちに恵まれ、特別支援学級で個別に見てもらいながら、落ち着いて学校生活を送っていました。
そのため、夫の仕事の都合で急遽引っ越しが決まったとき、私が真っ先に考えたのは「せめて小学校を卒業するまでは、今の学校に通わせられないか」ということでした。
慣れ親しんだ先生や教室、本人のことを分かってくれている特別支援学級の環境。そこを変えることが、息子にとってどれほど大きな負担になるか分かっていたからです。
しかし、相談した結果、その願いは認められませんでした。
新しい家から前の学校までは距離があり、電車での移動も必要になります。学校側からは、通学中の安全面を考えると、学校として責任を持つことが難しいと説明されました。
もちろん、安全面を心配する学校の言い分は分かります。それでも、「あと少しで卒業なのに」という悔しさは消えませんでした。何よりつらかったのは、息子自身が「本当は前の学校で卒業したかった」と話したことです。
その言葉を聞いたとき、環境を変えることになってしまった申し訳なさで胸がいっぱいになりました。
「特別支援学級だったから大丈夫」ではなかった
前の学校に通い続けることができないなら、転校先の小学校で特別支援学級に入ろうと考えていました。
息子はすでに特別支援学級に在籍していましたので、転校先でもその情報が引き継がれ、同じように特別支援学級につながることができるだろうと思っていたのです。
しかし、転居先の教育委員会に相談したことで、その考えが甘かったことを知りました。
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年度初めの転校であれば、自治体側の流れに沿って進められる部分もあるようです。
しかし、今回は10月半ばという年度途中の転校でした。
年度途中で特別支援学級への転籍を希望する場合、必要な書類をそろえ、面談や行動観察を受け、その結果をもとに判断されるとのこと。さらに、その準備は基本的に保護者が動かなければなりませんでした。
そして、こうも言われました。
「最悪の場合、特別支援学級に入れるのは新年度からになるかもしれません」
頭が真っ白になりました。
新年度まで、まだ半年近くあります。
その間、息子の支援はどうなるのか。通常学級に通うことになるのか。
新しい環境に入るだけでも大きな負担なのに、支援が整わないまま過ごせるのか。
支援が必要なのは、今なのに。
そう思いました。
検査、診断書……働きながらひとつずつそろえる日々
そこから、私は急いで動き始めました。
なるべく早く発達検査をしてくれる病院を探し、予約を取る。
医師に診断書の作成を依頼する。
これまでの学校生活や困りごとを整理し、面談シートを作る。
前の学校での様子を伝えられるように、必要な情報をまとめる。
働きながらだったので大変でしたが、一つひとつ確認しながら、準備を進めていきました。
引っ越し先の自治体は、「子育て支援が手厚い」と評判の地域でした。だから私は、どこかで安心していたのだと思います。
ですが、実際に必要だったのは、一般的な「子育て支援の手厚さ」ではなく、特別な配慮が必要な子どもへの対応が柔軟であるかどうかでした。
- 年度途中でもすぐに特別支援学級へ入れるのか
- 入れない場合、その間はどう過ごすのか
- 通常学級でどんな配慮を受けられるのか
- 検査や診断書はいつまでに必要なのか
そこまで具体的に確認しておくべきでした。悔やんでも悔やみきれません。
通常学級から始まった新生活。息子は行き渋るように
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準備は進めていたものの、転校時には特別支援学級への手続きはまったく間に合わず、息子はまず、通常学級へ通うことになりました。
手続きを待っている間にも、子どもの毎日は続いていきます。
新しい学校に行き、新しい教室に入り、新しい先生や友だちに会い、授業を受けなければなりません。
私は、前の学校での息子の様子や本人の不安を新しい学校に伝え、「今できる配慮」を一緒に考えてもらえるように相談を続けました。先生も親身に話を聞いてくださいましたが、それでも、もともと勉強に苦手意識を持っていた息子にとって、通常学級での授業は大きな負担だったようです。
「授業が全然分からない……」
そう言うようになり、だんだん学校へ行き渋るようになりました。
そして転校から2か月弱で、不登校になりました。
私にとっては、とてもつらい時期でした。
新しい環境に慣れるだけでも大変なのに、支援が整わないまま通常学級で過ごすことになった。その負担が、息子に大きくのしかかってしまったのだと思います。
年明けの面談、そして6年生の4月から特別支援学級へ
その間も私は、4月からは特別支援学級へ転籍できるように準備を続けました。
年明けにようやく面談があり、6年生の4月からは特別支援学級へ通えることになりました。
正直、本当にまた学校に通えるのか、不安でいっぱいでした。
けれど、事前に見学をさせてもらえたこともあり、6年生となった新学期、息子は不安そうな顔をしながらも登校しました。
最初から毎日安定して通えたわけではありません。登校はとぎれとぎれでした。
それでも、少しずつ新しい環境に慣れていき、6月頃からは落ち着いて通えるようになりました。
息子の穏やかな顔を見たとき、心からほっとしたのと同時に、こちらの事情で大きな環境の変化を経験させてしまったことへの申し訳なさもありました。
「もっと早く確認しておけば、違った形で準備できたかもしれない」
そう思う気持ちは、今も残っています。
引っ越しで変わるのは、住所だけではない。支援も変わる
今回のことで、私は痛いほど学びました。
引っ越しで変わるのは、住所や家だけではありません。
支援も変わります。
前の学校で受けていた支援が、転校先でそのまま自動的に続くとは限りません。特に年度途中の転校では、「転校日」と「支援が始まる日」が同じにならない可能性があります。
もし、同じように特別支援学級や通級指導教室などで、学校での配慮を受けているお子さんの転校を予定されている方がいるなら、できるだけ早く確認することをお勧めします。
行政の手続きには時間がかかります。でも、子どもの毎日は待ってくれません。
私の経験がどなたかのお役に立てるとうれしいです。
イラスト/keiko
※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。
転居に伴う転校と、支援が途切れてしまう不安について、率直に聞かせてくださりありがとうございます。もともと特別支援学級で安心して学校生活を送れていたお子さんにとって、慣れ親しんだ先生や友だち、環境から離れること自体が大きな負担です。さらに、転校先で同じ支援がすぐに受けられるとは限らず、通常学級での授業についていくことが難しくなり、不登校に至った経過からも、環境変化と支援の空白が重なった負担の大きさが伝わってきます。転校から2か月弱で不登校になった息子さんも、その後少しずつ環境に慣れ、6年生では特別支援学級に通えるようになったことも、本当によく頑張られたと思います。
特別支援学級や通級指導教室の利用については、自治体によって対象や手続き、年度途中の転籍の運用などに違いがあり、時代によっても変化しています。そのため、「今まで支援を受けていたから、転校先でも同じように受けられる」とは限らず、転居が決まった段階で、教育委員会や学校に早めに確認しておくことは大切です。ただ、今回のように急な転勤など、十分な準備期間を持てない場合もあります。どれだけ事前に調べても予想外のことが起こることはあり、ご家族の努力だけではどうにもならない部分もあると思います。
転勤などで避けることが難しい場合には、可能であれば職場に事情を相談し、転居時期や勤務地について調整できる余地がないか検討することも、1つの選択肢になるかもしれません。もちろん、それができる状況ばかりではありませんし、家庭ごとに事情は異なります。「引っ越しで変わるのは、住所だけではない。支援も変わる」という今回の気づきは、とても大切なメッセージだと思います。大変な状況の中で1つずつ手続きを進め、お子さんを支え続けられた筆者さんと、環境が大きく変わる中でも学校生活に挑戦した息子さんの頑張りに、心から敬意を表したいと思います。(監修:小児科医新美妙美先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。